回復薬を調合したら世界が変わった   作:エとセとラ

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平日、辛い。


第8話【シャルの秘境探索術】

 「うっひょー!」

 

 ここが秘境だと気づいたときに、わたしはあまりの嬉しさに転がりまわった。

本当に、不思議。

こんな寒い、こんな山奥なのに、積雪していないどころか根雪すらもない。

少し遠くを見ると雪が降ってるのになぁ。

まるで、この場所だけ避けているような。

まるで、この場所だけ何かに護られているような。

晴と雪の境界線が、この秘境を形作っていた。

 

 レアアイテム、ゲットだぜ!と気持ち新たに草原から身を起こすと。

 

 

 身を起こすと。

 

 

 目の前に、アイルーがいた。

 

 

 思わず飛び退()いてしまったが、目が合ったことに驚いたのか、アイルーも同時に後ろへ飛んだ。

互いが互いを警戒し、臨戦態勢を作りながら、一定の距離を保つ。

一瞬にして張り詰める空気。

先ほどまでとはうってかわって、狩るか狩られるかの世界が構築される。

わたしも腰に据えた片手剣に意識を向ける。

いつでも抜けるように、いつも通り抜けるように。

アイルーの毛も逆立っているのが伺える。

 

「わたしの言葉は、わかる?」

 

警戒したまま声をかけるが、答えは無言。

全てのアイルーが人語を話せるわけではないのだが、戦わないならそれに越したことはない。

 

(やるしかないか……)

 

ゴクリと唾を飲み込んだ。

人間とアイルーだけが存在するこの秘境に、突如として戦いの火蓋が、今!

 

飛びかかってきたアイルーにわたしは。

 

 

わたしは懐からマタタビを取り出した。

 

 

「にゃ~~~~~♡♡♡♡♡♡」

「うわこいつチョロい」

 

 

 *   *   *

 

「なんで無視したの?」

「そんニャこと言われても、初めて見る人間に最初から心を開くアイルーニャんて存在しニャい」

「それもそっか。その割りには、マタタビ一つでKOだったけど?」

「お前さんは、この辺りでマタタビが取れニャい事を知らニャいのか?」

「いや、知ってるけど。でもそれなら君もマタタビなんて知らないんじゃないの?本能?」

「本能もあるかもニャー。でも、知らニャいと言ったら嘘にニャる」

「そう言えば共用語上手だね。昔は人間(こっち)側で働いてたの?」

「……秘密かニャ。お前さんに(はニャ)す義理はニャい」

「そっかぁ、残念。じゃあ残りのマタタビは捨てち」

「ぼくは元オトモアイルーだニャ」

「お前ほんとチョっロいな!?」

 

 座るのにちょうどいい岩があったので、そこに座って話をする。

アイルーはマタタビを抱いて草原を転がりまわりながら、わたしの問いに答えてくれた。

しかし、マタタビに対しては完全にアホの域だなコイツ。

村で働くアイルーに、「いつもごくろうさま!」ってマタタビをお土産に渡したことがあったけど、その時のアイルーは「感謝感激雨あられ、ニャ!」と喜びながらも丁寧にお辞儀を返してくれたものだけど。

さっきまでの張り詰めた空気はどこにいってしまったのか。

信じられないほど無防備なアイルーである。

 

 しかし、元オトモアイルーか……。

わたしと一緒にきてくれたりとか、してくれたりとか。

 

「お前さん、ハンターか?」

「ううん、まだ見習いだよ。そのうちなりたいと思ってる」

「やめとくんだニャ。ハンターはとっても危険ニャ職業。お前さんみたいニャ年端もいかニャい少女じゃ採取クエストがいいとこだ」

「流石元オトモだね。じゃあさ、わたしと一緒にきてよ。一緒にハンター、やらない?」

「やらニャい」

 

ですよねー。

会話を続けてて思うが、このアイルーには何か理由があってこんな辺境にいるに違いない。

ハンターの話をするアイルーは、話したくない過去があるかのような、そんな雰囲気を(まと)わせている。

ところで人語を話すアイルーって、語尾にだけ「ニャ」がつくイメージがあったけど、このアイルーはなんか違うなぁ。

 

「でもまぁ、アイルーにも義理はある。ニャんでもは出来ニャいが、ニャにか頼みは聞いてやるよ」

「じゃあわたしのオトモに」

「ニャらニャい」

「どうしても?」

「どうしても」

「マタタビあげるよ?」

「うっ」

「毎日あげるよ?」

「うぐぅ」

「少女シャルのー!!」

「ニャんだ急に」

「オトモアイルー事前登録キャンペーン!ハンターになるまでオトモアイルーをしてくれたら、毎日3個のマタタビをプレゼント!」

「ニャ!?」

「ハンターになった後も継続してオトモアイルーをしてくれるなら、ボーナス特典、あります!」

「ニャん……だと……」

「更に更に!今ならなんと、無料で10連マタタビガチャが!」

 

「―――ニャーーー!ダメニャもんはダメ!ダメったらダメ!もうやらニャいって決めたんだ!」

 

くっそー押しが弱かったかな。

意思は固いようだし、これ以上口説(くど)き続けるのも良くないよね。

しかしお願い事かーそうだなー。

 

逡巡(しゅんじゅん)し、これぐらいなら、と(ひらめ)く。

 

「わかったよ。じゃあさ、君の名前と、ここへの道順を教えてよ。偶然入っちゃったからわからないんだ」

「マタタビ5個かニャ」

「まいどあり!わたしはシャルだよ。10歳!」

「ぼくはニャスケ。よろしくニャ。道順は―――」

 

 雪山の辺境の地、まさか秘境に入れるなんて思ってもみなかったけど、それ以上にわたしは、とても嬉しかった。

帰ったらエマとアルマに話そう。

わたしにできた、獣人種のはじめてのともだち。

 

「……マタタビガチャってニャんだ」

「ふふ、秘密」

「これだから運営は!」

「おっ、君話せるね~」




今回は会話多めでお送りしてみました。
ニャスケって名前は思い付きなんですけど、割と気に入っています。
でもモンハンシリーズですでにNPCとして登場してそうだなぁ。
まぁオリジナルアイルーってことでどうか一つ。

仕事行きたくニャいよ~~~~~~~~~~~~ニャ~~~~~~~~~~~~
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