Fate / ゼロ   作:JALBAS

4 / 9

遂に動き始めたルルーシュ。
その暗躍の過程で、アーチャーと遠坂凛と対峙する事に……
更には、今迄何の手掛かりも無かった、最後のサーヴァントとも……
そして、相変わらずカレンには振り回されます。




《 第四話 》

 

私達は、居間でテレビを見ていた。

ニュースでは、先日から連続している、新都でのガス漏れ事故、昏睡事件の報道をしている。詳しい原因は掴めていず、冬木市には、警戒警報が出された。学校等は下校時間が早まり、市民の夜間外出にも注意が促された。

まあ、夜間に外出しても、この事件の犯人に襲われる事は無いのだけれど……

その犯人は、満足そうに、ソファーに腰掛けてそのニュースを見ていた。

「随分派手にやってますけど、他のマスターに気付かれないの?」

「いや、とっくに気付かれているだろうな。」

「大丈夫なんですか?それで?」

「心配か?」

「いいえ……」

「だろうな……」

他のマスターが私達の事に気付いて、ここに攻めて来て、自分の命が危うくなっても……私は、別に慌てないだろう。自分の生に対して、さして執着が無いから。

それに、ルルーシュは安心しきって話している。この人が、簡単に自分達の隠れ家が見つかるような手段を取る筈が無い。

 

 

その日の夜、遠坂凛とアーチャーは、新都を調べて回っていた。

昏睡事件の現場を調べ、吸い取られた生気の流れを確認していた。

「やはり、流れは柳洞寺か?」

「そうね、奪われた生気は、みんな山に行ってる。昏睡事件の犯人は、おそらくキャスターね。」

「柳洞寺に巣食う魔女か?」

「キャスターを追うわ!柳洞寺に逃げ込む前に、片をつける!」

 

新都の仕掛けを施したゼロは、夜の街を浮遊し、帰路に就いていた。

「ん?」

しかし、自分を追ってくる魔力を感じて地上に降りる。

「やはり来たか……」

ゼロは、それまで向かっていた方向と、違う方向に向かって再び飛び始める。そう、柳洞寺に向かって。

サーヴァントとなったルルーシュは、常人よりも遙かに優れた運動能力を有する。他のサーヴァントのように、空を浮遊する事も出来る。但し、その能力はサーヴァントの中では最弱に近い。追ってくる敵に、直ぐに追いつかれてしまう。

「見つけたわ、アーチャー!」

ゼロの姿を、凛とアーチャーが捉えた。

「ちっ!」

ゼロは、真下にある河原に着地する。凛とアーチャーも、それに続く。

遂に、ゼロとアーチャー・凛が対峙する。

「これは驚いた。てっきり、魔女だと思っていたのだがな……」

「生憎だったな、私は魔女では無い、魔王だ!」

「魔王ですって?」

ゼロの言葉に、呆れ顔をする凛。

「私に、何か用かな?」

「用かなじゃ無いわよ!ふざけた仮面なんか被って……観念しなさい、キャスター!」

「遠坂の娘、私の事をキャスターと呼ぶな。」

「はあ?」

「ゼロだ!私の事はゼロと呼べ!」

一瞬の静寂の後、凛が口を開く。

「……あんた、頭がいかれてんじゃないの?」

「ゼロ、お前のマスターは何処だ?」

アーチャーは、冷静にゼロに問い掛ける。

「さあな?」

「お前……まさか、マスターに無断で……」

「あんた、自分が何やってるか、分かってるんでしょうね?」

「無論だ……新都の方々から、生気を提供して頂いている。」

「提供ですって?」

凛は、もう頭に血が上っている。

「強奪の間違いでは無いのか?」

アーチャーは、いたって冷静だ。

「まあ、無断で拝借してはいるがな……奪うばかりで終わるつもりは無い。私が聖杯を手にした暁には、生気を提供して頂いた市民には、相応の褒美を取らせよう。」

「褒美?……あんたいったい、何様のつもりよ!」

「さっき言っただろう、魔王様だ!」

「な……」

とうとう、凛の理性は完全に吹き飛んだ。

「アーチャー、あんなふざけた奴は、今直ぐ塵にしてあげなさい!」

「やれやれ……トレース・オン!」

アーチャーの両手に、白と黒の夫婦剣“干将・莫耶”が投影される。

「はあっ!」

アーチャーは、ゼロに向かって一直線に突進し、両手の剣でその体を切り裂く。

「何?!」

だが、感触は殆ど無く、切られたゼロの姿は塵のように消えて行く。

「ちっ……やられた!」

舌打ちをするアーチャー。

「え?……ゼロは?」

「私達が話をしていたのは、幻だ!もう今頃、柳洞寺に辿り着いているだろう。」

「ええええええっ?!」

 

 

柳洞寺では無く、新都の外れの隠れ家の前に、ゼロの姿が現れる。

「……アーチャー、常に冷静で、思慮が深い。侮れん相手だ……遠坂の娘は、与し易いがな……」

ゼロは、ゆっくりと家の中に入って行く。

 

