Fate / ゼロ   作:JALBAS

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自分の思い通りに事が進み、ルルーシュは完全に有頂天です。
正に王様気分……
そういう時に限って、いきなりどん底に落とされるものです。
いよいよ、あの英霊が姿を現します。




《 第七話 》

 

バーサーカーを倒し、セイバーはルルーシュの配下となった。

これで、残る敵はアサシン陣営だけとなったが、そのアサシンと間桐臓硯は、最初に邂逅したあの夜から全く姿を見せない。

が……

「心配する事は無い、あのじじいは定期的に人肉を喰らわなければ、肉体を維持できん。近い内に、必ず現れる。夜の監視を怠るな。」

そう言って、ルルーシュは居間で寛いでいる。何か、王様気分でいるようだ。

「そう言えば、イリヤスフィールは、衛宮士郎の家で保護されているみたいよ。」

「え?」

私の言葉に、ルルーシュの横に立って控えている、セイバーが反応を示す。

「ふん……あそこはまるで、敗退したマスターの溜まり場だな……気になるか?セイバー?」

「は……はい……ですが、私はもう、あなたのサーヴァントです。あなたの勝利が、何よりも優先事項です。」

 

あんなにルルーシュのやり方を非難してたのに、この変わりよう……本当に凄いのね、ギアスの力って……

 

 

深夜の冬木公園に、妖しい影が蠢いていた。

辺りに散らばる、ばらばらになった人の体……それを貪る、妖しい老人……その後ろには、黒いローブに体を包んだ、更に怪しい影が……

「ようやく姿をみせたな。」

そこに、ゼロとカレン、セイバーの3人が現れる。

「死肉で命を繋いでいるのなら、いずれは捕食に来ると踏んでいた。」

ゼロ……ルルーシュは、仮面を付けていない。今夜、全てを終わらせるつもりだ。

間桐臓硯はゆっくり立ち上がり、ルルーシュに正対する。

「流石じゃの……じゃが、勝ったと思うのは、まだ早いぞ。」

「そうかな……」

例によって、会話の終わらない内にアサシンが動く。黒塗りの短剣を、ルルーシュ達に向けて放つ。

「はあっ!」

しかし、セイバーが即座にこれを弾き、そのままアサシンに切り掛かる。

アサシンはこれを交わし、夜の公園を飛び回って逃げる。セイバーは、それを追う。

ルルーシュも、少し遅れてそれに続く。臓硯とカレンは、動かずに戦況を見詰めていた。

素早く動き回るアサシン。しかし、ゼロの時とは違い、運動能力は圧倒的にセイバーが勝っていた。あっという間に間合いを詰めて、セイバーは斬り掛かる。紙一重でアサシンはこれを交わすが、顔を隠すマスクを真っ二つにされてしまう。

“よし!これで……”

ここぞとばかりに、接近するルルーシュ。だが、アサシンの顔を見たルルーシュは驚愕する。

“こ……こいつ?”

アサシンのマスクの下には、顔が無かった。その顔は抉られていて、目も、鼻も無い……

“こ……これでは、ギアスは使えない!”

その時、アサシンの右腕が反応した。

「いかん!離れろ!セイバー!」

ルルーシュとセイバーは、慌てて後退する。しかし、一瞬遅く、封印を解かれたアサシンの右腕“妄想心音”がセイバーに放たれた。セイバーとアサシンの距離は数メートルは離れていたが、異常に長く、伸びる赤い腕はセイバーの胸を捕えた。

「しまった!」

ところが、その腕はセイバーの鎧に阻まれ、セイバーには何の外傷も残らなかった。再び離れて対峙して、ルルーシュはこの点に疑念を抱く。

“この程度か?あの右腕が要注意と感じた、俺の直感が間違っているとは思えんが……”

「ふっ……侮ったな?セイバー……」

すると、アサシンの右手に、ある物体が投影される。

“あれは?心臓?誰の……そうか!そういう事か!”

