自分の思い通りに事が進み、ルルーシュは完全に有頂天です。
正に王様気分……
そういう時に限って、いきなりどん底に落とされるものです。
いよいよ、あの英霊が姿を現します。
バーサーカーを倒し、セイバーはルルーシュの配下となった。
これで、残る敵はアサシン陣営だけとなったが、そのアサシンと間桐臓硯は、最初に邂逅したあの夜から全く姿を見せない。
が……
「心配する事は無い、あのじじいは定期的に人肉を喰らわなければ、肉体を維持できん。近い内に、必ず現れる。夜の監視を怠るな。」
そう言って、ルルーシュは居間で寛いでいる。何か、王様気分でいるようだ。
「そう言えば、イリヤスフィールは、衛宮士郎の家で保護されているみたいよ。」
「え?」
私の言葉に、ルルーシュの横に立って控えている、セイバーが反応を示す。
「ふん……あそこはまるで、敗退したマスターの溜まり場だな……気になるか?セイバー?」
「は……はい……ですが、私はもう、あなたのサーヴァントです。あなたの勝利が、何よりも優先事項です。」
あんなにルルーシュのやり方を非難してたのに、この変わりよう……本当に凄いのね、ギアスの力って……
深夜の冬木公園に、妖しい影が蠢いていた。
辺りに散らばる、ばらばらになった人の体……それを貪る、妖しい老人……その後ろには、黒いローブに体を包んだ、更に怪しい影が……
「ようやく姿をみせたな。」
そこに、ゼロとカレン、セイバーの3人が現れる。
「死肉で命を繋いでいるのなら、いずれは捕食に来ると踏んでいた。」
ゼロ……ルルーシュは、仮面を付けていない。今夜、全てを終わらせるつもりだ。
間桐臓硯はゆっくり立ち上がり、ルルーシュに正対する。
「流石じゃの……じゃが、勝ったと思うのは、まだ早いぞ。」
「そうかな……」
例によって、会話の終わらない内にアサシンが動く。黒塗りの短剣を、ルルーシュ達に向けて放つ。
「はあっ!」
しかし、セイバーが即座にこれを弾き、そのままアサシンに切り掛かる。
アサシンはこれを交わし、夜の公園を飛び回って逃げる。セイバーは、それを追う。
ルルーシュも、少し遅れてそれに続く。臓硯とカレンは、動かずに戦況を見詰めていた。
素早く動き回るアサシン。しかし、ゼロの時とは違い、運動能力は圧倒的にセイバーが勝っていた。あっという間に間合いを詰めて、セイバーは斬り掛かる。紙一重でアサシンはこれを交わすが、顔を隠すマスクを真っ二つにされてしまう。
“よし!これで……”
ここぞとばかりに、接近するルルーシュ。だが、アサシンの顔を見たルルーシュは驚愕する。
“こ……こいつ?”
アサシンのマスクの下には、顔が無かった。その顔は抉られていて、目も、鼻も無い……
“こ……これでは、ギアスは使えない!”
その時、アサシンの右腕が反応した。
「いかん!離れろ!セイバー!」
ルルーシュとセイバーは、慌てて後退する。しかし、一瞬遅く、封印を解かれたアサシンの右腕“妄想心音”がセイバーに放たれた。セイバーとアサシンの距離は数メートルは離れていたが、異常に長く、伸びる赤い腕はセイバーの胸を捕えた。
「しまった!」
ところが、その腕はセイバーの鎧に阻まれ、セイバーには何の外傷も残らなかった。再び離れて対峙して、ルルーシュはこの点に疑念を抱く。
“この程度か?あの右腕が要注意と感じた、俺の直感が間違っているとは思えんが……”
「ふっ……侮ったな?セイバー……」
すると、アサシンの右手に、ある物体が投影される。
“あれは?心臓?誰の……そうか!そういう事か!”
