Phantasm Maze   作:生鮭

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十話から十一話の間に起きた事。

矛盾点は次回に説明回を投稿します。


行間

◇◇◇

 

 

 久しぶりに良く寝た・・・・・と思う。

 

 何故こんなに曖昧かと言えば、起きた後に感じるスッキリ感が無いからだ。どちらかといえばもう一回寝たいという堕落的な考えの方が先に来てしまう。

 良く寝た・・・・・というのは暦の上での話。何月何日の何曜日とか明確には決まっていない為、春とか秋とか季節でしか時間を表す事は無い。あとは昼とかティータイムとかは体内時計だがかなり正確な気がする。

 しかし一日が太陽が昇る事によって始まり、再び太陽が昇るまでなのに変わりは無いので、いや吸血鬼なのだから月を基準にするべきだろうか?まぁいいか。月の角度を別の日に、同じ時間に計測する事によって何日後かを知るのはそう難しい事ではない。

 

「3日か・・・・・」

 

 前にその月の角度を利用した日付付き時計を作ってみたが、あまり必要とする機会がなかった。だが今回に関しては有難い。時間に追われる事のない日々では意識することが無いのだが流石に一週間何も食べないのはまずい。でも3日ならまだ大丈夫だ。このまま起きるのも億劫だしなぁ・・・・・よし、寝よう。

 

 落ち着いて寝る為にすこし体勢を変える。

 

「んんっ・・・・・いでっ!」

 

 首の筋に鋭い痛みが走る。・・・・・どうやら長い間寝すぎたのか寝違えてしまったようだ。確認の為に首を回す度に痛みが伝わってくる。そりゃあこんな寝心地の悪そうな所で3日も寝ていればそうなるか。なんだって床で寝ようと思ったんだか・・・・・。・・・・・ん?床?確かソファーで寝てたような。寝相が悪くて落ちたとしたらさしもの私でも起きるだろうし・・・・・。

 

 兎に角、どこか寝る場所がないかと辺りを見渡すと

 

「はぁ!?」

 

 なんかすごい荒れていた。泥棒が入ったんじゃないかってぐらいの有様だった。本棚が所々倒れていて中には、辞書のような分厚い本が飛び出ているものもある。この図書館の光源には壁に取り付けられた照明と天井に数個のシャンデリアがあったはずなのだが、シャンデリアが明らかに少ない事やガラスが飛び散っていることから落ちてしまったのだとわかる。

 

「なんじゃこりゃ・・・・・」

 

 思わず呆れた声が漏れる。ここで何が起きたかを考えるより、今の惨状を脳が正常に認識できていない。

 しばらく立ち尽くしてからとりあえず掃除をしようと思い立つ。正確に何冊あるか把握すらしていない本全てに強力な防護魔法をかけれるはずもなく、丁寧に扱わなければただの本と変わらないのだ。少し丈夫な材質で出来ているくらいの認識でいい。

 

「はぁ・・・・・」

 

 どこのだれがやったかは知らないが、いい迷惑どころの話ではない。超大迷惑だ。一応こんなに蔵書数があってもどの本をどこにしまうかなどは厳密に決まっていて、十年近く此処を使ってきた身としては決しておろそかにしていい部分では無い。見たところ飛び出している本は傷ついている様子は無い。あまり派手に散らかされなかったのか、防護魔法が思った以上にいい働きをしてくれたのか。

 

 ただ・・・・・その飛び出している本が本棚に換算すると二十近くあるのが問題だ。一つの本棚に平均して三十ほど詰まっているので冊数にすると六百か・・・・・。一冊一冊を戻す手間はそれほどでもないのだが六百冊戻すとなるとかなりの時間がかかる。

 

「やりますかぁ・・・・・」

 

 いまにも寝てしまいそうな身体を無理やり起こしやる気を絞り出す。逆に考えるんだ・・・・・新しい本との出会いがるかもしれないと・・・・・。うん、無理。まぁちまちまやっていきますか。

 

「っと・・・・・。その前に・・・・・」

 

