Fate / ゼロ   作:JALBAS

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話の都合上、カレンのファーストネームを変えさせて頂きました。この話のカレンの名は、“カレン・オルテンシア”では無く、“カレン・シュタットフェルト”です。
あと、カレンの過去や性格、特に父親(言峰綺礼としています)との関係を多少アレンジしています。
年齢も、ルルーシュに合わせて、17~18歳にしています。




《 第一話 》

―― 聖杯戦争 ――

冬木の地で、200年前から始まった儀式で、どんな望みでも叶えるという万能の器“聖杯”を求めて、7人のマスターが7人のサーヴァントと呼ばれる特殊な使い魔を使役して戦う。

サーヴァントは、伝説の英雄が聖杯の魔力によって“英霊”として蘇った、一種の超人である。“セイバー”、“ランサー”、アーチャー“、”ライダー“、”キャスター“、”アサシン“、”バーサーカー“の7つのクラスが有り、”令呪“と呼ばれる紋章を持つマスターと契約する。”令呪“は、サーヴァントの意志を捻じ曲げてでも従わせる絶対命令権であり、3回のみ使用する事ができる。”令呪“を失った者は、サーヴァントとの契約は切れ、マスターとしての資格も失う。最終的に、全ての相手のサーヴァントを倒したマスターが勝者となり、聖杯を手にすることができる。基本的に戦闘は人目を避け、夜間等に人気の無い所で行うのがルールとなる。

冬木独特の霊脈を利用し、過去に4度行われていてる。通常は霊気を溜めるのに60年の歳月を必要とするが、この度、前回から10年しかたっていないにも関わらず、第五次聖杯戦争が行われようとしていた。

 

その冬木市に、ひとりの女性が、他国よりやって来た。

先が少し巻き毛がかった銀の長髪に、金色の瞳。年の頃は、17~18くらいに見える。濃紺の帽子と、コートを羽織っている。

関西国際空港に着いた彼女は、タクシーで冬木市の新都まで来た。冬木大橋を渡ったところでタクシーを降り、後は徒歩で、言峰教会の前まで来る。

 

私は、カレン・シュタットフェルト。

聖堂教会から派遣された修道女だが、私が今聖杯戦争が行われようとする冬木市に派遣されたのは、聖堂教会の指令では無い。一応、血縁上は“父”である、言峰綺礼に呼ばれたためだ。

言峰教会に到着した私は、特に何も言わずに中に入って行く。そして、祭壇の前に立つ言峰綺礼の前まで歩いて行く。

「来たか……カレン。」

「何か用?言峰綺礼。」

「……それが、実の父に言う言葉か?」

 

何が父だ?一度は、母と私を捨てて、母が亡くなってやむなく引き取ったと思ったら、今度は修道院にぶち込んで、殆ど会いに来た事も無いくせに……

 

ただ、こんな口論をするのも馬鹿馬鹿しいので、思いっきり棒読みで、形式だけの言葉を返しておいた。

「……何か御用ですか?お父様……」

綺礼は……父は、苦虫を潰したような顔をしたが、“まあいいだろう”という感じで、話を始める。

「実は、今回の聖杯戦争についてだが、少々トラブルが起こった。予定されていたマスターのひとりが、急死してしまったのだ……」

父の話では、魔術協会から派遣された“アトラム・ガリアスタ”という魔術師が、突然の心臓麻痺で無くなったそうだ。

魔術協会に連絡したが、直ぐには代役を準備できないとの事なので、聖堂教会の方で代役を立てる事になった。人選は監督役の父に一任されたので、私に白羽の矢がたったのだそうだ。

 

しかし、いかに親子の情愛が無いとはいえ、父親が血を分けた実の娘を、躊躇無く殺し合いに駆りだす?本当に、血も涙も無い外道ね、この男は……

そのアトラムとかいう男も、本当に心臓麻痺なのかしら?もしかして、自分に都合が悪くなって始末したんじゃないの?

