Phantasm Maze   作:生鮭

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最近読んでた小説に字体が寄ってる気がする……。




Ennui of Vampire

数日後、紅魔館は妖精を10人ほど迎え入れた。もとい拉致した。

 

「これでどうするの?」

「この中から誰かリーダーを決めなさい。妖精は気ままだから突然できた主人に命令されるより同族の方が受け入れやすいと思うから。うまく躾ければ悪魔より扱いやすいわよ。」

 

どうやらレミリアとオウレットの間では、小難しい使い魔召喚よりそこら辺にいる妖精を雇うことに決定したようだ。

 

妖精というのは小柄で人型の視認できる精霊だ。基本的に感情に正直で、なんかいっぱいいる。頭の良さは個体によってまちまち。

今回連れてきたのはいつも紅魔館の裏にある森で遊んでいる集団で、種族としてあまり強くないせいか魅了で簡単についてきたらしい。誘拐犯かな?

 

「貴方達には今からここで働いてもらうのだけれど、今からリーダーを決める!…どうやって決める?」

「はぁ…、取り敢えず魅了解いたら?多分誰一人話聞いてないよ。」

 

レミリアの暴虐武人な強制就職宣言を聞いても、10人の妖精達は恍惚とした表情を浮かべながらピクリとも動かない。

魅了ってば恐ろしい。

 

「…はい、解いたわよ。」

 

余談だが私は魅了を使えない。というか使い方を知らない。使う機会がなかったから、使わずに使い方を知る必要もなかった、それだけのことだ。

 

しばらくするとぼーっとしてた妖精達は次々に我を取り戻し始める。

そして当然のようにざわめきが広がり、全員が元に戻ったところで玄関から出て行こうとする。

 

「待ちなさい。」

 

レミリアの一声で妖精達はピタッと一瞬硬直する。カリスマ、レミリアが出せる言霊は聞くものの本能に深く響く。

紅魔館頭首の貴重なカリスマシーンである。

 

「貴女達は今からここで働きなさい。」

 

そして当然のように命令形。はぁ…身内に対しては甘いのに、どうしてか初対面には横柄になりがちらしい。

 

レミリアの命令に対し打てば響くように、「えー」「なんのためにー?」「やだー」などなど。不満たらたらだ。そりゃそうだろう。突然連れてこられて働けと命令されたら、嫌に決まっている。

 

「断ったら殺すわよ?」

 

どうしようかと思案した挙句レミリアは鋭い爪を顔の前に掲げ、気持ち怖めな声で脅す作戦に出たようだ。

 

「別に私たち一回休みになるだけだしねー」

 

しかしその他の脅しは妖精相手には通用しない。何故なら妖精は自然がある限り死ぬことがないからだ。妖精とは精霊が物質的に具現化したもので、精霊そのものが絶えることがなければ源から湧いてくるとができる。

 

「…どうしようかしら?」

 

レミリアはこれ以上どうすることもできないと知り、若干泣きそうな赤い目でこちらをみてくる。そんな目をされても…。というかレミリアの命令には根本的な問題がある。

 

「あのー…。」

 

レミリアに知恵を授けようとしたところで声がかかった。見れば金髪の妖精が申し訳なさそうにこちらを見ていた。

 

「失礼だとは思うのですが、みんなが貴女の提案に乗ることは無いと思います…。」

「…なんで?」

 

この金髪妖精、言いおる。ボンボン吸血鬼に現実を教えてやれ。格下が独裁者に反発する訳を。

 

「えーと、ま、まず私達が働くメリットが無いからです。次に働く理由もなく、最後に名前も知らない貴女が、えーなんというか、威張っていると言いますか、そんな人の下で働く気にはならないでしょう?」

「はへ?」

 

ポカーンとした表情のレミリアを見て笑いが込み上げてくる。や、やばい、その顔をこっちに負けないでくれ、は、腹がよじれてしまう。

淑女たるや笑い転げるわけにはいかないと、ひたすら腹筋を殺して僅かに痙攣するだけに抑える。

 

「この吸血鬼は常識が欠落しているのね。」

「まぁ同感。」

 

