ということでフラン回ではありません。
絶対次はフラン出しますだから赦して(ry
≪追記≫
三人称っぽくしてみました。
今後もこれで行くかはわかりません。
ある三日月の夜、紅い館のバルコニーに右手に紅茶の入ったティーカップ、左脇に辞書にも似た分厚い本を抱えた少女が現れた。少女といっても,人間でいう肩甲骨の位置からは一対のグレーの翼が生え、ニヤニヤしている口の端からは牙が見え隠れしている。誰が見ても人間ではないその少女の名は紅い館--紅魔館--の二女であり末っ子のカルラという。少女はバルコニーにある紅魔館でも数少ない白を基調としたテーブルにティーカップを置き、自身は月明かりを背に椅子に深く腰掛け読書を始める。その一連の動作に耳をすませると、本人も意識していないような鼻歌が聞こえる。
「随分と機嫌が良いのね、カルラ。」
「それは、もう、ね。妹と話す日が待ち遠しいもの。」
しばらくすると館の中から双子の姉であるレミリアが話しかける。
そう、妹が生まれるのだ。そのおかげで初めて姉となるカルラのテンションは、一か月前からずっとこの調子だ。
妹が生れると知った時も酷かったが、生まれるのが近くなると、また落ち着きがなくなってきた。そんな妹を見かねてかレミリアは提案する。
「お父様が最近忙しいらしくて、食糧が無くなりそうなの。別に数日食べなくてもいいんだけど・・・あなた最近図書館に引き籠ってたでしょ。運動も兼ねて狩りに行かない?」
しかしこうやって話を持ちかけてきたということは空腹の限界が近いのだろう。というか吸血鬼にとっての狩りの対象は、人間なのでカルラにとっては元同族なのだが、
「引き籠ってたって・・・まあ運動してなかったのは確かだしいいんだけどさ。」
特に思うところはないらしい。それを聞くとレミリアは満足そうに頷いた。
「じゃあ準備したら裏口に集合ね。」
「なんで裏口?」
「ハンターがきてるのよ。気付かなかった?」
「まったく。」
こんなに騒がしいのに気付かなかったらしい。いくら読書に夢中といっても限度があるだろう。本の表紙をみると、転移魔法の魔道書らしい。最近妹は魔法に凝っていて、図書館引き籠り生活もその一環だという。
「じゃあ、準備してくるねー。」
と脇に魔道書を抱えて部屋へ向かうカルラ。ふと白いテーブルに目をやるとティーカップが置きっぱなしになっている。声をかけようと振り向くとすでにいない。少しびっくりしたが、転移魔法に思い至る。あの妹は少し姉をこき使い過ぎ気がする。それにしてもあの魔道書はあんまり進んでない気がしたが気のせいだろうか?
