Fate / ゼロ   作:JALBAS

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聖杯戦争を裏で操る黒幕に、ひとりで挑むカレン。
ルルーシュ抜きでカレンは、因縁の宿敵に勝てるのか?

その一方で、衛宮士郎達も事の真相に近づいて行きます。




《 第八話 》

 

ルルーシュを失った2日後、私はひとり、言峰教会に向かっていた。

教会に着き、聖杯戦争への参加を強制されたあの日のように、何も言わずに中に入る。

私の父、神父の言峰綺礼は、祭壇の前に立ってこちらに背を向けている。私は、父の所まで歩いて行く。

私が直ぐ後ろまで来ると、父は、振り返る事もせず私に語り掛けて来る。

「サーヴァントを失ったそうだな?」

「ええ……」

「それで、教会の保護を求めに来たのか?」

「いらないわ、そんなもの。」

「何?」

「こんな命、いつ奪われたって構わない……他のマスターやサーヴァントに、嬲り殺しにされたって平気。」

「では、何故ここに来た?」

「あなたの、化けの皮を剥がしに……」

「何だと?」

「ギルガメッシュって言ったかしら?あの、10年前から居るサーヴァントのマスターは、あなたでしょ?」

「……何か、根拠があるのか?」

「あるわ!」

父は、ようやくこちらを振り向いた。

「まず、10年前から居るのなら、契約しているのは10年前の聖杯戦争に参加したマスターと考えられるわ。10年前の聖杯戦争に参加したマスターで、現在でも生き残っているのは2人だけ……」

父は、黙って私の話を聞いている。

「その内のひとりは、イギリスの時計塔の講師をしていて、何年も日本には来ていない。まず、ギルガメッシュのマスターとは思われない。」

「……」

「もうひとりは、ずっと冬木に居て、事もあろうに聖杯戦争の監督役を行っている。前回の聖杯戦争で、アーチャーのクラスを召還したのは遠坂時臣。時臣は、聖杯戦争で命を落としているけど、そのひとりは、時臣の愛弟子だった……」

「ふっ……見事だ……聖杯戦争になど興味は無いと言っていた割には、よく調べたものだ。」

「あなたの目的は何?聖杯に、何を望むの?」

「望みが目的では無い!聖杯を、誕生させる事が目的だ!」

「誕生?」

「あれは、生まれたがっていたのだ!未だかつて、冬木の聖杯は完成にまで至っていない……10年前、あと少しで誕生というところまで行ったのだ!それを、切嗣が……衛宮切嗣が台無しにした!完成間近の聖杯を、セイバーに破壊させたのだ!」

父は、鬼気迫る表情で、叫びに近い声で話す。元々、正気では無いと感じていたが、本当に気が違ってしまっているように見える。

「何で……衛宮切嗣は、聖杯を破壊させたの?」

「ふん……あの聖杯は、既に呪われているからだ。」

「呪われている?」

「第三次聖杯戦争において、ルールを破って召喚されたあるサーヴァントが原因で、“人を殺す”という方向性を持った呪いの魔力に犯されてしまった……もはやあれは、全ての願いを“人を殺す”という手段でしか叶える事ができんのだ。」

「な……何ですって?」

 

そんな物を、完成させたいですって?もう、人でなしどころじゃ無い……完全に、狂ってるわ、この男は……

 

「誰が、聖杯を手にしても構わないのだが、望む者が居ないのなら、この私が使う。私自身、自分の真の願いを理解するに至っていないが、それが具現化するのであれば是非見てみたい。」

