3日に一度できればいいと思っています。
「ふぁ~ぁ、んんっ、・・・・・・よく寝たなぁ」
体感で10時間ほど眠っただろうか。この家には時計というものが無く、時間が分かりにくい。そもそもこの世界にまだ時計が作られていないのかどうかは知らないが、時間にとらわれるというのは前世では時間に追われる生活を送っていたせいかもしれない。
学校がないという事は登校時間がないという事。好きな時に起きて好きな時に寝てればいいのだ!腹が減ったら飯を喰らい、腹が膨れたらまた寝る。これぞ本能に忠実に生きるという事なのだ!……なの、だが……やはり時間は気になる。前世で染みついた感覚が抜けるのはまだまだ長そうだ。
前世と言えば生まれたばかりは男口調だったのに、だんだん中性的になっているのを感じる事がある。例えば一人称などは俺から私に変わっているのをふとした時に思う。それも気づいたときだけなので無意識に使っている可能性もある。
・・・・・特に男だった事に執着があるわけではないが、生まれ変わった際に性別が変わったことなどがこういうところに影響しているのを思うと、前世の自分という存在が上書きされている気になってくる。……いや、少し違うか。周りの環境が性別を意識させているのだろう。男ではなく女として扱われることに私が無意識のうちに合わせようとしている。そして4年のうちに慣れてしまった。それだけの事。今世の環境への適応、案外早かったな。
それか世界が私の認識を改変しようとしてるとか。……まさかね。
……少し考えて背筋が冷えた。いやいやいや、いくらなんでもそれはないだろう。知らずに自分が女であると認識させられているなんてね……。
もしそうだとしたらーーーーー
………いずれはすべて忘れてしまうのだろうか。あの後悔さえも。
そこまで考えて反射的に首を振ってしまう。まさか神様もこの世界もそこまで暇ではあるまい。もっと生産的なことに労力を割くべきなのだから。
暗い事を考えていると気分まで暗くなってくる。レミリアの寝顔で癒されよう。
私の隣でスヤスヤと寝息を立てている姉は私の内心とは真逆の位置にあるように純真無垢を体現化したようだ。
あー可愛いなぁ。何故こんなにも赤ん坊の寝顔というのは心を穏やかにするのだろうか。アニマルセラピーというものがあるが、同じような効果をもたらす赤ん坊は難解な思考を巡らせていないという意味で、もはや別の生き物なのかもしれない。
もしくは私が度を越し過ぎて360度を振り切ったロリコンだとか。無いと思いたいが否定もし難い。
純白とは程遠い群青色な考えを巡らせながら、レミリアの餅にも似た頬っぺたをつついたり引っ張りしていると、
「んぅぅ……?」
しまった、起こしてしまったか。
「かるら?」
「……っ!可愛い……っ!!」
かわいい。寝起きのレミリアメッチャかわいい。舌ったらずなレミリアメッチャ可愛い。抱きついて押し倒してやる。犯罪臭がするって?バレなきゃ犯罪じゃ無いってホテプさんも言ってた。ここには私の中身が穢れまくった前世持ちである事を知る人はいない。合法的犯罪とかいう矛盾が発生しうるのだ。
「ちょっと、カ、カルラ、やめ…」
このあとメチャクチャいちゃいちゃした。
◇◇◇
吸血鬼としてこの世に生を受けてから5年が経とうとしている。
スカーレット家では代々5歳から次期当主としての教育が始まるらしい。5歳なんてまだ小学生にもなっていない年齢なのだが、社会適応期の年齢も合わせると吸血鬼を人間の定規で換算する事は不毛でしかないのかもしれない。
「れみりあー」
今日も今日とて姉の寝顔を見ながらのんべんだらりと過ごしている。今回は少し趣向を変えてみようかと思い、時折顔や耳に向かって息を吹きかけたりしている。
「んぅ……ひゃっ……ぅーー」
カルラさん、それアウトやで。という俯瞰視点で自分に吹き替えられた思考を無視して、ひたすらにちょっかいを出す。
ここまでやって起きないレミリアも中々だが、私も私でなんて事してるんだ。
でもこんなことができるのもあと半月ほどだ。レミリアと私の誕生日を迎えた後は寸暇を惜しんで、とまではいかないがかなり忙しく勉強しなければならなくなる。
紅魔館の次期当主は長女であるレミリアと決まっているが、私も一緒に勉強をするそうだ。スカーレット家の娘とあらば醜態を晒す事は許されないのだと父が自慢げに話していた。……そんなに世間体が大事かね。ネジが一本外れている方が愛嬌がある気がするが。ほら、天然属性とかあるし。
まぁ、任せとけレミリア!