オウレットが鉄仮面のまま感想を述べる。おや、よくよく見れば口端がプルプルと震えている。可哀想なことに今のレミリアはどの角度から見ても滑稽だろうな。

 

「どうも、ここはスカーレット家の統治下にある紅魔館という場所です。私はこの『威張っている』吸血鬼の妹のカルラ・スカーレットといいます。」

「や、そ、そんな畏まってもらわなくっても。ど、どうも、私は妖精のリサといいます。」

 

互いに自己紹介を軽くしたところで他の妖精連中を横目で見やると、シャンデリアにぶら下がっていたり、階段という階段を走り回ったりしていた。

どうやら話が終わるまでエントランスで遊ぶことにしたようだ。

 

「じゃあ、失礼して。私たちは今此処の家事をしてくれる人材を探していてね、最初は適当に召喚しようと思ったんだけど妖精の方がなにかと自由が効くし、なにより、少し言い方は悪いかもしれないけど数を揃えやすいから妖精に決めたってわけ。」

 

紅魔館の頭首たるレミリアにはこんな感じのもっと柔らかな物腰を身につけてもらいたいものだ。相手に窮屈感を与えることがない程度の。

 

「因みに貴女達が断ったらまた別の妖精を探しに行くだけ。面倒くさくなったら魅了で縛って済ませるけど自分で行動出来ないって不便だし不快でしょう?だから相互理解の下しっかりとした従業員として権利を保障するよ。」

 

労働者の権利を保障するのは雇い主として当然である。

 

「なるほど、案外優しいんですね…。」

 

へっ!?や、優しい?そ、そうか、…優しいか。

 

「どうしました?」

「……な、なんでもない。」

 

べ、別に優しいなんて言われたことなかったから、ほんの少し恥ずかしかったというかむず痒かっただけだし。断じて赤くなってなどいない。

 

「気にすることはないわ。…ふむふむ、これは照れてる顔ね。」

「照れてる、ですか?なんで…。」

「優しいって言われたからかもね。」

 

レミリアとオウレット、リサの視線が集まるのを感じて頭がもっと熱くなる。熱くなっている顔を凝視されていると思うと熱くなりすぎて頭がぼーっとしてくる。こ、こっちみんな!

 

「なんかカルラの照れてる顔、初めて見るかも。…こんなに赤くなっちゃって可愛いわね。」

「姉バカね。可愛いのは確かだけれど。」

 

か、かわ、可愛い…?ダメだ。顔から湯気が出ているかもしれないと思うほど赤い自信がある。……リサ、黙ってこっちを見つめるのはやめてくれ。

 

「……可愛い。」

 

!?もう無理っ!

 

「あーあ、逃げちゃった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に過去最速で戻ると、そのまま布団に飛び込んだ。

少しひんやりした毛布の感覚で上気した顔を冷やす。でもさっきの言葉を思い出すと冷やされてる気がしなくて、さらに熱くなってると思う。

 

「うぉーーー…うぅーー…。」

 

や、優しい、とか、か、可愛いとか、私よりずっと綺麗なレミリアに言われても別に嬉しくない。オウレットに言われたって。というか初対面なのになんだってリサがぐいぐい言ってくるんだ。

もし此処で雇うことになった暁にはこき使い下ろしてやる。

 

……あーもうっ!知るか知るか知るか知るかっ!

あんな馬鹿姉のことなんてもう知らないっ!

 

吹っ切れると次第に精神的疲労が襲ってきた。

顔を手で覆うと案の定掌から冷たさを感じるほど熱い。

こんな時は我らが姫君フランドールに癒し成分を貰うしかない。

 

…フランー…癒しを、癒しを私にー…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?どこに行ったんです?」

 

突然消えたカルラにリサがびっくりしている。オウレットと私は見慣れているからか特に驚くことはないが、急にふっと消える様は初めて見るなら衝撃的だろう。

 

「自分の部屋じゃない?」

「あの魔法もいつか教わりたいわね…。」

 

カルラが一人になりたいときに行くところといったら自室か図書館に限られている。調理場はなにやら最近フランが貸し切っているらしいし。

早業の転移魔法を見て魔女としての見聞を深めようとするオウレットを尻目に、話題を戻そうと口を開きかける。しかしその意思は背後で響いたガラスが割れるような音によって折られてしまう。

