回復薬を調合したら世界が変わった   作:エとセとラ

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第10話【シャルのカマクラ上手術】

「なぁ、エマ」

シャルを見送ったアルマは、エマを見ずに語り掛けた。

「どう思う?」

「多分、アルマと同じことを考えてるわ」

「そうか。そうだよな。」

 

 いつもに比べ、今日は陽気な昼下がり。

元気に走る娘の後ろ姿を見ながら、親二人は、これからの事を考えていた。

 

 

   *   *   *

 

 

「ハリマグロ!」

「サシミウオ!」

「うーん、眠魚(みんぎょ)!」

「おおっ!これはドス大食いマグロかニャ!?」

「残念カジキマグロでした~」

「ずるいぞ!後付けだ!」

「言ったもん勝ちですぅ~」

「ニャアア!!!!」

 

 ニャスケと二人でカマクラを作っています。

先ずは雪をたくさん集めて、ギュウギュウに固めて山にします。

それから表面の一部を除いて水をかけ、放置することで凍らせる。

わたしが四つん這いで入れる程度の大きさの入口を作ったら、そこからは中の雪を掻きだす作業だ。

カマクラ作成には主にスコップを用いるが、四角形に切れ目をいれ、下辺にスコップを差し込み、梃子(てこ)の原理で軽く煽るとブロック状の塊ができる。

わたしとニャスケは、その雪の塊をカマクラの外にリレー方式で運んでいる真っ最中だ。

塊の大きさに合わせ、魚に例えるごっこ遊び。

わたしだって、都合のいいことに10歳の女の子なんですよ?たまにはこういうこともしたくなります。

 

 苦節数時間、遂に完成したカマクラを、わたしたちの秘密基地にした。

気になる中の広さだが、子供が2人卓袱台(ちゃぶだい)を囲めるくらいには広い。

結構、頑張ったと思う。

卓袱台の代わりに、雪できれいな立方体を作り、その上に広葉樹の葉を敷き詰める。

枝ごと置いたり、葉だけで置いたり、小石を置いたり、工夫して、一つの層を拵えた。

最後に乗せるのは薄く加工した木、今度ベースキャンプから余った布をテーブルクロス代わりに持ってこようと思っている。

 水筒に入れてきたホットドリンクを二人で飲む。

 

「「―――ふぅ……」」

 

一仕事終えた充実感に、わたしたちは大きく息を吐いた。

 

 

「ところでニャスケ」

「ニャに?」

「実はわたし、2週間後に遠くに行かなきゃいけなくなっちゃって」

 

 ギルド出張所からの通達を、ニャスケにも話す。

元オトモアイルーなら、ある程度の事情は察してくれるだろうと思ってのことだ。

寂しそうな顔をしてくれる半面、ふと怪訝な顔をする。

 

「おかしいニャ、確かにウカムルバスは伝説級のモンスター、だけど、大規模ニャ討伐にしては(いささ)(おごそ)か過ぎる。ニャにかキニャ臭い」

「というと?」

「そもそもヒラフヤ山脈のどの辺りにウカムルバスが確認されたのか、シャルは聞かなかったのか?」

「うん……山脈一帯が危ないのかと思ってた」

「いくら大きくても、ウカムルバスが構える巣は半径1km未満かニャ。山一つニャらまだしも、山脈丸ごとというのはニャい」

「なるほど。確かに離れた場所で開拓しているわたしたちが、依頼を途中でやめてまですることではないのか」

「そういうこと。でもギルドがそう判断したってことは、恐らく、調査員の(ニャか)にこう仕向けた奴がいるんじゃニャいかニャ」

 

 ヒラフヤ山脈の特産品、それを独占出来れば、流通ルートにさえ気を付ければかなりのお金が生まれるだろう。

やることがかなり大胆だが、先行投資として相当な金額と時間をかければ、十分に元がとれる。

考えてみれば起こりえないことではないけど……。

 

「でもさ、ニャスケ。例え目標がなんであれ、雪山で行動する以上モンスターからの襲撃に備えてハンターも雇わなきゃいけないよね?」

「どこにでも、悪い人間はいるんだよシャル。金さえ積めばニャんだってするようニャ人間が、ニャ」

「ギルド出張所の人は、ウカムルバス討伐の為に全国から有志を募ってるっていっていたけど」

「利用してるんだろうニャ。自分たちでは動かせニャいポッケ村の住民その他諸々をこの場所から遠ざけて、尚且(ニャおか)つ仮の目標を設定してあげることで自分たちがしようとしてることに目がいかニャいようにしてると考えるのが自然かニャ」

「うーん……もし犯罪を起こすとしたら、ポッケ村の人たちが避難し、討伐隊が到着する2週間後、前後1日の間かな……ねえ、ニャスケ」

「ニャんだ、オトモアイルーニャらやらニャいぞ」

「ううん、違う。その悪い人たちが本当にいたとしたらさ」

 

 悪い人たちが本当にいたとしたら。

あまり考えたくはないし、わたしが出会った人たちの中に、悪い人はいなかった。

思えば、エマとアルマの力が大きかったのだろう。

自ら交友関係を作ることはあまりしてこなかったし、そもそも必要がなかったのだ。

親の後ろをついて歩くこどもでいることが、わたしにとっても都合がよかったし。

前世の記憶があるからか、この世界で悪いことをするという意識が全くといっていいほどなかった。

正攻法で金を稼ぐ人ならたくさんいるんだろうけどね。

 

 ―――この世界にも、シノギはあるのか。

ヒラフヤ山脈の特産品と決めつけなくても、モンスターの密漁、鉱石の独占、考えればいくらでも出てくる嫌な言葉。

奴らはきっと、「賢く生きてるだけ。」と言い訳するのだろう。

確かにそうかもしれない。正直者が馬鹿を見るのは何処の世界でもそうかもしれない。

でも、そんな(よこしま)なやり方、私は許せない。

わたしたち人間は、自然を愛し、自然に愛されなきゃいけないと思ってる。

それがハンターを目指す者の責務であり、矜持(きょうじ)だ。

だから、私は決意した。

 

「懲らしめたいんだけど、協力してくれない?報酬は弾むよ」




ほんわか回になるといいなといった昨日の自分を懲らしめてくれシャル……頼む……あとパンツ見せて……
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