 

河原では、凛が顔を真っ赤にして怒鳴っていた。

「もおおおっ!あったまに来た!アーチャー、今直ぐ柳洞寺に乗り込むわよ!」

「落ち着け凛!冷静さを欠いては、ゼロには勝てないぞ。」

「こんなに馬鹿にされて、黙ってられないわよ!」

「それが奴の手だ!踊らされているぞ凛、少し頭を冷やせ!」

「ううう……」

凛は、まだ腹の虫が収まらないという感じである。

「柳洞寺が奴の本拠地なら、それ相応の罠が仕掛けられているかもしれん。今はまだ、乗り込むべきでは無い。」

「ううう……」

アーチャーに諭され、怒りの収まらぬまま、その日は帰宅する凛であった。

 

 

翌朝、例によって私達は居間でニュースを見ていたが、昏睡事件のニュースに続き、昨夜新都で起こった惨殺事件のニュースが流れる。

「何?」

このニュースに、ルルーシュの顔色が変わる。

「惨殺だなんて……ここまでする必要があったの?」

私の問いに、ルルーシュは……

「馬鹿を言え!俺は、そんな事はしていない!」

「え?」

「税金というものは、より多くの市民から少しずつ、長くに渡り徴収し続けてこそ意味がある。一度に限界まで絞り取って、徴収源を潰してしまっては元も子も無い。そんな愚かな事は、俺はやらない!」

「じゃあ……この事件は……」

「他のサーヴァントの仕業だろう?」

「もしかして、学校に結界を張った……」

「いや、あんな隠れて回りくどい手を打つ奴が、こんな目立つ行動に出るとは考え難い。」

「アーチャーでも無いのよね?」

「ああ、奴らは、俺の行動を非難していた。そんな奴らが、こんな非道をする筈が無い。」

「セイバーは?」

「絶対に有り得ない!奴は、騎士道を重んじる戦士だ!一般市民を巻き込んだりはしない!」

 

相変わらず、随分とセイバーの肩を持つのね?

 

「バーサーカーも除外だ。あの小娘に限って、魔力不足という事はあり得ないからな。」

「という事は……」

「今迄、何の痕跡も見せなかった、最後のサーヴァントという事だ。」

「ライダーかアサシン……その、どちらかね?」

「状況的に、アサシンの可能性が高いな……」

「じゃあ、学校に結界を張ったのが、ライダー……」

少しの間考え込んで、ルルーシュは言う。

「よし、今夜網を張って、そいつの尻尾を掴む。」

「私も行くわ。」

「夜の街だ、見学しても、さして面白味は無いぞ。」

「見学じゃ無いわ……私も、一応はマスターですから。」

「ふん、ようやく、マスターとしての自覚が出て来たか……ならば、戦闘になる可能性もあるから、それなりの準備をしておけ。」

「ええ……分かりました。」

 

そして夜……隠れ家の前で待つルルーシュのところに、準備を終えた私が出て行く。

「お待たせしました。」

しかし、私の姿を見て、ルルーシュは硬直する。仮面で顔は見えないが、おそらく、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているだろう。

「な……何だ?そ……その恰好は?」

「戦闘にもなる可能性があるとの事なので、その備えです。」

「い……いや、そういう事じゃなくて……」

「この、赤い布を気にしているのですか?これは、マグダラの聖骸布と言って……」

「だから、そうじゃ無い!言われなければ分からないのか?お前、スカートを穿いていないぞ!」

「これは……ファッションです!」

しばしの間、沈黙が続く。その後、ルルーシュは、前に向き直って言う。

「……では、行くぞ……」

もう、私には何を突っ込んでも無駄だと悟ったのか、以降、彼は私の恰好については何も言わなかった。

 

 