 先にご飯を済ませよう。キッチンにでも行けば食べられそうなものが一つぐらいあるだろう。どうせならフランかお姉さまでも誘って・・・・・。

 

「痛っ!―――――ッッ!?」

 

 もの凄い痛みが足の裏に伝わってきた。どうやらシャンデリアの破片を踏んでしまったようで、多少の出血が確認できた。かなり痛い。若干涙が出てきた気がする。いくら身体が少し丈夫とはいえ痛いのには変わりないのだ。

 

 あぁ・・・・・折角今からご飯を食べようと思っていたのに、破片をこのままにしておいては怪我人が出るかもしれない。片づけるのが面倒くさかったからという些細な理由で誰かが怪我をしてしまっては寝ざめも悪くなる。

 

「ちゃちゃっと終わらせて早くご飯にしようっと」

 

 しかしそれなりの量が散らばっている机の上や床を見るとやっぱり面倒くさい気持ちが頭をもたげてくる。普段からあまり掃除をする事がないせいで箒なんて便利なものはここには置いていない。そもそも埃や塵と言ったものは防護魔法のおかげなのかそこまで積もっているのを見た事がない。便利すぎない?さらにこの時代に掃除機などと言ったハイスペックでメカニックなものがあるはずもない。どうしたものか。

 

 まず思いつくのは、大気を利用した風の魔法でもって一か所に集める。無理だ。机の上には破片の他にも吹き飛びそうな紙やペン、トランプなどが置いてある(散らかしてある)。そんな中で風なんか起こしたらさらに被害が拡大するに決まっているし、そもそもそんなに魔法を扱える自信がない。

 次に思いつくのは、能力でどうにかする。無理だ。私の能力はそこまで便利なものではない。あるとしても私には思いつかない。誰か教えてくれ・・・・・。

 最後は転移魔法で一か所に集める、だ。これが一番現実味がある。が、あるだけで無理だ。大きなものはともかく小さすぎると座標を入力するのにも一苦労だし・・・・・効率も悪い。

 

「地道が一番かぁ・・・・・」

 

 確実だが時間のかかる方法だ。しかし転移魔法よりか早く終わるだろう。今は思考している時間すら惜しい。早いとこご飯が食べたい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「ふぅ・・・・・疲れた、腰が・・・・・」

 

 ずっと屈んで作業をしていたせいか腰が痛い。試しに腰に手を当て、背中を大きくそらすと案の定コキコキと小気味いい音が聞こえてきた。ジンジンと痺れるような感覚が腰のあたりから響く。

 

 こういう痛みは何故か回復する様子がない。いや、回復はしているのだろうが人並みのままというか、人外ならではの馬鹿みたいな回復速度が適用されないのだ。外傷かそうでないかの違いなのだろう。現にいつぞやの時に致命傷に近い銃弾を受けた時はさほど時間をかけずに治ったのだから。普通は致命傷ともなれば一週間やそこらで治るはずは無い。

 

 

 だが、もしそうであるならば・・・・・

 

 

 集めたガラスの破片の内の一つに反射する自分の()()をみて私は思う。

 フランのレーヴァテインが額に刻み込んだこの赤黒い傷はもう二週間近くそのままだ。

 

 

 もしそうであるならば、何故この傷は癒える事がない?

 

 

 一週間前ならばまだ妖力の枯渇で済ます事が出来たが、今は寝起きなのだ。この程度の傷を治す事など造作もない事のはずなのだが、いくら意識的に妖力を送っても傷自体が拒絶するように受け付けない。

 

 別段この傷をどうにか消したいという願望は無いのだが、落ち着かなく気持ちが悪い。自分の身近にあり把握する事が出来ないものと言うのは違和感と言うよりは嫌悪感が強い。その傷も例にもれず嫌悪感を与えてくる。

 しかも二週間全く形状が変わっていないところからすると治る見込みが全くない事を考えざるを得ない。

 ・・・・・最悪の場合皮膚を自分で抉って再生するのを待つのもアリだが、痛い。絶対に痛い。本当の最終手段として頭の片隅に止めておこう。

 

