幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ※10000字超えています。注意。
 最初は裏主人公視点。視点の切り替えが多少あります。
 ではどうぞ。


Final shutter【逆パパラッチ、恋愛の……?】

 文の家へと戻り、夕暮れが終わる頃。オレは文と共に大ざっぱな記事を纏めようと話していた。

 

「早苗の件はもう遊んでいるからな……本当にこれで良いのか?」

 

「少なくとも静雅さんと早苗さんとの会話よりはこちらの見出しがよろしいかと。私から提案しておいてなんですが……」

 

「確かに『誰得だよ』っていう内容だからなぁ……しょうがないか……」

 

 早苗に関して――というよりは守谷神社の神々と分け隔て無く触れ合うと……。

 

 次の人物達の記事内容について気になったので、詳細を尋ねるオレ。

 

「オレがブリッジしている時に、秋の神様達に何を聞いたんだ?」

 

「その事ですか? 静葉さんと穣子さんに【静雅さんを同じ神様としてどう思っているかどうか?】をお尋ねしました」

 

「あぁー……確かに本人がいたら喋りにくいな、それ」

 

 オレは文のあの時の説明に納得した。それなら仕方ないと割り切れるだな、うん。

 

 そしてもちろん、二人の評価が気になるのも事実。

 

「秋の神様達はオレの事をどう評価しているんだ?」

 

「それはですね……まずは姉である静葉さん。彼女は【神様としてはどうしようもない】という事です。あくまで神様としての視線なのであしからず。おそらくこの言葉についてはあなたの性質である【神々から嫌われやすい】という事を考えてでの発言かと」

 

「……そこはどうしようもないんだよなぁ……」

 

「あ、でも静雅さん。妹である穣子さんは肯定的でしたよ?【他の神々なら莫大な信仰を獲得している】と。こう姉妹で意見が分かれるのは面白くありませんか?」

 

「まぁ、そうだな。人の感じ方は千差万別だし。妹さんの評価が良かっただけでも良かった事にしよう」

 

 スカーレットシスターズとは違うなと思いつつ、次の話題に移す。

 

「侠……というよりはオレも含めているのもある写真か。これはどうするんだ?」

 

 疑問を投げかけると文は、それなりにある胸を張りながら答える。

 

「侠さんと静雅さんの写真についてはコラムにして載せます!【今日の一枚】的な感じで、お二人の単独やご一緒にいる写真を! 女性の実力者が多数ですからね! 幻想郷ではかなりの需要が絶対あると確信します!」

 

「……ある意味、珍し過ぎて二人組写真を見た女が腐らなければ良いけどな……」

 

「? 何を言っているのですか? お二人がご一緒の写真を見たぐらいじゃ腐りませんよ? でも、確かにお二人の絡みの写真にはぐっとくるものがありますが!」

 

 カメラのフィルムの(十中八九オレと侠の)データを見ながら興奮気味で言う文。

 

 ……むしろオレとして異性、もしくは女同士の目の保養になるシーンの絡み写真を撮って欲しい……。

 

 話がずれてきたのでオレは戻そうとしたが――

 

「咲夜は――おいておくとしてと。小悪魔に関してだな」

 

「そうですね……小悪魔さんについてですね」

 

 決して咲夜をおいておいたのは他意はない。本当に。

 

 文は机にダレながら感心するように言った。

 

「……静雅さん。私が小悪魔さんについて【侠さんについてどう思っているのか?】と話した時、物凄い高揚していたのはこの事を見通していたんですか?」

 

「侠から小悪魔についての相談事があったからな。それに加え侠は最近よく図書館に来ていたのもある。侠の取材が終わった後、もしかしたら来るかもしれないと思ってな。文に現像に頼まれた時に侠と会っていたんだ」

 

「だから侠さんは都合よくいたんですか……!」

 

 オレの説明に納得している文。

 

 実はというと侠は文が小悪魔に写真で揺さぶっていた時にいたんだよな。パッチェさんもその時気づいていたが。

 

 そして……オレは侠が誰かを好きになるという事を好ましく思った。

 

「侠が小悪魔とそういう関係になった事で……段々と他人に友好的になるかもな」

 

「あ~……侠さんは確かにあまり深く人に自ら関わっていきませんよね。この事で最低限は紅魔館の方々と触れ合うのは必然ですし」

 

「そういうこった。この記事を考えてくれた文には感謝だ。ありがとな」

 

 いつも心から願っていた事が叶い、文に礼を言うと……言われるのが予想外だったのか、照れくさそうな反応をする文。

 

「……あ、あやや……取材関連でお礼を言われたのは初めてですね……」

 

「謙遜しなくていいさ。これでオレの文への評価が鰻登りだ。もしかしたら文ルートを開拓するかもな」

 

