注意書き
お話の都合上オリジナル設定が比較的多めにあるとおもいます。
また、これまた都合上禁止カードやアニメオリジナルカードなどが出る可能性があります。完全オリジナルカードは出ません。
また、アニメ版とOCG版の効果が混ざることもあるかもしれません(都合上)。
マスタールール3で進行します。
ご注意ください。
また、誤字やルールミス、気になる点などありましたらご指摘お願いします。
夢を見ている。
ぼうっと映る周囲の光景を見渡しながら、そう結論を出した。
夢を見ることは多い。何の因果か俺と共に居る彼女たちの記憶を夢として追体験するのだ。
だから、いつもそれが夢だとわかるし、俺自身少し楽しみにしている部分もある。
仲間や家族との生活や、かけがえのない自身の片割れとの記憶。
…それから、凄惨な争いの記憶も。
色々な記憶を、俺は見た。彼女たちの世界の、その歴史の欠片を。
だが、今回の夢はそのどれとも違う。
あたりを包んでいるものは、闇。闇に包まれた、おぞましいモンスターたちの居る世界。
そこには彼女たちを包んでいた暖かな光や、仲間の姿はない。
この記憶はなんだ?彼女たちはこんな記憶について話したことは無かった。
彼女の両親も、妹も、パートナーも居ない。
彼女の半身も、誇り高い騎士たちも居ない。
この世界は、いったい何なんだ?彼女らの過去には、何が―――
「―――………ッ!?」
「あっ、遊里起きた?――ってどうしたの……また怖い時の記憶でも見た?」
夢の世界について考えを巡らせようとした瞬間、ぞっとするような感覚に襲われた。
思わず飛び起きた……と、思ったら彼女がこちらを覗き込んできた。
「いや…ああ、なんて言うかな。今までにないモノを見たよ。」
「へェ…ねぇねぇ、どんな夢だったの?」
あの世界は…。
「なんか怖いモンスターが沢山居て、辺りが真っ暗だったな。」
「ふんふん…真っ暗で怖いモンスターね。インヴェルズじゃなくて?」
インヴェルズってのは、あの世界を侵略しようとしていた奴らのことだったな。
何度か夢で見て知っている。
「いや、そいつらじゃなかったな。」
だが、そいつらとはまた違ったモンスターだった。
なんと言うか、インヴェルズが優しく見えるぐらいに。
「んぅ……わかんない。ラピスの記憶かも。」
「そうか。まあ後で聞いてみるよ。」
彼女の記憶にはないらしい。そうなるともう一人の少女の記憶か。
「それが良いかも。あ、早くしないと学校遅れるよ!」
「なんだと!?…もうこんな時間か!やべぇ…。」
「早く、早くご飯食べて!」
「ああ!すまんウィンダ、デッキ取ってくれ!」
「OK!はいパスッ!」
「うおぉどこに投げてんだ!?一応自分が入ってるんだから!」
「ごめーん。ささ、早く朝ごはん。もう出来てるよ。」
「いつもスマン!急げ急げ……」
急ぎながら支度をして制服に着替える。
…そうだ、一応紹介しておこう。
俺は小山内遊里。デュエルアカデミア高等部の生徒だ。
そしてこの少女はウィンダ。
信じられないかもしれないがカードの精霊って奴で、俺のデッキのモンスターだ。
正式な名称は《ガスタの巫女ウィンダ》という。
「…ってなんで何もないところを見つめてるの!?ほら急いで!」
「いや、説明が…。」
「ホント何言ってんの!?」
…すまん。
―――――――――――――――――――――――――
コーンキーンカーンコーン
「いやー……間に合った!」
自分の机にぐってりと体を預け、今日も無事アカデミアへ辿り着いたことに安堵する。
『いつも余裕なのに、変な夢見たせいで災難だねぇ』
俺の隣でふよふよと浮遊しながらウィンダが俺の肩を叩く。
浮くことができる上にいざとなればカードの中で休んでいればいいので、俺と違って息一つ上がっていない。
ちなみに、このクラスに精霊の見えるやつは居ない。
「まあ、ホント変な夢だったよ…もうこりごりだ。」
正直、夢を見るのは今まで楽しかったのだが。大体時間通りに目覚めてたし。
これから何回も同じような夢を見たらと思うと…きついわ。
『あとさ、さっき気づいたんだけど…お弁当、忘れてるよね?』
「え゛?…あぁ、マジかー。」
