聖杯の完成を阻止するために、言峰綺礼とギルガメッシュに挑む、衛宮士郎とセイバー。
しかし、“アヴァロン”を覚醒させていない二人では適う筈も無く、窮地に追い込まれてしまいます。
そこに、思わぬ援軍が……
まあ、この話の主人公は、衛宮士郎とセイバーでは無いので。
これが、最終回です。
柳洞寺に到着した士郎とセイバーは、立ち込める膨大な魔力に驚く。
「魔力の密度が高い……10年前と同じです。おそらく、上ではもう……」
「聖杯の召還が始まっているか?それとも、もう終わったか?」
石段を上り、山門を抜け境内まで来た二人を待っていたのは、ギルガメッシュだった。
「待ちわびたぞ、セイバー。」
「ギルガメッシュ、あなたの目的は何だ?何を望む?」
セイバーは、聖剣を構える。
「望みなど無いと言っただろう、俺の関心はお前だけだ。」
ギルガメッシュの背後に無数の時空の歪が発生し、そこから、無数の武器が顔を出す。
「そこの雑種、言峰に用があるのなら早々に消えろ。」
ギルガメッシュは、士郎にそう言い放つ。士郎はその場をセイバーに任せ、綺礼が聖杯を完成させようとする寺の裏手に向かう。その背後で、セイバーとギルガメッシュの戦いが始まる。
「良く来たな、衛宮士郎。最後まで残った、唯一人のマスターよ……」
寺の裏で士郎を待っていたのは、中空に大きく穴を開け、そこから黒い泥を吐き出す聖杯。そして、その穴に磔にされたイリヤだった。その泥が作り出した溜池の前に、言峰綺礼が立っている。
「イリヤを降ろせ!」
「それはできない相談だな……聖杯は現れたが、その穴はまだ不安定だ。接点である彼女には、命の続く限り耐えてもらわねば、私の望みは叶わない。」
士郎の言葉は、聖杯の呪いに取り付かれた綺礼には届かない。
意を決し、士郎は戦いを挑むが、聖杯の泥を触手のように操る綺礼に容易に近付けない。ついには、泥の触手に捕らえられる。
「アンリマユ、この世全ての悪を受けるがいい!」
更に綺礼が放った泥に、士郎は飲み込まれてしまう。
「うわああああああああっ!」
アンリマユの呪いは、大きな玉のようになりに士郎を包み込む。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……」
「う……うううっ……」
呪いに取り込まれ、苦しむ士郎。
しかし、苦しむ士郎の脳裏に、父切嗣、凛、セイバーの言葉が浮かぶ。
「そうだ……衛宮士郎が、本当に正義の味方の息子なら……何があっても、あの男には負けられない!」
士郎は呪いを跳ね返し、アンリマユの呪いの玉を砕く。
「馬鹿な……あれを振り払ったというのか?」
驚く綺礼。
「トレース・オン!」
士郎は、アーチャーのように、白と黒の夫婦剣をトレースする。
「うおおおおおおおおおっ!」
そして、綺礼に突進して行く。
「ふん……」
しかし、聖杯の呪いの力を借りずとも、綺礼の戦闘力は士郎のそれを遙かに凌駕していた。
綺礼は、かつて士郎の父切嗣をも追い詰めた、八極拳で迎え撃つ。その拳は士郎の剣を砕き、士郎の腹部に、強烈な一撃を喰らわせる。
「ぐうふうううっ!」
大きなダメージを受け、士郎はその場に蹲ってしまう。
一方、セイバーは、ギルガメッシュから無数の武器の集中砲火を喰らい、かなりのダメージを受けていた。それでも立ち向かう事を止めないセイバーに、ギルガメッシュは痺れを切らす。
「そろそろ、力の差を思い知らせてやる。我が剣、エアによってな!」
ギルガメッシュは、究極の剣エアを抜く。
「うっ……ううっ……」
セイバーも何とか立ち上がり、聖剣を構える。
「エヌマ……」
「エクス……」
「エリイイイイイイッシュ!」
「カリバアアアアアアアッ!」
再びぶつかり合う、ふたつの剣撃。しかし、やはり今回も軍配はエヌマ・エリシュに上がった。
「うわああああああああっ!」
凄まじい剣撃に、セイバーは飲み込まれてしまう。その爆煙が晴れた後、大きく抉られた地面の中央で、セイバーは、更に手酷いダメージを受けて倒れている。
