更新ペースを上げようと努力はしますが保証はできません。
なんか次回もゴールデンウィークとかになりそう。
・・・私は自分の『運命を操る程度の能力』があまり好きではない。
頼るにはあまりにも曖昧すぎるこの能力が嫌いだ。
運命を覗いてしまったがばかりに自分の行動に自信が持てなくなるこの能力が嫌いだ。
時には悲劇が起こると知っていながら傍観しなければならないこの能力が嫌いだ。
・・・そしてなにより弱い自分が嫌いだ。
小さな歪を恐れ、だれにも相談する事が出来ずに独りで抱え込むには大きすぎるモノ。
「・・・はぁ」
何度目かもわからない溜息を吐く。
カルラがハンターに怪我を負わされてからというもの、能力を前より頻繁に使用するようになった。
ここ最近は何事もなかったのだが・・・・・・見てしまった。
『私達が死ぬ』という運命を。
最初は何かの間違いじゃないかと思った。しかしその運命は何回見ても変わる事は無かった。その日は能力の使い過ぎか、はたまた自分の死体を何度も見たせいかぶっ倒れてしまった。家族には体調が悪いと伝えたが、怪しまれたかもしれない。
次にどう行動すればいいかを考えた。
この能力は操る事に本質があるわけで、運命を見る分には場面ごとにしか映る事は無い。あの運命の場面で見えた事は、赤いロビーに散り散りに横たわる両親と私達、散乱したガラス、壁にへばりついた多数の肉塊だった。ここからわかるのは、紅魔館内で戦闘があったことと死人が出た事ぐらいだ。
立てられる推測としては二つある。
一つはあまり考えたくはないが狂気による大量殺戮だ。そしてフランが加害者ということになる。
しかしあの惨状が狂気によるものだった場合疑問点が複数出てくる。両親、主に母がほとんどつきっきりでフランの狂気を抑えていたにもかかわらずなぜ起こってしまったのか。なぜ父の能力で制御しなかったのか、まぁこれはカルラにも言えることだが。最後になぜフランも死んでいるのか。これが一番の疑問だ。
もう一つは第三者による襲撃だ。第三者としては吸血鬼狩りや、近辺の町からの討伐隊などが挙げられる。
あとは無いとは思うが内部反乱か。しかしそれにしたって疑問は残る。両親程の吸血鬼ならば吸血鬼狩りなど恐れるに足らないはずなのだ。私達も前より格段に力を付けているからそうそう簡単にはやられないはず。それが全員殺されるとは考えにくい。
そして何よりあの運命には勝った勢いで乗り込んでいるであろうハンターたちの姿が映っていなかった。
ここまで考えて行き詰った。
情報が少なさすぎる。例え1を聞いて10を知る者がいても0.1から10を知る者はまずいないだろう。いたとしてもそれは私ではない。土台無理な話というわけだ。
しかし今回は二つの推測を絞る必要は無い。なぜならば共通している事があり、それこそが運命を決めているのだ。それは『両親が普段通りの力を出せなかった』ということだ。
両親が普段通りに力を持っていればフランの狂気を止められただろうし、吸血鬼狩りや討伐隊に殺される事もなかっただろう。つまりこの点を『両親が普段通りの力を出せる』という運命に導けばいい。
実に簡潔で、難儀な話だ。
だって前に母が弱っていたときはフランの狂気を抑えるために能力を多用していたせいだったのだから。
そしてそんな母を補佐する為に母程ではないにしろ父も能力を使っていた。つまり両親が弱っていたのは狂気を抑えるための能力の使い過ぎということになる。
しかしフランの狂気を抑えるのをやめてしまえば、あの運命が実現してしまう。
だがこの現状を変えなければ第三者達に両親が殺されるという運命さえ否定できなくなってくる。
極端な話、狂気を抑えるか否か、どちらを選んでもバッドエンドまっしぐらというわけだ。
・・・・・本当に難儀な話だ。
どうすればこの運命を変えられる?
どうすれば大切なものを失わずに済む?
どうすれば平和な日常を守ることができる?
