自身の魔力アップのため、暗躍を続けるゼロ(ルルーシュ)。
そんな中、残った全てのサーヴァントがようやく出揃います。
激戦に備え、集めた生気を回収に行くルルーシュは、そこでセイバーと対峙する事に……
果たして、ゼロ対セイバーの勝負の行方は?
ルルーシュは、例によって朝から水晶玉で、他のマスター達の動きを監視している。
私は、昼間の内に、食料品等の買い出しに行って来た。最も、もう私に食事は作らせないみたいなので、食材はルルーシュの指定した物だけを買って来た。
ついでにまた街を見学して来たので、帰ったのは夕方だった。
例の部屋に行くと、相変わらずルルーシュが水晶玉を見詰めていた。
「何か動きはあった?」
「ああ……ライダーのサーヴァントが現れた。」
「え?本当?」
私は、ルルーシュの向かい側に立ち、水晶玉を覗き込む。
そこには、黒いボディコンスタイルに身を包んだ、地面まで付きそうなくらいの長髪の女が映っていた。その目には、何故か目隠しがされている。
「何で、目隠しをしているの?」
「分からん……だが、これではアサシン同様、ギアスが使えん。」
そのライダーと対峙しているのは、セイバーのマスターの衛宮士郎だった。既に、右腕を負傷している。
「何で、セイバーを呼ばないのかしら?」
「それも分からん……こんな魔力の弱い小僧が、サーヴァントの相手になる訳が無いが……」
案の定、衛宮士郎はライダーの罠に嵌まり、木に吊り上げられてしまう。
絶体絶命というところを、駆け付けた遠坂凛に助けられた。ライダーは、これで引き上げて行った。
衛宮士郎と遠坂凛は気付かなかったが、私達は、木の陰に隠れているライダーのマスターも確認した。衛宮士郎達と同じ、穂群原学園の男子生徒だった。
「知っているか?カレン?」
「いいえ……教会の資料には無かったわ。」
「マスターに選ばれる者だ、魔術師の家系だとは思われるが……それよりも……」
「それよりも?」
「どうしてあの小僧は、最後までセイバーを呼ばなかったんだ?遠坂の娘が来なかったら、死んでいたぞ。」
「そうね……でも、何で遠坂凛は、衛宮士郎を助けたの?お互い敵同士なのに?」
「先日のバーサーカーとの戦いでも、共闘していた……マスター同士は知り合いのようだし、同盟を結んだのかもしれん?」
「そうなると、厄介ね……」
「だが、それでバーサーカーを倒してくれるのならば、儲けものかもしれんが……」
翌日、私は穂群原学園に潜入し、ライダーのマスターの事を調べた。
名前は間桐慎二、間桐家の長男だった。
早速隠れ家に戻り、この事をルルーシュに報告する。
「間桐家の長男だと?」
「ええ。」
「そうなると、間桐臓硯とグルの可能性もあるな?」
「そして、セイバー陣営とアーチャー陣営は同盟関係……」
「更に、バーサーカーは強力無比……」
「正に四面楚歌ね……」
いつものように、他人事のように私は言う。しかし、ルルーシュは突っ込んでは来ずに、腕を組んで考え込んでいる。そして言う。
「よし、今夜、集めた生気を回収に行く。」
その夜、私達は柳洞寺に向かっていた。
その途中、私はルルーシュに尋ねる。
「何で、柳洞寺に生気を集めているの?」
「我々の隠れ家を誤魔化す意味もあるが、柳洞寺は、この地で生気を集めるのに最も適した場所なのだ。」
「でも、ここが私達の本拠と勘違いされる訳だから、直ぐに他のサーヴァントの標的になるんじゃない?何で、今迄襲撃されなかったの?」
「それは、着けば分かる。」
柳洞寺の前まで来て、その理由が何となく分かった。
柳洞寺の周りは、強力な結界で覆われていた。
「これは、サーヴァントを寄せ付け無い結界だ。容易に突破はできない……但し、一箇所だけ結界の無い場所がある。」
「え?」
私達は、境内に続く石段の前まで来る。
「ここから上の山門までの間だけ、結界は張っていない。」
「え?それじゃ、ここを通れば、誰でも境内に入れちゃうんじゃない?」
「そうなるな。」
「何で、今迄誰も侵入しなかったの?」
「考えてもみろ、周りにこれだけ厳重な結界が張られていて、ここだけ“はいどうぞ”と道が開いていたら、普通はどう思う?」