ルルーシュは、瞬時にアサシンの思惑を見抜く。

「これで……」

アサシンは、右手に持った心臓を一気に握り潰す……筈だったが、できなかった。

「何?!」

その心臓は、絶対守護領域によりガードされていた。

「こういう使い方もできるんだよ……今だ、セイバー!」

アサシンが怯んだ隙に、一気に間合いを詰め、聖剣を解放したセイバーが斬りつける。

「はああああああああっ!」

「ぎぃやああああああっ!」

聖剣で一刀両断され、アサシンは消滅していった。

アサシンを倒したルルーシュとセイバーは、ゆっくりと歩いてカレンのところに戻る。

間桐臓硯は、じっとこの状況を見詰めていたが、やがて、静かに呟く。

「ふっ……元々、今回は当てにはしておらなかったでの、また次を待つか……」

そう言い残し、蟲に姿を変えて飛び去って行った。ルルーシュは、もうそれを追おうとはしなかった。

 

 

「ふっ、終わったな……これで、全てのサーヴァントは片付いた。セイバーが俺の配下にいる以上、この俺が、聖杯戦争の勝者という事になる。」

「セイバーっ!」

横から、声が飛び込んで来る。そちらを向くと、衛宮士郎と遠坂凛が、息を切らせて立っていた。

「何をしに来た小僧?もう、聖杯戦争は終わった。」

「聖杯戦争なんて関係無い!セイバーを……セイバーを返せっ!」

「できん相談だな、もう、セイバーは私の物だ。」

「聞き捨てならんな、その言葉。」

「何?!」

今度は、正面から声がする。そして、暗がりの中から、もうひとつの人影が現れる。

金色に逆立った髪をして、金色の鎧を纏った男が……

「その女は、我の物だ!」

「お……お前は……アーチャー?!」

その男の顔を見て、セイバーが叫ぶ。

「アーチャーだと?」

驚くルルーシュ。

「な……何で、まだサーヴァントが居るの?」

「は……8人目のサーヴァントだって?」

遠坂凛と衛宮士郎も、驚いている。

「10年振りだな、セイバー……我が言った言葉を覚えているか?」

「何だ貴様は?私に歯向かうのであれば、容赦はせんぞ!」

「ふん、俗物が……礼儀を弁えよ!」

突然、その男の背後に、幾つもの時空の歪が発生する。更に、その歪から、幾つもの武器が顔を出す。

「な……何だあれは?」

「あれが……全部宝具なの?」

ルルーシュと遠坂凛が、驚きの声を上げる。

「喰らえ!」

無数の武器が、一斉に私達に向かって放たれる。

「絶対守護領域!!」

ルルーシュは、絶対守護領域を発動する。雨のように降り注ぐ宝具を、絶対守護領域が弾く。

「ほう?」

「ふん、貴様がどれだけ宝具を持っていようと、私の絶対守護領域は破れん!」

「それはどうかな?」

絶対守護領域で全ての宝具を弾かれても、金色のサーヴァントは全く動じない。

「貴様のような、真っ向から力押しで来るような者は私の敵では無い!」

ルルーシュは、金色のサーヴァントの目を見詰めて叫ぶ。

「ゼロの名において命じる、お前は死ね!!」

ルルーシュの目が赤く輝き、その目から、折鶴のような紋章が放たれる。それは、金色のサーヴァントの目に吸い込まれ……る事は無く、弾かれて消滅してしまう。

「何っ?!」

「何だ?今のは……それが、貴様の奥の手か?」

「ぎ……ギアスが……利かない?」

私も、驚きの声を上げる。

「な……何故だ?貴様とは初見の筈……どうして、絶対遵守の力を行使できない?」

うろたえるルルーシュ。

「ギアスと言うのか?今の手品は?……絶対遵守の力だと?笑わせるな、我こそが絶対の王だ!何人たりとも、この我に命令などできん!」

 

な……何なの?この男……私とルルーシュ以上に、自己中な者がこの世に居たなんて……

いいえ、これはもう、自己中というレベルじゃ無いわ!そんな次元を、超越している……

 

「ええい、ならば……セイバーよ、聖剣であの痴れ者を成敗せよ!」

「はい!マスター!」

セイバーが、聖剣の力を解放し、上段に構える。

「ふん、そうくるか?ならば……」

金色のサーヴァントの背後の、時空の歪がひとつになる。そしてその中から、何とも異様な雰囲気を醸し出す、巨大な剣が現れる。金色のサーヴァントは、それを引き抜きいて構える。

