オリジナルイオン(?)がアリエッタと共に世界救世旅行へ 作:ヴィヴィオ
エドナ
私のお兄ちゃんは自らドラゴンになることも承知で自由に生きる人間の海賊達に魅了されて私を置いて旅にでた。そして、予想通り穢れにあてられて憑魔化してドラゴンとなった。
これは別にいい。お兄ちゃんも覚悟して決めたことだから。でも、私も連れていって欲しかった。手紙のやりとりだけではやっぱり寂しいから。
私はお兄ちゃんを諦めることはできなくて必死に対策を探した。でも、その時には可能性がある喰魔もすでにいなくなり、ドラゴン化を防ぐ方法はみつからなかった。そして、次はドラゴン化したお兄ちゃんを元に戻す方法を探し求めた。
数百年の旅でわかったことはドラゴンになればもう戻れないということ。知り合った穢れを浄化する天族、ライラでも無理だった。
それがわかった後はお兄ちゃんと一緒にいて、せめて他の人の迷惑にならないように引き篭もることにした。そのままの私では力が足りないので、人間や動物を襲うようになったお兄ちゃんが山から出ないよう、毎日歳の数だけピーナッツを食べるという誓約をして力を増して防いでいた。
だけれど、それも限界がきていた。お兄ちゃんは私をかいくぐって山からでることも増えだした。同時にお兄ちゃんを長く、ここに押しとどめていたせいか周りの穢れもかなり酷いことになってきて私では手に負えないような数の慿魔まで現れだした。
一人一人は楽に対処できても、数が多く連携までされるとどうしようもなく、次第に傷が増えてそこから穢れが浸食してくる。それによって動きが悪くなり、また傷が増えるという悪循環に陥ってついには片腕と片足を折られて、蹴り飛ばされて死を意識した。後悔はやっぱり、お兄ちゃんを助けられなかったこと。
そう思っていたら、天族を連れた人族の子供に受け止められた。また困った時の神頼みでもしにきたのかと思ったら、その人族はあろうことか、私を求めてきた。その天族曰く、この人族は導師らしい。そのくせどこか歪んでいるし、おかしいくらいに強い。
だから、条件としてお兄ちゃんを浄化して助けてくれたらといったら、本当に挑みだした。それも楽しそうに戦っている。けれど戦闘経験はすくないみたいで、危なっかしいところもある。ただ、問題もある。
「私、キスされたぐらいでそんな変なことはされていないのだけれど」
「作戦、なのです」
「わかってるわ」
そう、作戦。まるで私がアレされたようにお兄ちゃんに私の声と姿で囁く幻。名誉棄損で訴えたら絶対に勝てる状況。こんな状況になったのはお兄ちゃんが私のことを意識して、微かに意識を戻してくれたからかもしれない。ううん、きっとそう。だからこそ、執拗に導師の子供を狙っている。正直、お兄ちゃんにそこまで思われているのは嬉しい。でも、シスコンすぎるところはどうかと思うわ。
「本当にできるのかしら?」
「イオン様ならできる、です」
隣で私を守っている女の子がうずうずと身体を揺らしながら、話してくれる。彼女は導師の護衛みたいで、本来ならすぐにでもあの戦いに参加したいようだ。
「うぅ、我慢できない、です。バリアー、シャープネス!」
驚いたことに導師でもなく、天族でもないのに天響術を使っている。
「こらっ! バリアーはともかくシャープネスは駄目だよ! 準備が整う前に殺しちゃうじゃない!」
「ご、ごめんなさいです! れ、レイズデットっ!」
強化の天響術で加減が狂ったのか、お兄ちゃんの身体の一部が砕けて瀕死になりかけた。それを隣の子が急いで回復の天響術を放って持ち直させる。
「本当に助けるつもりなのね」
「当たり前だ」
吹き飛ばされてきた天族の子が地面を削りながら着地する。彼女はあくまでもサポートとして動いている。そして、主に私を恥ずかしめている。すぐに戦いに戻っていく。無数の氷の塊がお兄ちゃんに迫り、お兄ちゃんはブレスで対抗し、お返しとばかりに尻尾を振るう。それを導師は避けて尻尾に杖を突き刺す。
「インフェルノ」
杖の先端から天響術を流し込んで内部から破壊する。導師は吹き飛ばされて上空で今度は氷の塊を出して重力で加速させて打ち込んでいく。それをお兄ちゃんは無数の土の槍を作って防ぐ。
「大分、戻ってきてるです」
「みたいね。天響術も使いだしてるし」