私は体は子供、頭脳は高校生なのだ。初等教育を全うにやり遂げた私からすれば勉強など造作もない事よ!優しいカルラさんが手取り足取り教えちゃるけんね!
◇◇◇
前言撤回。るーと?なにそれおいしいの?最初のほうこそ苦労しなかったが、妖力やら、魔力とやらを使うあたりから頭がこんがらがってきた。私のポンコツ頭はまだ前世とのギャップを理解していなかったようだ。
「こう、妖力を自分自身のように扱ってだな……。うーん、こればっかりは感覚だからなあ。慣れてくれとしかいいようがないんだよ。」
父が妖力弾を見せたり、身振り手振りを交えて説明してくれているがよくわからない。
「どういうこと?」
私とは違い理解している様子のレミリアに聞いてみる。
「えーーっと、なんというか、うーーん。お父様どういうこと?」
おいさっきも見たぞこの流れ。千日手になる気がする。
理解出来ない、というかしにくい理由は分かっている。おそらく感覚的な妖力や魔力といったものを理論付けて考えようとしているからだ。理解できない物事があるとき普段ならそれが正解なんだろうが、
ようは難しい事は考えずに在るがままにこなす事が大事なのだろうが、科学技術に染まった頭では意外と難しい。ここでも前世持ちであることが仇になった。
数日経過してなんとか妖力弾を撃つところまではもっていけた。つまり本当に感覚だけでできるものらしい。ようはイメージだ。私は自身の妖力を巨大な粘土に見立て、手を使わずにちぎって飛ばす感じでやっている。だから形はかなり歪な球体になってしまっているが、最初に比べればかなりマシだ。
因みに妖力を使った武器を作る方法も教えてもらった。私の武器は「ミョルニル」神話上では雷神トールが愛用していたとされる、殴打専用の武器だ。あくまで私の妖力で作った模造品なので実物とは程遠い。だから投げたら戻ってくるとか、伸び縮みする機能もない。はずなんだけど……なぜかレミリアの「グングニル」は投げたら戻ってくる。なぜだ、レミリアがすごいのか、私がへなちょこなのか。たぶんどっちもだな、レミリアぱない。
◇◇◇
今日は能力についての勉強だ。能力とはある一定以上の力をもつ生物が保有している特別な力のことを指すらしい。ただ、スカーレット家は代々能力を先天的に持っているらしい。因みに母は「傷を癒す程度の能力」、父は「均衡を保つ程度の能力」を持っているという。どっちもすごく汎用性高そう。
「次に能力を探す方法だが、自分の能力が何かを心に問いかけるといい。自ずとわかることだろう。最後に使い方だが能力を見つける際にわかる。だが、多少曲解することにより用途を広げられる場合もある。ようは本人次第だな。」
父は一息置くと、
「まず、レミリアからやってみろ。」
と言った。
少し深呼吸をしてレミリアは目をつぶる。緊張しているのだろうか?
数十秒空いた後に、
「ええっと、運命を操る程度の能力?」
なんだそれ、すごい強そう。
能力の用途をまとめると、過程があり事象があるとする。そしてこの能力をつかうと過程の部分を弄くり、そのあとの事象を変える能力らしい。でも過程は少しずつしか弄くれないので、事象を大きく変えるには長い年月が必要らしい。なんとも小難しい能力だ。
「じゃあ次、カルラやってみろ。」
私は意識を集中し心に能力を問いかける。するとなんとも不思議な感覚と共に一つの文言が思い浮かんだ。思い浮かんだままに口にする。
「対象を同格にする程度の能力?」
ついに明かされたカルラの能力!
ってほど引っ張っていませんしこのタイミングで出すのが妥当かなぁと
レミリア視点も入れていきたいですね。
3/9改訂