◇◇◇
レミリアは苛立っていた。いくらなんでも遅すぎる。狩りの準備といっても日中でもない限り、動きやすい服装に着替えるだけのはずだが・・・
「おまたせー。」
「なにをそんなに準備してた・・・・・・・の。」
なにそのガチ装備。魔法製のなんか堅そうな鎧、なんかパンパンのリュック、しまいにはミョルニルまで片手に携えている。ツッコミ待ちなのか?はぁ。そういえばこの引き籠りは外に出たことがなかったな。そのまま外に出ようとするカルラをひっ捕まえ、引きずり戻す。
「あなたこのまま出て行ったら確実に怪しい人よ?特に持ってくものはないから手荷物は軽くしておきなさい。」
「いやでも、お外恐いし。」
「どんな偏見持ってるのよ早くしなさい。」
カルラは渋々鎧を解き、いつも着ている寝巻になった。
「これは持ってっていいでしょ?」
「それは助かるわ。というかいつの間に転移魔法なんか使えるようになったの?」
「だてに引き籠ってないよ。なんか転移魔法に適性があったみたいで、簡単なものだったらノーモーションからでも使えるしね。」
「それは・・・・・すごいわね。」
詠唱や魔法陣もなしに転移魔法使えるってかなり、いや、ものすごくヤバイことじゃないだろうか。
「じゃあいきましょうか」
「おー。」
気の抜けた掛け声により二人の吸血鬼による狩りが始まった。
◇◇◇
一口に狩りと言ってもやり方は豊富で,罠や網を使った方法、猟犬や鷹といった使役している動物を使ったなどが挙げられる。では使役した動物を持たず、罠のようなまどろっこしい手段を必要としない吸血鬼はどのように狩りを行うのか。
それは、吸血鬼の身体能力を最大限活用して、上空から一気に急降下し通り魔のように獲物の意識を奪うというものだ。よく漫画やアニメである首トンというやつだ。レミリアが対象に狙いを定め、うなじのあたりにある延髄という器官を叩き一瞬で一時的な呼吸困難に陥らさせる。そこを同じく上空で待機していたカルラが回収する。その一連の動作をなんと約2秒で行う。文字通り目にもとまらぬ速さというやつだ。
「やっぱり手馴れてるね。」
次々と相手の意識を奪っていくレミリアを見てカルラはつぶやいた。
片手間に気絶している食糧を回収し2、3個まとめて魔法陣に乗せ、調理室に転送していく。今頃調理室はてんてこ舞いになりながらコックが下処理をしていることだろう。
ふと、手が止まった。吸血鬼としての本能が極上の血を嗅ぎつけたのだ。おそらくレミリアも同じ匂いを感じたのだろう。嬉しそうな顔を浮かべこちらに近づいてくる。しかし匂いの根源に目を向けると途端に嫌そうな顔をした。それもそのはず、その匂いは紅魔館までとはいかないがこの町一番であろう屋敷の方向からするのだ。
「ねぇねぇレミリア、結構集まったしあれで最後にしようよ!あれは絶対おいしいやつだよ!「だめよ。」・・・なんで?」
「どう考えたってガードが堅すぎるわ。相手も私達好みだとわかっているし。同族の匂いも混じってることからハンターも中にいると思うわ。・・・・・・・・あれ?」
名推理を展開し、どうよこの推理!と言わんばかりのドヤ顔を妹に向けると、そこにもう姿はない。
あわてて周囲に視線を奔らせると、転移魔法によっていまにも突撃しそうなカルラがみえた。
「待ちなさい!あれは・・・・」
姉の制止も聞かず魔法陣を発動させると館の中に消えていった。
「追いかけないと・・・・。」
いくらハンターといえども吸血鬼の中では強い部類に入るレミリアを仕留めることは難しい。だがそれは二流や三流の話。一流ともなるといくら力を持っているからと言っても子供の吸血鬼に後れをとることはそうそうない。レミリアが止めようと言ったのは一流のハンターの気配がしたからだ。
このままではカルラが危ない。レミリアは最速で館に突っ込んだ。
「ここは・・・・寝室・・・かな?」
正確には客間なのだがそんなことは知りようがない。だが幸いなことに獲物はすぐ近くにいる。どう調理しようか。まずは、味見だな。などと舌舐めずりしながら考えていると、
銃声が響く。
「あ・・・・・・?っ・・がああぁぁぁっ!!!」