「――!」

 

 オレがそう言うと……文は急に立ち上がり、言葉を少し詰まらせながらもオレに話しかけてきた。

 

「そ、そうです静雅さん! 能力で一瞬で帰れるとは、もう日が暮れます! この際私の元で夕食を食べませんかっ?」

 

「お? まさかの飯の誘いか? このイベントを逃すわけにはいかないな! もちろんOKだ!」

 

 誘いに了承の意思を示すと、文は機嫌を良くしたような反応をした。

 

「わかりました♪ 本日の取材に協力してくださったお礼でもあります! 私の手料理を振る舞っちゃいますよ!」

 

「おう! 振る舞っちまえ!」

 

オレはこの日文の家で食事をする事になった……。

 

 

 

 

 

 

 

「文ー? まだかー?」

 

『もう少しで出来るので待ってくださいー』

 

 オレは適当に文が過去に発行した新聞を読んで時間を潰している。扉越しに声をかけたが、まだ出来ないという。

 

 ……なんか結婚して新聞を読んでいる旦那、料理を作る妻という感じだな。これは。

 

 過去に起きた異変の記事、誰かのゴシップ記事を読み終わり元の場所に戻した時に――傍にあったタンスの裏に隠されていたように、少し小さな箱を見つけた。

 

「……何だこれ?」

 

 新聞を戻した後にその箱を手に取る。その箱の開閉する縁に四桁の数字を回すタイプの南京錠の鍵が掛かっていた。

 

 ……まさか特大の秘蔵ゴシップ写真があるのか? 凄い気になる事だが――

 

「――ま、オレの能力で簡単に開けられるわな」

 

【解錠をした】事にし、数字が勝手に回りだして適当な番号に揃った瞬間鍵が外れた。

 

「よし、一体この箱にどんなゴシップが――」

 

 そうして箱を開き、中に入っていた写真を取り出して見たが――

 

 

 

「――っ!? こ、これは……!?」

 

 

 

 オレは写真を見て驚愕した。写真は数十枚あり、ざっと全部見たが……とある人物の写真達だった。

 

 そして――この写真達が意味する事。今までの事が繋がり……もしかして――いや、確定的に――

 

『(ガラッ)お待たせしました! 静雅さん出来ましたよ――』

 

 文がタイミング良くか悪いのかわからないが……扉を開けて言いかけている途中で――先程の活発な表情とは打って変わって青ざめている。

 

 もちろん、文の視線の先はオレが持っている箱と中身の写真だ。口をパクパクさせながら――

 

「な……ななな――」

 

茄子(なすび)か?」

 

「――何見ているのよあなたはぁああああーっ!?」

 

 今までの丁寧な言葉遣いとは全然違う喋り方をしながら、文は風の如くの速さでオレから写真を奪い取った。

 

 文に視線を向けると頬を赤く染め上げ、口ごもりながらもオレに話し掛けてくる。

 

「み……見た!?」

 

「……詳しくは見えなかったな――」

 

「(よ、良かった……もし全部見られていたら私との関係が――)」

 

「だからこそオレは――じっくり確認する事にしようと決めたんだ」

 

「…………えっ? それは一体――」

 

 文がオレの言葉に疑問に思ったがもう遅い。能力を発動し【写真を手にした】事にし――文から写真を奪い取った。

 

 少しの間、脳の処理が遅れている文の時に写真を再確認するオレ。

 

「さってと、再確認と……」

 

「――!? 静雅さんっ!? 写真を返しなさいっ!」

 

「オレを捕まえる事が出来たらなぁっ!」

 

「ちょっと!? 触れる事が出来ないんだけど!? これでどうやって取り返せというのよ!?」

 

 オレは【接触出来ない】事にし、文の手がオレの体を貫通している。所謂実体をなくしている事と等しい。ちなみにオレから触ろうとすれば触れる事が出来る。そうじゃなかったら写真を持てないしな。

 

 文は捕まらない事がはわかっているつもりだろうが必死に捕まえようとする中で――文のスカートのポケットから御守りみたいなものが床に落ちた。文はそれに気づき回収しようとするが――

 

「! 早苗さんから貰った物が――」

 

「どんな御利益の御守りをもらったんだ?(ひょい)」

 

「静雅さぁんっ!? お願いですから拾わないでくださいぃっ!!」

 

 さっきまでの強気な言葉遣いはどこにいったのやら。丁寧な言葉で懇願するような文の言葉が響き渡ったがオレは気にする事はなく、読んだ。

 

「――【恋愛祈願】」

 

 オレがそう読み上げると文の体が硬直したように止まった。オレはこれで意味が確信的にわかり……言葉を発した。

 