 

納得はいかないが、私には、元から拒否権など無いのだ。命令されるままに、聖杯戦争に参加するしかない。

私は父から、アトラムが使う予定であった、サーヴァントを呼び出すための触媒を渡された。クラスは“キャスター”、呼び出されるべき英霊は、ギリシャ神話の“魔女メディア”のようだ。更に、右手の甲に令呪を移植された。

 

父の教会に住まうつもりなど毛頭無いので、用が済んだら直ぐに教会を後にした。

新都を歩き回り、郊外に放置されて間も無い空き家を見つけて、そこを根城にする。

何とか、寝泊りできるように片付けをした後、いよいよサーヴァントの召還に入る。

魔法陣を敷き、その中央に触媒を置く。触媒に向かって令呪のある右手を伸ばし、左手を右手首に添える。そして、召還の呪文を唱える。

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

「満たせ、満たせ、満たせ、満たせ、満たせ……繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」

「セット……告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

「されど汝は、その眼を混沌に曇らせた侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者。」

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

魔方陣から、凄まじい光のカーテンが立ち昇る。その光の中から、紺色のマントを纏った人影が現れる……しかし……

その人影は、到底魔女とは思われない者だった。

紺のマントを羽織り、紺のスーツを着込んで、妖しい仮面で顔を隠した男……体形を見る限り“男”が、私の前に現れた。

「お前が……私のマスターか?」

「あ……あなたは……誰?魔女……メディアじゃ無いわね……」

「ふん、見て分かるだろう……私は魔女では無い、魔王だ!」

「魔王……ですって?」

「そうだ。」

「……あなた……キャスターですよね?」

「一応な……だが、私の事は“キャスター”とは呼ぶな、“ゼロ”と呼べ!」

「ゼロ?」

「そう、仮面の英雄“ゼロ”だ!」

「何ですか?それ?」

「貴様、ゼロを知らんのか?!」

「知らないわ。」

「知らん訳は無いだろう!神聖ブリタニア帝国の侵略から、世界を救った英雄ゼロを!」

「ブリタニア?……グレートブリテンの事?」

「グレートブリテン?」

「大英帝国が、植民地支配してた時代の英雄なの?……でも、その時代に“ゼロ”なんて英雄出て来ないけど……」

「大英帝国?……それは、何処にある国だ?」

「ヨーロパの北の方だけど……」

「ヨーロッパだと?……」

ゼロという男は、しばし俯いて考え込んでしまう。そして、何かを思い付いたように顔を上げて言う。

「……そういう事か……」

「は?……どういう事?」

「どうやら、違う世界に呼び出されたようだ。」

「違う……世界?」

「そうだ、違う次元の平行世界、いわゆるパラレルワールドだ。」

「パラレル……つまり、あなたは、私とは違う世界の英霊という事ですか?」

「そうなるな。」

「何で、違う世界の英霊が召還されるの?」

「そんな事、私が知るか!お前に、私を呼び出す何らかの要因があったのだろう?」

「そんな物はありません……私が用意したのは、この触媒だけです。」

私は、触媒となった、魔女メディアの遺品をその男に見せる。

「こんな物は、何も関係ない……」

そう言って、ゼロという男は、私をじっと見詰める。

「お前、名前は?」

「名前?……カレン……カレン・シュタットフェルトですけど……」

「カレン・シュタットフェルト?!」

大声で私の名を復唱し、ゼロは驚いている。

「何?そんなに、驚く名前なの?」

するとゼロは、仮面の顔に手を当てて、考え込むような仕草をする。

「そうか……そういう事か……」

「だから、どういう事なの?私にも説明して。」

「私を呼び出した触媒は、お前の名だ。」

「はあ?」

「私の世界に、お前と同じ名前の女が居た。私は、その女との関係が深かったから、お前の名に引き寄せられたのだろう……」