ルルーシュは、瞬時にアサシンの思惑を見抜く。
「これで……」
アサシンは、右手に持った心臓を一気に握り潰す……筈だったが、できなかった。
「何?!」
その心臓は、絶対守護領域によりガードされていた。
「こういう使い方もできるんだよ……今だ、セイバー!」
アサシンが怯んだ隙に、一気に間合いを詰め、聖剣を解放したセイバーが斬りつける。
「はああああああああっ!」
「ぎぃやああああああっ!」
聖剣で一刀両断され、アサシンは消滅していった。
アサシンを倒したルルーシュとセイバーは、ゆっくりと歩いてカレンのところに戻る。
間桐臓硯は、じっとこの状況を見詰めていたが、やがて、静かに呟く。
「ふっ……元々、今回は当てにはしておらなかったでの、また次を待つか……」
そう言い残し、蟲に姿を変えて飛び去って行った。ルルーシュは、もうそれを追おうとはしなかった。
「ふっ、終わったな……これで、全てのサーヴァントは片付いた。セイバーが俺の配下にいる以上、この俺が、聖杯戦争の勝者という事になる。」
「セイバーっ!」
横から、声が飛び込んで来る。そちらを向くと、衛宮士郎と遠坂凛が、息を切らせて立っていた。
「何をしに来た小僧?もう、聖杯戦争は終わった。」
「聖杯戦争なんて関係無い!セイバーを……セイバーを返せっ!」
「できん相談だな、もう、セイバーは私の物だ。」
「聞き捨てならんな、その言葉。」
「何?!」
今度は、正面から声がする。そして、暗がりの中から、もうひとつの人影が現れる。
金色に逆立った髪をして、金色の鎧を纏った男が……
「その女は、我の物だ!」
「お……お前は……アーチャー?!」
その男の顔を見て、セイバーが叫ぶ。
「アーチャーだと?」
驚くルルーシュ。
「な……何で、まだサーヴァントが居るの?」
「は……8人目のサーヴァントだって?」
遠坂凛と衛宮士郎も、驚いている。
「10年振りだな、セイバー……我が言った言葉を覚えているか?」
「何だ貴様は?私に歯向かうのであれば、容赦はせんぞ!」
「ふん、俗物が……礼儀を弁えよ!」
突然、その男の背後に、幾つもの時空の歪が発生する。更に、その歪から、幾つもの武器が顔を出す。
「な……何だあれは?」
「あれが……全部宝具なの?」
ルルーシュと遠坂凛が、驚きの声を上げる。
「喰らえ!」
無数の武器が、一斉に私達に向かって放たれる。
「絶対守護領域!!」
ルルーシュは、絶対守護領域を発動する。雨のように降り注ぐ宝具を、絶対守護領域が弾く。
「ほう?」
「ふん、貴様がどれだけ宝具を持っていようと、私の絶対守護領域は破れん!」
「それはどうかな?」
絶対守護領域で全ての宝具を弾かれても、金色のサーヴァントは全く動じない。
「貴様のような、真っ向から力押しで来るような者は私の敵では無い!」
ルルーシュは、金色のサーヴァントの目を見詰めて叫ぶ。
「ゼロの名において命じる、お前は死ね!!」
ルルーシュの目が赤く輝き、その目から、折鶴のような紋章が放たれる。それは、金色のサーヴァントの目に吸い込まれ……る事は無く、弾かれて消滅してしまう。
「何っ?!」
「何だ?今のは……それが、貴様の奥の手か?」
「ぎ……ギアスが……利かない?」
私も、驚きの声を上げる。
「な……何故だ?貴様とは初見の筈……どうして、絶対遵守の力を行使できない?」
うろたえるルルーシュ。
「ギアスと言うのか?今の手品は?……絶対遵守の力だと?笑わせるな、我こそが絶対の王だ!何人たりとも、この我に命令などできん!」
な……何なの?この男……私とルルーシュ以上に、自己中な者がこの世に居たなんて……
いいえ、これはもう、自己中というレベルじゃ無いわ!そんな次元を、超越している……
「ええい、ならば……セイバーよ、聖剣であの痴れ者を成敗せよ!」
「はい!マスター!」
セイバーが、聖剣の力を解放し、上段に構える。
「ふん、そうくるか?ならば……」
