精霊と双子と俺   作:ニッキ飴

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今回のオリジナル設定
・双子が通信教育ではない。


誤字脱字ルールミス気になる点等ありましたらお知らせください。


第二話

 

~放課後~

 

 

 

「じゃあ、今日もお願いするわね。」

 

初等部の主任の先生から今日の分の課題と連絡の入った袋を受け取る。

 

「任されました。二人の勉強は捗ってますか?」

 

「龍可ちゃんの方は順調よ。龍亜君の方は…えっと、努力はしてると思うわ。」

 

「まあ、予想通りですね。」

 

なんとなく気になって先生に聞いては見たが、帰ってきたのは予想通りの返事だった。

一応、二人とも俺が軽く教えたりはしているんだが、まあ性格は出る。

 

「じゃあ、俺はこれで。」

 

「ええ、さようなら。よろしくね。」

 

先生に軽く頭を下げ、初等部の職員室から出る。

アカデミアの敷地から出たところで、ウィンダが話しかけてくる。

 

『龍亜ってばさー、正直直感でデュエルしてるよねー。』

 

「まあ、そうだな…。たまに良いデュエルはするんだがなぁ。」

 

確かに、龍亜のデュエルはいつも危なげな感じだ。

 

自分の好きなコンボができる時とか、そんなときは上手くやるものだが。

 

『ちゃんと知識をつければ、もっとポテンシャルあると思うんだけどなー。』

 

何か方法はないかなー?とウィンダは頭を捻っているが、そればっかりはどうしようもない。

 

やっぱり、何かを変えるにはきっかけがないと。

 

『龍可さんはルールに関してはほぼ大丈夫ですからね。』

 

ウィンダの反対側にいるラピスが、龍可について言う。

確かに龍可はデュエルの実戦こそあまりしないが、基礎知識はしっかりと勉強できている。

 

双子といっても、違うところがあるのは当たり前だし、あの二人は上手くバランスが取れていると思う。

 

「龍亜の積極性は強みだし、龍可の判断力や知識も強い。二人で協力すれば手強いだろうな。」

 

『あー、それ確かに強そう!』

 

『兄妹と力を合わせると楽しいし、やっぱり息も会いますよね。』

 

そういえば、ウィンダとラピスにも姉妹が居たはずだ。

そう考えると、妙に説得力がある。

 

俺には兄妹とか居ないからなぁ…ま、ウィンダやラピスだって兄妹みたいなものだけど。

 

「なんだかんだで家事も分担してしっかり生活できてるし、頑張ってるよあの二人は。」

 

『だねー。良い子たちだよホント。』

 

学校のある日はほとんどこうして課題を届けに行ってるし、昔からの知り合いだからあの二人は本当の弟や妹のようだ。

 

龍可に関しては精霊を見る力があるから、ウィンダやラピスとも仲が良いし。

 

……そうこう色々と話しているうちに二人の住むタワーマンションの入り口が見える。

 

『ひょえー、やっぱりいつみてもでっかい建物だよねぇ。』

 

「ま、トップスの、しかも最上階だからな。」

 

駅近、アカデミアから徒歩10分、セキュリティもしっかりしていると来ている。

さらにそのマンションの最上階1フロア貸し切りだから相当なものだ。

 

なんでも両親が海外で事業を経営しているとか。

その辺りに触れるのは嫌がられるから二人の前では言わないが。

一回の玄関部にあるインターホンを押す。

 

「管理人さん、いつものです。」

 

インターホンの横のマイクに向けてそう言うと、少しして玄関の扉の鍵が開く。

 

俺はここの住人ではないから、入るときには龍亜龍可と一緒か管理人さんに言わなければならない。

 

俺が通っているのはいつものことだから、こう言えばすぐに入れてもらえるが。

開いた扉を通り、エレベーターに乗り込む。

 

しばらく上へと昇り、最上階で降りると一つしかない扉が見える。

扉の横にあるインターホンを押せば、内側から扉が開けられた。

 

「いらっしゃい遊里!早く上がって!俺ってばまたデッキ改良したんだから!」

 