 

「…一人ぐらい居なくても平気かしらね。」

「ちょっと!ちょっと!何をしてるんですか!」

 

私の口から生まれたときからあるシャンデリアの無残な姿を見て思わず暗い考えが漏れる。一人消し飛んだらまたもう一人連れて来ればいいのだ。

 

「だって話長いんだもん。」

「そ、それは悪かったと思いますがそれとこれとは話が別です!」

 

リサが薄桃色の妖精を叱っているのを見ていると、まとめ役っぽいしリサをリーダーにしようと思いつく。雇うことが決まればの話だが。

 

「話を戻すけどー…」

 

再度話を始めようとすると直ぐ頭上に魔法障壁が張られる。おそらくオウレットだろうがなんのこっちゃと思っていると、大量の水が魔法障壁を直撃した。いい加減話を進めたいのだが、妖精という種族はどうも私をイラつかせたいらしい。

幸いにも私達三人は水を被らずに済んだが、人の家で水を撒き散らすような迷惑な輩は要らない。野郎ぶっ殺してやらぁ。

片手に魔力を溜めてグングニル生成しようとするとオウレットにその腕を掴まれた。

 

「妖精は何度殺しても無駄だってわかってるでしょう?…それより周りを見てみなさい。」

「何を言ってーー…あ。」

 

周りには今さっき飛び散ったはずの水が無かったのだ。

よくよく考えれば大自然の体現者たる妖精からしてみれば火、水、風を意のままに操ることができても不思議ではなく、それは家事にとってとても都合がいい。

 

例えば洗濯物を乾かしたり。

例えば調理で火力を調整したり。

例えば掃除において塵を集めたり。

 

これは是非とも今の紅魔館の惨状には欲しい人材だ。

 

しかし妖精側へのメリットか……。

正直メリットとか考えずに魅了で縛るのが一番楽なのだが、カルラは必ず反対してくるだろう。口では軽く言っていても魅了にそこまでの優位性は見出してないと思う。

 

「貴方達のメリットーー…、そうねこういうのはどうかしら?」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

紅魔館は今日も今日とて平和である。

オウレットは図書館に篭っているし、カルラとフランは本を片手にお勉強中。料理の。

私も執務室にてリサの入れた紅茶を片手にお仕事中。周囲の妖怪との繋がりが切れた今、紅魔館の金庫事情は右肩下がりなのだ。

さてはてどうしたものかと万年筆をくるりと回す。

 

周囲の妖怪はあの夜にすべて狩り尽くしてしまったし、新しく移住してきた妖怪との繋がりもない。

新しく繋がりを作るには私との力関係を示す必要がある。

今すぐ出て行って適当に山でも消し飛ばしてくればいいのだが、何故か恐怖による統治には抵抗がある。単なる勘か、はたまた能力のせいか。

 

恐怖による統治以外では、相手が自然にこちらに対して畏怖を抱くように仕向けるしかない。

自然な形で……なおかつ敵対意思を見せることなく。

 

 

 

瞼を静かに下ろし、『こうあるべき』運命を捏造して逆算的にとる行動を絞り込む。本来の用途と全く異なるせいか頭がキリキリと痛み、平衡感覚が狂い始める。机の端を両手でそれぞれ掴み倒れることを防ぐ。

頭の中が掻き回される感覚とともに少しずつ視えてくる。最初は霧がかっていたそれは次第に鮮明になっていく。

 

「ぐっ!ぐぅ…はぁっ、……ふぅ、これね。」

 

汗ばんだ額に張り付いた前髪を掻き乱し、右手で乱雑に拭う。

 

……なるほど。ちょうどいい。こいつを利用させてもらう。

 

 

その間に私は永きに渡るツケ、甘えを清算するのだ。

 

 

 

 

机に常備してしてある呼び鈴を鳴らす。

これはカルラによる妖精達全員にどこにいても聞こえる呼び鈴だとか。そして誰かが執務室の近くに来るともう一回鳴り、来なくてもいい旨を伝えるとか。魔法って凄い。

 