「……罠?」
「そうだ!だから、迂闊に踏み込めなくなる。」
「そんな複雑な事しないで、全部結界で覆っちゃった方が良かったんじゃないの?」
「そうすると、強引に結界を破ろうとする者も出て来る。こうしておいた方が、より警戒して直ぐには手は出さん。」
「そんなものかしら?」
私は、いまひとつ半信半疑だ。石段を登りながら、ルルーシュは話を続ける。
「それに、万一罠と知りつつ、果敢に挑んで来る者があったとしても、境内に入っても何も無い。」
「え?」
「ここだ。」
石段の中腹で、ルルーシュは脇の林の中に入って行く。そこだけ、結界に穴が開いているようだ。林の中を進み、大きな岩の前まで行く。そこで、ルルーシュは岩に手を当てて呪文を唱える。すると、岩に大きな入口が現れる。
「本当の生気の収集場所は、ここだ。」
そう言って、中に入って行く。私も、後に続く。洞窟をしばらく進むと、広い空間に出る。そこには巨大な魔法陣が敷かれており、その上に、目では見えないが集めた膨大な生気が漂っているのを感じる。
「どうだ?これならば、簡単には見つけられまい?」
「本当……大したペテン師ね。」
「褒め言葉として、受け取っておこう。」
その時、ルルーシュ達以外に、柳洞寺に向かう影が2つあった。
ひとつは、新都の市民から生気を奪い、暗躍を続けるキャスターが柳洞寺に巣を張る事を知り、マスターの制止に逆らってひとり飛び出した、セイバーだった。
セイバーは、夜の街を柳洞寺に向かって駆けて行く。
そして、もうひとつは……
ルルーシュは、生気の充満する魔法陣の中心に立つ。そして呪文を唱える。すると、生気が一気にルルーシュの体に吸収されていくのか、ルルーシュの体は激しく輝き出す。
その輝きが消えた後、ルルーシュは、ゆっくりと私のところに歩いて来る。
「どうだ?」
「凄いのね、さっきまでとは、桁違いに魔力が増大している……」
「ふふ……これで、今迄控えていた宝具も使える……」
私達は洞窟を出て、元来た石段に戻ろうとする。
すると、私達の前に、ひとつの人影が現れた。
黒のボディコンスタイルに、地面に付きそうな長髪、目には目隠しをしたサーヴァント……
「ライダーか?」
ルルーシュの声には、余裕がある。
目隠しをしているライダーにはギアスは使えないが、今の桁外れの魔力を持つルルーシュには、そのくらいは丁度良いハンデかもしれない。
「マスターの命令で探りに来たか?それとも、私が集めた生気を横取りに来たか?ならば、生憎だったな。既に生気は回収済だ。」
ライダーは、無言で佇んでいる。
「どうする?私を倒して、奪って行くか?」
しばらく、ライダーはこちらに正対していたが、このままでは部が悪いと感じたのか?結局、一言も喋らず去って行った。
ルルーシュは、特に追おうともしなかった。
石段まで戻り下ろうとすると、今度は、青い服に銀の鎧を纏った、ブロンドの髪の女騎士が行く手を遮った。罠と知りつつも挑む、勇猛果敢な戦士が……最も、“罠”というのはハッタリなんだけど……
「セイバーか?」
その姿を見た、ルルーシュが問う。
「あなたがキャスターか?」
セイバーは、逆に問い返して来る。
「確かにキャスターだが……私の事は、ゼロと呼べ。」
「ゼロ?」
「マスターは一緒じゃ無いのか?お前が単独行動とは、珍しいな?」
「ゼロ……何故、無関係な者を巻き込むのです?」
「無関係?……この冬木が戦場となっている以上、無関係な者等、この街にはひとりも居ない。」
「だからといって、一般市民から生気を吸い取るなどと……」
「心配するな。吸い取っているといっても、ほんのわずかだ。数日もすれば、皆回復する。」
「そういう問題では無い!こんな非道を行って、英霊として恥ずかしく無いのですか?」
「聖杯戦争に勝つためだ。そんな、綺麗事は言ってられん。」
セイバーは、厳しくゼロを睨み付けるが、ゼロは全く動じない。
「どうやら、議論は無駄のようですね?」
「そのようだな?」
セイバーは、カモフラージュ施した見えない剣を抜き、構える。
「カレン、下がっていろ。」
ゼロは、戦闘に巻き込まれないよう、私を石段の脇に下がらせる。