「今日会った時に言った『願ったり叶ったり』は、こういう意味だったんだな。ネタが手に入りやすくなるうえにオレと一緒に行動出来る。文とのエンカウント率の高さ。そして……こんな役得イベントを体験出来るわけだから文本人として嬉しかったんだろう?」

 

「――っ!!」

 

「……文。今までの事とこの御守りと写真、そして――今回の取材同行でわかった事があるつもりだ――」

 

 オレはそこで言葉を区切り、ある推測――いや、確信の言葉を言った。

 

 

 

 

 

「――文、お前さんはオレの事が好きなんだろ?」

 

 

 

 

 

「…………うぅ」

 

 オレの言った言葉に文はぐぅの音がでない様子に変わった。顔も赤く染まっていく。

 

 鍵までして見られないようにしていた写真は全部オレの写真だった。普通に歩いている写真、侠の頭もあるが笑っている写真など……さらにはどうやって撮ったのかわからないが――バスタオル一丁の写真まであった。本当にどうやって撮ったんだ?

 

 だが……こんな写真を撮られているオレだが怒っていない。外界だとすぐさま週刊誌などに掲載されていただろうな。しかし、文の場合は新聞に載せず個人だけにおさめてくれていた。本心はどうかわからないが――男の一人として好意を持っていると不思議に感じた。

 

 だが……普段弱みを見せる事が無い文だ。だからこそオレは反応を楽しむ事にした。

 

「随分オレに御執着だったみたいだな? よくもまぁこんなにオレの写真を撮ったもんだ。バスタオル一丁とかよく撮れたなと逆に感心するぞ本当に」

 

「…………うぅ」

 

「……ま、素直になっちまえよ。別にオレは文と距離をおこうだなんて考えてねぇし」

 

「…………えっ!?」

 

 距離云々の言葉を言い終えた時、文から信じられないような驚愕の声が耳に入った。

 

 それには当然疑問に思ったので文に問いかける。

 

「どうしたんだ文? そんな信じられないような声を出して?」

 

「いやいやいやっ!? 静雅さんに無許可で写真を撮っているんですよ!? さ、さらにはその……半裸に近い写真まで――」

 

「半裸の写真はともかく外界でそういうのは慣れっこなんだよ。プライベートで隠し撮りなんて日常茶飯事だ」

 

 オレの言った言葉を文は考えるような仕草を見せる。そして過去の取材内容を思い出したようで口にした。

 

「……そういえば静雅さんの外界の仕事は【もでる】というもので、いろんな服を着て写真を撮られる仕事だと言っていましたね……! 外界では、その……私の様な方もいたのですか?」

 

「そういうこった。中には仕事外で写真を撮ってくる輩もいた。そういう奴は別に構わないんだが……違う奴はオレの弱みを撮ろうという愚か者もいたんだ。ま、出し抜いてやったけどな」

 

 詳細を言うと文は納得した反面、申しわけなさそうにしていた。

 

 だが……オレは気になる事が当然ある。その事について、オレは問いかけた。

 

「文……どうしてオレなんかを? オレなんかより同族の天狗の方が良いだろ?」

 

「……同族で静雅さんみたいな方はいませんよ。私は種族関係なく――男性の一人として、静雅さんの事が好きなんです」

 

 事情を聞いている中で改めて告白された。流石に言ってて恥ずかしいのもあったのか、珍しく文の頬は赤くなっているように感じた。

 

 ……やべぇ。普段と態度が全然違う文にギャップを感じる。何か可愛く見えてきた。

 

 オレは頬を掻きながらも、きっかけを聞こうとする。

 

「そ、そうか……でも、どうしてオレを」

 

「……私が言うのも何だか取材を受けている気分ですね。小悪魔さんもこんな気持ちだったのでしょうか? あやや……わかりました。静雅さんの返事はもうわかっていますが……せめて、私の想いを伝えさせてはください――」

 

文はゆっくりと、話をし始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

  ~side out~

 

「はぁ……最近、異変もなければ事件もありませんね……」

 

 悩むように文は言いながら人里の茶屋で注文した団子を頬張りながらお茶を飲んでいた。このところ、新聞に載せられるような記事が無いらしい。

 

「(……だからといって誰かのネタに関連する記事はバッシングを受けるのが多数のネタばかり……どうしますか――)」

 

『お? 文じゃないか。何か悩んでいるみたいだがどうしたんだ?』

 

 彼女が本当に悩んでいる時に――紅魔館の執事でもある本堂静雅が近くにやって来た。そして彼が文の隣に座り、彼女は彼に話しかけた。

 

「静雅さん? こんなところで逆にどうしたんですか?」

 

「オレ? オレはちょっくら博麗神社で侠と弾幕ごっこをしてたんだよ。結果は負けたけどな……」

 

