Phantasm Maze   作:生鮭

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作「GWに二話投稿すると言ったな」
読「そうだ馬鹿!もう過ぎてるじゃないか!」
作「あれは、嘘だ(震え」

 本当にすいません。書く時間が無かったわけじゃないですけど書き方にだいぶ悩んだというか・・・・・その分前回の二倍以上にしてあるんで・・・・・実質二話投稿した感じに(チラッチラッなりませんねごめんなさい。


姉妹喧嘩(ガチ)

 頭が酷く混乱している。

 

「フラン・・・・・?」

 

 何故フランがここにいる?部屋で寝ているはずでは?両親はフランが部屋では無く此処にいる事を知っているのか?何故倒れている?この血は?そもそもこの部屋は何だ?

 

「フラン・・・・・ッ!!」

 

 良かった・・・・・外傷は見当たらないし、息もあるから気を失っているだけの様だ。

 

 安堵すると、大量の疑問符が脳内を埋め尽くしていく様がいったん収まる。しかしさっき右から左へ流れていく疑問符の中に、なにか今大事なものがあった気がする。

 

 ・・・・・なんだ?・・・・・血、そうだ、血だ。倒れているのはフランだが血の匂いはまぎれもなくカルラのもの。つまりこの部屋の中にはまだカルラがいる。ソファーがぽつんと置いてある殺風景な部屋で、あと見ていない場所はソファーの影になっている私の位置からは死角になっている部分だ。

 

 見たくない、見たくない、確認したくない。

 

 身体が、心がその先を見ることを拒絶する。

 

 脚が震え、呼吸が荒くなり、自分の心臓の鼓動が聞こえてくるようだ。

 

 グチュ、グジャ、グチュ、グチュ。

 

 震える膝を必死に抑えゆっくりと歩き出す。最悪の想像が頭を離れない。ソファーの縁から覗きこめばいいものを、わざと回り込むように歩く。意味の無い事だとわかってはいるが、仕方ない。

 

「・・・・・カ、カルラ?」

 

 

 見てしまった。私の予想と一寸変わらぬ姿がそこにはあった。

 一瞬本当にカルラかどうか疑うほど衣服は血で変色し、左腕は既に無く、心臓のあたりが大きく抉れ鮮血に染まっていた。

 

 

「あっ、ああっ、ああああぁぁ!」

 

 

 

 そして呼吸は、止まっていた。

 

 

 

「なんでっ!、どうしてっ、こんな・・・・・!」

 

 頭の中が真っ白になった。そして次の瞬間には今見た光景が頭を離れなくなっていた。むせかえるような血の匂い。無造作に引きちぎられたかのような左の肩口。血の独特の言い表しようのない赤色に染まったカルラ。そして色を映しているかも定かではない虚ろな瞳。そのすべてが脳裏に焼き付いて離れない。

 

・・・・・グチャ。

 

 そんな唐突に、そんな突然に、何故・・・・・?

 理解できないし、したくもない。何も考えていたく無いし、夢であって欲しいと心から思った。

 

・・・・・グチュ。

 

 ()()から目を背け、蹲る。これは夢だ。こんなことが起きてしまうのは夢だ。そうに違いない。なんで私だけこんな思いをしなければならない。早く覚めろ。もしこんな()()が現実だとしたら、こんなの・・・・・こんなのーーーーーー

 

・・・・・グジュ。

 

 

 

()()()()トカ、オモッタ?」

 

 

 

 嘲るような声が部屋の中を反響した。背筋が凍りつく。この声はフランだ。間違えるはずもない。ただ少しカタコトで、拙く、不安定な声はフランのものだけどフランでは無い。しかし私はこの声を知っている。かれこれ二十年以上の付き合いだ。

 

「運命ヲ操レルノニ()()()()トカオモッチャ、ダメダヨ?」

 

 呼吸をするのも忘れ、人形のようにぎこちなく立ちあがりゆっくりと振り返る。

 そこには同じぐらいの背丈で、私のとは色違いのナイトキャップをかぶり、棒状の翼手に棒状の八色の宝石を付けた翼とは言い難いものを揺らしているフランがいた。

 見慣れた姿ではあったがよく見ると微妙に違う。いつもは愛らしいと思える緋色に染まった双眸は、赤黒く淀み虚ろな眼になり変っていたし、着ている服は元の布地なのか返り血なのか判別が出来ないほどにただただ真っ赤だった。

 

「ふぅ・・・・・」

 

 自分の予想と寸分たがわぬ姿を認め、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。即座に頭を切り替えて目の前のこの存在をどう対処するか考える。