カバンの中を確認して、一気に脱力する。
いつもウィンダが弁当を作ってくれるのだが、それを家に忘れてしまったらしい。
昔から家庭の事情で炊事を担当してたとかで、料理はとても上手い。
こっちの世界にしかない調味料にもすぐに適応してたしなぁ。
「一日の楽しみが一つ減った…今日は購買でドローパンでも買うか。」
ドローパン、上手いのと不味いのの差が激しくて苦手なんだが。
なぜか購買にドローパン以外の商品が非常に少ないのだ。
『あー、あのパン私嫌い。』
ドローパンというのは、ドローの訓練用に作られたパンである。
何がすごいって、中身が完全ランダムであり、その日によって具材が違うのだ。
そのため、完全に中身は製造者の意のままであり、報告されただけでもその種類は数百。
俺は野沢菜とか、茄子味噌とか、切り干し大根等を過去に引いている。
しかし、何度か非常にゲテゲテしたものも引いているのだ。
ウィンダもその被害者の一人で、運試しにと一つかぶりついたところ中身が……
『パンに刺身を入れるなんて、製造者の頭を疑うよ?』
しかもご丁寧にわさび醤油入り。
俺なら絶対にあたりたくない具材だ。
「まあ、あれはな……っと、先生が来たみたいだな。」
ガラガラと扉を開けて先生が教室に入ってくる。
教室が静かになると、ウィンダとの話もやりにくくなるし。
その前に、授業をちゃんと聞いておかないと、成績が落ちるからな。
―――――――――――――
「んおー……ようやく昼かー。」
今日の午前授業は、デュエルの基礎講座が2時間と通常授業1時間。
弁当がなくて割と陰鬱な気分だったが、実習がなくて助かった。
卓上デュエルならともかく、アカデミアまで来てソリッドヴィジョンを使わないなんてことはあるはずもなく。
デュエルが嫌いというわけではないが、昼飯がドローパンなのに無駄に体力は使わない方が良い。
そんなこんなで、授業が終わり購買まで来たわけだが。
「っく…どのパンが当たりなんだ…!?」
『私はこれだと思うなー』
ウィンダがパンを一つ指さす。ウィンダはそのパンに決めたようだ。
「なら俺は…これにするか。」
なんとなく一番端にあるパンを選ぶ。
ウィンダの分と合わせて2つを店員に渡し、会計を済ませた。
2つのパンを持って、いつも使っている空き教室へと向かう。
「…なあ、何の具材が出たら嫌だ?」
『うーん…とりあえず、魚介はイヤ!私は野菜系が良いなあ。遊里は?』
ウィンダは、魚介類が苦手だ。
揚げたやつとかは何とか食べられるが、基本的には野菜類が好きで、弁当もそんな傾向にある。
俺は野菜は大体イケるし、健康的だからとても助かっている。
「俺も魚は勘弁。今日は惣菜系が食べたい。…よし、今日も誰も居ないな。」
『おじゃましまーす』
俺たちがいつも使っているのは、教科に使う特殊な教室の棟にある教室。
精霊と話しながら昼食を食べるにあたり人目のない場所が必要なわけで。
昼休みにはまず使われないこの棟はうってつけなのだ。
「じゃあ……開けるか。」
『そうだね』
ゴクリと唾を飲み込む。これは食欲によって出ているのでは断じてない。
封を開けると、そこにあるのは何の変哲もないただのパン。
そう、ドローパンは食べてみないと中身が分からないのだ。
しかも、ドロー強化という名目のもとにドローパンを割って食べてはならないという校則がある。
そしてその罰則は意外と重い。
「いくぞ………ン!?」
意を決してドローパンに齧り付く。
この鼻孔を通る独特の香りは……。
「今回の具材はキノコのソテーか…まあ、外れではないな。」
『…………………』
「ウィンダ?」
ふと隣を見てみると、ドローパンに噛り付いたままプルプルと震えているウィンダが。
一体何の具材を引いたというのか。
『い……イ……イカ墨スパゲティイィィイィ………!』
「あー……、イカかー。」
何を隠そう、ウィンダは魚介の中でイカが最も苦手なのである。
『うえぇん…ご丁寧にイカの切り身が入ってるよぉ…』
ドローパン製造者の皆さん、ご苦労様です…。
この妙にこだわっている具材も根強いファンを生み出す要因かもしれない。
その前に選出を考えような…?