「煩いぞ餓鬼。ハンターの家に単身で乗り込んできたから身構えたが、子供だとはな。すまんが手加減は苦手なんだ。するつもりもないがな。」
脇腹が燃えるように熱い。銃声がしたほうを見ると掛け布団の端から銃身が見えた。同時に身体の治りが遅いことを知る。
「な・・・にが・・・?」
「なんだ
名も知らぬハンターは立ちあがって懐からナイフを取り出す。
「これは純銀製だ。確実に殺せるだろう。ハッ、せいぜい吸血鬼に生れたことを恨むんだな。」
生れたことを恨む。
その言葉を聞いたとたん怒りが沸き起こった。右手に握りしめていたミョルニルをなけなしの力でぶん投げたあと、自身も走り出す。ハンターは驚愕の表情を浮かべていたが、身体をひねって避ける。が、一瞬の隙にカルラはナイフの柄の部分を右脚で蹴り上げる。
「貴様まだこんな力を・・・・・っ!」
「私が・・・・・ッ!生れたことを恨むなんて万が一にもないッ!!」
カルラには前世で死んだときの記憶はもうほとんど残っていない。だが死ぬ間際、とてつもない後悔に苛まれたのははっきりと覚えている。忘れてはいけない、忘れられるわけがないモノ。そんなこともあってか例え吸血鬼の生であっても恨むなんてことはあってはならない。蹴り上げた勢いそのままにハンターを壁に押し付け、首を締めあげる。
しかしハンターは余裕を崩さない。
「・・・・・クソッ!だがなぁ、これで・・・終わりだ・・・餓鬼が!」
隠れていた手に持つのは純銀の仕込み針。これを刺せば致命傷にまで追い込み、最悪の場合死が待っている。
「なっ・・・・・!?」
だがその針がカルラに届くことはなく、途中で男の手からこぼれ落ちる。
何故男が針を取り落としたかと言えば、自宅を地響きのような強烈な衝撃が襲ったとか、炎が包み込んだかのようなはたまた刺し殺すかのような膨大な魔力が男の全身を突如襲った、とかが挙げられる。
しかしその二つの理由の大本、起因には男が殺しかけた少女、カルラの唯一の姉が深く関係している事は明確だ。
その姉ーレミリアーは息を荒くしながらも両手で男の首を絞め、顔を真っ赤にしている妹を一瞥し
「そこまでよ、カルラ。・・・・・少し後ろに下がってなさい」
「・・・・・ッ!こいつは私が殺っ・・・・・!」
「いいから下がってなさい!!」
穏やかな面しか見た事が無かったカルラは姉のいつにない剣幕にたじろぐ。なにがいったい姉をここまで感情的にさせているのか分からなかった。
壁に手をつき震える脚でなんとか立っている男を、凍てつく視線で睨みつける。
「私の
風が一閃、ハンターの手首がボトリと落ちる。男がそれを認識する次の瞬間にはレミリアの手刀が男の首を捉えていた。そして男の意識が、命が途絶える。
パンッとレミリアの平手がカルラを打った。
「一人で突っ走るからこんなことになるのよ。せめて私を巻き込んで転移してくれればこんな事にならなかったのに。姉の意見はしっかり聞くものよ。もう馬鹿なことはしないで頂戴っ。ううっ・・・!」
カルラの脇腹に魔力を流しつつ応急処置を施していく。最初は、姉としての威厳か淡々としていたが最後のほうは涙交じりだった。
「ごめんね、レミリア。でもレミリアもお腹減ってそうだったし、美味しいものを食べてほしかった、の・・・・・」
カルラは意識も絶え絶えになりながら言葉を紡ぐ。
「本当にごめんなさいね?レミリア。」
「そんなことで・・・その気持ちはありがたいけど、あなたが怪我してるなら本末転倒じゃない・・・。私は、あなたを失いたくないのよ・・・。」
「ありがとう。こんな・・・」
私に生きる理由を確かめさせてくれて、そう続けようとしたがカルラの意識は持たなかった。レミリアは一瞬焦ったが疲労と痛みによる失神のようで、命に別状はない。 そのことにホッとするが、
「なにを言おうとしてたのかしら?」
周りが騒がしくなる。轟音を聞きつけ周囲の住民が駆けつけてきたのだ。
レミリアは鬱陶しそうな顔をすると、妹とハンターを抱えあげ自身が開けた巨大な縦穴から飛び出し、館の方向へ向かった。
空が白み、吸血鬼の時間は終わりを告げる。
この後、カルラには外出禁止令が出た。だが「お外恐い」状態になったカルラは外に出ようとすることはなく、