Phantasm Maze   作:生鮭

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step by step

 紫が言うところの『幻想入り』を果たす数週間ほど前。

 私はある魔道具を作る事に日夜執心していた。睡眠時間を削り、食事を抜き、ついにはティータイムまでも削って魔道具製作に取り組んだ。

 

 それほど緊急性の高いものだったから?

 

 いや、特にそういうわけではなく、RPGとかにのめり込んでついつい徹夜を繰り返してしまう、アレだ。魔道具作りというものは、なかなかに中毒性が高く、止めるに止められなかったのだ。

 

 ともかく、『幻想入り』の準備やら何やらで忙しそうにしていた魔女何某も魔道具の沼に引きずり込み、10徹ぐらいして漸く念願の魔道具が完成した。

 

 私はその魔道具を『不可視の瞳(インビジブルアイ))』と名付けた。

 

 うん、自分で名付けておいて何だが、やっぱり厨二臭がプンプンするネーミングだ。こじらせたつもりは無かったんだけれど、かっこいいから仕方ない。・・・こじらせてないからな?

 

 この魔道具の機能を簡単に言えばリモートカメラだ。子機が撮った映像を離れた場所にある親機が映し出す。たったこれだけの簡単なシステムだが、有用化するまでが長い道のりだった。詳しい仕組みは長くなるから割愛する(無慈悲!)。

 

 

 

 そうそう、どうしてこの話を始めたかって?

 

 

 

 それは私が子機を起動し忘れたせいで紅魔館当主(真)殿からお叱りを受けているからだ。・・・早く終わらないかなぁ。

 

「ちょっと、聞いてるの?」

「・・・今日のディナーは茗荷サラダを所望する」

「はぁ?」

 

 呆れた顔のレミリア。指でオッケーマークを作る咲夜。ポケットに入れっぱなしでくたびれている(そんなことあるわけないが!)子機を弄りまわすオウレット。・・・ちょっと!そんな方向に曲げたら壊れちゃうって!!

 

 柄にも無く(自分で言うものではないが)緊張していたようで、いつもの場所に帰ってきた事に安心感、充足感を覚える。後はフランにさえ会えればいいんだけど・・・ちょっと厳しそうか。

 

「・・・まぁいいわ。貴女のそれは今に始まった事じゃないし」

「・・・ごめんなさい」

 

 否定できないのが悔しい。

 

「兎に角、報告してくれるかしら。貴女の見た賢者たちを」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「お咎めなし・・・ね。まぁ予想通りといったところかしら」

 

 報告を終えたレミリアの感想。今は咲夜の入れた紅茶をしばいている真っ最中だ。今回の紅茶は珍しくストレートのアールグレイ。そうでもしないと今すぐに眠ってしまいそうだ。

 今日は何とハードワークであった事か。幻想郷侵攻に寝坊したと思ったら、紫が訪ねてきて酒に付き合わされ、かと思ったら頭のおかしいやつとドンパチやって。挙句の果てには紅魔館代表として会議に出席もするし。まぁこれは後々のためにも必要だった事として、ともかく瞼と瞼がくっつきそうである。

 

「予想通りって、どうして?結構意外だったんだけど。指の一本や二本詰めるぐらいのは覚悟してたのに」

「指を詰めるって・・・あなたねぇ。本来だったらそれぐらいじゃ済まされないわよ。カルラが生贄になるか、一生を隷属としてこき使われるか、どっちかね」

 

 生贄って・・・ボスの首を差し出して組は存続するみたいな話?

 指を詰めるのだって嫌だってのに!

 

「まぁどちらにせよ最悪の事態は免れたわね。八雲に礼を言っておいて頂戴」

「確かに藍には感謝してもしきれないね。阿求とか天魔の間に入ってとりなしてくれたし。何あげればいいかな?」

 

 狐の好物と言ったらやはり油揚げなのだろうか?