見慣れた顔が、飛び出してきて腕を引っ張った。

この部屋に住む双子の兄、龍亜だ。

 

さっきウィンダ達と話していたように、直感で突っ込むところはあるが明るくて責任感のある子だ。

 

「おー、じゃあ今日もデュエルするか?新デッキで俺は倒せるかな?」

 

「むぅ、確かに最近負けっぱなしだけどさ…今回は絶対に勝つから!」

 

「ははっ、期待しとくよ。」

 

『昨日も同じようなこと言ってた気がするけどねぇ。』

 

『言ってました。』

 

龍亜はいつもこんな調子で俺にデュエルを挑んでくる。

事情があってアカデミアを休んでいる龍亜だが、デュエル自体は好きだから丁度良い相手なのだろう。

 

龍亜に引かれて部屋の中に入ると、龍可がソファに座ってこちらを向いていた。

 

「いらっしゃい、遊里。……あと、ウィンダとラピスも。」

 

「おう、お邪魔するよ。」

 

俺に一言、そのあとウィンダ達に向けてこっそり。

 

龍亜には精霊が見えないから、それに配慮していつもこんな感じだ。

精霊がいることを龍亜が知らないわけではないが、一人だけ見えないとなるとこちらも気を使ってしまう。

 

『やっほー龍可!それからクリボンも!』

 

『龍可ちゃん、こんにちは。』

 

龍可は、龍亜と対照的でおとなしい性格の子だ。体が弱く、アカデミアを休学している。

 

龍可にはクリボンという精霊がいるのだが、ウィンダ達と違って人語は話せない。

しかし龍可とは意思の疎通ができていて、龍可もクリボンを可愛がっている。

 

「ほい、今日の課題と連絡な。龍亜、先生がもうちょっと勉強頑張れってさ。」

 

「えーっ!?昨日やった課題自信あったのに!」

 

「昨日が良くても他がだめでしょ、龍亜は。」

 

「そんなぁ…。」

 

驚く龍亜と、冷静に指摘する龍可。そして龍亜は撃沈。

いつものことながら、自然と顔に笑みが浮かぶ。

 

この兄妹は両親と離れて暮らしているが、二人ともよくやっていると毎度思う。

お金に困っていないことはトップスに住んでいることからわかるし知っているのだが、それにしても年齢以上にしっかり者だ。

 

勿論、龍可のしっかりとした性格が大きいことはあるが、龍亜にしても龍可の兄であることに責任を感じて行動している。

 

引き籠りがちの龍可に外から情報を持ってくるのは龍亜で、龍可の世界を広げている。

また龍可は龍亜の苦手な家事や計算なんかを担当している。

 

さすがにテレビのデュエルリーグ放送の契約とか、そういった類は俺が手伝う時もあるのだが。

 

ともかく、自覚はあまりないかもしれないが二人とも将来有望な子供だと思う。

 

俺が毎日熱を入れて龍亜にデュエルを教えたり、龍可に勉強を教えたりするのは勿論この二人が本物の兄弟のように大切な存在であることもあるが、そういった期待も大きい。

 

「遊里!今日ばっかりは覚悟した方が良いと思うよ?龍可に良いカード教えて貰ったんだ~。」

 

「ほほう…龍可の入れ知恵ともなると少しは気を付けた方がよさそうだ。」

 

龍亜の奴はデュエルに関してはとても熱心に考えるから、毎日少しずつデッキの内容が変わっている。

 

たまによくわからないカードが入っていたり、俺に対してメタを張りすぎてデッキのパワーが落ちる事もままあるが。

 

「もう…龍亜ったら秘密の作戦だって言ってたのに。」

 

『ありゃりゃ~?』

 

『余程の自信があるんだね、龍亜君。』

 

龍亜の宣戦布告を遠目に見ていた女子3人があきれ顔で龍亜を見る。

特に龍可は自分の考えた作戦だからか、右手で顔を覆っていた。

まあ、とにかく龍亜は相当な自信があるようだ。

 

…とはいっても、俺だって負けるつもりはない。まだまだ初等部には負けてられないからな。

 

「んー…じゃあ今日はどっちのデッキを使うかな。」

 

