Phantasm Maze   作:生鮭

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 遅くなりました・・・
 というか3週間近く開きましたね。すいません・・・。
 こあの出番が少ない気がするけど後から出てくるし多少はね?

 ≪追記≫
 今まで投稿したものを最初からちびちび手直ししていく予定です。(改行とか)
 
 


れっつぱーりない

 

「パーティをやりましょう!」

 

 そう言ったのは誰だったか。

 

 ともかくその発言のおかげで紅魔館内でパーティが開かれることになった。紅魔館内とはいっても図書館内だけの小規模なものだ。

 それも当然で、この家では使い魔が解雇や、契約期間の終了によっていなくなることは日常茶飯事なのだ。

 だから小悪魔だけ特別扱いするわけにはいかない。しかし小悪魔とはカルラお姉さまとの鍛錬の間によく遊んでもらったし、色んなことを教えてもらった。魔術から勉強、料理までなんでもだ。

 だからこそ小悪魔が明日魔界に帰ってしまうというのを聞いたらすごく悲しくなった。今後絶対会えなくなるというわけではないと知っても長い間会えないのは寂しい。しかしお姉さまが言うには小悪魔の体の膨大な魔力に対する抵抗が元の状態に戻ればまた一緒に過ごせるらしい。それまでの辛抱だ。

 

 というわけで今回のパーティは小悪魔のお別れ会というわけだ。お父様はパーティをやることにあまりいい顔をしなかったが、お母様は料理を作ったり運んだりしてくれている。

 因みに参加者は私、小悪魔、カルラお姉さま、レミリアお姉さまの4人だ。お母様は基本的に給士を担当してくれるため参加者には含まれない。たぶん私達4人だけにしてくれようと気を遣っているんだろう。

 

 かなりの量の料理が図書館に運び込まれた。普段は使わないようなアンティークデスクに所狭しと並べられる光景は見ているだけで涎が湧き出てくる。

 パン、パスタ、カルパッチョ、サラダ、スープ、ビーフシチュー、ワッフルなどがこれでもかとばかりに積まれている。これ全部食べれない気がするんだけど・・・・・。

 

 最初になんの料理を取ろうかな、と考えていると図書館にに全ての料理が運び込まれたようで、赤ワインがなみなみと入ったグラスが配られる。

 

 なにげにお酒を飲むのは今日が初めてかもしれない。アルコールデビューだ。

 

 小悪魔がグラスを掲げる。みんなが倣ってグラスを手に持って掲げる。

 

「今日は私のためにパーティを開いてくれてありがとうございます。最後に湿っぽいのもアレですし、無礼講といきましょう!乾杯!!!」

「・・・なんであなたが音頭を執ってるのよ。主催は私なんだけど。」

「ご、ごめんなさい・・・」

 

 むくれながら文句をつけるレミリアお姉さまを見て呆れた。

 別に今日ぐらい小悪魔がやってもいいと思うんだけど。心の狭さが感じ取れるね。

 あ、このワイン美味しいかもしれない。

 

「お姉さまがパーティを取り仕切るのはこれが初めてらしいのよ。一度くらいやってみたかったんじゃない?」

 

 呆れる私を見てか、小声で教えてくれるもう一人の姉。

 

「なんていうか・・・・・意外と子供っぽいよね。」

「フランや私の前だと背伸びしているんでしょうね。」

「別にいつも背伸びしてなくてもいいのになぁ。疲れないのかな?」

「う~ん。・・・疲れてるからこういう場で素が出ているのよ、きっと。」

 

 素がどういうものか初めて見たので分からなかったが、精神年齢がいつもの半分ぐらいになっているというか、年相応な気がした。背伸びするのが疲れるなら自分たちといる間も気を休めてくれてもいいというのに。

 