金色のサーヴァントの背後の、時空の歪がひとつになる。そしてその中から、何とも異様な雰囲気を醸し出す、巨大な剣が現れる。金色のサーヴァントは、それを引き抜きいて構える。
その剣は黒く、赤い渦のような螺旋が付いている。そして、ドリルのように回転を始める。
セイバーと金色のサーヴァントは、ほぼ同時に剣を繰り出す。
「エクス……」
「エヌマ……」
「カリバアアアアアアアッ!」
「エリイイイイイイッシュ!」
ふたつの凄まじい剣撃が、二人の中央でぶつかり合う。
「うわああああっ!」
「きゃああああっ!」
衛宮士郎と遠坂凛は、その凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。
最初は互角かと思われたが、徐々にエヌマ・エリシュのそれが、エクスカリバーを凌駕していく。
「ば……ばかな……カレン、離れろっ!」
「きゃっ!」
ルルーシュが、私を突き飛ばした。その直後、ルルーシュ達は、エヌマ・エリシュの剣撃に飲み込まれてしまう。
「る……ルルーシュっ!」
思わず、私は真名で叫んでしまった。
爆煙が晴れた後、あたり一面は全てが吹き飛び、地面も抉れていた。その中に、共に傷付き蹲った、ルルーシュとセイバーの姿があった。
とっさに絶対守護領域を張って、消滅を免れたのだろう。それでも、防ぎ切る事はできず、多大なダメージを受けていた。
「そ……そんな?セイバーの、エクスカリバーが敗れるなんて……」
これには、遠坂凛も驚愕している。
「しぶとい男だな……だが、もう戦う力は残っていないようだな?」
金色のサーヴァントの背後に、再び無数の次元の歪が発生し、無数の武器が顔を出す。
「もう頃合だ、貴様は消えよ!」
その武器が、一斉にルルーシュ目掛けて放たれる。
「ぐうわあああああああっ!」
一瞬で、ルルーシュは串刺しにされてしまう。
「る……ルルーシュウウウウウウウッ!」
私は、また叫んでいた。
「ふ……」
直後、何故かルルーシュは私の方を向き、不敵な笑みを浮かべた。
え?……
そして、そのまま消滅してしまった。
何?今、何故ルルーシュは笑ったの?自分の最後を悟ったからなの?それとも、他に何か意味が……
「うっ!」
急に、衛宮士郎が左手の甲を抑える。そこに、ルルーシュに奪われた筈の令呪が、再び浮かび上がる。
「はっ?」
何かに気付いたかのように、セイバーは顔を上げ、衛宮士郎の方を向く。
「契約が、戻ったの?」
遠坂凛が言う。ルルーシュが消滅したために、ギアスの効力が消え、衛宮士郎とセイバーの契約が元に戻ったのだ。
「セイバー、10年前の返答、今ここで答えよ!」
そんな事はお構い無しに、金色のサーヴァントは、セイバーに問い詰める。
しかし、セイバーは何も答えず、金色のサーヴァントを睨み付けている。
「何だ、その顔は?まだ決心がつかんのか……まあ良い、今宵はここまでだ。その内にまた会おうぞ。その時までに、心を決めておけ!良いな!」
そう言って、金色のサーヴァントは去って行った。
「セイバーっ!」
金色のサーヴァントが姿を消した後、衛宮士郎と遠坂凛が、セイバーのところに駆け寄る。
「大丈夫か?セイバー。」
「は……はい……ですが……」
セイバーは、衛宮士郎から顔を逸らす。
「申し訳ありません、士郎……あなたに忠誠を誓っておきながら、それを反故して他のマスターに仕えるなどと……騎士として、私は死してもやってはいけない事を……」
「お前の意思じゃ無いだろう!全部、あのゼロという男の、ギアスという力のせいだ!」
「士郎……私を……まだ、あなたのサーヴァントと認めて下さるのですか?」
「あたりまえじゃないか!」
「し……士郎……」
セイバーの目から、涙が流れる。
どうも、こういう展開は好きでは無い。お互いを罵り合い、そのまま関係が壊れてしまえばいいと思うのだが、このお人好し同士では絶対にそうはならないだろう。
本来は、こんなもの見ていたくは無いのだが、私にも目的があるため、我慢して見詰めていた。