 

「ん?あぁ、式じゃなくて主人のほうよ。紫が頭脳だとすれば、式神は頭脳が考えた通りに動く手足でしかないもの。あれと会話するのはなかなか疲れるところではあったけれど、それだけの成果があったなら御の字ね」

「私は暇だし先に戻ってるわ。・・・あ、それ壊れてないか診るから後で持ってきて」

 

 手慰みにぺらぺらと紙をめくる置物だったオウレットは、おもむろに立ちあがり部屋を出ていった。自分で持ってけばいいのに。同じように思ったであろうレミリアも鼻白んだ面持ちでそれを見送る。

 

「・・・まぁいいか。で?紫と何話したの?」

 

 取り敢えず、とレミリアに水を向けるとすぐに真剣な顔に戻った。二人だけの部屋に適度に張りつめた空気が流れる。こういう時すぐに切り替えられるのがレミリアの尊敬に値するところである。

 

「貴女にも・・・いや、私達全員に深く関係のあることよ」

 

 そんな重要な事を私抜きで話すのもどうかとは思うが。

 

 

 

 

 

 

『命名決闘法案』

 

 なんだこれは?

 レミリアから渡された紙束の一枚目に、いたく達筆な字で手書きで書かれていたたった六文字のその言葉。私は酷く興味をひかれるままに、また紙を一枚めくった。

 

『妖怪同士の決闘は小さな幻想郷の崩壊の恐れがある。だが、決闘の無い生活は妖怪の力を失ってしまう。そこで次の契約で決闘を許可したい』

 

『 一つ、妖怪が異変を起こしやすくする

 

  一つ、人間が異変を解決しやすくする

 

  一つ、完全な実力主義を否定する

 

  一つ、美しさと思念に勝るものは無し

 

  ・・・・・・

 

  具体的な決闘方法は後日、巫女と話し合う。

          

           (東方求聞史記より引用)』

 

 その後にも法案の細かな内容が綴られている。

 

 ふむふむ、・・・素晴らしい。見れば見るほど素晴らしいものじゃないか。

 

 私のような吹けば飛んでしまうウーマン(幻想郷準拠による)接待とでも思えるほどに、弱者に優しい設計になっている。ただ一つ気になる事が・・・、『勝っても人間を殺さない』って人間以外なら殺されるのだろうか?なんで『相手を殺さない』にしないのか。

 

 そして『新しい幻想郷を作る会』とやらについて。

 

 恐らくこれも紫が一枚かんでいるのだろう。しかしこの法案はさっきの場で話し合うべきではないか。それこそ賢き者が集まる会議で。ともすれば私が出たあの会議は一体何だったのかという話になってくるが、まぁ後で紫にでも聞いておこう。

 

 ただ、推測ではあるが、この法案の採択が私の首の有無に大きく影響を及ぼしたのだろう。もしこの法案が採択された後に私を処そうものなら(一応の)賢者会議に出席した輩として禍根を残す事になるからだ。

 もっと簡単に言うならば道理が通らない。人殺しをした後に、これからは誰も殺さないようにしようだなんて、片腹痛い話である。

 

 ところで・・・『巫女』って誰?

 

「貴女があの気味の悪い空間(スキマ)に消えた後、直ぐに紫がその法案を持ちかけてきたわ。これに賛同して欲しいって言ってね。いや、『して欲しい』ってより『しろ』のほうが正しいわ」

 

 苦虫を噛んだような顔でレミリアは、ほとんど口を付けていないカップの縁を弄りながら続けた。

 

「あっちには人質(貴女)がいたんだもの、選択肢なんてあってないようなもの・・・。・・・完全にしてやられたわね」

 

 なるほど、漸く合点がいった。なんで戸籍を持ちだしてまで私を当主に据えたかったのか疑問だったが、最初から掌の上で踊らされてたわけか・・・。

 

「まぁ特に反対する理由もなかったから正直その条件だっていらなかったのだけれど、完全に想定外だったわ。今日までにあんなものは見えなかった・・・。ということは修正できない必然だったということ・・・?」

 

 カップを弄る指を止めずに思考の海へと沈んでいったレミリア。私がレミリアをじーっと見つめてもこちらに見向きもしない。

 こうなったレミリアを止める手段は存在しないのだ。しかし私もいくつか聞きたいことがある。目の前の姉(妹になったんだっけ?)をサルベージするか、私がギブアップするか。