余談だが妖精達は全員メイド服を着ている。紅魔館で雇うからにはそれに相応しい身嗜みが必要だからだ。ちなみにメイド服はカルラが一着魔界から取り寄せそれを元に複製したそうな。魔法って凄い。

 

 

妖精メイドが来るまで先ほどの負荷によって疲弊した体を休める。執務室に備え付けの椅子に深く座り込み、軽く腕を組み目を瞑る。

……深く腰掛けたせいで脚が突っ張っているけれど、どうしようもない。当然だ。私が座るにはこの椅子はまだ早かったのだから。

 

数ヶ月前まではこの椅子に座っていたのは父だった。

父がこの椅子に座り、紅魔館を内側から観ていたのだ。

 

手を解いて肘掛に添える。木の手触りが伝わってきた。

……あの日父を殺したのが私にしろオウレットにしろ、私は殺意を確かに父に向けた。それだけが事実でその時に私は紅魔館を背負うことを決めたのだ。だからこそ今この椅子に座っている。

 

カルラにフラン、あと誠に遺憾ながらオウレットに妖精メイド、私が背負っている命は決して軽くない。

 

だがーーーーーー……

 

 

 

コンコン、とノックの音が聞こえた。

 

「お嬢様、お呼びですか?」

「……ええ、紅茶が欲しいわ。今度はアールグレイで。あとカルラに私が呼んでいた、と伝えて頂戴。」

「わかりました。」

 

足音が遠ざかっていくのを聴きながら話の切り出しを考える。どのように伝えるか、それだけで幾星霜の運命が生まれることは私が一番よくわかっていた。

 

 

 

何度も吟味し、その選択に確信が持てるようになった頃カルラが執務室に現れた。

 

「なんか用?あとこれダージリン。」

「……今の私はアールグレイをご所望よ。」

「そしたらちゃんとリサに頼まなきゃ。」

 

……まぁいい。どうせ違いなんて分からないのだ。ちょっと言ってみたかっただけだ。目を瞑って『アールグレイ』ってカッコよくない?

 

濃いオレンジ色の紅茶を一口含むと心が落ち着く。

 

「貴女にあってきて欲しい奴がいるのよ。大体の座標はここに書いてあるから明日にでも行ってきて。」

「レミリアが行けばよくない?」

 

ティーカップに入った薄緑の液体を飲みながら面倒くさそうに返された。あれは緑茶という極東のお茶なのだとか。八雲紫とかいうやつに貰ったらしい。

八雲紫は何度かこっちに来ているらしいが私は面と向かって話したことがない。妹の交友関係は私が把握しておかなければならないというのに挨拶にさえ来ないのだ。なんだか胡散臭い。

 

そのことを話すと『娘の異性交遊を許せないバカ親父っぽい』と言われた。解せぬ。私は妹が心配なだけだ。

 

 

 

「……明日はフランの『アレ』があるのよ。オウレットから話は聞いているわ。だから明日は1日外出していて頂戴。」

 

『アレ』と聞いた瞬間、僅かにカルラの顔が強張ったのを見ながら続ける。

 

「会ったらどんな手を使ってもいいから此処で雇う約束を取り付けてきて。別に連れてこなくても構わないわ。」

「……フランの『アレ』があるなら私は残る。」

「ダメよ。」

 

私は知っている。今のフランがカルラの自己犠牲によって成り立っていることを。その自己犠牲はカルラを『アレ』に参加させないことで防げるということを。

 

「……っ!なんでっ!」

「私はフランと同じくらい貴女を大切に想っているからよ。どちらも分け隔てなく愛している。」

「……それはっ、ずるいよ……。」

 

ずるいという自覚はある。この言葉を出せばカルラは引かざるを得ない。何故なら私も引かないから。

 

痛いような沈黙が部屋を満たす。この部屋は防音構造のため外部からの音は全く入ってこない。

俯いている妹の表情は見えないが、私が万に一でも折れてくれるのを待っているのだろうか。

 

笑止。折れない。譲れない。引くわけにはいかない。

 

フランが狂気から抜け出せないのは私の力不足で、カルラが背負っているものに気付かなかったのは私の責任。今ここで逃げてしまっては2人の姉であるとは言えない。

 