「ふん、相殺する事すらできんとは……人類最強の剣も、所詮その程度か?」
「くっ……」
それでも、立ち上がろうとするセイバー
「もうよせ、どう足掻いてもお前に勝ち目は無い。」
ギルガメッシュの背後に、再び無数の時空の歪が現れる。そして、そこから無数の武器が放たれ、セイバーに襲い掛かる。
「な……なんのっ!」
立ち上がり、襲い来る武器を弾くセイバー。しかし、全てを弾く事はできず、腕や脚を何箇所も貫かれ、その場に蹲ってしまう。
「いい加減に諦めて、我の妻となれ。」
「こ……断る……」
それでも、セイバーは屈しない。
「仕方が無い……再生に時間が掛かるが、手足を完全に潰して、動けんようにしてから泥を飲ませるか?」
「そんな事はさせん!」
突然、セイバーの後方から声がする。
『な……何っ?!』
聞き覚えのある声に、同時に反応するギルガメッシュとセイバー。そして、蹲るセイバーの後ろから、ルルーシュが姿を現す。
「ぜ……ゼロ?!」
驚きの声を上げるセイバー。
だが、ルルーシュの姿は、今迄のゼロの姿では無かった。王侯貴族を思わせる、白を基調に煌びやかな刺繍の入った、豪華で貴賓漂う正装に身を包んでいた。当然、仮面も付けていない。
「何だと?……何故、貴様がここに居る?貴様は、完全に消滅した筈だ!」
ギルガメッシュも、驚きの声を上げる。
「ふふ……これが、一度死して初めて発動する私の第3の宝具、“コード”(不老不死)だ!」
「コードだと?」
「コードが発動した私は、不死身だ!」
「大きく出たな、貴様……ゼロとか言ったか?」
「今の私は、もはや“ゼロ”では無い。」
「何?」
「“皇帝ルルーシュ”だ!」
セイバーは、きょとんとした顔でルルーシュを見詰める。驚くというより、呆れるという感じで……
しかし、ギルガメッシュには、この言葉が癇に障った。
「皇帝だと?この我の前で、王を語るな!我こそが、絶対の王だ!」
「違うな……間違っているぞ、ギルガメッシュ!絶対の王は私だ!」
「ふん、所詮貴様と我は、相容れぬ存在という事か?」
「そういう事になるな。」
「ならば、何度でも滅ぼしてくれる!」
ギルガメッシュは、背後の無数の時空の歪から、無数の武器をルルーシュに向けて放つ。
「ふん!」
しかし、ルルーシュの周りには幾つもの防御壁が現れ、全ての武器を弾き返す。
「忘れたか?私の宝具、“絶対守護領域”を!コードが発動した今、その護りは更に強固になっているぞ。」
「ふん、如何に強固な護りだろうと、これは防げまい!」
ギルガメッシュの背後の時空の歪がひとつになり、そこから、究極の剣エアが取り出される。
「今一度喰らえ、エヌマ……エリイイイイイイイッシュ!!」
「ぜ……る……ルルーシュっ!」
セイバーの叫びと共に、凄まじい剣撃が、一気にルルーシュを飲み込む。
爆炎が晴れた後は、大きく地面が抉られ、何も無い荒地が果てしなく続いていた。
「はははははっ!ものの見事に消飛んだか?」
高笑いするギルガメッシュ……しかし、その笑いは、直ぐに引きつった顔に変わってしまう。抉られた地面の上に光の塊が現れ、その中から、皇帝ルルーシュが再び姿を現したのだ。
『ば……ばかな?』
ギルガメッシュとセイバーが、同時に声を漏らす。
「私は、不死身だと言ったであろう……何度滅ぼされようと、この身は永遠に蘇生する。バーサーカーのような、回数制限も無しだ!もっとも、聖杯戦争が終結すれば、消滅するがな……」
「ぐ……ぐぐぐ……」
ギルガメッシュは、歯軋りをする。
「そ……それがどうした?いくら護りが堅く、いかに不死身であろうと、それだけだ!この我を倒す事はできん!貴様の自慢の“ギアス”も、この我には通じないしな。」
「ふん、ギアスなど、コードが発動した今はもう使えん。だが、この状態になってこそ使える、奥の手が私にはある!」
「何だと?」
次の瞬間、ルルーシュは、また光の塊となって消える。
「な……ど……何処に行った?」
すると、今度は、ギルガメッシュの目の前に姿を現す。
「な?!」