 これは長期戦になるぞと、気付けにティーカップに残ったアールグレイをグイっと飲み干した。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 どうやらダメだったらしい。

 

 眼前に広がる真っ白い空間を眺めながら、私は眠りに落ちてしまったことを悟った。

 この場所に音はなく、匂いもなければ、色もない。正しく『無』と表現するべき空間である。

 

 最後にこの場所に来たのは紫に酒を強要された時だった。まぁ端的に言えば酔いつぶれただけなのだが。いずれにせよ眠ってしまうとここに来てしまうことはわかっていたし、故に眠らないように気を付けていたはずだったが、・・・まぁ、疲れに勝てなかったというわけだ。

 

 しかし最悪だ。何が最悪って、ここでは時間の感覚が狂ってしまうのだ。前々回は一日、前回は三日。今回はいつまで眠っているのやら。まさかここが竜宮城であるわけでもなしに、気づいたら周りが年寄りになっていることはないだろうが。・・・そうであってほしい。

 

 一通り現状把握を終わらせると、ぐるりと周りを見渡す。

 

 見渡すといっても今の私は身体を持っていない。視界に移るものはすべて色を失くし、距離感だけではなく私自身の存在すらも曖昧にしていく。

 相も変わらず気が狂いそうな空間である。こんなこの世の終わりみたいな空間でも私が正気を保っていられるのは、いつかは終わることを知っているからだ。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 ほら来た。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 音のない世界に、響く耳鳴り。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 これは終わりの合図である。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 目が覚めたら更地とかになってなければいいけど。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 少し恐い。

 

 

 

 ・・・・・・キ――――ン

 

 

 

 さぁ、目覚めよう。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 ・・・知らない天井だ。いや、嘘。

 

 目を開けると天蓋、背中には柔らかな感触、お腹にはもふもふの羽毛。

 マイベッドである。

 

 一つ大きな欠伸をすると、徐々に意識がはっきりとしてきた。

 

 王子のキスいらずで永い眠りから覚めた割には空腹感はあまりない。しかし何か腹に入れないと落ち着かない。デブ道まっしぐらの思考回路。

 

「おはようございます。・・・あら?お目覚めになりましたか」

 

 体を起こそうとしたらちょうど咲夜が部屋に入ってきた。そして都合のいいことにサンドイッチを乗っけた台車を押しながら。

 

「おはよう咲夜。ところでそれは誰の朝餉かな?」

 

 わかり切ってはいたけれど。それでも逸る気持ちを抑えきれずに、意地悪な質問が口をついてしまった。まぁわかっているけれど。

 

「私のですよ?うっかり食べ損なってしまったので」

「えっ」

 

 

 

 

 

 ・・・びっくりしすぎて言葉が出なかった。まさしく絶句した。

 開いた口が塞がらない間抜け面をさらしていると、咲夜が冗談です、と言った。

 

「流石にカルラ様を差し置いて食事をするわけないじゃないですか。ちょっとしたグッドモーニングジョークですよ朝食だけに」

 

 ・・・これは私の知っている咲夜なのだろうか。私の知る咲夜は、起き掛けにオヤジギャグをぶっ放す瀟洒のかけらも感じられない美人さんでは決してないはずなのだが。まさかちょっと寝落ちしたら別の世界線に来ていたとかそんな壮大なオチだろうか。

 それとも眠っていた間に、紅魔館では空前絶後のオヤジギャグブームが起きているのだろうか。だとしたら発端は誰だろう見つけ出して処さねば。

 

 自分で言ったギャグがツボにはまったのか、クスクスうふふと笑う咲夜に私、カルラ・スカーレットはひどく動揺していた。

 

「とりあえず、これは私が食べていいんだよね?」

「ええ、お召し上がりください。ああっ、ご安心を!毒や食べられないものは入っておりません。どうか安心して、ゆっくりと味わって、お召し上がりください」

「余計な一言が過ぎるでしょ」

 

 今からそれを食べようとしている人に対して、こんなにも食欲を減退させる言葉もないだろう。え、え、本当にどうしてしまったんだ十六夜さん。

 ダメだ、見た目じゃ中身がわからないようになっていやがる。

 

 恐る恐るサンドイッチを手に取り、口に運ぶ。

 

「・・・別にこれといってゲテモノの味は、・・・・・・ッ!?」

「ブラックコーヒーペーストですわ。寝起きにはちょうどいいかと」

 

 バカ苦ぇっ!!