「さあ、話は後、一旦家に戻りましょう。セイバーには、さっきのサーヴァントの事も聞きたいし。」
遠坂凛が、つまらない寸劇に幕を下ろす。
セイバーは、衛宮士郎に支えられながら起き上がり、3人で、衛宮家へ帰って行く。
私は、少し離れてそれに付いて行った。
衛宮家に着く頃には、もう夜は明けていた。
衛宮士郎と遠坂凛とセイバーは、居間で、先程の金色のサーヴァントについて話し合っていた。
「あいつが“アーチャー”なら、今回呼び出されたサーヴァントじゃ無いわ。おそらく、前回の聖杯戦争で呼び出されたサーヴァントじゃないの?」
そこに、襖を開けて私は入って行く。3人と少し離れたところに座り、勝手にお茶を入れ、それを啜る。
3人からは、当然の事ながら、“何なんだお前は?”という無言の圧力が発せられている。
「あ……私に構わず、話を続けて下さい。」
と、私が返すと……
「何で、あんたがここに居るのよ?」
遠坂凛が、私に突っ込んで来る。
「だって、私もあのサーヴァントの事を知りたいですから……」
「そういう事を言ってるんじゃ無いわよ!あなた、私達の敵だったでしょ?」
「それを言うなら、あなた達だって敵同士だったでしょ?」
「え……そ……そうだけど……」
「それに、敵だったイリヤスフィールを、保護してるじゃないですか。」
「イリヤとあなたじゃ、全然立場が違うでしょ!」
「自慢のサーヴァントを殺されて、失意に沈む少女……同じじゃ無いかしら?」
「どこが、失意に沈む少女なのよ?」
「心配はいりません。あなた達には、何もしません。」
「そんなの、信用できる訳無いでしょ!」
「信じられないのなら、拘束してくれてもいいです……でもそれなら、体中が軋むくらいきつく、生きているのが辛くなるくらい厳しく縛り上げて……」
『はあ?』
全員が、声を上げる。
「それでも不安なら、いっそ殺してくれてもいいわ……その時は、できるだけ惨たらしく、ひと思いには殺さずに、じわじわと、長く苦しみ続けるように嬲り殺しにして……」
『……』
全員、言葉を失い、少しの間静寂が続く。
「……で、セイバー、あのサーヴントの事知ってるの?」
「あ……は……はい、確かに私は10年前、彼と戦いました……」
今度は、完全に私を無視して、話を続けて行く。
これは……放置プレイ?
結局、何故10年前のサーヴァントが現在も残っているのかは不明のままだが、その正体はおおよそ見当がついた。世界最古の英雄王“ギルガメッシュ”、大昔に、あらゆる武器を自分の宝とした王。全ての宝具の原点とも言える武器を、蓄えた宝物庫自体が彼の宝具。
セイバーと彼は、前回の聖杯戦争で最後まで戦っていた。その戦いの最中、セイバーのマスター“衛宮切嗣”の令呪による命令で、セイバーが聖杯を破壊し、前回の聖杯戦争は終結した。
但し、何故切嗣がセイバーにそんな事をさせたのかは、セイバー自身も分からないようだ。
あと、これはどうでも良いのだが“10年前の返答”というのは、ギルガメッシュがセイバーに求婚したのだそうだ。いったい何を考えているのか?あの英霊は……
聞きたい事だけ聞いた後、私は衛宮家を後にした。既に私は、彼らの視界から完全に除外されているみたいで、私が居なくなった事には誰も気付いていなかった。
これはこれで、何か心地良い……
その後、私は聖堂教会に連絡を取り、10年前の聖杯戦争について調査した。そして、ある結論を導き出した。
もう、サーヴァントを失った私は敗者。この聖杯戦争からは、脱落した。でも、そんな事は関係無い。この聖杯戦争を、裏で操っていた男……あの男だけは、絶対に許す事はできない……
ルルーシュ敗れる。
全アニメキャラの中でも、5本の指には入るだろう超自己中キャラ、ギルガメッシュ。
その“絶対自己中心領域”には、ギアスの力も及ばない。正に自己中の中の自己中、キングオブ自己中です。
セイバー達の話を元に、真の黒幕に気付いたカレン。
ルルーシュを失ったカレンは、その黒幕にどう挑むのか?