性格も行動パターンも大きく異なる上に、かなりの自己中のこの二人。
果たして、うまくやっていけるのか?
そんな凸凹コンビが、冬木の聖杯戦争を掻き回します。
昨日は余程疲れたのか、私が目を覚ましたのは、もう昼過ぎだった。
着替えて、朝食(昼食?)でも作ろうとキッチンと共有の居間に来ると、テーブルの上にラップの掛かった皿が置いてあった。皿には、ひとり分の食事が盛り付けてある。その横に、書置きもあった。
“寝坊助のマスター殿、朝食は用意しておいた。あと、あまりにも汚かったので、掃除もしておいた……”
部屋の中を見渡すと、部屋が随分と片付いている。私は、最低限の片付けしかしなかったので、まだ周りは埃まみれだったが、今でも人が住んでいるかと思われるまで綺麗にされていた。
以外に、生活力が高いのね……あの英霊……
そんな事を考えながら、書置きの続きを読む。
“少し外出して来る。夜までには戻るので、迂闊に外を出歩かないように。”
何のために、外出するの?
もしかして、聖杯戦争の下調べなの?
どうも、どちらがマスターか分からなくなってくるが……
まあ、いいわ。
自分で動くのも、面倒くさいし……彼がやってくれるなら、私はここでのんびりしていましょ……
食事を終えた後、特にする事も無かったので、また寝室に戻って寝てしまった。
「おい!起きろ!」
乱暴な声で、目を覚ます。
気怠そうに起き上がると、随分と苛ついた様子のルルーシュの顔がそこにあった。
「……おはよう……」
「おはやく無い!今、何時だと思ってる?」
「今、何時?」
「もう、午後7時を過ぎている!」
「じゃあ、おそよう。」
「言い方を変えればいいという問題じゃ無いだろう!何時間寝れば、気が済むんだ?」
「可能なら、一生寝ていたいけど……」
「ええい、どこまでものぐさなマスターだ!もういいから、早く起きろ!」
急かされて、着替えて、彼に着いて行く。
昨夜、彼を召喚した部屋に連れて来られた。ここも、掃除をしたらしく、綺麗に片付いている。
私が敷いた魔方陣はそのままで、その中央に丸テーブルが置かれ、そこに水晶玉が置かれている。彼はそそくさと水晶玉の前まで行き、何やら呪文を唱える。そして、入り口で呆けている私を呼ぶ。
「何をしている?早く、こっちに来い。」
「はい、はい、」
また怒鳴られるのは嫌なので、言う通り水晶玉の前まで行き、彼の向かい側に立つ。
「今日、冬木市全域に監視網を敷いて来た。」
「あら?それはご苦労様……」
「しばらくは、ここで、他のマスターとサーヴァントの動きを監視する。」
「随分、消極的なのですね?」
「慎重だと言ってもらいたいな、お前は、私達の置かれた現状に対しての、危機感が無さすぎる。」
「現状?何か、問題でも有るのですか?」
「大有りだ!そもそも、お前は、昨日日本に着いたばかりと言っていただろう?」
「ええ、そうよ。」
「なら、この冬木市の事も、ここに住む住人の事も何も知らんのだろう?」
「ええ、知らないわ。」
そこでルルーシュは、また、軽蔑するような目を私に向けて、溜息をつく。
「まったく……更に、俺はこの世界の英霊では無い。この世界の事も、他の英霊の事も殆ど知らん。」
「うん、うん、」
相変わらず、私は他人事のように相槌をうつ。
「だから、こうして他のマスターや、サーヴァントの行動を監視するんだ。そうしなければ、戦略も立てられん。」
「つまり、相手の手の内が分からないと、勝てないって事ですね?」
「ああ言えば、こう言う奴だな?まあ、好きに考えればいい。まがりなりにもキャスターのサーヴァントが、行き当たりばったりの戦いをする訳にはいかないだろう?」
彼は、決して弱気になって、このような事をしているいのでは無いという事は分かった。
むしろ、こうやって相手を観察し、どう戦うか考えるのを楽しんでいるかのように見える。根っからの、策略家なのだろう。
「おっ、早速動きがあったぞ。」
「え?本当?」
私も、水晶玉を覗き込む。
ここは、学校だろうか?グラウンドと思われる場所で、二人の英霊が戦っている。
ひとりは青い軽装の鎧を纏い、赤い巨大な槍を駆使している。おそらく、ランサーのサーヴァントだ。もうひとりは、赤い戦闘服を纏い、両手に白と黒の2本の剣を持って戦っている。しかし、セイバーには見えない。後方で見守っている女のマスターが、“アーチャー”と叫んでいるから、アーチャーなのだろう。でも、全然弓を使わない。
そうしている内に、偶然通りかかった男子学生にその場を目撃され、ランサーがそれを追って行ってしまったため、戦闘はお開きになった。
「一応、ランサーとアーチャーのサーヴァントの確認はできたな。その力までは計りきれないが、戦闘スタイルは分かった。あと、アーチャーのマスターの顔も見れたな。」
「あれは……遠坂の娘ですね。」
