表主人公視点。
では本編どうぞ。
『ふむ。今回の宴会の主役なんだからちゃんと私達のお酌をしなさい』
「了解した。レミリア嬢」
レミリアは静雅にお酒──ワインを注いでもらう。こうしてみると静雅って執事でも結構似合っているなぁ……。
自分はどうしようか悩んでいると、こぁさんが話しかけてくる。
「お酒は大丈夫ですか? 侠さん」
「大丈夫だよ飲まなくて。お茶で何とかなるし」
「そうですか……静雅さんから聞きましたよ? お酒にはどうやら弱いらしいので、少し心配で……」
「心配してくれてありがと。どっちみち飲まないし」
こぁさんとそう話していると、こぁさんの主でもあるノーレッジが会話に参加してきた。
「仲が良いようで何よりだわ。いっそ本当に紅魔館で働けば良かったのに」
「お誘いは嬉しいけどそういうわけにはいかないからね。博麗は神社にいた方が良いって言ってたし。それに今の生活に不満はないからね」
「…………そう」
ノーレッジは適当に相槌を打った後、話題を変えて話しかけてくる。
「……あなたのいない間にあなたのことについて討論をしていたのよ? あなたの妖力、能力について」
「…………? そうなの? 何でそういう話題に……?」
何で自分についての討論をする必要があるんだろう?
その言葉に疑問を持った人がもう一人いた。
「え……? パチュリー様達は侠さんについて討論していたのですか?」
中華風の服を着た紅さんだ。この人も疑問そうにしている。
……というより門番の人がここにいて良いのだろうか?
紅さんの言葉に十六夜が説明する。
「それはあなたは門番だからいなくてしょうがないわよ、美鈴」
「あ、そうですかー。だったら大丈夫です」
……良いんだ。
何がともあれ、ノーレッジに概要を聞くことにした。
「結果的にはどうなったの?」
「仮定とすれば……あなたは何かの妖怪の先祖返りの可能性があるの。それであなたの能力は【体を龍化させる程度の能力】ではなく、【他人の能力を使う程度の能力】の可能性が高いわ。あくまで可能性だけど」
「……先祖返りって祖先の特徴を突発的に受け継ぐことだよね? それで能力が違う?」
「能力は条件付きだと思うけどね。あなたの氷精もどきの力とかがその例よ」
……言われてみればそうだ。基本的には能力は一つらしいし、確かに【他人の能力を使う程度の能力】ならチルノは納得できる。でも、どうしてチルノの能力だけ使えるのか不思議だけど。
先祖返りについては……良く分からない点が多い。
「先祖返り、ねぇ……この変化みたいのは龍じゃないのかな? 辰上家は龍に関係ある子孫って聞いているけど、実際自分は関係ないよ?」
「静雅から聞いたけど、あなたは養子で引き取られていて身元が分からないのよね。まぁ、龍に属する何かじゃないかしら? 一部の爬虫類だの恐竜だの」
「……うーん……」
こうして考えてみると自分のことについて分からないことが多いなぁ。
「…………」
そう考えている中、十六夜は何故かこちらを見てくる。疑問に思ったので聞いてみることに。
「? 十六夜どうかしたの?」
「え……な、何でも無いわ」
……何か考えていてくれたのかな……まぁ、いいか。
そういえば静雅はどうしているのか見てみると──
『──行くぞフラン嬢! 背中に
『わかった! えいっ!』
『モードチェンジ! ヴァンパイアのパワーとスピードが身につけ、七色の翼を持つ半人吸血鬼『シズマサ・F・ヴァンパイアロード』降臨! 今こそ下克上の時だー!』
『時だー♪』
『ちょっ!? 何で私がある意味悪役なのよ!? その役私に譲って──えぇっ!? 急に四人に増えるな!?』
『『『『どうだ怖かろう! お前さん一人でオレ達を倒せるかな!?』』』』
『うー☆ 咲夜〜! パチェ〜! 美鈴〜! 今こそ私達の力を合わせる時が来たわ! フランと静雅を正常に戻すわよ!』
『『『『ふはははっ! 行くぞフラン嬢! オレ達の力を見せつけてやるときだ!』』』』
『『『『おーっ♪』』』』
「……平和そうで何よりだね」
「…………確かに平和ね」