俺にはウィンダとラピスの二人が精霊としてついている。

 

ということは、当然俺は二人のカードを使っているわけでデッキが2つある。

二人とも仲が良いし、俺としては一つのデッキに纏めたいと思っているのだがそれがなかなか難しい。

 

残念ながら二人ともカテゴリ間にそれほどシナジーがないし、分けた方が強いのだ。

ジェムナイトの大型モンスターを召喚するのに必要な素材はガスタでは賄えない。

ガスタの大型モンスターの素材にジェムナイトは使えない。

そうなかなか上手くはいかないものだ。

 

「そうだな…じゃあ今日はジェム――「あ、ちょっと待って遊里!」…ん?」

 

デュエルディスクにジェムナイトデッキをセットしようとしたその時、龍亜から待ったがかかる。

 

「今日はガスタと戦いたいんだ!頼むよ!」

 

『え?私?』

 

「まあ、別に構わないが…なんでガスタなんだ?」

 

「え!?いや…えっと、それはホラ!昨日ガスタに負けちゃったからさ~。リベンジしたくて!」

 

「なるほどな…良いだろう、返り討ちにしてやる!」

 

取り出したジェムナイトデッキをしまい、ガスタデッキをセットする。

 

『よーし、今日もコテンパンにしてやるんだから!』

 

ウィンダもいきなりの出番だが気合が入ったようで腕をブンブン回している。

俺達も龍亜もやる気は十分。いざ、尋常に。

 

「「デュエル!!」」

 

『……私の出番が…。』

 

あっ…すまん。

 

 

★☆★☆

 

 

デュエルディスク同士がお互いを認識し、先行を決める。

 

今回のデュエルでは、先行の表示は俺のディスクに現れた。

 

「俺の先行、ドロー!」

 

初手に引き込んだ6枚の手札を確認する。

俺のデッキはガスタ。その基本戦術は受けの色がやや強い。

 

さらに先行1ターン目は攻撃ができないために、展開しすぎると崩された時が痛い。

その事と今の手札を考えれば、今は基本に忠実に動くべきか。

 

「俺はモンスターとリバースカードを1枚ずつセット。ターンエンドだ。」

 

多くのデュエリストの使う先行伏せ伏せエンド。

地味だが、先行1ターン目に関しては有効な戦術だ。

龍亜が勢いよくカードを引く。

 

「俺のターン!シャッキーン!」

 

…ドローの際の擬音は龍亜のこだわりだ。

 

擬音を着けないときは大体が余裕がない時である。

 

「遊里!俺には分かるよ!そのセットモンスターはウィンダやガルド…リクルーターだ!」

 

龍亜は俺のセットカードを指さして高らかに宣言する。

 

「さあ、どうかな?」

 

なんて言ってみるものの、その実セットモンスターはウィンダである。

 

流石に、これだけデュエルしていると龍亜にもわかる。

龍亜の言うとおり、ウィンダは破壊されるとデッキから仲間を呼び出すリクルーターだ。

 

ガスタの下級モンスターにはこの効果を持つものが多く、その効果を使ってモンスターを絶やさずシンクロ召喚を狙うのが基本戦術である。

 

ただ、分かっていても裏側表示のリクルーターというのは対処がしにくい。

除去効果には裏側表示に対処できないものも多いし、後続を呼ぶことから破壊もためらわれる。

 

…まあ、龍亜の頭は責める気でいっぱいのようだが。

 

「俺はまず、《D・モバホン》を召喚して効果発動!ダイヤルぅ~オン!」

 

龍亜の場に携帯電話の形をしたモンスターが召喚される。

龍亜のデッキはD(ディフォーマー)。家電をモチーフにした機械族のテーマだ。

表示形式によって効果を変える、珍しい特徴を持つ。

 

効果を発動したモバホンの体のダイヤルが点滅し、ピピピと音を出す。

点滅は、5の数字で止まった。

 

「よし、5が出たからモバホンの効果でデッキトップを5枚確認するよ!」

 

モバホンの効果は、確認した中にレベル4以下のディフォーマーがいれば特殊召喚できる効果。

 