 咲夜!ミルクミルク!!

 

「ありがと・・・ゲホッ、ゲホゲホ!!」

「ニガヨモギ茶でございます」

 

 苦ッッッ!!!

 

 

 

 

 

「落ち着かれましたか?」

 

 誰のせいだ誰の。

 すまし顔でそんなことを宣う咲夜に、思わず暴言が出そうになったが、寸でのところで押しとどめる。淑女たるものそう簡単に暴言を吐いてはいけないのだ。

 

「おかげさまで」

「それは何よりですわ。あとお嬢様から、準備ができ次第執務室の方にと言伝を承っております」

 

 まぁいつまでもマイベッドにへばり付いているわけにもいかないし、ぼちぼち準備していこうか。

 悪戯(なんて可愛らしいものではなくもっと邪悪なものであった)が上手くいったからか、上機嫌にに咲夜が台車を押しながら出ていくのを見届けると、一つ大きく伸びをしてベッドから起き上がり、髪を梳かし始める。

 

 レミリアから、か。フランがらみのことだろうな。というかレミリアがこの時間帯()に起きているという珍事に今更ながら気づいた。

 珍しいこともあったものだ。

 

 

 

 

 

 軽く身だしなみを整えてから部屋を出て、どうせなら体を動かそうと歩いて執務室を目指す。といってもそこまで距離はないので大した運動にはなるまい。

 

「リサ、おはよう」

「あ、カルラ様。おはようございます」

 

 途中で廊下を掃除しているリサに会ったので挨拶をしておく。妖精メイドのまとめ役という未曽有の大役を問題なくこなす彼女は紅魔館にとって貴重な人材である。そんな彼女に咲夜やレミリアも一目置いているし、私としても感謝しかない。

 

「いつもご苦労様。ちゃんと休憩とってる?なんだか働いている姿しか見たことがないんだけど」

 

 掃除に洗濯、食事に給仕などなど。紅魔館はかなり広く、雑務は尽きない。その上いくらメイドがたくさんいても役に立つか立たないかと聞かれたら閉口せざるを得ない。

 そんな中真面目に仕事をこなし、不平不満の一つも言わない彼女(エンジェル)に、咲夜やレミリアも目をかけているし、私としても感謝しかないマジ天使。

 

「いえ、しっかり休憩は取らせてもらっていますよ。他のみんなのためにお菓子を作ったり洗濯物を畳んだり花瓶を変えたりしています。あ、そういえば花瓶に入れる花を何にしようか考えているんですけど…」

 

 あ、やばいこの子ワーカーホリック(仕事中毒)だわ。

 

「ヒナゲシとかいいんじゃないかな」

「あの小さいヒナゲシですか?」

「うん、赤だしちょうどいいんじゃない?ほら、ここの色とマッチして」

「なるほど・・・考えておきます」

 

 ちなみに花言葉は『いたわり』『休息』だ。

 紅魔館はホワイトな職場でなくてはならない。

 

「そういえばこんな時間にどうしたんですか?いつもならだれも起きてないからと言って、図書館に缶詰だったような気がするのですが」

「そんな質の悪い引きこもりみたいに・・・。いや、間違ってはないのだけれど。まぁ、なんだ、ちょっとレミリアから呼び出しを食らってね。いやいや出てきたってわけ」

 

 それがなかったらまずリサの言う通りになっていただろう。

 

「はぁ、そういうことでしたら後で何か持っていきましょうか?」

 

 リサが持ち前の労働精神をいかんなく発揮しようとしてくる。私としてもリサを馬車馬のように働かせるのは本意ではないのだが、本人が望んでいるなら何も言うまい。

 

「じゃあ、とびっきりに甘いホットミルクをお願い。レミリアにはダージリンで」

 

 レミリアは基本的に名前が格好良ければ何でもいい。雰囲気でどうにかなるタイプの姉だ。

 わかりました、といって掃除道具を片手に去っていくリサを見送って、ようやく執務室の前につく。

 