困った・・・・・・・・。いくら頭をひねっても思いつかない。二度目の手詰まりだ。
いっそのこと誰かに打ち明けてみようか。運命を見たことから今に至るまで。
・・・・・いや、ダメだ。そんなことをしては運命にどう影響するかわかったもんじゃない。不確定要素は出来るだけ少なくするに限る。まぁこれ以上の悪い結末があるとも思えないのだが。
こんなふうに運命に干渉することに逃げ腰になっているのを感じると、あたかも自分自身が運命に操られている気になってくる。運命を操るとは名ばかりの、ありえる未来を見る事が出来るイレギュラーな能力を持つ私という存在。
そんなイレギュラーであるはずの私さえ運命という演劇に組み込まれているのではないかという錯覚さえ覚える。
タイムリミットがわからないことが余計に焦燥感を掻き立てる。あの運命が数年後か数ヶ月後か数日後かわからないのが辛い。
しかしそんな切羽詰まった状況でも私の脳は妙案を出してはくれない。
あぁ・・・・なんて私は弱いのだろうか。
◇◇◇
能力は一個体につき二つ発現すると、前に父から聞いた事がある。
二つといっても先に発現した能力の派生系としてもう一つが付随されるような形になるのだとか。しかし派生と言ってもその仕方にいくつか種類が存在する。そしてそれは能力の名前との関係性によって分かれる。
例えば母なら『精神的傷を癒す程度の能力』、『肉体的傷を癒す程度の能力』の二つになる・・・らしい。この二つの能力を持つことで『傷を癒す程度の能力』となり得ている。このときの因果関係は『二面性』という。癒すという抽象的な表現を二つの意味でとらえている。
例えば父なら『均衡を視る程度の能力』、『均衡を保つ程度の能力』の二つが『均衡を保つ程度の能力』を形作っているそうだ。これを『不可欠』という。基本となる能力を行使する為になければならないものだ。
フランも同様に『ありとあらゆるものの目を視る程度の能力』、『ありとあらゆるものの目を破壊する程度の能力』からなっている。
しかし私とカルラはまだ二つ目の能力が分からない。そもそもさっきから『らしい』や『そうだ』などあやふやなことを言っているがこれは能力の名前と違って、二つの能力が使えるという自覚が芽生える事が無いためだ。
だから普段何気なく使っているものが「アレ?それ能力じゃね?」みたいなこともあり得るのだ。
つまりその逆もあり得るわけで、能力だと思っていたものが何でもないものであったりする事もあるわけだ。これは一見どうでもよく思えてかなり重要な問題だ。自分能力を完全に把握していないという事は使い方の幅がそれだけ狭まるということにもつながる。
なので自分の能力を見極める事は生死に大きく関わると言っても過言ではない。・・・・・のだが私は十中八九『不可欠』になると思う。ただでさえ運命を操るというとんでも能力なのだ(使い勝手は悪いが)。見える事が操る事の付属とはどうしても考えにくい為、そう思うのだが決めつけは良くないだろうか?
『保つ』と『操る』は性質がとてもよく似通っている為、父の能力に対する考えや付き合い方が参考になる。強いて違う点を挙げるとすれば父は『視る』というより『保つ』方に能力が寄っているのに対し、私は『視る』方に大きく偏っていることや、そもそもの事象の違いだろう。いずれにせよあまり大差ない・・・と言えるだろう。
問題・・・・・というか重要なのは妹の方だ。
下の妹、フランについては前述した通りなのだがもう一人の双子の妹、カルラについては分からない事が多い。
・・・・・姉としては情けない限りなのだが、能力に関しては私以上に掴みどころがないというか抽象的が過ぎる部分が多い。というかまともに能力を使っているところを見た事が無い。どちらかというと空間系の魔法を使っている事が多いのだがまさかそれが能力という事もないだろう。
『対象を同格にする程度の能力』という名前との関連性さえ予想する事も難しい。最初は『不可欠』なのかと思ったが、カルラによると『視れる』わけではないらしい。かといっても『二面性』とも考えにくいので他の関連性かもしれない。
「はぁ--・・・二つ目の能力・・・・・ねぇ・・・・・」
頬杖をつきつつ、億劫そうにつぶやいてはいるが彼女も考えてはいるのだと思う。たぶん。
「なんか兆しとかないの?こう、ビビッ!とくるとか」
「特にないわね。・・・・・大体レミリアが自覚できないって説明してたのに。」
それはそうなんだけどねぇ、じゃあ無理じゃない、という押し問答を幾度となく繰り返していた。
今は本格的にカルラの根城と化している図書館にてチェスに興じている最中だ。最近は毛布を持ち込んだり、自分専用紅茶セットを持ち込んだり、挙句の果てには自室に二週間近く行ってないという。しばらく部屋を覗いていないがもぬけの殻だろう。もうここで生活すればいいんじゃないかな。
カルラは自分の事に少々無頓着なところがある。普通、自分の核とも言える能力には無関心であるはずがないのだがカルラの言動にはどうもその傾向がにじみ出ている。
「じゃあ新しくできるようになった事とかは?」
あ、ビショップが―――――――
「出来るようになったことねぇ・・・」
おお、危なかった。あ、ナイトが―――――
「空間魔法がまた進化したことぐらいかな。地球上の緯度と経度を正確に割り出して魔道具、まぁ出来るだけ魔力の保有量が大きいものを媒介にするとその座標に転移出来るようになったね。」