ディフォーマーの展開の核となるカードだ。

 

「デッキトップは…きたきた!《D・ビデオン》を特殊召喚!」

 

現れたのはビデオカメラを模したモンスター。攻撃表示だ。

 

「特殊召喚はできたが、チューナーじゃないな。ビデオンは装備カードの枚数で攻撃力が上がるが、それだけだと俺のリクルートループは破れないぞ。」

 

「そんなことは分かってるさ!フィールドのモバホンを手札に戻して、手札から《A・ジェネクス・バードマン》を特殊召喚!」

 

「なるほど、そう来たか!」

 

フィールドのモバホンが龍亜の元へと戻っていき、機械でできた鳥が姿を現す。

自分フィールドのモンスターと入れ替わって出てくる効果は強力であり、あのモンスターは…。

 

「バードマンはチューナーモンスター!レベル4のラジカッセンに、レベル3のバードマンをチューニング!」

 

バードマンが3つのリングになり、その中をラジカッセンが進み、一つの星になる。

 

「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!愛と正義の使者、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 

2体のモンスターの同調の光の中から現れたのは、機械の体を持った龍。

このドラゴンが、龍亜のデッキの切り札だ。

 

「パワー・ツール…!だが、それでも俺にダメージは通らないぞ!」

 

パワー・ツールの攻撃力は2300となかなかの数字だが、俺の場のウィンダは守備表示。しかもリクルーターだ。

 

「まあまあ、見ててよ!俺は《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動!パワー・サーチ!」

 

龍亜は効果を宣言し、デッキから3枚のカードを抜いた。

この効果は、デッキから選んだ3枚の装備魔法を相手に見せ、ランダムに選ばせそれを手札に加えるもの。

 

「俺が選んだカードは、この3枚だ!」

 

「いったいどんなカードを…ゲエェ!?」

 

龍亜が満面の笑みで見せてきた装備カード、それは。

 

 

 

《破邪の大剣-バオウ》

《破邪の大剣-バオウ》

《破邪の大剣-バオウ》

 

 

 

「なんてこった…!」

 

———破邪の大剣-バオウ———

 

それは装備カードの中ではそれほど知名度の高いものではない。

基本的に攻撃力を上げるものが多い装備カードの中で、上昇値はかなり低めの500しかない。

 

しかも発動に1枚の手札コストが必要だ。

しかし、問題は攻撃力以外の付与効果にある。

 

【このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターの効果は無効化される】

 

この効果が、大きな問題なのだ。

 

基本的に破壊をトリガーとするリクルーターの効果は、破壊された後墓地で発動する。

そのためにスキルドレインなどといった効果無効系のカードの効果を受けにくいのだが、このカードに関しては話が別。

 

このカードの場合は、無効の範囲は墓地にまでくっついてくるのだ。

つまり、墓地で発動するウィンダの効果は発動することができなくなる。

 

『ついに龍亜がバオウに気づいちゃったかぁ……最初に気づいたのは龍可だけど。厳しいねぇ。』

 

ウィンダが裏守備のカードの下からニュッと顔を出して龍亜を眺める。

 

パワー・ツールの効果は一応、ランダム選択の効果なのだが3枚とも同じカードでは好きなカードをサーチできるに等しい。

 

装備魔法が多く入っている龍亜のデッキでは強力なモンスターだ。

 

「俺が選択するのは真ん中だ。」

 

どれも同じカードだが、一応選択をしなければならない。

こういった効果は割と端折りがちだが、初等部の龍亜の前では勉強の意味もかねてしっかりと宣言する。

 

「なら、真ん中のバオウを手札に加えてそのまま発動!手札を1枚捨てて《パワー・ツール・ドラゴン》に装備!」

 

パワー・ツールの左手に禍々しい大剣が握られる。

どうでも良いことだが、戦いづらくないか?左腕にはもう武器がついているのに。

 

「さらにさらに!俺は手札から《ビッグバン・シュート》をパワー・ツールに装備!このカードを装備したモンスターは攻撃力が400アップして貫通効果を得る!」

 

ゴゴゴゴゴ…とパワー・ツールからオーラが溢れ出す。合計攻撃力は3200…見た目通りの破壊力だ。

 