その剣は黒く、赤い渦のような螺旋が付いている。そして、ドリルのように回転を始める。

セイバーと金色のサーヴァントは、ほぼ同時に剣を繰り出す。

「エクス……」

「エヌマ……」

「カリバアアアアアアアッ!」

「エリイイイイイイッシュ!」

ふたつの凄まじい剣撃が、二人の中央でぶつかり合う。

「うわああああっ!」

「きゃああああっ!」

衛宮士郎と遠坂凛は、その凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。

最初は互角かと思われたが、徐々にエヌマ・エリシュのそれが、エクスカリバーを凌駕していく。

「ば……ばかな……カレン、離れろっ!」

「きゃっ!」

ルルーシュが、私を突き飛ばした。その直後、ルルーシュ達は、エヌマ・エリシュの剣撃に飲み込まれてしまう。

「る……ルルーシュっ!」

思わず、私は真名で叫んでしまった。

爆煙が晴れた後、あたり一面は全てが吹き飛び、地面も抉れていた。その中に、共に傷付き蹲った、ルルーシュとセイバーの姿があった。

とっさに絶対守護領域を張って、消滅を免れたのだろう。それでも、防ぎ切る事はできず、多大なダメージを受けていた。

「そ……そんな?セイバーの、エクスカリバーが敗れるなんて……」

これには、遠坂凛も驚愕している。

「しぶとい男だな……だが、もう戦う力は残っていないようだな?」

金色のサーヴァントの背後に、再び無数の次元の歪が発生し、無数の武器が顔を出す。

「もう頃合だ、貴様は消えよ!」

その武器が、一斉にルルーシュ目掛けて放たれる。

「ぐうわあああああああっ!」

一瞬で、ルルーシュは串刺しにされてしまう。

「る……ルルーシュウウウウウウウッ!」

私は、また叫んでいた。

「ふ……」

直後、何故かルルーシュは私の方を向き、不敵な笑みを浮かべた。

 

え?……

 

そして、そのまま消滅してしまった。

 

何?今、何故ルルーシュは笑ったの?自分の最後を悟ったからなの?それとも、他に何か意味が……

 

「うっ!」

急に、衛宮士郎が左手の甲を抑える。そこに、ルルーシュに奪われた筈の令呪が、再び浮かび上がる。

「はっ?」

何かに気付いたかのように、セイバーは顔を上げ、衛宮士郎の方を向く。

「契約が、戻ったの?」

遠坂凛が言う。ルルーシュが消滅したために、ギアスの効力が消え、衛宮士郎とセイバーの契約が元に戻ったのだ。

「セイバー、10年前の返答、今ここで答えよ!」

そんな事はお構い無しに、金色のサーヴァントは、セイバーに問い詰める。

しかし、セイバーは何も答えず、金色のサーヴァントを睨み付けている。

「何だ、その顔は?まだ決心がつかんのか……まあ良い、今宵はここまでだ。その内にまた会おうぞ。その時までに、心を決めておけ!良いな!」

そう言って、金色のサーヴァントは去って行った。

 

「セイバーっ!」

金色のサーヴァントが姿を消した後、衛宮士郎と遠坂凛が、セイバーのところに駆け寄る。

「大丈夫か?セイバー。」

「は……はい……ですが……」

セイバーは、衛宮士郎から顔を逸らす。

「申し訳ありません、士郎……あなたに忠誠を誓っておきながら、それを反故して他のマスターに仕えるなどと……騎士として、私は死してもやってはいけない事を……」

「お前の意思じゃ無いだろう!全部、あのゼロという男の、ギアスという力のせいだ!」

「士郎……私を……まだ、あなたのサーヴァントと認めて下さるのですか?」

「あたりまえじゃないか!」

「し……士郎……」

セイバーの目から、涙が流れる。

 

どうも、こういう展開は好きでは無い。お互いを罵り合い、そのまま関係が壊れてしまえばいいと思うのだが、このお人好し同士では絶対にそうはならないだろう。

本来は、こんなもの見ていたくは無いのだが、私にも目的があるため、我慢して見詰めていた。

 