「それはまたすごいわね・・・。さしずめ座標転移といったところかしら。あなたの空間系魔法はどこまで伸びるのかしらね」
「・・・そ、そんなにすごいことじゃないよ。少し前回の術式を応用しただけだし・・・。まぁそれに比例して体内の魔力の最大量が増加したのは良かったけど。」
こころなしか頬を上気させて嬉しそうにするカルラを見つめていると、ふと気づいてしまった。
「・・・・・カルラ、あなたその傷どうしたの?」
髪に隠れてよく見えなかったが、額の端から端に掛けて一閃したような傷があった。
「ああ、これ?・・・・・一週間ぐらい前にフランの『アレ』があったでしょ?」
『アレ』は狂気による暴走の事だと察する事が出来た。緘口令が敷かれているわけではないが、フランの狂気については話題に上がる事のない暗黙の了解のようなものが紅魔館内にはあった。
「そのときに・・・・・ちょっとね、そんなに大事じゃないし放っておいたんだけど」
「ちょっとって・・・、というか私が言いたいのは傷痕が残っていることよ。昨日今日なら兎も角、一週間前のが治らずに残っていることが不思議なのよ」
カルラは少し思案する顔を見せたがすぐに吹っ切れたように、
「まぁ確かにそうなんだけどね。身体にもあまり不調は見られないし問題ないかなって」
と返してきた。確かにそれなら問題ない・・・訳がなく、吸血鬼の治癒力で外傷がいつまでも残るのはどう考えてもおかしい。異常だ。この現象を治癒力が弱まっていると考えるのか、別の何かが原因なのかは判断のしようがない。
それとも回復に使う妖力がなかったのだろうか。疲労がたまっていたり、十分な休息がとれていなかったりすると妖力が十分に回復しない事がある。
最近はあまり寝ているところを見なかったり、眼の下にクマが目立つ事からそっちの可能性が高い。体が私に比べて弱いところがカルラにはあるから普段から睡眠はとっておくように言っているのだけれど・・・・・、
「・・・カルラ、前も言ったと思うけどしっかり休憩だけはとりなさい。研究もいいけどあまり根を詰めすぎると体に毒だわ」
「・・・ふふっ、わかってるレミリア。ただ最近研究の進みが良くてねぇ、ついついやっちゃうんだ。」
「はぁ・・・・、それで寝不足になってりゃ世話ないわ」
全く懲りていない様子のカルラをみて思わず溜息が漏れる。
「じゃあまた様子を見に来るわね」
「ねぇねぇ、チェスしに来たんでしょ。まぁあと数手でチェックメイトだけど」
「なんのことかしら?私は妹の体調の確認に来ただけよ」
意地の悪い笑みを浮かべたカルラを振り切って、図書館を後にする。
・・・・・可愛い妹だけれどときどき悪魔に見える。まぁ間違っていないのだが。
◇◇◇
最近体の調子がやけにいい。
一週間近く万全の体調を維持できていると思っている。思っているというのは姉から見ると私は休憩を取らなければならない程悪く見えているらしいのだ。目の下のクマなどは分かってはいたが、精神的にはまだまだ疲れることなく動けるような気がする。
言うなれば、最高にハイ(精神的に)って奴だ。
「負けず嫌いの姉妹をもつと大変・・・・」
他人事の様につぶやきながら、チェックメイト寸前のチェス盤を片していく。片す時にも、転移魔法を使い元あった場所に戻しておく。魔力が増幅したことによってあまり使える回数を重要視しなくても良くなってきた。
ふと、今ある魔力で何回ほど転移魔法が使えるのか試してみたくなった。
「なにか使える物・・・・。」
別に何でもいいのだが、なんか初めて限界を試すとなるとこだわりたくなる。出来るだけ何回使って本来の用途に不備が出ないようなものがいいのだが、そうなると魔力を多く流せるものが適しているがそんなものは早々多くない。・・・そうか、アレがあった。
「壊れないとは思うけどどうだろう・・・・。」
そっとナイトキャップにつけていた髪飾りを取り外す。小悪魔にもらったコレには魔力を多く流す事が出来る。それを利用して今回の耐久試練に使おうという魂胆だ。
場所は部屋の端の本棚の上と机を往復でもしようか。十数メートルはあるはずだ。
「まず一回目・・・・・」
何の問題もなく成功した。二回三回と繰り返しても問題は無かった。
「まぁ、まだ余裕ね」
が、五回を超えたあたりで息切れが起き始めて、十回を超えたあたりで腕を動かすのも困難になってきた。
「はっ、はぁっ・・・・・、はぁっ・・・・・、こ・・れで・・・十二回目・・・・・」
髪飾りは転移する事無く机の上からも微動だにしなかった。魔力は微量ながらも確かに流せることから髪飾りの器は健在であることが分かる。
どうしようもない倦怠感が身体を包んでいくのが目に見えるかのように実感できる。
正真正銘の魔力切れだ。
・・・・・一日も寝れば治るだろうか?こんなに使ったのが初めてだったのでよく分からない。
意識しなくても自然に閉じようとする瞼を開いて、どうにかソファまでたどり着くと身体を投げ出すように飛び込むと安心したからか意識が遠のいていく。
そこらへんに突っ伏して寝ていると、姉が酷くうるさく叱ってくるのだ。心配されているからこそなのだと思っても、叱られるのは勘弁なので寝る場所も考えものだ。などとどうでもいい事を考えているうちに深い眠りに吸い込まれるように瞼を完全に閉じた。
終わりも雑ですし、展開も雑ですね。
言い訳のしようもない(汗)。これが私の語彙力の限界です。