 

 私達、吸血鬼を含む妖怪は精神に重きを置いているので、精神が不安定なままだと本来の力を発揮する事が出来ない。この化け物には調子を万全に整えても勝率があまり高いとは言えないのに、不安定なままでは生き残れるはずもない。

 

 

「・・・・・()()()()()

 

 

 そう、彼女は狂気。フランドールの内に潜む病巣で、紅魔館の住民を幾度となく殺してきた悩みのタネだ。

 

「これは、貴女がやったの?」

 

 心の中に煮え滾る、黒く激しい感情を抑えながら問う。

 

「コレッテ?」

「・・・・・言わなくても分かるでしょ?」

 

 巫山戯るような口調にいら立ちが募る。身体はフランだとわかってはいても沸々と湧いてくる殺気を抑える事が出来ない。

 

「・・・・・モシ、ソウダト言ッタラ?」 

 

 手を前にのばし、床を思いっきり蹴る。フランの首を空中で掴みながら壁に突っ込む。

 

「グッ・・・・・!」

「殺すかもしれないわね」

 

 壁に押し付けたままギリギリと締め付ける。

 しかし次の瞬間、なんの前触れもなく首を掴んでいた右腕が破裂した。

 

「・・・ゴホッ、ゴホッ、ゲホッ、・・・コノ身体ハ大切ナ人ジャナカッタノ?」

 

 締めあげられていた首を抑えて、咳き込みながら問いかけるのを止めない。

 ・・・・・思えばさっきから疑問を投げかける事しかせずに攻撃してこようとはしなかった。今のはどちらかというと正当防衛にあたるからノーカンだろう。今までは何も聞かずにひたすらこの子(狂気)を抑えるのに専念してたから、コミュニケーションに飢えているのかもしれない。

 

 もしそうだとしたらかなり幼稚な考えだ。

 

「・・・・・貴女かなり能力を正確に扱えるのね。それと、さっきの質問に答えるなら、フランがこのくらいで死ぬわけ無いじゃない。・・・・・信頼しているのよ」

「ソレハソレハ、・・・・・随分ト歪ンダ信頼ネ」

 

 かと思えば意味ありげなことを言ってくる。話し方や発音や話す目線、全てにおいて不安定さを感じる。

 

「それはそうと、どうなのよ。貴女がやったの?」

「サァ?」

 

 再生し終えた右手にグングニルを握らせる。しかしグングニルを握った右腕は微かに震えている。

 

「ヤッパリネ。表面ハ取リ繕ッテテモ、マルデダメダネ」

「・・・・・っ!うるさいわねっ!、妹を殺されて平気なわけ無いでしょっ!」

 

 何を言っているのかコイツは。カルラはもう戻ってこないのだ。そんなときに冷静にしているというのが土台無理な話である。感情が昂ったことでグングニルを模っていた魔力が霧のように離散していくのを感じながら、飛び出した言葉は止まらない。

 

「あなたがっ・・・・・いくら貴女がフランの体を盾にしようとっ・・・・・フランには悪いけど憂さ晴らしさせてもらうわ」

 

 本当に最低な姉だと思う。いくら精神が別物だとはいえ、妹を鬱憤を晴らすに使うのだ。しかしどうしようもないではないか、フランを殺す事は私にはできない。この狂気をフランから離すためには、私は時間が解決する以外の方法を知らないのだ。

 

「チョットマッテヨ。他ノ二人ハ私ダケドソコノ子ハ知ラナイヨ?」

「・・・・・は?何を言って・・・・・?」

 

 他の二人?まさか、館が妙に静かすぎたのは・・・・・

 

「エ?イタジャン、貴女以外ニ私ガ出テクル度ニナンカ押シ籠メテキタ二人ガ」

 

 まさか・・・・・そんな・・・・・

 

「私達ヨリ大キイ背丈ノ男ト女ノ吸血鬼ガ」

「そんな・・・・・お父様とお母様も殺したの!?」

「・・・・・ヘェ!貴方達ッテ家族ダッタノネ!道理デ血ガ格別ニ美味シイノネ!」

 

 吸血鬼が同族の血を好んで口にするとは聞いたことが無いが、こいつを常識に当てはめてはならない。

 

 すでに脳が沸騰寸前にまで煮え滾っているが、今まで育ててくれた両親と妹の死を心の底に深く押し込み考える。父と母が死んだ今、紅魔館内は私とフランだけになってしまった。昨日までは両親が使役していた使い魔が多くいただろうが、契約者を失うと同時に使い魔は契約内容が消滅したとみなされ魔界へ強制送還されてしまう。私達は使い魔を雇っていないので、本当にこのだだっ広い建物に2人というわけだ。