「そういえばお姉さまは背伸びしているというより板に付いたというか、しっくりくるよね。」

「まぁ、ちょっとだけ当たってるかな。」

「?」

「・・・いや、気にしないで。そんなことよりパーティを楽しみましょう?」

 

 それもそうだ。なんたって今回は私達が主役と盛り上がるパーティなのだ。楽しまなきゃ損というやつだろう。 

 今現在背が縮んでしまっている姉を見てみると、音頭を取られた腹いせに一発芸を小悪魔に強要していた。小悪魔はやりたくないようだが。  

 う~ん、これはどっちサイドに付けばいいんだろうか。本来なら小悪魔側に付いてレミリアお姉さまをボコボコのけちょんけちょんにして妹に負けた悔しさで泣く一歩手前の顔を酒の肴にしつつパーティを楽しむのだろうが、ワインの酩酊感もあってか小悪魔の一発芸を見たいという願望が頭をもたげてくる。

 

「ねぇ、お姉さまはどっちがいいと思う?・・・って、あれ?ワインは?」

「あれちょっと苦手なの。だから今日は一杯だけにしてあとはこれね。」

 

 と言ってオレンジジュースが入ったグラスを軽く持ち上げる。

 いつの間に飲んだのかと視線で問い詰めると、お姉さまはすこしばつが悪そうに苦笑いしながら、

 

「・・・正直言うと一口だけ飲んであとは小悪魔に押し付けたんだけどね。」

 

 と言った。最初は何の事だが分からなかったが、思い当たることがあった。

 

「あぁ、『転移魔法』ね。」

「正確には少し進化して『空間魔法』ね。」

「なにが違うのかよくわからないんだけどかなり出鱈目よね、お姉さまのそれって。いつでも好きなものが取り出せて小物なら詠唱なしでもできるんでしょ?私だと魔方陣の過程を省くのも一苦労なのにすごいよねー。」

「何が違うかわからないって・・・パーティの最中だけど魔法の講義でもしようか?」

 

 パーティの最中に勉強というのは的外れな気がするけど、まぁ小悪魔とレミリアお姉さまはまだよろしくやってるし終わりそうにないから聞こうかな。

 

「いいよ、あっちも終わりそうにないし。」

「へぇ…フランがそんなにお勉強好きだとはね…姉として妹の好奇心が旺盛なのは喜ばしい限りだわ。じゃあ最初は空間魔法と転移魔法の違いについて話しましょうか。まず転移魔法っていうのは座標同士を繋げて一点に集約することを基本とした・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、つまり発酵の度合いによってできるお茶の種類が変わるんだね。」

「そう。私が知ってる中だと紅茶は発酵の度合いがかなり高くて口当たりがいいのはそのおかげと言われていたはず。」

「このワインはどうなの?」

「ワインも一応発酵させて作るものだけど果実をベースにしている点が紅茶とは違うね。紅茶は入れ方やむらし加減にこだわるとかなり味が変わるし、ワインは保存方法がとてもデリケートだから作るのは結構難しいらしい。今度作ってみる?」

 

 おっと、ついつい話しすぎてしまったようだ。まさか紅茶の製造方法にまで議論することになるとは。

 さすがに放置しすぎたかと残りの二人を見ると案の定むくれていた。正確にはむくれているのはお姉さまだけで小悪魔はそれを苦笑いで見ているのだが。

 

「私そっちのけで楽しそうにして妬ましい!もっと構いなさい!」

 

 普段なら絶対言わないような事を口走ったり、だいぶ顔が赤くなっていることからかなり酔っているんだろう。

 酔っている姿を見たことが無いからか新鮮で面白いのではあるが、あれは悪酔いの類に入るんだろう。これからはほどほどにさせておかないと、いつかなんかやらかす。

 まぁ・・・・・たまに羽目をはずす位はいいのかもしれない。

 いくら背伸びしても甘えたいときは甘えたいものなのだから。

 

「さぁ!まだパーティは始まったばかりよ!騒ぎまくりましょう!」

 

