幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

101 / 267
 誰 得 ?
 裏主人公視点。
 ではどうぞ。


3shutter【外界の男写真】

 妖怪の山から文と共に人里へ着き、寺子屋に着いたところで……その寺子屋内から騒がしい声が聞こえてくる。

 

 文も疑問に思ったのか、相談するように声を掛けてきた。

 

「アレですかね? 勉強が終わった開放感を楽しんでいるのでしょうか?」

 

「大体そんな感じだろ。まぁ入ってみればわかるはずだ」

 

 オレの推察を言いながら寺子屋に入る。

 

 そこで見た光景は――

 

 

 

『アタイが頭ー♪』

 

『私は左腕なのかー♪』

 

『じゃあ私は右側を失礼しますー♪』

 

『えっ……じゃあ私真正面!』

 

『みすちー……まだ足があったのに……あ、私は左足を失礼します』

 

『侠さん……ごめんなさい。右足の方、失礼します。チルノちゃん、これ以上は侠さんの負担が大きいからもうやめよう――』

 

『キョーはそれぐらい大丈夫よっ! フランちゃんはキョーの背中に!』

 

『わかった! えい♪』

 

『……重い』

 

 

 

 ――目の前に広がっていた光景はまず何もなかったオレの親友、侠に寺子屋の生徒に囲まれていた。

 

 まずチルノが飛んで侠の肩に肩車の要領で座る。左腕にルーミアがぶら下がるようにしがみつき、反対側は橙が同じようにしがみつく。ミスティアは侠の真正面にしがみつき、それぞれの足にリグルと大妖精が控えめにしがみつく。最後にフラン嬢が背中にしがみつき――何ともカオスな侠の形態が出来上がった。ちなみに様子を見守っていた慧音先生さんは苦笑いである。

 

 変な事態に遭遇しながらも文はカメラを構えた。

 

「……とりあえず写真は撮っておきましょうか……」

 

 カシャッと文は今の光景を写真に収めた。まぁ、撮りたい気持ちはわからないでもない。

 

 そしてカオス形態の侠がオレ達に話し掛けてきた。

 

「静雅はともかく……射命丸? 寺子屋に何か用?」

 

「私は現在静雅さんと共にいろんな方に取材して回っているんですよ。ここに来たのは静雅さんがフランさんを迎えに行く時間という事で同行したのですが……これは手間が省けましたね! まだ侠さんが居てくれて!」

 

「ん? 文、そうなると次の取材対象は侠なのか?」

 

 疑問を投げかけると文は首を上下に動かして肯定。

 

 オレ達の会話に疑問を持った先生さんは問いかけて来た。

 

「侠に取材? どんな事を聞くつもり何だ?」

 

「内容次第だが私用的な事かもな。あまり他の人物に聞かれるのは好ましくない場合もあるから先生さん、少しこの部屋を借りたい。一応オレの能力で聞かせない事も出来るが……悪いが退室してもらえるとありがたい」

 

「うーん……わかった。授業はもう終わっている事だし、すぐさま生徒達を帰させよう――ほら、もう解散だ。続きはまた明日にしてもらえ」

 

 先生さんがそう言うと生徒達は侠から離れてそれぞれ各々の行動をとって寺子屋から出て行った。その中の一人であるフラン嬢はオレに近寄って楽しそうな表情で話し掛けてきた。

 

「変形ごっこ楽しかった!」

 

「楽しめたらのなら良かったが……何故急にそんな遊びを?」

 

「ルーミアが外界の写真の本を持って来たの! それで侠がその本の事をいっぱい知ってたから、その中で変形シーンがあったから皆で再現してたの!」

 

「外界の……? 侠、それはどんなのだ?」

 

「ぶっちゃけると静雅の方が馴染みがあると思うよ? 本というよりは児童文学関係だし」

 

「オレの方が馴染みがある……?」

 

 侠はそう答えながら近くの机の上にあった本をとり、オレ達に見せて――思い当たりがありすぎた。

 

「【元素戦隊エレンジャー】じゃないか!? よく幻想郷に流れて来たな!?」

 

「あの、静雅さん……それは一体何なんでしょうか?」

 

 文からの当然の疑問。これを知っているのは外界の一部だけだからな……。

 

「脇役だったがオレがちょくちょく出ていた演劇ものだ。基本的には悪を懲らしめる正義の集団。悪を倒したら二段階変形して巨大化するから、正義達は金属で出来た各々の人形に乗って、最終的にはそれぞれの人形が合わせっては巨大化して……また悪と戦う物語だ」

 

「あやや……ここに描かれている大きな人形と巨大な妖怪が戦うんですか……」

 

「私も侠から大体の概要は聞いたが……外界は大丈夫なのか?」

 

 先生さんから心配するような声がかけられる。幻想郷住民から見たら驚くだろうな。本当に。

 

「演劇だから心配いらないさ……さて、フラン嬢。オレは諸事情でまだ帰れないが、紅魔館で良い子に過ごすんだぞ?」

 

「わかった! 図書館でも同じような本があるか探してみる!」

 

「……あぁ。見つかると良いな」

 

 オレはフラン嬢に手を翳し、能力を発動。ブレてフラン嬢を紅魔館に移動させた。

 

 フラン嬢が帰る(?)のを確認した先生さんはオレ達の言う事に従ってくれ、同じ部屋から退出してくれた。

 

 それを見計らった文は改めて挨拶。

 

「では侠さん、あなたの取材を始めたいと思います!」

 

「……拒否権は無いの?」

 

 あからさまに嫌そうだ。このままだと話が平行線になりそうだからオレも説得してみるか。

 

「まぁそう言うなよ。今ならオレも写真に写ってやるから。一人撮られるのが恥ずかしいなら」

 