自分の呟いた言葉に十六夜が同調してくれる。あの三人(?)を見てかノーレッジは微笑ましそうに言う。
「レミィもあんなにはしゃいで……彼が来てくれて本当に良かったわ」
「? どういうこと?」
その言葉に疑問を覚えたので聞いてみるけど、代わりにこぁさんは答えてくれた。
「……静雅さんが紅魔館に来るまではあまり姉妹仲があまり良くなかったんですよ。お互いの思いがすれ違いになっていたところを静雅さんが修復させたんです」
「……確かにそういうことを知ったらしそうだね……(多分自分が原因だけど)」
「え……? 今何て──」
「何でもないよ。それでノーレッジ達はどうするの?」
会話を変えてノーレッジ達に尋ねる。現在進行形で軽く静雅達は空中で弾幕ごっこをしているし。
「……とりあえず沈静化させておきましょう。こぁはここに残って、咲夜と美鈴は私と止めに行くわよ。宴会にしては少し派手だから」
「わかりました」
「了解ですパチュリー様!」
十六夜と紅さんが頷くと、ノーレッジ達は静雅達の方へ向かっていった。
そして──こぁさんと二人きりになる。
「静雅も楽しいことは大好きだからねぇ……ま、良いんだけど」
「……侠さん」
呟くように言うと、こぁさんが少し顔を赤らめながらも話しかけてきた。
「何? こぁさん?」
「……異変の時、どうして私が侠さんを見てためらったかわかりますか?」
「? いや、普通わからないと思うんだけど?」
「あ……そうですよね」
こぁさんは軽く咳払いをして、会話を再開させる。
「異変の前の日に……侠さんのことはもう知っていたんですよ。侠さんから見たら初対面でしたけど、私は侠さんのことを見たことがあったんですよ。静雅さんの『携帯電話』の写真で見たんです」
「あぁ……だから」
「その時私達は侠さんは外界にいると思っていました。まさかその侠さんが目の前にいるとは思わなかったんです」
納得がいった。仮に誰かわからなかったらこぁさんは侵入者として自分と戦っていたはず。静雅の説明次第だったと思うけど──親友とかそういう説明を加えていたとしたら、私情が入ってしまう。本当に攻撃して良いのか迷っていたんだ。
「……それに……」
こぁさんは少しワインを飲んで、自分に向き直る。その顔に何かの決意が見える。
「信じられないかもしれませんが……私、侠さんに一目惚──」
『あやや侠さん! すっかり機嫌が直っているようで何よりです!』
こぁさんの言葉を遮って射命丸が速い速度で自分の隣にやってきた。射命丸が来たのを同時に風が発生し、良く聞こえなかった。
「ごめん、こぁさん……もう一度言ってもらえる?」
「……うぅ。文さん空気を読まなさすぎです……」
何かを訴えるようにしてこぁさんは射命丸を少し親の敵のように見える。しかし射命丸は気にしていないように感じた。
「逆に私は空気を読んだつもりですよ? この場でそんなことになったら……とある人が暴走しますよ? 侠さん関係で」
「で? 射命丸は何のよう?」
用事を聞いてみるとメモ帳とペンを取り出し、聞いてくる。
「そりゃあもちろん幻想郷の新たな異変解決者として聞きたいことが山ほどあるんですよ! それと白玉楼でどのように過ごしたのかも聞きたいです!」
「……異変に関しては静雅に聞いてくれない?」
「静雅さんには結構聞きましたよ? 彼は異変が終わってからちゃんとした情報提供をしてくれましたから!」
……ある意味静雅らしいんだよなぁ。そういうの。
そして射命丸はどこからかお酒を取り出し、コップに注いで渡してくる。
「さぁ、ゲロってください! 気分はのらなくともお酒の力で喋りたくなりますって!」
「いや、自分はお酒は飲めないんだけど?」
「そ、そうですよ! 静雅さんから教えてもらった通り、侠さんはお酒がダメなんです!」
自分の言った言葉にこぁさんは同調してくれる。
しかし射命丸は真面目な顔で話を続ける。