「……あや? よくよく考えれば弾幕ごっこの熟練者で異変解決者である魔理沙さんに勝って、霊夢さんは追い詰めるまでいったんですよね? 侠さんも異変解決者として数えられていますが……あの霊夢さんを追い詰めるたんですから、侠さんにも勝てるのではないですか?」

 

 文が疑問に思った事は当然だ。幻想郷代表の実力者である霊夢に静雅は追い詰めたと過去の取材で言っている。この時は彼の言葉を鵜呑みしていた。

 

 彼女の言葉の意味に察した静雅は淡々と答えた。

 

「あー……優劣関係についてか。魔理沙達がオレに勝てなくて侠が勝てる理由として、オレと侠の弾幕ごっこは能力制限の縛りプレイをしているんだ」

 

「えっ……もしかすると能力有りならば侠さんにも勝てるのですか?」

 

「ぶっちゃけオレに能力で勝てる奴は八雲紫ぐらいじゃね? というぐらいのチートだからな。オレの能力」

 

 適当な雑談程度のつもりで静雅は話していたのだが……この話を聞いた文は目を輝いているように興味を持ち、彼に詰め寄りながら詳細を求めた。

 

「あの紫さんと並べるような能力ですか!? その能力で霊夢さん達を追い詰める能力だなんて余程利便性の高い能力――」

 

「OK文。とりあえず落ち着こうか。如何せん距離が近すぎる」

 

 彼の言葉で彼女は我に返り……距離を戻しながら謝罪。

 

「す、すみません……久々のネタかと思ったらつい……」

 

「今の場面ならCG回収だったな。さっきの場面は」

 

「……【しーじー回収】ですか? それは一体……?」

 

「おっと、今の独り言は気にしないでくれ――店員さん、オレにも団子とお茶一つ」

 

『は、はい! 少しお待ちくださーい!』

 

 静雅は文と同じ物を注文し、運ばれる間話を続ける。

 

「侠とは外界でいろいろな勝負事をしたりするんだが……負け越しているんだよ」

 

「そうなると侠さんが勝ち越していると言うことですね……。侠さんはそんな勝負事に強いのですか? それはそれでかなり意外なのですが……?」

 

「あいつ、興味を持った事にトコトン追求するからな……それで初見で大体把握したら二回目以降基本的に勝てなくなる」

 

『お、お待たせしました!』

 

 話している途中で茶屋の女性店員が頼まれた物を運んで来た。

 

「お、ありがとさん」

 

『い、いえ……つかぬ事をお聞きしますが……隣の女性の方とはどういう関係なのでしょうか……?』

 

 店員から静雅と文の関係を聞き出してきた。その事に文は答えようとしたが――

 

「私と静雅さんとの関係は――」

 

「オレと文は恋人関係だ」

 

「そうそう、恋人関係――って何を言っているんですかっ!?」

 

 静雅が嘘の発言をし、その事に反応して彼に抗議するように声をかける文。

 

 だが、彼女の反応を見てかはわからないが……店員は気まずい様子で――

 

『し、失礼しました!』

 

 静雅の言葉を鵜呑みした様子でその場を去っていった。文はもちろん、呑気にお茶を啜っている静雅に追求した。

 

「静雅さんっ!? あの人間の方に何故嘘をっ!?  私達はそんな関係でもないですよね!?」

 

「……あの店員はオレが店に入った時から視線を送っていたんだ。外界での経験上で『これは狙われているな』と思って」

 

「……それは静雅さんの自意識過剰では? そんな視線ぐらいで――」

 

「……幻想入りしてから何組のカップルを破局、男の片思いを荒らしてきたか……」

 

「…………冗談ですよね?」

 

「ところがどっこいなんだなこれが。フラグを建てるんじゃなかったって後悔している」

 

「(……なんだかんだ今の内容が特ダネのような感じます……)」

 

 今の会話を聞いて文は心の内に留めておこうと決心した。

 

 そして静雅は説明の補足をする。

 

「ちなみに仮恋人関係については最低限自重しているからな?」

 

「……? 言葉の真意がわからないのですが……?」

 

 そして――この静雅の発言がきっかけとなった一言であった。

 

 

 

「――仮に文とならそういう関係になっても良いと思ってな」

 

 

 

「…………あやぁっ!? わ、私なら良いって何事ですか!?」

 

 さらっと言った静雅の言葉に羞恥を覚え、彼に詳細を求めようとしたが――

 

「あくまで【仮】だからな? 照れた顔はオイシイが本気になられると逆にオレが困る」

 

「で、ですが……今の発言は卑怯な――」

 

「その話を続けるとオレまで恥ずかしくなるからやめとけ。こういう時は茶でも飲んで落ち着くといい」

 