そこで私は、ふと、ある疑問に気付いた。

「……そういえば……あなたの名前は?」

「ん?……だから、ゼロだと言ったろう?」

「そうでは無く、本当の名前です。」

「だ……だから、それもゼロだ。」

「嘘をつかないで。」

「何?」

「仮面を被って素顔を隠す輩が、本当の名前を名乗っている筈が無いでしょう?」

「い……いや、それは……」

「そうだ、その仮面も外して、素顔も見せて。」

「何だと?」

「マスターに対して、顔を見せないのは失礼じゃない?」

「と……時が来たら、見せてやる。今は、まだ待て!」

「嫌よ、今見たい。」

「ええい、我がままを言うな!」

「早くして、命令よ。」

「そ……そんな命令は聞けん!」

「そう……それなら……」

私は、右手をゼロに翳して言う。

「令呪をもって命じます、その仮面を外しなさい!」

「な……馬鹿な?!」

令呪の赤い波紋が、ゼロの体を包み込む。ゼロは、操られるようにその仮面を外して、素顔を晒した。顔立ちの良い美男子だったが、異常に威圧感の強い、鋭い目をしている。

「馬鹿か、お前は?こんなくだらない事に、3つしか無い令呪のひとつを使うなどと!」

「私の勝手でしょ……さあ、素直に真名を言うの?言わないのなら……」

「はあ……分かった、言う。ルルーシュだ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。」

また手で顔を覆いながら、ルルーシュは言った。

「だが、分かっていると思うが、人前では俺の事は“ゼロ”と呼べ。」

「そんな事は分かってます。」

ルルーシュは、冷ややかな目で私を見詰める。大方、“何とも厄介なマスターに呼び出されたものだ”とでも思っているのだろう?でも、それはこちらも同じだ。何とも、特異なサーヴァントを召喚してしまったものだ……

「さあ……それじゃあ……私は、もう寝ます。」

「何?」

「あなたも、勝手に休んで……」

「ちょ……ちょっと待て!」

寝室に向かおうとする私を、彼は呼び止める。

「何?まだ、何か用があるんですか?」

「用って……聖杯戦争はどうするんだ?」

「そんなの、明日からでいいでしょ。」

「はあ?」

「私は疲れてるの。今日、日本に着いたばかりだし、ここの片付けもして、あなたの召喚に魔力もかなり使った……だから、もう眠いの。」

「な……それでいいのか?お前にとって、聖杯はその程度の物なのか?」

「別に、聖杯なんてどうでもいいわ。」

「何だと?」

「特に、叶えたい願いがある訳じゃ無いし……」

「ならば、何故聖杯戦争に参加したんだ?」

「別に、参加したかった訳じゃ無いわ。成り行きよ。」

ルルーシュは、また手で顔を覆い、今度は天を仰いだ。

「全く……呆れたマスターだ……では、聖杯戦争に勝つつもりも無いのか?」

「いいえ、必ず勝ちます。」

「な……何故だ?叶えたい願いは無いのだろう?」

「聖杯を手に入れた者は、どんな望みも叶えられるんでしょ?」

「ああ、そうだ。」

「じゃあ、その人は、さぞ幸せになるのよね?」

「そうだろうな。」

「他人が幸せになるなんて、我慢できない。何としても、そんな幸せは潰してやるわ。」

「な……」

「それが理由です……」

そう言って、また部屋を出て行こうとするが……

「ま……待て!」

また、呼び止められてしまった。

「今度は何?」

「全く……呆れた女だ……それで、勝ち残って聖杯を手にしたら、いったいどうするつもりなんだ?」

「さあ?そんなのは、その時に考えるわ。」

最後にそう言い残して、今度こそ私は部屋を後にした。

私に呆れ果てたのか、ルルーシュは、もう何も言って来なかった。

 





最初は、独裁的なルルーシュに翻弄されるカレンを書こうと思っていたんですが、逆にカレンにルルーシュが翻弄される話になってしまいました。
果たしてこの二人、無事に聖杯戦争を勝ち抜けるのか?

ルルーシュの宝具には、当然“ギアス”も含まれます。但し、それだけではありません。

カレンの性格や言動は、主に“プリズマ☆イリヤ”を見たイメージから脚色しています。その他のシリーズのカレンと多少異なるかもしれませんが、その辺はご容赦願います。
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