新都の路地裏で、妖しい影が、何やら蠢いている。

その影の周りには、ばらばらになった人の体が転がっている。妖しい影は、その一部を喰らっていた。それは、ひとりの老人であった。

「浅ましく思うか?こんな事をしてまで、生に執着するわしを……」

「いいえ……それでこそ、我がマスターにふさわしい……」

老人の後ろに、もうひとり妖しい影が佇む。痩せこけた体を、黒いローブで纏い、顔には髑髏のような白い仮面が装着されている。アサシンのサーヴァントである。

「何だ?人を喰らっているのは、サーヴァントでは無くマスターの方か?」

そこに、仮面の英霊“ゼロ”と、マスターのカレンが現れる。

その声に、老人は人肉を喰らうのを止め、ゆっくりと立ち上がってゼロに向き合う。

「お主が、今回のキャスターか?」

「ゼロだ!私の事は、ゼロと呼べ!」

「ゼロじゃと?……ふっ、面白い男じゃな……」

「ゼロ……あの老人、間桐臓硯です。」

カレンが、老人の正体に気付く。

「間桐臓硯だと?」

「聖杯戦争を始めた御三家の、最後のひとつ、間桐家の長老です。」

臓硯は、カレンを見て言う。

「お主は……聖堂教会から派遣された娘か?」

「私を、知っているのですか?」

「わしはあちこちに顔が利くのでな……伊達に、長くは生きておらん。」

「人を喰らって、生きながらえて来たのか?それで、聖杯に望むのは不老不死か?」

ゼロの言葉に、臓硯は、しばしの間沈黙する。

「中々、頭の回転は早いようじゃな……で、わしをどうする?」

「分かっていて聞いているのだろう?仲良く、お茶をする訳はあるまい。」

「そうじゃな……」

臓硯が言い終わらない内に、アサシンが動いた。

ゼロに向かって、黒塗りの短剣を投げ付けるアサシン。しかしゼロは、防御壁を張ってこれを防ぐ。今度はゼロが、ガンドを放つ。アサシンはこれを素早く交わし、ビルの上に駆け上がって行く。

「カレン!お前はマスターをやれ!できるな?」

「はい!」

ゼロも、アサシンを追ってビルの上へ飛ぶ。

ビルの屋上で、再び対峙するゼロとアサシン。

“ちっ……仮面を付けられていては、ギアスは使え無い……まず、あの仮面を剥ぐしか無いか?”

 

路地裏では、臓硯とカレンが対峙している。

「見たところ、さして戦闘力が高いようには見えん。老いぼれとはいえ、わしは間桐の長老、勝算はあるのかの?」

「別に、勝つ必要はありません。ゼロの戦いが終わるまで、あなたを足止めしておけばいいだけです。」

「できるかの?」

「あなたが、男性である限りは。」

カレンは、マグダラの聖骸布を放つ。それは、瞬く間に臓硯の体に絡み付き、完全に動きを封じる。

「その拘束は、男性では絶対に解けません。これで、あなたはもう戦う事も、逃げる事もできません。」

しかし、臓硯は動じる事無く、笑い始める。

「ほっほっほっほっ……わしが、男性ならばな……」

次の瞬間、臓硯の体が崩れ始める。

「えっ?」

カレンの拘束は、中身を失って解けて地に落ちる。臓硯の体は、無数の蟲に変わり、カレンに向かって飛んで来る。

「きゃあっ!」

カレンは思わず目を瞑り、両腕で頭部をガードする。蟲は、カレンの体をすり抜けるようにして、そのまま彼方に飛び去ってしまった。

「な……何だったの?今のは……」

カレンは、蟲が飛び去った後を、呆然と見詰めていた。

 

ゼロとアサシンの戦いは、遠方からの牽制の域を出なかった。

共に、肉弾戦の能力が低く、白兵戦用の宝具を持たないため、相手に不用意に近付く事はしなかった。

次々と、戦闘場所を変えるアサシン。ゼロは直ぐに追いつくが、常に一定以上の距離をとって対峙していた。その内に、ゼロはアサシンの動きの違和感に気付く。

“こいつ……最初こそ先制攻撃して来たが、以降は、自分から仕掛けて来ない。”

ゼロがガンドを放つ、するとアサシンはそれを交わし、死角に回り込んで短剣を放つ。その繰り返しだった。

“俺が、接近するのを待っているのか?確かに、接近しなければ奴の仮面は剥げないが……”

試しに、ゼロはアサシンとの距離を少し詰める。

“?!”

しかし、一瞬アサシンの右腕が反応したのを見て、また直ぐに距離を取る。

“間違い無い、奴は、俺が近付くのを待っている……あの、黒いローブで隠された右腕に、何が?”

次に、アサシンが移動した時、もう、ゼロは後を追わなかった。

“ここは、カレンと合流して、マスターを抑える方が得策か?”

アサシンの魔力が感知範囲外に出た所で、ゼロは、直ぐにカレンの元に引き返した。

 

「カレン!」

呆然と佇むカレンの元に、ゼロが現れる。

「奴はどうした?」

カレンは、自分の目の前で起こった事をゼロに話す。

「何だと?間桐臓硯は、人間では無いのか?……」

 

この夜以降しばらくは、間桐臓硯とアサシンは、ばったりと姿を見せなくなってしまった。

 






HFルートでは無くセイバールートをベースにするので、黒い影は出て来ません。
なので、間桐臓硯をアサシンのマスターにするのは抵抗があったのですが、話の都合上ルルーシュでは無理なのと、他のシリーズのマスターやオリジナルキャラでは難しかったので、臓硯にしてしまいました。
ですので、この話では、臓硯はあまり本気で勝ち残ろうとは思っていません。

余談ですが、間桐臓硯って、風貌が“妖怪ぬらりひょん”みたいなんですよね。
ルルーシュの声が福山さんだから、ルルーシュと臓硯の会話って、奴良リクオとぬらりひょん(お爺ちゃん)の会話を連想してしまいます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。