 まぁそんなことよりご飯だ。腹が膨れたらまた傷をどうするか考えよう。

 

 扉へ足先を向けゆっくりと歩き出し、ぶつかる直前で止まり、手を掛けて押す。

 

 

 ・・・・・はずだった。

 

 

 扉に掛けようと伸ばした手は空を切る。

 

「はぇ・・・・・?」

 

 理解が追いつかずに思わずといった風に声が漏れる。膝のあたりに衝撃が走り、床が抜けたかのように目線が一瞬で低くなる。自分が立て膝をついているのだと分かった時には意識が揺らぎ、急速に薄くなっていき、

 

 そして、途切れる。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 Q.ここはどこだろう?

 A.夢の中です。

 

 Q.・・・・・お前は誰だ?

 A.私はお前。

 

 Q?.・・・・・意味がわからない。

 A?.またまたぁ、本当は知ってるくせに。

 

 ・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 一寸先は闇、という言葉がある。

 物事の行く末が分からない事を例えた言葉だが、文字通りの状況を実際に体験するとは思わなかった。

 

 分かるのは此処が現実では無いという事。

 視界に映るは一面の黒。

 

 こんな突飛な状況に置かれて思わず出た疑問。暗闇の中から答えが返ってくるなど全くの予想外だった。しかも声が()()()()と瓜二つときた。

 声の主との距離感もうまく掴めない。正面から聞こえるようで、左から聞こえたり、真上から聞こえたり。声が反響しているのとも違う、不気味な感覚。

 

「私はお前でお前は私。難しい事なんて何一つ無い」

「うおっ!?」

 

 急に正面からはっきり聞こえてくるもんだから吃驚した。そして暗闇の中から()が現れた。

 銀髪のストレートに灰色の翼、白いドレス。ただ一つ違うところを挙げるとすれば目。私達吸血鬼は元来紅い瞳を持って生まれるが、こいつは紅ではなく黒みがかった赤といった方が正しい。黒紅色という色があるが正にそれだ。なまじ綺麗とは言い難いかな。

 

 ・・・・・さらに言うならば私はこの目を見た事がある。それも最近。つい二週間ほど前。

 

Q.お前は『狂気』?

A.よく分かってんじゃん。正解だよ。

 

 お、おお。狂気が実体を持っているとは思わなかったな。もっとこう病巣のようなもので、精神に干渉してくると思ってた。ん?でもここは夢の中らしい。精神世界と言い換えてもいいのではないか?そして私とこいつは初対面だ。

 

 ・・・・・ひょっとしてとてもとても不味い状況なのでは?

 

「改めて、初めまして正常な私」

「・・・・・初めまして、狂ってる私?」

 

 まるで鏡を見ているよう。私とほとんど変わらない顔が微笑み、口が言葉を紡ぎ、手を振ってくる。不思議だ。ドッペルゲンガーも会ったらこんな印象なのかな?でもあれは会ったら死ぬんだったか。同時世界に同じ人物が二人いるとか何とかで矛盾のパラドックスがどうのこうの。

 

 全く関係ない事に思考が脱線している。

 不思議な事もあるもんだともう一人の私をじっと見つめていると。

 

「そして、さようなら」

 

 目を離してなどいないはずなのに一瞬にして微笑みから狂気を含んだ笑みに変わっていた。それはよく似た顔立ちと黒紅の瞳から唯一の妹の顔とだぶり、脳裏に焼きつく。

 

 しかし妹とこいつを重ね合わせていた数瞬がいけなかった。

 

「なッ―――――!?」

 

 どこからともなく伸びてきた金属が四肢に絡まり身動きが取れなくなる。両足がくっつき、両腕はそれぞれ左右に引っ張られ、さながら十字架(クロス)に貼り付けられた聖者のような格好になってしまった。焦って、右手を左手を右足を左足を動かそうともがいてもジャラジャラと無情な音が鼓膜に響く。

 