「そういうわけじゃないんだけど……」

 

 オレと侠の会話に――何か閃いたような文が興奮したようにオレ達に話を振って来た。

 

「そういえば外界の親友通しであるお二人のツーショット写真を撮った事がありません!?」

 

「そういや……オレと侠と一緒の写真を撮られた事が無かったな……」

 

「別になくても良いんじゃ――」

 

「何を言っているのですか侠さんっ!? 【日食異変】で異変を起こした首謀者と異変解決者は外界の親友通し! 熱き戦いを終え、こうして日常の中を触れ合っている! そして何より数少ない男性の実力者の絡み! 女性が実力者であるこの幻想郷ではお二人の絡みにはそうとう需要があるんです――いや、あらなければならないんですっ!!」

 

 侠は否定気味に言うものの、持論を言いながら説得する文。

 

 まぁ……文の言う事はあながち間違いではない。幻想郷の実力者は基本的に女だからだ。それで外界の親友通しであり実力者に数えられているオレと侠。男通しであり異変の首謀者と解決者だから尚更だ。

 

 文の勢いのある言葉に押されながら侠は助けを求めるように話し掛けてきたが――

 

「ねぇ、静雅。別に撮らなくても良いんじゃ――」

 

「侠。写真を撮るだけなんだから良いじゃねぇか。せっかくだから撮ってもらおうぜ!」

 

「……好きだねぇ、静雅はこういう事。まぁ、取材自体は嫌だけど……静雅と一緒の写真だったら良いよ」

 

 説得を重ね、取材はNGだがオレと一緒の写真は許可してくれた。

 

 条件付きだが許しを貰った文はというと――

 

「きました―――――! では静雅さん、侠さんっ! 先ずはお互いの肩を組んでくださいっ! その後はお互いの拳をくっつけながら目と目で語るようにっ! その後は――」

 

「落ち着け文。急ぐようにしなくて良いからな? もう少し落ち着いて写真を撮ってくれ」

 

 許可が出たのがよほど嬉しかったのか、興奮気味に文はオレ達にポーズを指示してきた……ポーズをとれていないオレ達でも忙しくカメラのシャッターの音が聞こえるが。

 

 オレの言葉で少し冷静になる文。

 

「あ、あややや。失礼。取り乱しました」

 

「……静雅。許可出しておいてなんだけど、かなり不安になってきたんだけど……?」

 

「文という名の激流に身を任せて同化しろとしか言いようがないな」

 

「…………はぁ」

 

 溜め息をつきながらも侠は、文の指示通りのポーズをオレと一緒にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 文が指示した通り体制でオレ達は写真を撮られ続けた。途中細かい指示で――

 

 

 

『静雅さんはいつも以上に着崩してください! 侠さんも同様で着崩した後、お二人は魅せつけるようにっ!』

 

 

 

 どこの【アッチ】系のカメラマンかよ、というツッコミを入れたがったが、侠は無表情に近い顔で渋々従っていた。

 

 そして――満足したのか文はようやくシャッターを切るのを止めて、上機嫌な表情でオレ達に礼を言った。

 

「いやぁ~ありがとうございますっ!! お二人の絡み、普段キチンと着こなしている侠さんの貴重な着崩し! 本当にありがとうございましたっ!!」

 

「……そう」

 

 撮られている内容の為か、適当な相槌で返す侠。よく途中で投げ出さなかったな……。

 

 その意味を含めて、オレは労るようにして声をかけた。

 

「お疲れさん、侠」

 

「……途中で早く終わらないかなって思った」

 

 予想通りの返事だな、うん。

 

 侠の否定的な返事に文は気遣うように話し掛ける。

 

「それはすみませんでした……この時でしかこういう写真は撮れないと思い、思った以上に時間がかかってしまいまして……」

 

「まぁ……過ぎ去った事はしょうがないとして……これで終わりで良いんだよね? 今日は寄る所があるからまたね」

 

 そう侠は言って自分の荷物を肩に掛け、寺子屋から出て行った。

 

 一応やる事は終えたので、次の行動はどうするのか文に尋ねた。

 

「文、次はどこに行くんだ?」

 

「そうですね……では、紅魔館に戻りましょうか」

 

「は? 紅魔館?」

 

 スタート地点に戻るのか? もしかすると別な目的が?

 

 オレの言葉に察しがついたのか、文は補足するように説明。

 

「紅魔館に戻る理由はそこのあるお二人に取材する為ですよ? 普段は断られるのが鉄板となってきていますが……静雅さんがいればそれが可能だと思ったので!(……本当は侠さんに紅魔館の【ある方】について聞きたかったんですけどね……)」

 

「言いたい事はわかるが……それでも断られるのがオチじゃないか?」

 

「そこは静雅さんの能力で【素直に喋る】という事で」

 

「おぉ、ゲスイゲスイ。別に良いが……内容はソフトなのにしてやれよ?」

 

「その時はまた申し訳ありませんが……静雅さんは退席という事になると思うのでお願いします」

 

「また女子会か?」

 

「はい。女子会になりそうです」

 

 頻繁に多いな、女子会。

 

 ……男には話せないとなると定番は恋バナだが……野暮だな。深く踏み込まない方が良いだろう。

 

 それ以上は干渉せず、オレ達は紅魔館へと飛んで向かった……。

 

 

 

 

 

『あれ……静雅と射命丸も紅魔館に向かうんだ……? まぁ良いか。自分は歩いて――図書館に向かおう』

 

 

 

 

 




 誰得と描きましたが、これを利用します。とりあえず誰かは得します。それをどうするか。

 三人目は表主人公でした。三人目は意外だったでしょうか?

 ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。