 彼は団子を食べ終え、串を皿に置いた後湯飲みの掴み――口元に近づいた時、ある事に気づき止めようとしたが――

 

「! 静雅さんその湯飲み私の――」

 

「(ごくっ)ん? 何だ?」

 

「…………いえ、何でもないです…………」

 

「? 顔を背けてどうしたんだ文? お前さんらしくないな?」

 

「(静雅さんが間違えて私の残っていたお茶を飲んだからですよっ!!)」

 

 ――彼はちょうど縦に並んでいた湯飲みを取り間違い、文の飲みかけをお茶を飲んでしまったのだ。彼女に気にさせるような言葉を言われたのに加えて間接キス。文は意識してしまい顔を反らしてしまった。

 

 しかし彼はそんな事に気付かず、話を続けた。

 

「仮にオレはさ、異性と付き合うなら好みっていうかなんて言うか……外見は重視しないと考えているんだ。まぁ、それなりに可愛かったり綺麗だったら嬉しいのは確かだが」

 

「……? それはどのような方と?」

 

 文からの疑問に彼は空を見ながら、遠目で答えた。

 

「……一緒にいて楽しく過ごせる奴かな?」

 

「……外来人の方は抽象的な表現で言いますよね……。侠さんもそうですし」

 

「オレ的にな抽象的で良いと思うけどな。具体的な好みを言ったところで、実際とは違うタイプの異性を好きになる可能性も無いとは言い切れないのもあるかもしれない」

 

「……そういうものでしょうか?」

 

「そういうもんだと思うぞ」

 

 彼女の再確認の言葉に彼は相槌を打った。

 

 そして彼は立ち上がり、文に顔だけ向けて――心を荒らそうと発言。

 

「最も――オレとしたら文と過ごす時間も楽しいけどな」

 

「――あやややっ!? 静雅さんっ!! からかうのも大概にしてくださいっ!!」

 

「ふははは! 嘘に思っても本当に思っても文に任せる! この勢いで文ルートも建てておくぞ!」

 

「また外界特有の言葉ですか!? せめて言葉を濁さす――」

 

「じゃあな! また会おう!」

 

 そして静雅はその場から姿を消した。この時の文は彼の能力を知らなく、困惑しながら溜め息をつきた。

 

「はぁ……静雅さんは本当の言葉と嘘の言葉を交えるので真意かどうかわかりませんよね……。それに静雅さんのお茶どうしましょうか……」

 

 そう思いながらお茶が置かれている場所を見たが――その隣にお金が置かれていた。文は手に取り確認する。

 

「これは静雅さんの……? それに金額は……私の分まであるのですかっ!?」

 

 ……ちょっとした彼の優しさに惹かれた文であった……。

 

 

 

 

 

「……どうも静雅さんの言葉が気になってしょうがないわ……」

 

 文は自宅の布団で転がりながら静雅の言葉の意味を考えていた。過去に【日食異変】の記事で撮った静雅の写真を見ながら。

 

 彼女は記者としての言葉遣い、天狗としての言葉遣いを分けており、ラフな言葉遣いで独り言を言った。

 

「初めて対面した時も思ったけど、静雅さんは顔立ちが結構良いのよね……」

 

 だからこそ、人里での異性の問題が発生したのだと文は考える。おそらく彼みたいなタイプは彼自身しかいない。顔も良くて、さらに友好的。間違いなく彼を好いている異性がいるだろう。

 

「……特に紅魔館の人物達の誰かは静雅さんに好意があってもおかしくないわ……」

 

 この時はまだ文は咲夜が彼に好意を持っているという事を知らなかった。だが、彼が他の異性と過ごすのを想像するとイラつきが感じられていく。すぐさま文は想像するのを止めて他の事を考える。

 

「静雅さんは良く私の新聞を読んでくれているわね……」

 

 たまに静雅と遭遇した時、新聞の話題になる時に彼は『真意はともかく、面白いよな!』と賞賛してくれる時があった。その事に彼女は無論、機嫌を良くした。

 

 そして――文の今後の方針を決める。

 

「……静雅さんの事をさらに良く知ってみますか……」

 

 そう決心すると糸が切れたように彼女は眠りについた……。

 

 それからだった。時間ができれば静雅の観察、もしくは直接コンタクトをとる。そういう生活が続いていた。その過程で彼女の知らない彼の一面を見たり、対人関係について把握していった。この過程で咲夜と静雅の親密度を知ったのだが……彼女も負けず彼と触れ合っていくことになる。

 

 しかし文は静雅と触れ合っている事に段々疑問を覚えるようになった。『どうして彼ばかりと触れ合おうとするのか?』、『どうして彼に執着するのか』と。

 