 

 つまり紅魔館は私が知っている数十年間の中で最も無防備な状況にある。

 ・・・・・本来ならば即興の抜け穴だらけな契約でもいいから一時的に使い魔を増やさなけばいけないのだが、このフランを前に魔力をそっちに割く余裕なんてものは存在し得無い。

 

 ならば今することは。できることは即急な目の前の狂気の鎮静化だ。

 使い魔を増やしたり、紅魔館内の防衛の強化は後回し。魔力が回復してからゆっくりとやろう。・・・・・それに家族の弔いも済まさなければならない。

 

 そこまで考えたところで突如左足が破裂して飛び散る。

 

「ぐっ・・・・・!」

「サッキカラ黙ってるケドサー、私ハ貴女ニモ恨ミガアルノヨ?」

 

 厭味ったらしい笑みを浮かべ、右手を閉じては開き、閉じては開きを繰り返している。

 

 右足、左腕、右目、再生し終えた右腕、左肩、再生途中の左足。

 

 再生される端から破壊しつくされバランスをとる為に浮く事すら気力が割けない。吸血鬼は再生能力が高いとはいえ、無限では無く限度がある。

 

 そして少しとはいえ時間がかかる肉体の再生と、『眼』を見つけ手のひらを握るだけで起こる破壊ではどちらが早いかなど明白。こちらは作り直しては壊される無力感に精神的疲労が溜まる一方なのに対し、相手はただ何の感慨も、気力もなく照準を合わせ破壊していく。

 

 いや、もしかしたら照準を合わせる必要などなくただそこらへんにあった『眼』を適当に、玩具でも扱うかのように乱雑に潰しているだけかもしれない。

 

 右手だけを集中的に、一瞬で直し床を全力で殴りつける。それだけで大きな揺れが部屋全体を襲い、一瞬遅れ床にひびが入り陥没する。

 退屈そうな表情を浮かべていたフランの顔が楽しそうなものに変わる。

 

「ナンダ!マダ動ケルジャナイ!」

 

 そして次の瞬間には右手が無くなっていて。身体を包み込む倦怠感が一層増していく。

 

 しかし絶望する事もなければ、無気力になるわけでもない。

 この状態のフランに勝てると私が思っているのには勝機があるからで、それを実現させるにはいかに無駄な抵抗だろうと必要な事なのだ。

 本来、私一人の力量では勝機などというものは皆無に等しい。父や母の能力によって抑えつけるか、カルラも一緒になって実力行使によって気絶させるしかなかった。それを私のみで行うには無謀が過ぎるというものだろう。

 だが相手にもそれは分かっていて、だからこそ『慢心』という幼い強者が故の心の隙間を作ってしまう。

 

 私に実力の差を見せつけつつ()()()()()()()

 

 絶対的な破壊力を持つ能力で心臓や頭部、他の臓器や首の頸動脈を執拗に狙えば、直ぐに死んでいる事だろう。しかしそれをせずにいくら潰しても壊しても千切れても問題ない手足や肩を狙う事から、冗談ではなく本当に玩具と見ているのではないかと思ってしまう。まぁだからこそ『体力切れ』や『魔力切れ』を狙った戦い方ができるわけだが。

 

「・・・・・ははっ、戦いと言えるのかしらねこれは・・・・・ぐあぁっ!」

 

 自分の弱さに辟易していると、今までとは比べ物にならない痛みが襲ってきた。脇腹が半分ほど抉れているのが痛覚を通して伝わってくる。

 

「ツマラナイツマラナイ。少シ遊ベルカト思ッタケンダケド」

 

 顔にかかった返り血を拭いもせず、心底つまらなそうな表情をして歩いてくる。

 

 まずい。背筋を冷汗が伝う。脇腹といった内蔵の集まる部位を破壊したところを見るにだんだん飽き始めている。多量の出血が意識を朦朧とさせる。この傷を塞ぐには時間がかかりすぎる上に、直すことに集中するとフランに殺されかねない。しかし先ほどの様な時間稼ぎを出来るほどの余裕もない。

 

 だったら―――――

 

「・・・・・フラン、少しお話しましょう?」

 

 口で持ちこたえるとしよう。

 

「ウーン・・・・・イイヨ!オ姉サマトオ話シシタ事ナカッタカラネ!」

 

 フランが歩み寄ってくる足を止め、近くにあったソファーに腰掛ける。

 よかった、これで何とか治癒まで時間を稼げ―――

 