「なるほど…バオウに貫通効果。ガスタと戦いたいってのはこれが理由か。」

 

「その通り!これが遊里に勝つために考えたコンボだ!行くよ、バトルフェイス!」

 

「くるか!」

 

バトルフェイズが宣言され、パワー・ツールが構える。

 

『ねえ遊里、このままだと私何もできないけど…守ってくれるんだよね?』

 

「……すまない。」

 

『えぇーーーっ!?』

 

「《パワー・ツール・ドラゴン》でセットモンスターに攻撃!クラフティ・ブレイク!」

 

セットカードに対して右腕のショベルを振りかざすパワー・ツール。

 

『えっ?バオウ使わなってあぁああぁ!』

 

その攻撃に対して俺は伏せカードを……使わず、ウィンダは破壊された。

 

「やっぱりウィンダだったね!ウィンダの守備力は400だから…えっと、2800の貫通ダメージを受けてもらうよ!」

 

「っく…。」

 

ウィンダが受けきれなかった衝撃が俺の元まで届く。

 

初期ライフが4000だから、一撃でライフの半分以上を持って行かれたことになる。

 

「やるようになったな龍亜!だが、ここでリバースカード発動!《カース・サイキック》!」

 

トラップを発動する。攻撃に反応する罠ではなかったが、この罠はモンスターの破壊に反応する罠だ。

 

「俺の場のサイキック族モンスターが戦闘破壊されたとき、攻撃してきた相手モンスターを破壊し、破壊された自分のモンスターのレベル×300ポイントのダメージを与える。」

 

『私の恨み、くらえ~!』

 

墓地から半透明のウィンダが現れ、パワー・ツールに向けて突撃する。

 

「無駄だよ!《パワー・ツール・ドラゴン》は装備魔法を墓地に送ることで破壊を無効にできる!俺はバオウを墓地に送るよ!」

 

『うおおぉぉおおお…へぶぅ!?』

 

突撃していたウィンダだが、行く手にバオウが現れそこに激突してしまう。

結局バオウと共に消えてしまった。

 

「モンスターの破壊が成立しなかったから効果ダメージは発生しない…だが、バオウは無くなったな?」

 

「でも、また次のターンになればサーチできる!リクルートは許さないよ!俺はこれでターンエンド!」

 

確かに、次のターンも3分の2も確率でバオウは龍亜の手札に加わる。

そもそも、貫通効果がある時点で1200しかない俺のライフでは受けきれない。

 

攻撃力もバオウがなくなっても2700。なかなか厳しい数字だが…龍亜は一つミスをしている。

 

「俺のターン、ドロー。龍亜、このターンでパワー・ツールには退場願おうか。」

 

 

[遊里手札:5枚]

 

 

「うっ…でもフィールドのモンスターは0!シンクロは難しいハズ…。」

 

「まあ、なにもリクルートだけがガスタの戦略じゃないってことだ。まずは手札から《ワン・フォー・ワン》を発動!」

 

手札のモンスターをコストに、デッキからレベル1のモンスターを呼び出す魔法。

ここ最近は低レベルモンスターの評価が上がっており、このカードもその影響で使用者は少なくない。

 

なにより、ガスタのデッキにとってはコストすらメリットとなりうる。

 

「俺は手札の《ガスタ・グリフ》を捨て、デッキから《ガスタ・イグル》を特殊召喚!」

 

デッキから緑と白の体毛を持つ鷲が飛び出す。

鷲と言ってもかなり小さく、肩にとまれる程度の大きさだ。

 

「さらに、手札から墓地に送られたグリフの効果発動。デッキからガスタを一体特殊召喚する。《ガスタの静寂 カーム》を特殊召喚!」

 

グリフは手札から墓地に送られたときにデッキからガスタを呼び寄せることができる。

能動的な展開力に乏しいガスタでは貴重な展開要因だ。

…タイミングを逃すっていう処理さえなければガスタはもっと展開しやすいのだが…。

まあ、無いものねだりをしてもルールが変わるわけでもないし。とにかく目の前のデュエルだ。

 