 その答えは彼と咲夜が話している時に彼が笑い、珍しく彼女がクスリと笑った時に気付いた。本来なら十六夜咲夜が笑う事はほとんど無い。一種のネタになりそうな写真の構図だった。談笑してお互いに笑う異性。新聞のネタとしたら今の構図を写真に収めるべきだったのだが……文は写真を撮りたくなかった。彼が自分以外の女性と写っている写真は撮りたくない――

 

 この時だった。この感情も含めて、本堂静雅の事が好きという事を自覚した。

 

 きっかけの茶屋であった出来事は、彼にとって娯楽だったのかもしれない。

 

 冗談だったのかもしれない。しかし彼女はその出来事で彼の事が気になってしまった。触れ合いの中で好きになってしまった。真意で言ったのかもわからないのに。

 

 だからこそ自覚した彼女は、彼に振り向いてもらうために行動した。彼に自分の事を意識してもらうために。

 

 

 

 

 

 ――あの日に言った彼の言葉を【真意】にするために。そして――ようやく、二人で長い時間を過ごす事になる。

 

 

 

 

 

 

 

「――以上が、私の気持ちです」

 

「…………」

 

「……わかっています。気持ち悪いですよね……咲夜さんにも言われましたが、本当にストーカーみたいですよね……あやや……」

 

 文の話を聞いた静雅は彼女の顔を見ている。たが彼女は後ろめたい気持ちが占めているのか、顔を背けて話をしている。

 

 そして文はぎこちない笑顔を作りながら、自虐するような言い方で話しかけた。

 

「もう、思っている事を吐き出しちゃってください。静雅さんにどう言われようが……覚悟は出来ています……」

 

「…………文――」

 

 文が言い終えた時、彼は彼女の名前を呼びながら――彼女の方頬に手を置いた。

 

「――っ!!」

 

 文は平手打ちと思い、目を瞑った。

 

 しかし……一向に彼女の頬に衝撃が来ない。彼女は目を瞑り続けていたのだが――

 

 

 

 頬ではなく――唇に何か温かいものが触れた。

 

 

 

「(……? これは一体――)」

 

 文は確認するために目を開けたが――

 

 

 

 

 

 ――目を瞑った彼の顔が目の前にあり――キスされていた事に遅れて気付いた。

 

 

 

 

 

「――っ!?(ドンッ)」

 

 文は数秒遅れて反応し、彼を両手で突き飛ばした。しかし彼はこらえて足一本後方に出して持ちこたえた。

 

 彼は何故か不満げに言葉を発したが――

 

「おいおい……突き飛ばすのは少々やり過ぎだと思うんだが――」

 

「思わないわよっ!! あ、あなた……何をしたかわかっているの!?」

 

「キスだな」

 

「な、何でそういう事を平然とするの!? それともアレ!? 弱みを握ったから好き放題にするつもり!?」

 

「……オレってそんなイメージがあるのか……? そういうつもりは一切ない。落ち着いて話を聞いてくれ」

 

 言葉遣いを変えながら顔一面赤く染めながら猛抗議している文だが、静雅はゆっくりと話を始める。

 

「もし仮に文がオレに好意を抱いていないとして、パパラッチとしての写真なら軽蔑していたかもしれないが……こういう理由ならば全然構わない。オレの周りの人物に危害を与えていないんだろ? 異性の好意ならドンと来い」

 

「……え? 隠れて静雅さんの写真を撮っていたのよ? それは?」

 

「オレは守備範囲が広いんだ。世間一般に見ても文は整った顔やスタイル、話しやすいからな。ネタのためなら少し際どい質問や写真を撮ろうとするのはわかっているつもりだからな……今回の写真はオレが好きだから撮った。そういう事だろ。そんな理由ならオレは怒らないし軽蔑したりしないさ。むしろ文ルートに入っていたとはな……」

 

 後半感慨深く喋っていた静雅だが……文はあることを再確認するように尋ねる。

 

「じゃ、じゃあ……あのキスは――」

 

「オレなりの返事。何か振られると勝手に解釈していたから現実に引き戻す為にな。それで……文と【恋人関係】になっても楽しくやって一緒の時間を過ごすのを悪くないと思った。だから文――こんなオレで良ければ頼む」

 

「え……あ、はい……よろしくお願いします……」

 

 まさかの良い返事だった事に文は驚きを隠せなかった。無意識に記者としての口調に戻り、彼の言葉を受け入れたのを同時に念の為再確認をした。

 

「あ、あの……本当に私なんかで良いんですか? 咲夜さんなど気になる異性の方がいたのでは……?」

 

「そこまで疑心暗鬼になるならキスを返せと言いたいところだな。文はどうかわからないが……初めてだったんだぞ?」

 

「私もそうですよ!!」

 

 顔に似合わず少し頬を染めながら言う静雅に、彼以上に頬を染め上げて抗議するように言う文。

 