ともかく、ウィンダは涙目になりながらも口の中のイカ墨スパと格闘している。
料理を作る側の気持ちを知っている彼女はけして口にした料理を吐き出さない。
俺は無言で右手を差し出した。
『むぐぅ…お願い…』
「まあ、俺はイカ大丈夫だから気にするなよ。」
ウィンダからイカーパンを受け取って食べる。
俺としては割と旨いんだが、苦手な人にはつらいだろうな。
「それはそうと…今朝からラピスの姿が見えないけど、どうしたんだ?」
ラピスというのは、今日の会話の中でも何度か出た気がするが、俺のところにいるもう一人の精霊である。
正式名称は《ジェムナイト・ラピス》という。
ウィンダほどカードの外に出てくる性格でもないのだが、いつもならもう見ていてもおかしくない。
どうやら、カードの中にも居ないようだし…精霊だから大丈夫だと思うが、変なことに巻き込まれてなければいいが。
『ラピスなら、3限の途中で教室の外に出てったよ?』
「へぇ、珍しいな。こんなに俺から離れるなんて。」
ラピスは、肉体的にも精神的にもウィンダより控えめだ。
ウィンダに俺、その他親しい人とは仲良くできるんだが、なかなか人見知りも多い。
自然、一人で出歩くことも少ないのだが、どこへ行ったのだろうか。
『あ…話をすればなんとやら、だね。ラピスの力を感じるよ。ほら、もうすぐそこ』
「ん……ああ、ホントだ。おーいラピスー。」
教室の扉を開けて廊下を覗いてみると、誰も居ない廊下をふよふよと向かってくる影が一つ。
彼女の一族特有の鎧を着け、その胸にはジェムナイトの力の象徴である輝石が輝いている。
ただ、体はまだ子供のもので、幼い印象を受けるだろう。
そんな彼女が一人で行動するのは、やはり少し不安を覚える。
『ラピスどうしたの?珍しいね、一人でどっか行くなんてさ。』
『あ、あの…お兄さん、ウィンダお姉ちゃん。これ…。』
「ん…?こ、これは俺が家に忘れた弁当箱!」
『なるほど、ラピスはこれを取りに行ってくれてたんだね!ナイスだよ、私もうおなかペコペコ。』
ラピスがいつも提げているカバンから出したのは、家にあるはずの弁当箱だった。
つまり、俺が弁当を忘れたのを知って取りに帰ってくれていたのだ。
イカ墨スパゲッティパンを引き当ててしまったウィンダにしてみれば、これ以上ない朗報だろう。
「サンキュな、ラピス。俺もドローパンじゃいまいち足りなかった所なんだよ。」
『…っ!は、はいっ!良かったです!』
弁当箱を受け取って、ラピスの頭を軽く撫でると顔が綻んでゆく。
まあ、こんな幼さの残るところもラピスの魅力の一つだ。
「じゃ、さっそくラピスの持ってきてくれた弁当を頂こうか。」
勿論3人分ある。
『OK!』
『はいっ!』
この物語は、俺と、ウィンダと、ラピスと、とある二人を中心に進んで行くものである。