お兄ちゃんは私と同じ土の天族。だから、土の天響術を使う。今まではなかったこと。お兄ちゃんの意識が戻ってきていることの証明だと思われるわ。
「ねえ、私の手足をすぐに戻せるかしら?」
「いける、です」
「じゃあ、お願い。ちゃんと代価は支払うから」
「はい、です。これ、使うといいです」
「……すごいものを出してきたわね。これ、私よりも明らかに高いでしょう」
出されたのはエリクシールと呼ばれる回復薬の最高の物。深い傷でもある程度回復させることができ、数十年から数百年単位で滅多に手に入らない品物。流石に手足がなくなっていたら天族や慿魔以外は無理でしょうけれど。
「アリエッタにはわからない、です」
「まあ、いいわ」
「それでどうする、です?」
「決まっているわ。幻影なんかじゃなく、私自身が言ってやるのよ。私だってお兄ちゃんを助けるためだったらなんだってやってやるんだから」
エリクシールを飲むと折れた手足が戻っていく。治る際の痛みは我慢して耐える。ようやく収まって立ち上がる。少しフラフラするけど問題ないわね。
「ねえ、牛乳と生クリームとかあるかしら?」
「はい、です」
もらった奴をおいておいて、服を適当に破ってからかぶる。臭いはひどいけれどこれでいいわ。さて、お兄ちゃん達のところにいって上目使いでお願いする。
「……お兄ちゃん……助けてぇ……」
雄叫びをあげて突進してくるお兄ちゃん。私は抱き上げられて後ろに移動する。
「なにやってるの?」
「あなたにお兄ちゃんの怒りを集めているのでしょう。なら、幻影より私がやったほうが効率的でしょう」
「そうだけどね」
お兄ちゃんからしたら私を攫っていく悪い人。
「まあ、決着をつけようかな。エドナもそのほうがいいよね」
「そうね」
私を抱いたまま壁を走って飛び上がるとお兄ちゃんの顔が突っ込んでくる。
「グラビティ」
導師が杖を頭に突き刺す。同時に女の子が地下から無数の音量の手で押さえていく。
「手足を切り取って、浄化を開始しよう。ダアト式譜術で封印するからアリエッタはそのまま押さえておいて。サイモンはエドナと協力してお兄さんにいままでの記憶をみせてあげて」
「これってプライバシーの侵害よね。まあ、いいわ」
「ではいくぞ」
お兄ちゃんが苦しんでいく。不安になりながら女の子をみると頷いている。
「意識、もどってきている、です。イオン様」
「レディレイクでたっぷりとためた奴も使って超振動、いってみようかな」
導師が歌いだすと周りが一変した。地面や様々なところから光の譜面がでてきて、お兄ちゃんを囲っていく。次第にお兄ちゃんの身体が分解されていく。
「エドナ、願って。そして記憶の限り兄の姿を思い出すんだ。肉体や魂を再構築し直すから、君の記憶が頼りだから」
「わかったわ」
おそらく、いま見せている幻術を元にしているのでしょう。それにしても、本当にお兄ちゃんは助かるのかもしれない。
「あははは、抵抗しようとしても無駄だよ。大人しく妹のために再構築されやがれっ!」
「お兄ちゃん、お願いっ!」
「大人しく受け入れやがれ、です! 一人になるのは寂しい、です!」
「お兄ちゃんっ!!」
泣きながら叫ぶと、お兄ちゃんの姿と声が聞こえた気がした。その瞬間、お兄ちゃんの身体が消滅し、元のお兄ちゃんの姿へと戻っていく。
「お兄ちゃんっ!」
「まった! まだ駄目っ! 再構築に巻き込まれるからっ!」
「くっ……」
お兄ちゃんの身体が戻り、導師を見上げるとコイツはお兄ちゃんをまた拘束した。
「いいか、ちゃんと聞いてね。まだドラゴンの力があるはずだからね。意識が覚醒していないと暴走する可能性もある。気を付けてね」
「ええ、わかっているわ」
解放された私はすぐにお兄ちゃんに抱き着いて身体を触って調べる。私が知っているお兄ちゃんで間違いない。泣きながら縋り付くと、お兄ちゃんが目覚めた。
「……俺は……」
「お兄ちゃん」
「エドナか、なにがどうなって……」
「このバカ、覚えていないの?」
「馬鹿とは……いや、覚えて、思い出した。てめぇ、よくもエドナを……」
お兄ちゃんが導師の方を見た。導師は近付いてきて私を抱き上げてお兄ちゃんから離す。
「ちょっと?」
「契約に従いエドナは貰っていくよ。返さないけど、会いたいなら追っておいで」
「時間、くれないの?」
「今はだめ」
「今、はね」
お兄ちゃんの方を見ると、瞳がドラゴンみたいになっている。まだ不安定だということ?