「最悪……いくら私でも、そんな地獄は見たくないわ。それに、あなたの願いが成就するのなんて絶対に許せない。」

「ふん……ならばどうする?お前の力で、この私に勝てると思うのか?」

「思わないわ……でも、拘束することはできる。そうして、衛宮士郎にでも引き渡すわ!」

私は、マグダラの聖骸布を放つ。

「甘い!」

しかし、私の聖骸布は、父には届かなかった。父はの飛ばした円盤状の武具に、聖骸布はバラバラに切り裂かれてしまう。

「お前の手の内など、全てお見通しだ。」

「くっ……」

「お返しだ。」

突然、私の左右から黒い布が飛んで来て、私の両手首に絡み付く。

「え?」

次の瞬間、両手は体の後ろで、全く逆方向に引っ張られる。つまり、後ろ手に締め上げられてしまう。

「あうっ!」

更に、黒い布は、私の体にも絡み付く。腕も、胸と一緒に締め上げられる。

「はうっ!」

黒い布は、腿にも、脚にも絡み付く。結局私は、手足を完全に縛り上げられてしまった。

「うっ……ううんっ!」

懸命にもがくが、体に、全く力が入らない。

「な……何なの?これは……」

「私が、特別に拵えた聖骸布だ。お前の聖骸布と違って、男性を拘束するのでは無い。全ての魔術師を拘束する。」

「いたいけな女の子を……それも、自分の娘を縛るなんて……もう人でなしを通り越して、完全な変質者ね?」

手足が使えないなら、せめて口だけでもと口撃するが……

「その減らず口も、利けないようにしてやる!」

口にも、聖骸布が絡み付く。

「んっ!んふうんんっ!」

口まで、縛られてしまった。“変質者”が、逆鱗に触れたのだろうか?こんな事なら、もっと最初に扱き下ろしておくんだった。言いたい罵声は、もっといっぱいあったのに……

「これから、ここには来客がある……お前には、少し席を外しておいてもらおう……」

 

私は、縛られたまま、教会の裏手の雑木林まで引き摺られていく。そして、手頃な木の枝の上から、吊り下げられてしまった。

「お前の始末は、聖杯を誕生させてから考えるとしよう。そこで、おとなしく待っているがいい。」

「むふっ!むふううううんっ!」

“ええい!降ろしなさい!この変態エロ親父!”と叫びたかったのだが、声にならなかった。そんな私に見向きもせず、父は、教会の方へ戻って行ってしまった。

 

 

言峰綺礼が、カレンを教会の裏手に吊り下げている頃、衛宮士郎が教会を訪れていた。

無人の教会で得体の知れない違和感を感じ、彼は教会の地下に入って行った。そこで彼はは、生気を吸い尽くされた無残な孤児達を目撃する。驚愕する士郎だが、直後、彼は背後から胸を貫かれ気を失ってしまう。

 

遅れて、士郎を捜しにセイバーも教会を訪れた。同じように地下に降りたセイバーが見たものは、傷付いて倒れた士郎と、セイバーを待っていた言峰綺礼とギルガメッシュだった。

意識を取り戻した士郎とセイバーに、綺礼は語る。10年前、最終的に自分がギルガメッシュのマスターとなっていた事。ギルガメッシュが、聖杯の零した泥により受肉し、消滅せずに現在まで残っていた事。また、既に聖杯の器は現れ、必要なサーヴァントの魂に満たされている事を。