「このっ・・・・・クソッ!離せっ!」

 

目の前に向かって悪態を吐くも状況はさらに悪化した。二次元だった貼り付けは上方向にも働き三次元となった。重力に逆らえないお陰で手首に鎖が食い込みギリギリと痛む。

 

人のペット(狂気)を飼い慣らすのは最初から飼うよりずっと困難って知ってる?」

 

無造作に暗闇に手を伸ばし、何かを引っ張り出す。

 それが何であるか脳が認識した瞬間、無意識に脇腹が疼きだす。心臓の鼓動が体感二割ぐらい増しになった気がする。背中には冷汗が一筋流れ、両足は縛られていなければ小刻みに震えていた事だろう。

 

 暗闇の中で光も満足に入らないはずなのに、なぜかキラリと剣身に光沢を滲ませる事が出来ている。

 

 それは俗に言うブロードソードと呼ばれるものだった―――――ただし銀製の。

 

 在りし日に脇腹を貫いた弾丸の痛み、衝撃が鮮明に思い出されるようだった。乾いた喉がひくつき、言葉が出ない。

 

 どんなに硬いものさえもスッと刃が通ってしまいそうなその切っ先がどこに向けられるのか。想像するだけでゾッとする思いだった。同時に夢の中だから痛覚は感じないのではないだろうか、という希望的観測が湧きおこったが宙ぶらりんの手首からは伝わる痛みが止まる事はいまだに無い。

 

「お前の心が壊れるのを想像するだけで楽しいなぁ」

 

 唇を歪めながら切っ先を私の目の前でちらつかせて反応を楽しんでいる。

 

 事実、切っ先が近付けば近付くほど呼吸困難に陥ったように息が荒くなり、遠ざかれば僅かに安堵のため息が漏れる。嬲る側からすればこんなに楽しい玩具は無いだろう。しかし嬲られる側からすれば身体が勝手に反応を起こしているにすぎない。反抗するように気を強く持っても、近づいてくれば直ぐに恐怖と幻の痛覚で脳内が埋め尽くされる。

 

「・・・くッ・・・かはッ、や、やめっ・・・・・!」

 

 やっと絞り出した声で意志を伝えようとする。

 

「だーめっ」

 

 言い終わるよりも先に今までよりも深く、速く突き出される。

 そしてへそと鳩尾の間、つまり腹のど真ん中に突き刺さり色々な臓器を突き破り()()した。 

 

 声らしい声も出ずに口内がせり上がってきた血で溢れかえる。

 

「ゴボッ、ゴフッ」

 

 抑える理由は無かったが一度吐き出すと止まらない気がして留めていた口内の血が、口端から静かに流れだし白いドレスを燃えるような赤に染めていく。しかし流れ出たものはもう体内を流れていたような生気は纏っていない。

 前回の燃えるような熱さとは対照的に、身体から色を失っていくような喪失感だけがぼんやりと分かる。

 

「もうちょっとかな?」

 

 肉が抉れる感覚を僅かに捉える。焦点の定まらなくなった目を下腹部に向ければ、刺さったままの剣身が静かに回転している。私の鼓膜にはグチュリグチャリと音が響いてはいるが。

 その音は私を暗い意識の底に落とすぐらいには効果があった。

 

 

 

「まずは一回目」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 連続する軽い痛みと共に意識が覚醒する。

 ゆっくりと意志に反して閉じようとする瞼を開く。

 

「お目覚めかな?古い私」

 

 眼前に映るのは見覚えのある白いドレス。顔を少し上げて見ればこれまた見た事のある顔が見えた。そりゃそうだ。私自身の顔なんだから。

 

「・・・・・さっきのは夢?」

「うーん、夢だけど夢じゃあない。現実で起こった事の誇張表現って言った方が正しいかな」

 

 また意味がわからない事を。

 

「分かりやすく、噛み砕いて」

「別に説明する義理は無良いんだけどなぁ。しかし理解してもらう事は必要、と。まぁいいか。」

 