「さあ、話は後、一旦家に戻りましょう。セイバーには、さっきのサーヴァントの事も聞きたいし。」

遠坂凛が、つまらない寸劇に幕を下ろす。

セイバーは、衛宮士郎に支えられながら起き上がり、3人で、衛宮家へ帰って行く。

私は、少し離れてそれに付いて行った。

 

 

衛宮家に着く頃には、もう夜は明けていた。

衛宮士郎と遠坂凛とセイバーは、居間で、先程の金色のサーヴァントについて話し合っていた。

「あいつが“アーチャー”なら、今回呼び出されたサーヴァントじゃ無いわ。おそらく、前回の聖杯戦争で呼び出されたサーヴァントじゃないの?」

そこに、襖を開けて私は入って行く。3人と少し離れたところに座り、勝手にお茶を入れ、それを啜る。

3人からは、当然の事ながら、“何なんだお前は?”という無言の圧力が発せられている。

「あ……私に構わず、話を続けて下さい。」

と、私が返すと……

「何で、あんたがここに居るのよ?」

遠坂凛が、私に突っ込んで来る。

「だって、私もあのサーヴァントの事を知りたいですから……」

「そういう事を言ってるんじゃ無いわよ!あなた、私達の敵だったでしょ?」

「それを言うなら、あなた達だって敵同士だったでしょ?」

「え……そ……そうだけど……」

「それに、敵だったイリヤスフィールを、保護してるじゃないですか。」

「イリヤとあなたじゃ、全然立場が違うでしょ!」

「自慢のサーヴァントを殺されて、失意に沈む少女……同じじゃ無いかしら?」

「どこが、失意に沈む少女なのよ?」

「心配はいりません。あなた達には、何もしません。」

「そんなの、信用できる訳無いでしょ!」

「信じられないのなら、拘束してくれてもいいです……でもそれなら、体中が軋むくらいきつく、生きているのが辛くなるくらい厳しく縛り上げて……」

『はあ?』

全員が、声を上げる。

「それでも不安なら、いっそ殺してくれてもいいわ……その時は、できるだけ惨たらしく、ひと思いには殺さずに、じわじわと、長く苦しみ続けるように嬲り殺しにして……」

『……』

全員、言葉を失い、少しの間静寂が続く。

「……で、セイバー、あのサーヴントの事知ってるの?」

「あ……は……はい、確かに私は10年前、彼と戦いました……」

今度は、完全に私を無視して、話を続けて行く。

 

これは……放置プレイ?

 

結局、何故10年前のサーヴァントが現在も残っているのかは不明のままだが、その正体はおおよそ見当がついた。世界最古の英雄王“ギルガメッシュ”、大昔に、あらゆる武器を自分の宝とした王。全ての宝具の原点とも言える武器を、蓄えた宝物庫自体が彼の宝具。

セイバーと彼は、前回の聖杯戦争で最後まで戦っていた。その戦いの最中、セイバーのマスター“衛宮切嗣”の令呪による命令で、セイバーが聖杯を破壊し、前回の聖杯戦争は終結した。

但し、何故切嗣がセイバーにそんな事をさせたのかは、セイバー自身も分からないようだ。

あと、これはどうでも良いのだが“10年前の返答”というのは、ギルガメッシュがセイバーに求婚したのだそうだ。いったい何を考えているのか?あの英霊は……

 

聞きたい事だけ聞いた後、私は衛宮家を後にした。既に私は、彼らの視界から完全に除外されているみたいで、私が居なくなった事には誰も気付いていなかった。

これはこれで、何か心地良い……

 

その後、私は聖堂教会に連絡を取り、10年前の聖杯戦争について調査した。そして、ある結論を導き出した。

もう、サーヴァントを失った私は敗者。この聖杯戦争からは、脱落した。でも、そんな事は関係無い。この聖杯戦争を、裏で操っていた男……あの男だけは、絶対に許す事はできない……

 






ルルーシュ敗れる。
全アニメキャラの中でも、5本の指には入るだろう超自己中キャラ、ギルガメッシュ。
その“絶対自己中心領域”には、ギアスの力も及ばない。正に自己中の中の自己中、キングオブ自己中です。

セイバー達の話を元に、真の黒幕に気付いたカレン。
ルルーシュを失ったカレンは、その黒幕にどう挑むのか?
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