「妹のことが大事なら、その暴れる力を使いこなして追ってくるんだね」
「そういうことね」
今のお兄ちゃんの傍にいると暴走に巻き込まれる可能性があるのね。それで私がやられたらお兄ちゃんはまたドラゴンになるかもしれない。それはまずいわね。それに導師の言葉から、お兄ちゃんが頑張れる原動力にしようとしているのね。
「じゃあ、行こうか」
「待ちやがれっ!」
「お兄ちゃん、待っているから」
お兄ちゃんに抱き着いたあと、すぐに離されて連れていかれる。これでお別れ。でも、それでもいい。今度はちゃんとお兄ちゃんと会えるのだから。だから、お兄ちゃんが叫び声をあげても無視する。残される思いを少しは味わうといいわ。
山から大きな鳥に乗ってマーリンドまでやってきた。そこはお兄ちゃんの領域よりはましだけれど、それでもかなりの穢れがたまっている。正直、かなりきついわ。
「エドナ、私と陪神契約をしてくれ。このままじゃまずいだろう」
「いいわよ。この穢れは私もきついし」
「そっか。じゃあ、浄化しようかな」
街ごと浄化する気はなかったようだけれど、私の言葉がきっかけのようね。そして、あっさりと街ごと覆う結界を張ってしまった。すぐに大量の穢れが導師のもとに集まってくる。それをまるで何事もなかったように浄化してしまった。
「やっぱり、狂ってるわね」
アリエッタと呼ばれた女の子と楽しそうに話している導師イオン。このままだとまずいかもしれないわね。今は穢れを浄化しているみたいけれど、あのアリエッタや他の子になにかあれば簡単に転がり落ちそうなアンバランスさがある。このままいてくれたらベストなんでしょうけれど、闇落ちしたら災禍の顕主にまっしぐらでしょうね。流石にそれはまずいわね。面倒だけど仕方ないわね。年長者として導くくらいはしないといけない。アリエッタもサイモンも導師、イオンのいう事を優先してしまうでしょうし。助けてもらったんだから、それぐらいはしてあげましょう。
「イオン様、宿の確保するです」
「お願い。ボクは少し散歩してくる。エドナはついてきて。サイモンはアリエッタと一緒にいってあげて」
「アリエッタ、イオン様と一緒がいい、です」
「じゃあ、散歩は後にしようか」
宿屋に向かうと締まっていて誰もいなかった。人がいないようで、しかないので人がいる教会に向かうことにする。
「宿屋の人は教会で倒れているようね。治療してあげたら、泊めてくれるんじゃない?」
「そうだね。そっちに行こう」
アリエッタと二人でイオンが進んでいく。その後ろを私とサイモンがついていく。
「そういえば、私を選んだ理由はなんなの?」
「後で説明する。まあ、信じられないだろうが」
「どうでもいいわ。どちらにしろ、お兄ちゃんを助けてくれたという事実があるからそれでいい。で、基本的に私は何をすればいいの?」
「主様の言う通りにすればいい」
「わかったわ」
教会に着くと扉を開けて二人が入っていく。すぐに中から光が溢れて騒がしくなる。
「……イオンは手加減ということをしらないのかしら?」
「我が主が手加減する必要などあるまい」
「あっそう。面倒ごとにならないといいわね」
「安心するがいい。面倒ごとは私が処理する」
「殺すの?」
「私は殺せない。しかし、殺せないだけでやりようはある」
サイモンの力は幻術。それも相手の心を読んで自分が知らないようなのも生み出せるみたいね。陪神契約のおかげで私も使えるけれど、これは便利ね。たしかに色々とできるでしょうね。精神的に殺すことだって簡単よね。
話していると、イオンとアリエッタが出てきた。
「待ってくれ! 君達の力は天族の……」
女の子が追ってきたようね。
「君に答える理由はないよ。これはボクが持つ力だ。治療はしたからもういいじゃない。まあ、長くはもたないだろうけどね」
「君がまたやってくれれば……」
面倒そうだから、土の壁を作って砕いて砂塵を作る。それから幻影もかませてイオン達と宿屋へと向かった。許可はもらったらしいので部屋を借りてそこで寝ることになった。