「俺はレベル4のカームにレベル1のイグルをチューニング!」

 

パワー・ツールの時と同様にイグルがレベル分のリングになり、カームを包む。

 

「行くぞウィンダ!シンクロ召喚、《ダイガスタ・ガルドス》!」

 

『よっしゃー!行くよっ!』

 

光の中から飛び出してきたのは、巨大化した《ガスタ・ガルド》に乗ったウィンダ。

なぜイグルとカームからガルドとウィンダが出てくるのか…ってのは考えてはならない。

 

召喚条件に指定されているのは非チューナーにガスタを使うことだけなのだ。

だが、それでも相棒と力を合わせたウィンダは強い。

効果もそうだが、レベルも5と比較的召喚しやすいのもある。

 

「ガルドスの効果発動!墓地のウィンダとイグルをデッキに戻すことで相手の表側モンスター一体を破壊する!」

 

『いっけええぇえ!ガルドバード・アタック!』

 

ウィンダの叫んだどこぞのトラップを真似した攻撃名から、ガルドがパワー・ツールに向かって突撃する。

 

「で、でも!パワー・ツールの効果で装備魔法を…「本当に良いのか?」…え?それって…?」

 

「お前の発動した装備魔法にはもう一つ効果があるだろう?」

 

「え…えーっと、このカードがフィールドから離れた時……ああ!?」

 

「そういうことだ。行け、ガルドス!」

 

結局、龍亜は身代わり効果を発動せず破壊を通した。

 

《ビッグバン・シュート》には場を離れた時装備モンスターを除外する効果がある。

使い方によってはメリット効果となるが、普通に使う分にはデメリット効果だ。

 

これで、龍亜のフィールドは空になった。

 

「俺はまだ通常召喚を行っていない。手札から《ガスタ・サンボルト》を召喚する。」

 

俺の場に雷をまとった狼が現れる。

こいつには大きな角が生えていてさながらユニコーンにも見えるが、ウィンダでも正確なところは知らないらしい。

 

「サンボルト!…良かったぁ。ライフはギリギリだけど残るよ!」

 

龍亜の場にモンスターは無く、ガルドスが攻撃力2200、サンボルトが1500。

合計しても3700のダメージで300ライフが残る。

カース・サイキックの効果ダメージが通っていればこのターンで決着がついていたのだが。

 

「だがこれで形勢は逆転できる!2体でダイレクトアタックだ!」

 

「うわあぁ!?」

 

2体の攻撃で龍亜のライフが一気に削れる。

これでライフの上でも、フィールドの状況でも俺が俄然有利となった。

このまま押し切ることができるのならば良いが。

 

「俺はリバースカードを2枚セットしてターンエンドだ。」

 

 

[遊里:手札0]

 

 

「まだまだ…ここからだよ!俺のターン!」

 

 

[龍亜:手札4]

 

 

とはいえ、ハンドアドバンテージは龍亜にある。

しかもそのうちの一枚は前のターンに手札に戻したモバホンだ。

そうなれば当然……。

 

「よし、俺はもう一度モバホンを召喚して効果発動!」

 

さっきと同様ダイヤルが点灯し、今度は3で止まる。

 

「三枚の中には…来た!《D・スコープン》を特殊召喚!」

 

龍亜の場に顕微鏡を模したモンスターが現れる。

このモンスターもチューナーモンスターだ。

 

「スコープンの効果!手札からレベル4のディフォーマーを特殊召喚できる!《D・ラジカッセン》を特殊召喚!」

 

立て続けに、ラジカセのディフォーマーも現れる。

ラジカッセンの攻撃表示の効果は2回攻撃…そして場にはスコープンにモバホン…成程な。

 

「行くよ!俺はレベル1のモバホンにレベル3のスコープンをチューニング!」

 

龍亜が宣言するのは予想通りのレベル4。

 

「シンクロ召喚!起動せよ、《アームズ・エイド》!」

 

2体のモンスターの星から、機械で作られた巨大な腕が現れる。

 

「アームズ・エイドは自分フィールドのモンスターに装備できる。対象はラジカッセン!」

 