 正直苦手なワインの匂いや、連日の徹夜で疲れがMAXを通り越してオーバーヒートしそうなのだけれど、大好きな姉の願いなら仕方ない。疲れを紛らわせるために酩酊感を頼って新たなグラスを出し、ワインを一気飲みする。

 

 

 

 

 

 

 

「少し騒ぎすぎかもしれないわねっ・・・!」

 

 騒ごう、とは言ったがこういう騒ぎではない。

 こんな少しでも気を抜けば四肢がもげるようなものでは断じてない。

 まぁ、もげてもほんの数秒で完治するが。

 

「ほら、ほらぁ!避けないと危ないよぉ!」

「結構いい弾幕張るようになったじゃない、さすが私の妹といったところかしら。でも、当たらなければなんとやらってね!」

 

 フランのレーヴァテインをグングニールでいなし、横からぶち込んだ紅の弾幕はすぐにその場から飛びのいたフランによって図書館の壁に殺到する。その足取りは俊敏なようでどこか危なっかしさが見て取れる。

 

「まったく、だからワインはほどほどにしろとあれほど・・・・・」

 

 そういうレミリアは口の端を歪めている。負の感情等ではなく喜びや楽しさといったものでだ。所詮遊びの一環だ。酔いどれが本気になったところで吸血鬼が致命傷を負うわけでもなし。

 

「それにしても参加者2人を蚊帳の外にした上にこんなことしてていいのかしら?まぁ楽しいからやめるつもりなんてないんだけどね!」

「ふふふ・・・まだまだぁ~」

「危なっ!」

 

 ちなみに小悪魔は早々に被弾、カルラは酔っぱらって爆睡しているところに集中砲火をたたき込まれ下で伸びている。レミリアもフランほどに酔っぱらっているわけではないが、正常な判断ができない程度には酔っている。

 つまりこの修羅場を止める事が出来るのは誰もいないのだ。

 よって二人の遊戯はまだ終わる様子は無い。

 

 

 

 

 

「う~ん、気持ち悪い・・・・・。・・・おえっ・・・おろろろろろろろ」

「カルラが、カルラが吐いたーーー!」

「アハハハハハハッ!お姉さま、おもしろーい!」

「はい、水です!水を飲めば大丈夫です!」

「・・・んっんっ、ぷはぁっ!あ、ありがとう・・・少し楽になった気がする。」

 

 

 

 

 

「フランもいい弾幕張るようになったわね。良いセンスだ。まぁ当たらなければどうということはないんだけどね。・・・・・・・・・うぷっ。」

「レミリアお姉さまも同じようなこと言ってたよ。伸びてたから知らないとは思うけど。・・・というか顔色悪いけど大丈夫?やっぱり無理して模擬戦なんかするべきじゃなかったんじゃあ・・・」

「大丈夫よ大丈夫、本っ当に大丈夫。吸血鬼たるもの二度も醜態を晒すわけにはいかないっ!・・うっぷ。」

「本当かなぁ・・・。・・・そうだ、えいっ!」

「フランさんちょっと段々密度が濃くなってきてきついというか、重力が私の胃を絞りに来てるというか・・・。・・・っ!?おぼっぼぼぼろろろ」

「アハハハハハッ!もう、もうやめて、お腹痛い!」

「空中で吐くとは、さすが私の妹ッ・・・!」

「なんだこれ・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 結局パーティは一日を少し過ぎたあたりまで続けられた。

 

「むにゃむにゃ・・・・・・・・・」

 

 もっとも終わったわけではなく、吸血鬼組が疲れ果てて眠ってしまっただけなのだが。

 

「吸血鬼とはいえこうも無防備だと可愛いですね~。」

 

 小悪魔はあと数十分で契約が切れてしまう為寝るわけにはいかなかった。生きるための手段である契約は悪魔にとって何よりも大事なのだ。

 