心臓の音がやけにうるさい。

 

「……分かったよ。」

 

どのくらい経ったか分からないほどの沈黙の後、俯いたままカルラの口から出たのは了承の言葉。聞き取りにくいほど小さく、重い唇から零れたその言葉は私を安心させるには十分だった。

 

「ーーそう、明日よ。絶対だから。」

 

重い空気こそ終始変わらなかったが、私の心は不安に濡れていた始めとは違い歓喜に満ちていた。

対してカルラはピンと張っていた翼は萎れていて、いつものような元気は感じられなかった。

 

だがそれでいい。

目を背けていただけの歪な日々は明日、どんな形であれ終わりを告げるのだ。例えそれがどれほど残酷なものでも。

 

愛しい妹達を守る為なら私の小さな願望など捨て去れる。

 

 

 

「話はそれだけよ。」

「……ん。」

「そうそう、このティーポットをキッチンまで戻して置いてくれない?ついでに軽いお茶請けでもあると嬉しいんだけど」

「自分でいけばいいのに。別にいいけど。」

 

ぐちぐち言いながらも片付けてくれるカルラはやはり優しい。今しがた引いてくれたのもこの優しさが成せることなのだろう。

 

「それとコレ。」

 

ティーポットと一緒にある座標を書いた紙を渡す。

それは東方のさらに端っこ。

 

「結構遠くない?」

「座標さえ分かれば一瞬なんでしょう?」

 

軽く笑みを浮かべながらカルラの瞳を覗き込む。

しかし少し上に目を向ければ額の傷が目に入り顔をしかめる。これさえ無ければこんなことにはならなかった。

 

顔をしかめた私に苦笑を向けてくるカルラ。何故だか次第に意地の悪い笑みに変わっていく。

 

……嫌な予感がする。

 

「当然っ!」

「ひゃあっ!?ちょ、ちょっと!や、やめっ」

 

いつのまにか背後に回っていたカルラの腕が首に絡みつく。苦しさを感じることはなく、首より多少ひんやりした腕の感覚が首筋を這い回る。銀色の髪もまた首をくすぐり、甘い匂いが鼻腔を刺激する。

 

「な、なに、を、ひゃぁんっ!?」

「そんな辛気臭い顔してないでさー遊ぼ?ふぅーーーっ、と」

「ひぃっ!?あっ、あぁぁっ」

 

マウントを取られたまま左耳から伝わるゼロ距離の吐息に変な声が出てしまう。ゾクゾクっと背筋にむず痒いものが走る。

 

「はむっ」「ひゃっ!」

 

耳たぶをはむはむされて気持ち良さにボーッとする。カルラの口から零れるちゅぱちゅばという唾液の音に、頭が溶かされる感覚に陥る。

 

「あぁ……」

「じゃあもう行くね。」

 

気付いた頃にはもうカルラは離れてドアの前にいた。こっちに軽く微笑む。しかし私にはそれが無理をしていることがよく分かった。所詮は空元気だったのだ。落ち込んでいるのを感じさせないための行為。

 

「ああ、それと」

 

ドアを開けて出て行く直前にこちらに流し目を向ける。

 

「レミリアが飲んでたのアールグレイだから。」

 

 

 

ーー先程の言葉を訂正しよう。

やっぱりこの妹は可愛くない。




オリキャラ解説
〈名前〉リサ
〈種族〉妖精
〈能力〉???
〈概要〉紅魔館の裏にある森に住んでいた妖精。他の妖精よりも頭が回り、よく頼りにされている。ある日突然レミリアに拉致られ紅魔館で働くことに。その時に粘り強く交渉を重ねてある対価を獲得した。リサは対価に納得していなかったが、他の妖精の勢いに押されてなし崩し的に了承した形になってしまった。
最近メイド仕事にハマったらしい。


久しぶりにオリキャラ解説。要は妖精メイドのまとめ役。咲夜さんが来るまでの繋ぎです。
そういえばそろそろこの小説は一周年を迎えるんですが、まだ幻想入りしてないってマ!?
あと5,6話挟んでからなので少々お待ちを。

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