場のラジカッセンが、その腕にアームズ・エイドを装着する。

この二体のコンボというのが、この上なく強力なのだ。

 

「まず、ラジカッセンの攻撃力が1000アップして、2200になるよ!それから……」

 

「破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える…か。」

 

「その通り!そしてラジカッセンは2回攻撃ができる!」

 

…つまり、この状態のラジカッセンは攻撃表示のモンスターを2体破壊する事で4000を超えるダメージを叩き出すことができる。

モバホン、スコープン、ラジカッセンを揃えればできるワンターンキルコンボで、油断すれば一撃でやられてしまう。

 

「さらに俺は手札から装備魔法《魔導士の力》をラジカッセンに装備!攻撃力を1000ポイントアップするよ!」

 

さらに攻撃力の上がるラジカッセン。

攻撃力を上げなくてもサンボルトを攻撃すればライフは無くなるが、サンボルトもリクルーターだ。

 

伏せカードでダメージを無効にされた場合、モンスターをリクルートされることになるから、ガルドスを攻撃するつもりなのだろう。

 

…以前、そのパターンで負けたことをちゃんと覚えているのは良いことだ。

 

「行くよ、バトルフェイズ!ラジカッセンでガルドスに攻撃!」

 

「…待った!俺はバトルフェイズ開始時にリバースカードを発動!《エンジェル・リフト》!」

 

「《エンジェル・リフト》!?なんでここで…。」

 

「俺はこの効果で、墓地の《ガスタ・イグル》を特殊召喚する!」

 

俺の場に、墓地に送られていたイグルが舞い戻る。

 

「…それでも、この攻撃で終わりだ!そのままガルドスに攻撃!」

 

モンスターの数が変化し、一度停止していたラジカッセンがもう一度ガルドスに突撃する。

 

『はぁ…今日は負けかぁ。私2回も破壊されるんだね…。』

 

ウィンダはガルドの上で器用にバランスを取りながらあきらめた様子で胡坐をかいていた。

 

「おいおい…ウィンダにはもうひと働きしてもらうぞ。」

 

『え!?もしかして何かあるの!?やった!よっし、どんとこい!』

 

見事な手のひら返しで、まじめにガルドを操るウィンダ。

まあ、ひと働きとはいっても…。

 

「攻撃宣言時に、もう一枚のリバースカードをオープン!《緊急同調》!このカードは、バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」

 

ラジカッセンの攻撃をガルドスは躱し、(ウィンダの操舵を無視して)空高く舞い上がる。

 

『えっ!?ちょっと、働くってシンクロ素材!?酷いよぉ!』

 

できる事ならお望み通りの活躍をさせてやりたいけどな?こういうのも大事だよな。

 

「俺はレベル5のガルドスに、レベル1のイグルをチューニング!」

 

問答無用でレベルの輪に突入したガルド共々ウィンダが文字通り星になる。

 

「新たなる力得し戦士よ、風を纏いて邪念を祓え!シンクロ召喚!レベル6、《ダイガスタ・スフィアード》!」

 

光を切り裂いて、フィールドに細身の少女が現れる。

 

見た目こそ美少女のそれだが、れっきとしたガスタの切り札モンスターだ。

 

「っ…!スフィアード……。」

 

「スフィアードの召喚時効果で墓地のイグルを手札に加える。…さて龍亜、どうする?」

 

「スフィアードの効果はガスタのダメージ反射だから攻撃を……………あれ?」

 

「ん?どうした。」

 

龍亜は恐らく攻撃を中止すると言いかけたところで頭を捻りだした。

 

「あのさ、遊里…ここでサンボルトを攻撃したら、スフィアードの効果で俺のライフは0だけど…俺のアームズエイドの効果で遊里のライフも0になるの?」

 

「ああ、なるほどな。」

 

《ダイガスタ・スフィアード》の効果はさっきの召喚時効果に加えて、ガスタが戦闘する際のダメージ反射と戦闘破壊耐性。

 

このダメージ反射がある状態でサンボルトを攻撃すればダメージ反射とアームズエイドの破壊時効果が同時に発動して引き分けになるのではないかと龍亜は言っているのだ。

確かに、同時にダメージが発生して引き分けになるような気もするが…実は、そうではない。

 