「知っているのか?」
「遠坂の娘についてなら、聖堂教会にも情報は流れています。名前は、“遠坂凛”。もっとも、顔と名前を知っている程度ですけど……遠坂家は、代々続く魔術師の家系で、第一次の聖杯戦争からずっと参加しています。」
「うむ……要注意マスターというところか……あのアーチャーも、何か得体の知れないものを感じる……」
更に、観察を続ける。
結局、戦闘を目撃した男子生徒が7人目のマスターで、セイバーのサーヴァントを召喚したようだ。今度は、セイバーとランサーの戦いになる。
これも結局痛み分けで、ランサーはその場から逃走した。そこにまた、アーチャーと遠坂凛が現れ、戦闘になる。しかし、セイバーのマスターの男の子が、この戦いを制止した。
「ん?……」
急にルルーシュは、水晶玉に映る画面を変える。水晶玉には、屋根づたいに飛び回る、ランサーの姿が映し出される。
「……まずいな……」
水晶玉をずっと凝視していたルルーシュが、顔を顰めながら言う。
「どうかしましたか?」
「このサーヴァント、ここに向かっているぞ。」
「え?」
「俺達の魔力を、こんな遠距離で感知できる訳が無い……カレン、お前誰かに、ここを拠点にしている事を教えたか?」
「いいえ……来たのは昨日だし、今日は、あなたの指示通り外出していません。あなたが、つけられたんじゃないんですか?」
「いや、そんな筈は無い。霊体化していたし、サーヴァントが後をつけて来れば、必ず魔力を感じる筈……」
ルルーシュは、“ゼロ”の仮面を取り出して被る。そして、部屋を出て行こうとする。
「戦うつもりなの?」
「仕方あるまい。まだ、我らの拠点を、他のマスターに知られる訳にはいかん。」
「でも、あのサーヴァントのマスターは?」
「おそらく、あれは単独行動だ。さっきセイバーと戦っていた時に、“様子見”と言っていた。サーヴァントは、倒せば消滅して痕跡は残らない。他のマスターに、この場所を知られる心配は無い。もし、奴のマスターがこの場所を知っていたとしても、サーヴァントを失えば手出しもできんだろう。」
「そう……でも、勝てるのですか?」
すると、ゼロはこちらを向いて、笑みを浮かべる……いや、仮面を着けているので顔は見えないが、私にはそう感じられた。
「愚問だな……俺の力、その水晶玉で、良く見ていろ。」
私を部屋に残し、ゼロは屋外に出て行った。
ひとり屋敷の前に立つゼロの前に、ランサーのサーヴァントが現れる。
「ほう?俺が来る事を、事前に知ってたってか?」
「一応聞いておこう、何故、ここにサーヴァントが居る事を知っていた?」
「答える義理はねえな。」
「まあ、そうだろうな?」
「こっちも質問だ、お前、キャスターか?」
「そうだ……だが、私をキャスターと呼ぶな。」
「何だと?」
「“ゼロ”だ!私の事は、“ゼロ”と呼べ!」
「ふん、ふざけた野郎だ!まずは、その変てこな仮面を剥いでやるよ!」
そう言って、ランサーは赤い槍を取り出し、両手で持って構える。
「仮面を剥ぐだと?そんなに私の顔を見たいのなら、見せてやる。」
ルルーシュは、仮面を外して、ランサーに素顔を晒した。
「な……何考えてるの、あの人?顔を見せて、もし取り逃がしたら……」
私は、水晶玉の前で、思わず叫んでいた。
「な……何のつもりだ?命乞いか?」
「いいや……その逆だ。これで、もうお前の勝機は無い!ゼロの名において命じる、お前は死ね!!」
ルルーシュの目が赤く輝き、その目から、折鶴のような紋章が放たれる。それは、ランサーの目に吸い込まれるように消えていき、ランサーの目が赤く染まる。
「わ……分かったぜ……」
ランサーは、手に持った槍を、自分の心臓に突き刺した。
「ぐはああああああっ!」
激しい血しぶきが上がり、口からも血を吐き、ランサーはその場に蹲る。
「な……何なの?ど……どうして?」
私は、何が起こったのか、理解できなかった。
「ば……ばかな……」
そう呟いて、ランサーは倒れ、消滅していった……
その様子を、冷ややかな目で見詰め、ルルーシュも呟く。
「まず、ひとり……」
ランサーを始末したルルーシュは、得意げに部屋に戻って来た。
「どうだ?俺の力が分かっただろう?」
「何だったの?さっきのは……ランサーに、いったい何をしたのですか?」
「あれが、俺の宝具のひとつ、“ギアス”(絶対遵守の力)だ!」
「ギアス??」
私は、ただ首を捻るだけだった……
遂に、ギアスが炸裂!
まず、ランサーが、ゼロの餌食になりました。
ランサーが自害に追い込まれるのは、もう宿命ですね。
何で、ランサーがルルーシュ達の隠れ家を知っていたか?
それはもちろん……綺礼がランサーに、カレンをつけさせたからです。
まあ、そこに顔を出したのは、ランサーの気まぐれです。本人は、ほんの顔見せのつもりだったんですが……