そして、自分は聖杯に相応しい者を見定めるため居ると言い、士郎に、聖杯を望むのなら与えると告げる。

しかし、士郎は綺礼に言う。

「聖杯なんていらない……この道は、間違って無いって信じてる……俺は、置き去りにして来たもののためにも、自分を曲げる事はできない……」

士郎の回答に失望した綺礼は、今度はセイバーに問う。士郎を殺せば、聖杯を与えると。

しかし、セイバーもそれを拒否した。

「士郎は殺せない!……聖杯が、私を汚す物ならばいらない!私が欲しかった物は、もう全て揃っていたのだから……」

士郎に寄り添うセイバー。それにより、士郎の傷は見る見るうちに回復していく。だが、それが士郎の体に埋め込まれた聖剣の鞘の力である事を、二人は知らなかった。

「お前達はつまらない……ここで死んでもらおう。」

完全に二人を見限った綺礼は、カレンにも語った、冬木の聖杯が呪いの壺である事を彼らに告げる。更に、自分がそれを完成させるという事も。

最後に、ギルガメッシュに二人の始末を命じ、綺礼は教会を出て行った。

ところが、ギルガメッシュは、綺礼が完全に居なくなったところで彼らに言う。

「ではな、我も行くとしよう。」

「な……私達を、見逃すと言うのか?」

「そうだ、こんな穴倉では、お前との決着も色あせる。ここで見逃しても、結局お前は、我のところに来るしか無いのだ。その時まで、その命預けておくぞ。」

そう言って、ギルガメッシュも教会を出て行った。

傷付いた士郎を庇いながら、少し遅れてセイバー達も教会を出た。

家まで戻る道筋で、二人は更に絆を深める。また、10年前、士郎の父切嗣がセイバーに聖杯を破壊させた理由を知った二人は、共に、再び聖杯を破壊する事を決意する。

 

日が暮れる頃に、士郎達は衛宮家に帰って来た。

しかし、そんな二人が衛宮家で見たものは、傷付いて倒れている凛の姿だった。

凛を襲ったのは、言峰綺礼だった。彼は聖杯を完成させるため、その生贄となるイリヤを連れ去ったのだ。

士郎にその事実を告げ、アゾット剣を託す凛。

「……最後に、これは忠告じゃ無くて命令……やるからには、死んでも勝ちなさい……私が起きた時にくたばっていたら、許さないんだから……」

凛の忠告と命令を胸に、士郎はセイバーと共に、聖杯の完成を阻止するべく柳洞寺に向かう。

 

 

一方、言峰教会の裏手の雑木林では……

 

私はひとり、縛られて、吊るされて、雑木林に取り残されていた。

最初の内は、少しはもがいてみたが、“魔術師を拘束する”というだけあって、魔術が全く使えない。体にも、全く力が入らない。更に、これでもかというくらい、きつく締め上げられてしまっている。これでは、自力では絶対に解けない。その上、もうルルーシュは居ないのだ。

誰も、助けには来てくれない。

何をやっても無駄。

無駄な事は、してもしょうがない。

という訳で、私はされるままに吊り下げられ、じっとしていた。

ただ退屈なので、色々と考え事をしていた。

 

父……いいえ、あんな奴は、最初から父親じゃ無いわ!

実の娘を、こんなに厳しく縛って吊るすなんて……こんなにきつく締め上げられたら……な……何か、変な気分になってきちゃう……

で……でも、このままだと、聖杯は完成しちゃう……あいつの、思い通りになっちゃう……

それは嫌!何とか、失敗させられないかしら?

残っているマスターとサーヴァントは、衛宮士郎とセイバー……

でも、あの士郎って子は駄目ね。魔術師としては半人前だし、投影魔術が使えるみたいだけど、綺礼の敵じゃないわ。

セイバーは強力だけど、相手があのギルガメッシュじゃ……ルルーシュがマスターで、魔力が万全の状態でも勝てなかった……今は、あの半人前がマスター。魔力提供も満足じゃ無いから、尚更勝てないわね……

駄目……全く望みが無いわ……

 

私は、完全に絶望する。と同時に、もう、どうでも良くなって来てしまう。その時……

「全く、少しは足掻こうという気が無いのか?相変わらず、ものぐさなマスターだな!」

 

え?この声……

 

「それとも、そっちの趣味もあって、それに酔いしれているのか?」

 

で……でも、あなたは……

 

突然、私を縛っていた聖骸布が切り刻まれる。私は解き放たれ……吊られていたので、地面に墜落した。

「……たたっ……」

「立てるか?」

声の主が、地面にうつ伏せに倒れている私に、手を差し伸べる。

顔を上げ、その手を掴んで、私は言う。

「ど……どうして?あなたが?」

 






遂に、外道の本性を現すラスボス綺礼。
ランサーが居ないだけで、士郎とセイバーが教会の地下で真実を知るのは原作通りなので、この辺の流れは、簡単なあらすじにさせてもらいました。

いったい、カレンを助けたのは何者か?……なんて、分かりきってますよね。
ではどうして?……は、次回で。
次回が、最終回です。
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