「考えてみてください侠さん。ここは幻想郷。外界と違って縛りがかなり薄い世界です。静雅さんから聞きましたけど、外界ではお酒の飲める年齢が決まっている。しかし、この幻想郷にはそういうものはありません。むしろ幻想郷では酒豪が多くいらっしゃいます。そういう場面で侠さんだけがお酒飲まないというのは場の空気を悪くすることもあるのです。ですが……一気には飲まず、一口二口の少量で良いから飲んでみるんです。確かに生きている者は好きな物、嫌いな物を持っています。好きな物は良いですが。嫌いな物は少し克服するべき事だと思うんです。ですからこの機会にどうですか?」
……ある意味一理はある。外界に戻って、社会人になればそういう機会も訪れる。最近の職場ではお酒は飲まないといけないらしい。
……ノンアルコールで良いと思うんだけど。
そう少し悩んでいた頃──
『侠にお酒を飲ませるのは止めなさい。静雅が言っていたでしょう』
『【止めておくといいよー】』
自分たちに声をかけてきたのはマーガトロイドと天牌だった。マーガトロイドは静雅に自分にお酒は飲ませないように伝えていたのかな? 天牌の言葉も聞こえてきたけど……多分片言じゃないから『テンパーイ』と言っていたかも知れない。
声をかけてきたマーガトロイドに射命丸は答える。
「これはアリスさん。あなたはどうやら飲ませない派らしいですが──あや? その人形は初めて見ますね?」
「天牌よ。静雅が作って上海達みたく動かしているのよ」
射命丸は説明を聞き終えた時、思い出したように話題を変えた。
「あやや! そういえば昨日静雅さんと【デート】をしていましたよね! いつからお二人はそんな関係になられたんですか!?」
「……だからそういうのじゃないってば」
疲れたようにマーガトロイドは反論したが、射命丸は一自適にこちらに振り返る。
「侠さんも妖夢さんと人里で【デート】していましたよね! 後でその詳細を伺いますよ!」
「えぇっ!? 本当なんですか侠さん!?」
射命丸の言葉にこぁさんが詰め寄るが、普通に答える。
「違うよ。白玉楼のゆゆさん──西行寺幽々子さんに頼まれて一緒に買い出しに行っただけ。そういうのじゃないよ」
「……そうでしたかぁ……」
「む〜……侠さんの反応が淡泊すぎます〜……ま! そうでしたらアリスさんに伺いましょう! 人里で静雅さんとどんなことを──」
こぁさんは納得してくれて、興味の対象を再びマーガトロイドに向き直って聞いたが──
「──ジブンノダンジョノゴシップネタヲモッテイナイヤツハダマッテヨー(自分の男女のゴシップネタを持っていない奴は黙ってよー)」
「…………はい?」
天牌の片言の言葉に射命丸は聞き返した。少し流暢に喋るとは意外だったんだろう。それでもなお、天牌は喋り続ける。
「キョウミホンイデキイタツモリナンダロウケド、ホンニンガヒテイシテイルンダカラソコマデシテアゲナヨー。ソモソモイッポウテキニキクナンテオーボースギルヨー(興味本位で聞いたつもりなんだろうけど、本人が否定しているんだからそこまでにしてあげなよー。そもそも一方的に聞くなんて横暴すぎるよー)」
「う……ある意味正論ですね……しかし! 今の私にはそういう話題はないんです! だからこそ聞きたいんです!」
射命丸の持論を展開して、会話の流れを持って行こうとしたが──
「アリスサンガオトコトイッショニスゴシタノニキミハナイノー?」
「え……いえ、私はですね、そういう人との出会いがないというか──」
……人形の言葉に押されている天狗って……?
その光景を見てマーガトロイドとこぁさんは一言。
「……天狗がたじろぐのって珍しい光景よね……」
「……実際、文さんのそういう話はないですからね……改めて自分に聞かれてしまうと困るんでしょう……」
……この場はおさまりきりそうだし、まぁいいか。
『侠〜こっちへ来てくれる〜?』
自分を呼ぶ声がしたので振り返ってみると、紫さんやゆゆさんといった白玉楼で小宴会をしたメンバーが集まっている。
「じゃあちょっと呼ばれているから行ってくるね。こぁさん、マーガトロイド、またね」
自分はこぁさんとマーガトロイドに軽く挨拶をして紫さん達の元へと向かっていった……。
ある意味文はある人物の暴走を抑えるために割り込みました。どういう人物かはともかく。
まだ宴会回は続きます。
ではまた。