「まあ、これはたぶん中等部にならないと本格的にやらないから知らなくても無理はないぞ。龍可なら分かるかもしれないけど。」

 

「むぅ、どうせ俺の成績は下の上ですよーだ。それで、どうなるの?」

 

「まず、戦闘を行う時…つまりダメージステップは5つの段階に分けられる。ダメージステップ開始、計算前、計算時、計算後、終了時の順番だ。スフィアードの効果が適用されるのは計算時のタイミングなんだ。まずそのタイミングで戦闘ダメージが発生する。」

 

「うん…………うん?」

 

「……それで、アームズエイドの効果はモンスターを破壊して墓地へ送らなければならない。モンスターが墓地へ送られるのは計算終了時のタイミングだから、先にダメージを受けるのは龍亜だ。つまりこの状況なら攻撃したら龍亜の負けだ。」

 

「うーん、よく分からないけど俺が負けるのは分かった。…ところで、それって遊里からの攻撃でも……?」

 

「まあ、そうなるな。」

 

「……………あっ。」

 

説明を聞き、自分の手札を見て急に青ざめた顔をする龍亜。

なんというか、地味ダメージの積み重ねで絶望を見たような顔をしているが……ああ、なるほど。

 

「…攻撃を中断して、ターン、エンド……。」

 

まあ、つまるところこのままだと俺のターンの自爆特攻で龍亜が負けるわけで。

手札の中にその特攻を防げるカードがない=負け確定という現実に気づいてしまったわけだ。

 

「…ドロー。イグルを召喚してラジカッセンに攻撃!」

 

イグルの攻撃力は200、ラジカッセンは装備魔法で攻撃力3200。

イグルももちろんガスタに含まれるから、3000の反射ダメージだ。

 

「うわあああぁっ!?」

 

装備魔法で大幅に強化した攻撃力が、龍亜自身を襲う。

少し危ない気もしたが、ガスタらしい戦いができたな。

 

「龍亜。」

 

デュエルディスクを外し、龍亜の元へと近づく。

 

「結果は俺の勝ちだが、お前は確実に強くなってると思うぞ。」

 

「ホントッ!?」

 

「ああ、ビッグバンシュートもまあパワーツールとの相性は悪いが貫通を付与するのはガスタに対して有効な手段だし、ラジカッセンとアームズエイドのコンボも一歩間違えばこっちがやられていたしな。」

 

「へへ~、そうでしょ?俺も日々努力してるんだから!」

 

「………まあ、貫通効果を教えたのも私だけどね。」

 

得意顔の龍亜に感心していると、龍可から新事実が飛び出す。

事件ですよこれは。

 

「ちょっ!?龍可、それは内緒にって…。」

 

「ふふ、龍亜があまりにも得意げだから、つい。」

 

『まあ、これも二人の力を合わせて…ってことなのかな?』

 

『ちょっと龍可ちゃんの比率が高い気もしますけどね。』

 

ウィンダとラピスも集まってくる。

 

確かに、これはこれで二人の力を合わせて…ということか。

龍可が教えたとしても、それを使いこなしているのは龍亜の力だ。

 

確かに現状、知識は龍可に頼り切りかもしれないがいずれは……どうだろうな?

 

日々成長している龍亜の将来が楽しみになった…そんなデュエルだった。

 

「じゃ、とりあえず…課題を片付けようか。今日の範囲は儀式魔人だ。」

 

「うえぇっ!?マジ最悪じゃん…。」

 

まあ儀式魔人は俺も苦労したから。

 

 





龍可にデュエルをさせたいけれども、龍可のデッキとかどうしたらいいのだろう。
単純にシモッチバーンは面白くない(書いてて)。
なんとなく考えてはいるものの…?

あと氷室さんとか牛尾さんとかあの辺の初期しかデュエルしない組はまともなデッキになってないから考える必要がありますよね。牛尾さんは九期にゴヨウシリーズが増えたからまだしも氷室さんとかどうしろと…。

ま、出るかどうかは別として。
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