 だが――静雅の目がキラリと光ったように、文に近づきながら話しかける。

 

「そうなると……【その先】もしていないと事だな?」

 

「……!? 急にどうしたんですか!?」

 

「なら――」

 

 静雅さんは傍で畳まれていた布団を【敷いた】事にし――

 

 

 

 

 

 文を布団に押し倒し、覆い被さりながら言葉を続けた。

 

 

 

 

 

「――お互いの信頼の為にも、【こういう】事を経験していた方が良いだろ」

 

「…………あやややぁっ!? し、静雅さんっ!? まだ私達は恋人関係になったばかりで【こういう事】をするのは早過ぎるような――」

 

 文はかなり動揺を見せながら抗議していたが……静雅は文の耳に口を近づいて囁くように言う。

 

「そんな事を言っておいて一人で【欲求不満】を解消していたんだろ? 好きな男を思い浮かべながらよ。半裸の写真について随分お世話になったんだろう?」

 

「(っ!? どうして覚り妖怪でもないのに見抜かれるのですかっ!?)」

 

 彼の推測に図星の様子を見せ、顔を背けようとするが……彼の手で動かせなかった。顔全体を赤くしながら少しある意味涙目の文を見て、静雅は妖しく愛おしそうに、笑っていた。

 

「普段強気の文が女らしくしている表情は、ぐっとくるなぁ。これがある意味オレの求めていた【ギャップ萌え】だ。服装はまったく関係ない、異性のある一面のギャップを感じるこの感じ……(文は可愛いなぁ)」

 

「ひゃうっ!?」

 

 最後の言葉と共にふっと吐息を乗せながら言った静雅に、文は体を震わせた。

 

 そして──文は心の中で思う。

 

「(静雅さんは幽香さんと同じで――違う意味でドSですよ絶対っ!!)」

 

 心で思ってもどうにもならない。彼のペースになっている。そして――このまま身を任せたい自分がいる。

 

 妖しく静雅は笑いながら言葉を続けた。

 

「ま、【こういう事】は初めてだが……知識はある。そのまま――身を委ねてしまえ」

 

 彼は文に手をかけ始め――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ここから先への描写はスキマ送りにされました】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~side 文~

 

 ……何時の間にか眠っていたみたい。外から小鳥のさえずりが朝だという事を教えてくれる。

 

「……何故か腰が痛いわね……今日は起きたくない気分――」

 

 そう思い寝返ると――見覚えのある顔が目の前に。

 

「……………………えっ?」

 

 私は手で目を覚醒を促すも、景色が変わる気配は無い。そして――目の前で規則正しい寝息で寝ている……静雅さんが。

 

「――えぇっ!?」

 

 思わず私は布団から飛び出たけど……自分は衣服を着ていなかった……って、どうして着ていないの私!?

 

 私の行動で目が覚めたのかわからないけど……静雅さんはゆっくりと上半身を起こして頭を掻きながら私に話しかけてきた。

 

「文……少し静かにしてくれ。朝からその声のでかさは辛い」

 

「…………どうしてあなたが私の寝床に!?」

 

 静雅さんはゆっくり起きて立ち上がると、掛けていた毛布を私に投げてくる。私は彼の服装を確認すると――裸に近かったが一瞬にして着替え終わった。能力で【すでに着た】事にしたおかげかもしれない。

 

 ……ってよくよく思い返してみたら――昨夜に――静雅さんと一線を越えていた事を思い出した。

 

「――はっ!? や、やっぱり昨日は――」

 

「察しの通りだ。お互いの身体中に求め合った印があるはずだ」

 

 そう言いながら静雅さんは右首筋にある【印】を見せてくる。私にも思い当たる箇所を思い出して胸元の場所を確認してみると――同じような【印】を見つけ出した。

 

 これからわかる意味は――

 

「……本当に……」

 

「かなり文が乱れていたのが印象的だったな」

 

「!! それはあなたが攻めて攻めたからよ! 言葉で攻めて私に主導権がなかったのが原因!」

 

「受け身の文が可愛くてな。理性が保たなかった」

 

「……卑怯よその言い方……」

 

「男というのは総じて卑怯なのさ」

 

 彼は自分の服のシワをのばした後、私にあることを聞いてくる。

 

「文って口調が違う時があるよな。仕事とプライベートを分けているのか?」

 

「……大体そうね。普段の口調だと取材をする際に受けが悪いの。だから清く正しい口調で取材しているのよ」

 

「じゃあ昨夜の良い方は乱れて誘う口調の方が正しいな」

 

「――! 昨夜の事を持ち出さないでくれる!?」

 

「ははは。悪い悪い」

 

 私は毛布を羽織りながら彼に抗議した中、笑って受け流して話を続ける。

 