ルルーシュは、ギルガメッシュの腕を掴む。そして言う……
「いくぞ……フレイヤ!!」
ルルーシュの体が、激しく輝き、光の玉と化す。その光は、ギルガメッシュを含む辺り一帯を飲み込み、一気に爆発する。
「うわあああああっ!」
凄まじい爆風に、セイバーも吹き飛ばされてしまう。
両手をつき、四つん這いになった士郎の前に、綺礼が歩み寄る。
「アンリマユの泥に飲まれないのなら、この私の手で葬ってやる。」
士郎の脳天を砕こうと、拳を繰り出す綺礼。
しかし……その手に、赤い布が巻き付いて、拳を制止させる。
「何?!」
更に、反対の腕にも、体にも赤い布が巻き付いていき、綺礼の動きが止まる。
「こ……これは?」
慌てて、後ろを振り向く綺礼。そこには、カレンが立っていて、マグダラの聖骸布を操っていた。
「お……お前は……どうやって、私の聖骸布から抜け出した?」
「今よ!衛宮士郎!」
カレンの叫びに反応して、士郎が立ち上がる。
「うおおおおおおおっ!」
そして、背後に隠してあったアゾット剣を、綺礼の胸に突き刺す。更に……
「läßt!!」
剣の柄に拳を突き付け、呪文を流し込む。
「がはああああっ!」
剣に溜め込まれた魔力が開放され、綺礼に痛恨の一撃を与えた。
「な……何故だ……何故、お前がこの剣を持っている?」
口からも血を吐き、綺礼は士郎に問い掛ける。
「それは俺の物じゃ無い!遠坂から預かった物だ!」
「そうか……以前、気まぐれに、どこぞの娘にくれてやった……あれは確か、10年前か……それに……」
綺礼は、再びカレンの方に振り向く。
「……なるほど……私も、衰える筈だ……ぐはっ!……」
そして、そのまま倒れ、息絶えた。
それを見届けた後、カレンは、ゆっくりと士郎の方に歩いて来る。そのカレンに、士郎は問い掛ける。
「どうして、助けてくれたんだ?」
「別に、あなたを助けた訳じゃないわ……その男の望みを、潰してやりたかっただけ。」
そう言い残して、カレンは士郎とすれ違い、境内の方へ歩いて行った。
ようやく爆風が去り、セイバーは顔を上げる。
爆煙が晴れた跡には、人影は、ひとつしか無かった。
それは、ルルーシュでは無くギルガメッシュだったが、その姿は、既に消滅寸前で消え掛かっていた。
「ぎ……ギルガメッシュ……」
「ふっ……不死身が故に使える……相撃ちか……我の……負けだ……」
そう言い残し、ギルガメッシュは消滅していった。
入替るように、ルルーシュが蘇生して姿を現す。
「る……ルルーシュ……」
セイバーはようやく立上がり、剣を構えてルルーシュに対峙する。
しかし、ルルーシュの方は、全く敵意の無い表情を向けて言う。
「……何を身構えている?早く、マスターの元へ行け。」
「な……良いのですか?私達は、聖杯を破壊しようとしているのですよ?」
「元より、私も私のマスターも、聖杯自体には興味が無い。破壊したければ、好きにするがいい。」
「か……かたじけない。」
セイバーは剣を収め、ルルーシュに一礼し、その場を立ち去って行った。
セイバーと入れ替わりで、カレンがルルーシュの所まで歩み寄って来る。
私が、目の前まで歩いて行くと、ルルーシュは静かに問い掛けて来る。
「目的は果たせたか?」
「ええ……」
「そうか……」
そう言って、ルルーシュは優しく笑う。私も、彼に笑みを返す。
しばらくの間、私達は無言で見詰め合っていた……
すると、寺の裏手の方から、激しい閃光と轟音が響き渡って来る。セイバー達により、聖杯が破壊されたのだ。
「そろそろ、お別れだな……」
ルルーシュが、口を開いた。
「ルルーシュ、」
「ん?」
「あなたと居た、このひと月……何と言うか……退屈しなかった……楽しかったわ。」
「ああ……俺もだ……」
最後にそう言って笑い、ルルーシュは消えて行った。
「え?!」
私の頬に、何かが流れる。
泣いているの?私……母が死んだ時ですら、涙は出なかったのに……
急に、胸に締め付けられるような痛みが走る。それは、生まれて初めての事で、その時の私には、その理由は分かる由も無かった……