「タダ、直スノハナシダヨ?」

「・・・・・?ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 脇腹が焼けるように熱くなっているのを感じる。こいつ・・・・・!また脇腹を・・・・・!やばいやばいやばい!これ以上は死ぬ。

 

「フゥ――――――ッ、フゥ―――――ッ、・・・・・カハァッ、ハァッ」

「アハハハハハハハハッッ!良イ声デ啼クノネ、オ姉サマァ!」

 

 歪んだ笑みを浮かべ、狂ったように笑うフラン。

 ふぅ、この痛みは慣れる事はできない痛みだ。重要な部位が集まっているのもそうだがいかんせん出血が激しい。治さないわけにはいかないのだが、フランに気付かれないようにやるのは難しい。

 

 でもなんども破壊されて(こわされて)きたからか、『眼』について分かった事がある。要は物体の急所のみが『眼』にあたり、それ以外は握りつぶすことはできないのだろう。だったら話はそれほど難しくは無く、『眼』であろう部分以外を見極めて治していけばいい。

 破壊されている中だと『眼』にあたる部分は・・・・・ここだ、腎臓のすぐ近くにある動脈がそれに当たると思われる。幸いにも腎臓に傷は付いていないようなのでこの部分を避けて治していく。

 

「デモ、何ノオ話シスルノ?」

 

 歪んだ笑みを崩さないまま、ふと思ったかのように聞いてくる。

 

「ハァッ、ハァッ、・・・・・そうねぇ、『理不尽』について話さない?」

「『理不尽』、『理不尽』ネェ・・・・・、ソウ!貴女ニ言イタイ事ガアッタノヨ」

 

 知っていた。だからこの話題を選んだのだ。

 

「貴女、『運命』ヲ操レルノヨネ?」

「名前ほど便利なものではないのだけれど・・・・・ある程度はね」

 

 肘掛けの部分に腰掛け、両脚を手持無沙汰にブラブラ揺らしながら聞いてくる。

 

「ソンナ貴女ガ理不尽ヲ語ルナンて可笑シナ話ダト思ワナイ?」

「・・・・・どうしてかしら?」

 

 負傷した側の脇腹をさりげなくフランから見えないように体勢を調節しながら聞き返す。

 

「理不尽ッテイウノハ筋ニ合ワナイトカ理屈ガ通ッテ無イ時ニ使ウジャナイ?デ、『筋』ッテイウノハ『道』ニモ通ジルトコロガアル。王道、正道、邪道トカネ。・・・・・デモ、オお姉サマノ持ッテイル運命ヲ操ル能力ニハソレラヲ覆スホドノ(ちから)ガアル。邪道ヲ正道ニ、正道ヲ邪道ニスル(ちから)ガネ」

 

 そこで一息つくと、口元を僅かに歪める。

 

「・・・・・フフッ、ダカラ可笑シインダヨ。ソンナ世界ノ『理』ヲ根底カラ無視シテ、捻ジ曲ゲ、破壊スルヨウナ能力(チート)ヲ持ッテイルノニ理不尽ニ嘆クオ姉サマガ。コンナノ理不尽ダ?笑ッチャウネ。理不尽サエ起ラナイヨウニ作リ変エテシマウ事ノデキル代物ジャナイ。ソノ能力ハ」 

 

 ・・・・・妖力と魔力もだいぶ回復したし動脈以外の修復も終わった。後は一気に動脈を修復し、楽しい楽しい傀儡になりきり、ひたすらフランが魔力切れを起こすまで耐えきるだけなのだが、勘違いを一つ解かねばなるまい。

 

「貴女・・・・・今夜は随分と饒舌なのね。それとその解釈は過大評価が過ぎるわ。私の能力は世界を塗り替えるような大したものではないし、そりゃぁ理不尽だって感じるわよ。大体・・「ソレダッタラ!」・・・なによ?」

 

 強い声で遮られて不思議に思いながらも聞き返す。

 

「尚更滑稽ネ。明確ニ否定シナイッテコトハ、出来ルコトニハ出来ルンデショウ?ソレデモ変エラレナカッタラ嘆クノデハナク自分ノ努力ヲ誇ッタリ、自分ニ厳シクスルト思ウノ。デモオ姉サマハ嘆イタ。自分ニ降リカカッタ災厄ヲ。ツマリソレハ――――」

 

 ずっとしゃべり続けるフランを前に、私は口をはさむ事が出来ず喉は干上がっていた。

 

 

 