 一人で納得すんなこいつ、とか思っていると、ビシッと擬音が付きそうな勢いで右手の人差し指を私の前に掲げた。

 

「説明しようッ!」

「そういうのいいから」

 

 焦らされるのは嫌いだ。そう言外に滲ませて先を促す。

 

「簡単に言うと、お前は死んだ」

「・・・・・いや、生きてるけど」

「しかしそれは夢の中での話。現実では生きている」

「・・・・・はぁ。」

 

 理解できないまま生返事をすると、またあの笑みを浮かべた。

 

「つまりは、まぁ、なんだ・・・・・」

 

 

 

 

「夢の中だとコンテニューし放題なわけさ」

 

 

 

 

 左右から無数の短剣が飛んできて私は吸血鬼の串刺しになった。

 

「おめでとう。これで二回目のコンテニューだ」

 

 考える間もなく私の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「三回目ー」

 

 私の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「四回目ー」

 

 また落ちる。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「五回目ー」

 

 落ちる。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「六回目ー」

 

 まだ落ちる。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「七回目ー」「八回目ー」「九回目ー」「十回目ー」「十一回目ー」「十二回目ー」「十三回目ー」

 

 戻れないところまで落ちるような感覚。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「―――回目ー」

 

昏倒と覚醒を幾度となく繰り返し疲れ切ってしまった。ここはどこだろうか。夢?現?

 

 もう頭が回らない。数を認識できない。無理やり何かを考えようとしても霧の中に思考が隠れてしまったかのよう。

 

「丁度いい頃合いかな?」

 

 飽きてきたのかは分からないがやっとテープレコーダーから抜け出すことが出来た。

 

「これ、何本に見えるー?」

 

 焦点が合わず、脳に映し出される映像はぶれまくっている。

 

「―――――――」

 

 数を答えようにも口が言葉を忘れてしまったかのように出てこない。

 

「うんうん。わかるよ、わかる。寧ろ35回も死んで壊れてない事に吃驚してるよ。――――そこで提案。もうこんな辛い思いしたくないでしょ?全て私に委ねてみなよ。身体も心も思考もぜーんぶ。そうすればこの地獄のループから抜けだせるんだよ。死ぬことも痛い事もなーんにも無い。

 

さぁ、一緒に堕ちましょう?」

 

 いつのまにか鎖は無くなっていて、自分で立っている。けれど地に足が付いている感覚は無い。ふわふわとした浮遊感が全身を支えているようだ。

 

 そのまま流れるように差し出された自身と同じ白い手に手を伸ばし―――――

 

 はたと手を止めた。

 ここで手をとってしまえば取り返しがつかない事態になる。私は何のためにこいつ(狂気)を受け入れた?

 

 

 家族を助ける為じゃないか。

 

 

 止まっていた思考が著しく運転を再開する。そして私と同じ手を払いのけた。

 

 こいつの気色悪い笑みは凍りつき、払われた右手を唖然として見つていた。いい気味だ。自然と口角がつり上がる。浮遊感が急に消え体重を取り戻す。

 しかし激昂するのではという予想は良い形で裏切られた。初めて年相応といえる少女らしい笑みを浮かべ一言、

 

「そりゃ残念」

 

 と言った。その時の笑顔は私が男だったら惚れてたかもしれない。そう思えるほど可愛らしかった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 景色が一気に変わり辺りを見渡せばいつも見慣れた図書館にいた。 

 

 やっと戻ってこれた。そう思ったが、目の前の光景を目にしここはもしかしたらまだ夢の世界かもしれない。そう現実逃避してみたが現実は非情だった。

 

「まぁここで35人の私が死んだんだし、当然と言えば当然か」

 

 夢の中の事が本当である事を示すように図書館は血の池地獄と言われても納得してしまいそうなぐらいおびただしい量の血溜まりができていた。

 

 私は片づけを放棄するわけにもいかずどうやって血を流そうか頭を抱えるのだった。

 




 たぶん次は11月の終わり・・・・・。




 ・・・・・きっとね。
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