聖杯戦争終結から数日後、士郎と凛は、新都にある言峰教会に向かっていた。
言峰綺礼が亡くなったため、聖堂教会からその後任が派遣される事になった。凛も、魔術協会に所属しているため、挨拶がてらに確認を命じられていた。そこで、士郎に同伴を命じたのだった。
教会に向かい、坂道を登って行く二人。凛が、士郎に語り掛ける。
「もっと、落ち込んでいるかと思った。」
「じゃあ、落ち込んでたら、慰めてくれるのか?」
「まさか?蹴り入れて、1日で立ち直らせてやったわよ。」
「ははっ……未練なんて、きっと無い。」
「士郎の中では、決着をつけたのね?」
「ああ……いつか記憶が薄れて、あいつの声も、あいつのしぐさも忘れていくのかもしれない。それでも、セイバーってやつが好きだった事だけは、ずっと覚えてる。」
教会の門の近くまで来て、二人は門の前に立っている人影に気付く。そして、つい立ち止まってしまう。門の前に立つ人影も、士郎達に気付く。
「あら?」
「な……何で?あなたがここに居るのよ?」
いきなり、質問をぶつける凛。
「一応、挨拶をした方がいいのかしら?……この度、言峰綺礼の後任で、この教会の修道女を申し付かりました、カレン・シュタットフェルトです。」
『な……何だって(ですって)?!』
驚いて、大声を上げる二人。
「悩み事があるのなら、相談に乗ります……でも、些細な事でいちいち来ないで……ここに来る時は、ご飯も喉を通らず、何日も眠れなくて、このままでは数日で命を落としかねないような、深刻な悩みを抱えた時だけにして……」
「あ……相変わらずだな……あんた……」
今後の事に、大いに不安を感じてしまう、士郎と凛であった……
ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。
元々聖杯を欲していた訳では無く、聖杯戦争を引っ掻き回していただけのルルーシュとカレン。ですが、結果的には士郎とセイバーを助け、世界を救った事になります。
カレンにとっては、生まれて初めて体験した、至福の時間だったのかも……
異世界に来ても、やはりルルーシュはカレンと名コンビです。
士郎と綺礼の最後の戦いを少し変えたのは、私自身、原作(アニメ)の戦いに納得して無いからです。
原作(アニメ)のラストは、綺礼はアンリマユの泥を投げ付ける事しかしません。いくら士郎を舐めていても、それは無いだろうと思います。少なくとも、一度呪いを跳ね除けたところで、戦法を変えるでしょう普通。八極拳を使わないまでも、魔術師なんだからガンド飛ばすとか。アゾット剣を刺されるまで、呆然としてるのもおかしいです。武術を嗜んだ者なら、反射的に体が動くと思いますが……
士郎も士郎です。何で、いきなり切り札見せて突進して行くかな?そういう物は、最後まで見せませんよ普通。“干将・莫耶”を投影できるんだから、土壇場までそれで攻めて、最後の最後にアゾット剣を使うべきです。
ルルーシュの第4の宝具、最後の決め技ですが、ルルーシュ自身の全魔力を解放して、自らを強力な爆弾と化す自爆技です。全魔力を爆発のエネルギーに変えるので、マスターからの魔力供給が無い状態(未契約状態)では蘇生ができません。“フレイヤ”の名を使ってますが、核爆発ではありません。
最後の決め技については、ボツにした案もあるのでついでに書いておきます。
< 黒の騎士団 >
Fate / Zeroのライダーの“王の軍勢”みたいな物です。
固有結界の中で、月下を含めた黒の騎士団のナイトメア軍団が、一気に襲い掛かるというもの。
ちょっと作品の世界観が合わないのと、それでも“エア”には敵わないと思って、ボツになりました。
< 紅蓮零式 >
紅蓮弐式のFate仕様。
ルルーシュから起動キーを渡された途端、カレンが変貌し、紅く逆立った髪になって乗り込みます。ギルガメッシュの宝具の攻撃を素早く交わし、最後はエアごと輻射波動でギルガメッシュを粉砕します。
上と同じで世界観が合わないのと、カレンはやはり綺礼討伐に行くべきと思い、ボツとなりました。