「貴女ハ本気デコノ災厄(理不尽)トイウ運命ヲ避ケヨウトシテイナカッタノヨ」

 

 

 

 いやに今の声がこの狭い空間に響いた。

 

「そんなこと・・・・・ないわ・・・・・」

 

 それ以上の否定の言葉が出てこない。もっと否定したい、否定しなければいけないのに根拠が出てこない。何を馬鹿なことを、と一笑に付してやりたいのに、

 

 

 言葉が出てこない。

 

 

「フフフッ・・・・・サテ、話ハココマデ。サッキノ続キト洒落込ミマショウ?」

 

 

 言葉に詰まる私を気にすることなく、また一方的な蹂躙が始まる。

 さっきのような命にかかわる部分を狙われる事は無くなったものの、最初に比べると危険が増しているのが分かる。能力によるものだけではなく、殴る、蹴るなどの肉弾戦になりつつあるのだ。

 まぁ能力ではないぶん回避行動が取りやすかったりするのだが、それさえ楽しんでいる節がある。どうせ私が足掻いているのを潰すのが楽しいとかそんな理由だろう。

 しかしそんな中でも私の頭は正常に動いているとは言い難かった。フランの言葉がぐるぐると脳内で繰り返し再生される。

 

 本当に私は努力をしたのだろうか?これ以上ないくらいに、自分自身になに偽り一つなく全て出し切ったと言えるだろうか?・・・・・私は家族を本当に助けたかったのだろうか?

 

 そんな思考が身体の動きを鈍らせ、避けれるものも避けられなくなってくる。

 フランの鋭い蹴りを身体の捻って避けようとするも完全に回避するには至らず、背中を掠めていく。

 当たらなかった事に安堵する間もなく、鳩尾に向けて破壊力満点、当たれば内蔵の一つや二つ破裂するであろう拳が迫る。思わず両手を交差させて少しでもダメージを軽減させようとするが、その拳は私の両手の骨をミシミシと軋ませながら巻きこんで、鳩尾へと突き刺さる。

 

「――――ッ!?グボァッ!」

 

 心臓を直火で焼かれたかのような熱さと激痛が襲う。決して少なくない量の赤い液体を床にぶちまけながら倒れ込む。空気が上手く体内に入ってこないどころか、吸い込む事さえ容易ではない。

 

「コンナニ床ヲ汚シチャッテ・・・・・。オ仕置キガ必要ナヨウネェ・・・・・、フフフッ」

 

 心底楽しそうに嗤うフラン。もう、私では止められない。

 

「コンナモノカシラネ?」

 

 次の瞬間、視界が真っ赤になり思わず目をつぶってしまう。今度はどこが破壊されたのだろうか?そして恐る恐る眼を開けると、左目はまだ真っ赤な床を映していたが右目に違和感があった。

 

 手を当ててみると見事に右の眼球だけ、周りの視神経や肉は傷つけずに破壊されていた。

 

 痛みにはもう慣れたが、視力が実質片目のみになってしまい視界が安定しない。足元がふらつき立つ事もまともにできやしない。まずい・・・・・こんな状態じゃ格好の的だ。

 

 これ以上の出血は、良くない。しかしどのように攻撃が飛んでくるかわからない私は、ただ気配を探るしかなかった。目を瞑り意識を集中させ、少しの変化も逃さないように待つ。

 

 グジュ、ズブッ、グチャァ、

 

「グッ・・・・・!カ、ハァッ!」 

 

 連続的に3つの音が聞こえたかと思うと、直後に呻き声が聞こえた。

 

 ドサッとなにか重いものが床に落ちる音がした。

 

 おかしい、来るはずの攻撃が来ない。

 

 ゆっくりと左目を開くとそこには、

 

「お、はよ、う・・・・・レミ、リア」

 

 心臓から手が突き出ているフランと、赤に染まったその手を静かに引き抜くカルラがいた。

 

 




 前書きでも書きましたが、投稿が遅くなった事ごめんなさい。
 次は五月下旬ですかね、と見せかけ遅れるのを見越して六月にしときます。

 現実でレポートが内容は満点だったのに文法とかで最低ランクにまで落ちて結構落ち込んでいる今日この頃です。

 文章力なんて無かったんや・・・・・(呆れ

 7000字オーバーのを書いて自分スゲーと悦に浸っていましたが、よくよく見返すと過去にも7000字超えているのをみて落ち込んでいる今日この頃です。

 前の自分良く書いたな・・・・・(呆れ

 次回はもっと頑張りたいものです。

 最後に、例大祭楽しかったです。

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