「カルラ様ー起きて下さーい。」

「むにゃ・・・・んぅ?あー・・・こあ届けなくちゃいけないのかー。」

「そうですよー、あなたがいないと帰れないんですから。」

 

 寝起きだからだろうか。目を真っ赤に充血させながらだるそうにしている。

 

「やだー・・・面倒くさーい。」

「え、え?ちょっ困りますよ!契約の反故は私の沽券にかかわるんですから!」

「・・・・・・・・冗談よ冗談。・・・・・ふぅー、やりますかっと。」

 

 魔方陣を描きだす主人を見ながらこれからのことを考える。

 契約のストックはだいぶ前に切らしてるから新しいのを採らないといけないか。それまではなんとか食いつないでいきますかね・・・。

 

「ほら、できたよー。」

 

 お、できたっぽい。かなり早くできたんだなぁ・・・・・って、え?

 

「・・・もしかしてまだ寝ぼけてます?こんなだとまた来た時みたいに気持ち悪くなるんですけど!」

「真面目も真面目、超真面目。ほらほら、早くしないと()()に反するんでしょ?さっさと行きなさい。」

 

 ・・・なんかムスッとしてるし。

まぁ、なんだかんだ言ってもこの人との契約はここ数年見ないくらい好条件だったし、一年とはいえ思い出や感慨も思うところがある。

 

「んんっ、では。また機会があったら会いましょう。・・・お世話になりました。」

「じゃあ、さようなら。・・・また会えるといいね。・・・本当に。」

 

 歪に形作られた魔方陣は淡い水色の光を放ちながら魔力を高めていく。

 

「そうそう、忘れるところだった。・・・はい、これ。」

 

 ポケットから無造作になにかが放られる。

 ・・・・・なんだこれ?綺麗だな・・・。翡翠を使ったペンダント?

 訳がわからない私を見てか、少しイライラした様子が見える。髪をグシャグシャと掻きまわすと、

 

「・・・あー、次に会えるかどうかも分からないし餞別、餞別。・・・迷惑だったら適当に捨てといて。」

「捨てるだなんてそんな・・・。後生大事にさせてもらいます。」

 

 こんな嬉しいもの捨てるわけないのに。こういうものを渡すのに慣れていないのかもしれない。

 そうだ、こっちからもなんかあげるものないかな。・・・ポケットの中を探しても碌なものが入っていない。

 

「じゃあ、私からはこれをあげますよ。」

 

 私にとってはそこそこ大事なものだが、あのペンダントに釣り合うのはこれくらいしかない。

 長い間愛用していた桃色の蝶型の髪留めを外し、投げ渡す。

 

「・・・いいの?結構良いものでしょ?この髪留め・・・」

「いいんですよ、私もこの一年間楽しかったですし。」

 

 おっと、長話もここまでだ。魔方陣に魔力が充填され、転送される時間が迫ってきた。

 

「じゃあ、また今度。」

 

 また今度という言葉はあまり好きではない。会える事を言外に約束してしまっている気がするからだ。多少寿命が長いとはいえ形あるものがいつか壊れるように、命あるものはいつか死ぬのだ。それは自然の摂理と言うやつで絶対の理を持ち合わせている。

 そしてその終わりが『いつか』と表現できてしまう以上、約束を破ってしまう事が少なくない。そして悪魔という種族はそれを極端に嫌う。もちろん私も例外ではない。

 だが会えないと思っていては、会えるものも会えない。

 会えると思っていれば、会える、・・・・・気がする。

 ようは気持ちの持ちようなのだ。少しぐらい楽観的に見てもいいじゃないか。

 ・・・いいよね?

 転送される直前に手を振ると、少し驚いた顔をした後に振り返してくれた。

 

「・・・うん、また今度。」

 

 

 

・・・・・・・・・またいつか会う日まで。

 

 

 




 次回もあんまし早いとは言えないです・・・。

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