 

 

 

 

 

「入るよー」

 

 ノックと同時に返事も聞かずに部屋に入る。

 レミリアは来客用ソファに身体を投げ出すように横になっていた。

 

「お疲れ?」

「お疲れ」

 

 ここまで実のない話も昨今珍しいだろう。今日すでに二度目だが。

 レミリアは顔だけこちらに向けるも、立ち上がる様子を全く見せない。今までいくら疲れているといっても、ここまで疲弊した様子を見せることはなかった。

 

 なにかあったのか、と水を向けるとレミリアは深くため息を吐いた。

 

「何か、といえるほど大きな事はなかったわ。ただ、あなたがいないとフランが、その、・・・発散できなくて、一時的に危なかったり、代わりに咲夜を付けたけど、なんだか調子がおかしくなってしまったし、・・・いやあれは元からだったような?」

「・・・なんというかその、ごめん」

 

 遠い目をしながらまくしたてるレミリアには本当に申し訳なく思う。

 というか咲夜がおかしくなったのはそういうわけか。

 

「別にいいわよそれくらい。謝るくらいだったら、咲夜を労ってやって。あの子、普段の仕事に加えて、フランの世話に、あなたまで看てたんだから」

「あー、なるほどね。咲夜がね」

 

 もしかしたら今朝のあれは私怨かもしれない。・・・それは、なんだ。甘んじて受け入れよう。仕事のストレス発散のはけ口ならいくらでも請け負ってやる覚悟だ。・・・ニガヨモギはちょいと勘弁してほしいが。

 

「それで、なにか用があるって聞いたんだけど」

 

 とりあえず早いところフランの元に行きたいので、切り替えて話を本筋に戻す。

 

 レミリアは少しの間口に出したものか逡巡すると、意を決したように口を開いた。

 

「用、というか伝達事項ね。・・・ついに来たわ。狂気の終わりが」

「・・・っ、本当に!?」

 

 ・・・嘘だろ。信じられない。私の見立てではまだ()()()はずっと先なはず。少なくも前にフランに会った時にはそうだった。

 

 レミリアでさえも()()()はわからなかったはずだ。

 

 その運命は何が、いつから、何故変わって紡がれたのだろう。

 

「ええ、でも私にもなぜそれが突然見えるようになったかは分からない・・・。ただ、それが近くにやってくる。そしてそれは紅い月がここ(幻想郷)を照らす夜ということは確実」

「紅い月・・・?それが、狂気と何か関係があると」

 

 期待交じりにつぶやくが、レミリアは首を横に振る。

 

「いや、はっきりとそれが原因とは言えない。他のことが原因で結果として月が紅くなった可能性もある。・・・なんにせよ事を急ぎすぎることだけは避けないと」

 

 そう、レミリアの言うとおりである。こんな時こそ慎重になるべきだ。このチャンスを逃してはフランが陽の目を見ることはなくなってしまうかもしれない。

 

 でもそうとはわかっていても、期待するのをやめることはできず、自然と口元が緩んでしまう。嬉しい、嬉しい、嬉しいのだ。

 レミリアもどうにか冷静であろうと真顔をキープしているが、私にはわかる。何年一緒にいると思っているんだ。隠し切れない喜びがびんびんに伝わってくる。

 

 ある日を境に曇ってしまった顔が、かつてのように晴れやかになるのが嬉しくて仕方がないのである。

 

 はたから見たら、全員が全員回れ右をしそうな絵面だとわかっている。しかし私とレミリアはしばらくその場を動くことなく、喜びをかみしめていたのだった。

 

 

 

 

 先に頼んだ紅茶を持って入ってきたリサが、固まっているのに気づくまでその光景は続いた。

 




遅れましたすいません。

一応生きています。

資料集めたり、アニメ見たり、バイトやったり、馬主してたらこんな時間経ってました。

こんなに時間を止めてしまって、読者はもちろんのことですが、この作品自体にも申し訳なく思います。

私が書かなきゃこの作品は進まないんですもんね・・・。

とりあえず完結までは絶対に書くので、今後もよろしくお願いします。
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