「行くぞ!」
セイバーは、一気に石段を駆け上がってゼロに斬り掛かる。
ゼロは、簡易的な防御壁を張ってこれを防ぐ。
間髪入れずにセイバーは剣を放つが、ゼロはその全てを防御壁で防ぐ。しばらくはその繰り返しであったが、痺れを切らしたセイバーが、一旦離れてゼロに問い掛ける。
「何故、あなたは手を出さない?」
「お前の攻撃が早過ぎて、手を出す隙が無いのだ。」
「私を馬鹿にしているのか?」
「そう思うのは、お前の勝手だ。」
「お……おのれ、ならば……」
セイバーは、剣のカモフラージュを解く。黄金に輝く剣が、その姿を現す。
「ほう?」
それでも、ゼロは動じない。
「あなたを、本気にさせる!」
セイバーは、力を解放した聖剣でゼロに切り掛かる。
「はあああああああっ!」
しかし……
「な……何?」
力を解放した聖剣も、ゼロには届かなかった。ゼロの体を、今迄の防御壁とは比べものにならない、強固なバリアが覆っていた。セイバーの聖剣は、このバリアに止められた。
「こ……これは?」
「“絶対守護領域”、私の第2の宝具だ!如何なる宝具の攻撃をも跳ね除ける、鉄壁の防御壁だ!」
「ぜ……絶対守護領域?」
「魔力消費が激しく、今迄は乱用できなかったが、今の私なら惜しみ無く発動できる。」
「おのれ……うっ!」
突然、セイバーは、その場に蹲ってしまう。
「ん?どうした?セイバー……」
「な……何でも……無い……」
セイバーは、何とか立ち上がるが、非常に辛そうにしている。額には、汗も流れている。
「お前……まさか?」
「セイバーっ!」
そこに、別な声が割って入る。石段の下を見ると、セイバーのマスター、衛宮士郎が息を切らせて立っていた。
「し……士郎……」
顔だけ後ろを向き、マスターに気付くセイバー。
「今宵はここまでだ!セイバー!」
「な……何?」
「カレン!引き上げるぞ!」
ゼロに呼ばれて、私は彼の元に行く。
「に……逃げるのか?ゼロ!」
「そうだ!勝負は預ける!」
「ま……待て!」
「一応言っておく。ここは、私達の本拠では無い。今後、いくらここを探しても、私達は見つからないぞ。」
「な……何を……」
そこまで言ったところで、セイバーは意識を失い、後方に倒れて行く。そのまま階段から転げ落ちそうになるが、衛宮士郎が駆け上がって来て、何とかセイバーを受け止めた。
そこまで見届けた後、私達は転移して、柳洞寺を後にした。
隠れ家に戻って来た後、私はゼロに尋ねた。
「何故、ギアスを使わなかったの?」
「ん?」
「セイバーは、真正面からあなたに向かって来た。ギアスを使う機会は、いくらでもあった筈よ。」
「ふん、俺が手を下すまでも無いだろう。」
「え?」
「セイバーは、じきに消滅する。」
「何ですって?」
「お前も見ただろう?ちょっと聖剣の力を解放しただけで、あの消耗ぶりだ。」
「そういえば……やっと立ってるって、感じだったわね。」
「おそらく、マスターからの魔力供給が絶たれている。」
「え?どうして?」
「それは分からんが……惜しいな……」
「何が?」
「今のセイバーは、実力の半分も出せてはいない……もし、奴に十分な魔力提供ができれば……」
ゼロは、しきりに考えを巡らせている。
「随分と、セイバーにご執着のようね?でも、セイバー陣営は既に、アーチャー陣営と同盟を結んでるわ。今からこっちに引き込むのは……」
「同盟など、共通の敵を倒せばそれまでだ。そんな、一時凌ぎでは意味が無い……」
「なら、どうしようって言うの?」
「……」
「まあ、いいわ……戦略は、あなたに任せているのですから……」
その夜は、ルルーシュはずっと考え込んでいて、以降何も語らなかった。
遂に、強大な魔力を手に入れたルルーシュ。
ギアスを含め、宝具の使用にほぼ制限が無くなりました。
逆に、魔力の提供が無く、日に日に消耗していくセイバー。
そんなセイバーを、ルルーシュはどうするつもりなのか?
ルルーシュに対して、セイバーや士郎はスザクのようなもんですね。
でも、“間違ったやり方で聖杯戦争に勝っても、意味が無いのに”とは言いませんが。
Protのセイバーなら言うかな?