「でも……今じゃ取材口調の方が聞き慣れているんだよな。今度は取材口調で頼みたい」

 

「……あなたは【そっち】の方が好きなの?」

 

「そういうワケじゃないんだが……3:1の割合で取材口調の方が良いかな。聞き慣れているのに加えてそっちの方が【夜の取材】っぽくないか?」

 

「……わかりました。彼氏からのリクエストです。静雅さんのご希望通りにしてあげます」

 

 ――彼はどうやら記者としての私の方が好みみたいですね。記者口調で返事をすると笑顔を浮かべながら言葉を返してくれました。

 

「悪いな文! 愛してるぞ!」

 

「あやや……知ってます♪」

 

 私は静雅さんに近寄って――キスをしました。急にされた所為か静雅にしては珍しく驚いている。

 

 ――今ですねっ!

 

「(カシャッ)はい、撮れました♪」

 

「…………は?」

 

 実は静雅さんから見えないようにカメラを拾って隠していました。静雅さんとキスした瞬間、撮りました。

 

 私は静雅さんから離れてデータを確認しながら言います。

 

「この写真は大事に取っておきますね! 記念写真という事で!」

 

「お、おう? 露骨にわかりやすいのをか?」

 

「はい♪ この際ロケットに写真を入れて掛けておきましょうか! 何時でもお互いの顔が見られるように!」

 

「なんというバカップルの考え……だが、ありだな」

 

「ですよね♪ 後は――」

 

 私は静雅さんと一緒にいろいろ話し合いながら、彼と一緒に過ごす時間を楽しんでいって──

 

 

 

 

 

 

 

「――侠さーん、そちらの本を渡してくれますかー?」

 

「ちょっと待ってて、こぁさん――はい」

 

「ありがとうございます。この仕事を終えたら休憩しましょうか」

 

「そうだね。それにしても自分と静雅とは……生活が凄く変わったね」

 

「ですよねぇ……静雅さんは『妖怪の山に住んでくる』という理由で、紅魔館から去ってしまうなんて……」

 

「それでフランドール……お嬢様の従者の役目のバトンタッチ。最初フランドールお嬢様はしぶしぶだったけど、了承してくれたっけ。フランドールお嬢様は静雅の事を気に入っていたからねぇ」

 

「癇癪を起こさないまで妹様は精神的に成長していた事、お嬢様は静雅さんが離れて寂しそうにする反面、嬉しそうでしたね」

 

「レミリア……お嬢様はそれだけ妹思いだったって事だね。そして静雅がここにいた意味があったって事だよ」

 

「そうですね……侠さんは侠さんで大変でしたよね?」

 

「博麗に紅魔館に移り住むと話した時ずっと止められてた。話が平行線だったところで紫さんが現れて味方してくれて……どういうワケか、こぁさんとの関係をバラされたけどね……」

 

「……絶対、あの場面を覗いていましたよね……」

 

「多分。それで博麗は投げやりだったけど了承してくれて、今にいたるね」

 

「たまに静雅さんは紅魔館に遊びに来てくれますが……侠さんがこちらに移り住んでくれて本当に嬉しいです!」

 

「ありがとう、こぁさん。自分もこぁさんとこういう関係に本当に嬉しいよ」

 

「侠さん……♪」

 

『こぁー、侠ー、紅茶出して頂戴ー』

 

「……パチュリー様が呼んでいますね……では侠さん、休憩がてら行きましょうか」

 

「そうだね。じゃあ行こうか」

 

「はい! ……それにしても静雅さんは妖怪の山でどうやって生活しているんでしょうか……?」

 

「(……実はというと――)」

 

 

 

 

 

 

 

――射命丸と同棲していて、山以外への情報漏洩を能力で防いで……ある意味バカップルみたいな生活を送っている事は秘密にしてくれって言われているんだけどね――

 

 

 

 

 

 

 




 これにて文の特別番外編は終了。40000字越えの大規模特別番外編になりました……ここまでこの文の特別番外編をリクエストしてくださったユーザー様、アンケート協力をしてくださったユーザー様ありがとうございました。

 秋姉妹での文の発言で「女性に簡単に『付き合ってくれ』とは言わない方が良いですよ?」と言ったのは、彼女もその関係者の一人だったため。

【ここから先への描写はスキマ送りにされました】関係は……タグ上、ここまでが限界でした。ちらっとアンケートの過程の意見で【こういうこと】をすると実は書いてあったのですよ? 【スキマ送りにされました】万能説。R-15があるなら少しだけの描写、R-18なら全て書かれてたでしょうが……悪いですがこの小説は全年齢向けなので。この先は課金が必要(嘘)

 ではまた。次は時間軸番外編になりそうです……。
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