三人称視点。
では本編どうぞ。
『──今日の八目鰻も新鮮。お酒もばっちり! 屋台も綺麗にしたし! 後は……侠が来るのを待つだけ〜♪』
夜が深くなっていく今、魔法の森の近くに屋台が一つ。いつもとは服装が違い、女将のような格好をしている──ミスティア・ローレライ。彼女は鼻歌をしながら八目鰻という鰻を蒲焼きにして焼き、仕込みを行っていた。
彼女は寺子屋の生徒でありながら屋台を経営している。本来の目的は鶏肉を食べてもらうのは止めてもらい、代わりに鰻を広めようとしているのが目的だ。それでも彼女の屋台は結構な評判がある。これは彼女の功績が認められた証と言っても過言ではない。
「(今日は珍しくそんなにお客さんは来ていないけど……逆に好都合♪ 屋台で二人っきりで、その後は……侠に言うんだ!)」
……吊り橋効果でもあるのだが、どこかの司書や庭師のように想いを寄せるようになった。彼女は一人で来るであろう侠に想いを告げようと決心した。
このような行動を思ったきっかけがチルノだが……チルノはまだ精神年齢が幼い。朝の出来事でチルノの侠に対する評価が変わった。(自称)ライバルだったが、懐きに。まだ彼女が恋愛までの思考にはいかないだろう。
そう思ったとき、あることがよぎった。それは白玉楼の庭師、魂魄妖夢の事を思い出したのだ。
ミスティアから見ても、彼女は侠に想いを寄せている。自分のことを助けたと同時に、間違っていた道を正してくれたのが彼だ。そして──一度暴走してとんでもないことを口走った事がある。どうから見ても彼を受け入れる気満々だった。
その後、侠は白玉楼に連れて行かれたが……本日寺子屋にてそういう人間関係(?)を聞いたところ、何もないと答えた。その事を聞いてミスティアは安心した。
「(……侠は龍神の先祖返りって事にびっくりしたけど……それって種族での恋愛は気にしないって事だよね♪ 霊夢や魔理沙のような人間と全然私達に友好だし、私達と遊べるような仲だし! フラレたとしても、根気よくアピールを続ければきっと──)」
『──ミスティア、気持ちはよくわかった。俺は龍神の先祖返りだが人間には変わりはない。それでも俺が良いのか?』
『何度も言ってるけど……私は侠の事が好きなの! この気持ちは変わらないよ!』
『……そうか。なら俺は鰻よりも──体でミスティアを、食べたい』
『あっ……──』
「(──ってなことに……きゃ〜♡)」
顔を赤くして腕を上下に振りながら悶えているミスティア。もし目の前に客がいたら不審すぎただろう。
『? ここかな? ミスティアの屋台って?』
妄想を膨らませていたミスティアだったが、侠の声が聞こえてきて我に返った。即座に切り替えて彼女は屋台の中から返事をする。
「う、うん! 侠、ここが私の屋台だよー!」
ミスティアの声を確認したのか……端の
「おぉ……祭り以外で屋台を見るのは初めてな気がする……それに綺麗だ」
「そうだよ! 侠が来るからさらに綺麗にしたの! 侠が本日最初のお客さんだよ! さ、入って入って!」
ミスティアは約束通りに守って来てくれた侠を確認して大喜びしたが──
『──たまには外で食べるのも悪くないわね』
侠がミスティアの正面の席に座り、後から続いて──博麗の巫女、博麗霊夢が続いて入り、侠の隣の席に座り始めた。
「…………えっ?」
ミスティアは意外すぎる来客に困惑した。どうして侠と一緒に来たのかわからなかった為。
霊夢を見て呆然としているミスティアに、侠が説明をする。
「始めは一人で行こうかと思ったんだけど、何かそれじゃあ寂しくてね? 懐に余裕はあるし、博麗も誘ってみたんだけど……ダメだった?」
「い、いや……ダメじゃないんだけど……侠一人だけだと思っていたから──」
「──なら問題ないわね。早速八目鰻とお酒ちょうだい」
ミスティアの言葉を遮って注文を始める霊夢。それに対して侠はお品書きを眺めて考えているようだ。
「(──侠のバカーっ! 何で一人で来てくれないの!? 女の子の誘いだよ!? それなのに女の子を連れてきて、ましてや霊夢なんて〜〜っ!?)」
心の中で侠を非難しながらも、きちんと手作業はするミスティア。告白をしようと思ったときに限って、居候先の家主である霊夢。こんな状況で言えるはずもなかった。
しかし、一見そんなことを知るはずもない。侠はお品書きから目を離してミスティアに注文をしながら話しかける。
「同じだけど八目鰻の蒲焼きをいいかな? 八目鰻ってここの看板料理なんだよね? 聞いた話だとやっぱりおいしいと聞いてるからさ、内心楽しみだったり」
「え……あ、うん……ありがとう……」
期待していると言われたミスティアは恥ずかしい反面、嬉しかった。女の子を連れてきたのは許せないとしても、ちゃんと自分の料理に期待してくれている。それは嬉しかった。
しかし、それを聞いて隣にいる霊夢は不機嫌そうにしながら侠に問いかけた。
「……それじゃあ私の作った料理をどう思ってるの?」
「おいしいと思うよ?」
「……そう……」
ミスティアは見逃さなかった。霊夢は顔を反らしながら反応を返したが──少し嬉しそうにしていたことを。
「(……えっ!? 何その霊夢の満更でもない表情!? そんな顔を初めてみた……。もしかして──)」
『──ここが八目鰻を売っている屋台でいいんだよな咲夜?』
『えぇ。間違ってないわよ』
急に店の外から男女の声が聞こえてくる。暖簾をめくられるとそこにいたのは──吸血鬼姉妹の従者の静雅と咲夜が屋台の中に入ってくる。
無論、意外な来客が来たのを驚いたミスティアだが、侠はいち早く静雅達に話しかける。
「あれ? 静雅に十六夜? 二人ともどうしたの?」
「ん? デート中」
「(えっ!? 侠の友達がデート!? それって――)」
彼の親友である侠は言葉の意味は分かっているのだが、それを知らないミスティアは心の中で真に受ける。しかし、咲夜が冷静に否定。
「違うわ。何普通に嘘をついているのよ?」
「うーむ。そう冷静に対処されると静雅さん悲しい。しくしく」
「ある意味あんたは平常運転ね……」
霊夢も会話に加わり、四人で話をしている。その光景は何故だか楽しそうだ。
「(……何なのこのメンツ? 侠と静雅はわかるけど、紅魔館のメイドとも侠は仲がいいの? 霊夢は静雅の事を知っているみたいだけど……?)」
ミスティアは考えていると、静雅から話を切り出し始める。
「実はレミリア嬢から『今日は鰻を食べたい気分ね』ってことでオレ達が駆り出されたんだ」
「お嬢様の仰っていた事を始めからそう言えば良かったんじゃない……とりあえず女将さん、鰻七人分お持ち帰りでお願いするわ」
「あ、はい……」
お客なら追い返す必要がない。ちょうど先に霊夢の分ができたので渡していると──
『しっかし……まさか幽々子と妖夢に出会うとは思ってなかったぜ』
『魔法使い関連のあなた二人達と会うと思ってなかったけどね~』
『私は無理やりみたいな感じで連れてこられたんだけど……あなたはあなたで大変ね……』
『いえ、それが幽々子様ですから──? 幽々子様、今は込み合っているようですが……』
次々と暖簾が捲られていく。順に魔理沙、アリス、妖夢、幽々子の順で暖簾が捲られている。
「「……!」」
ミスティアは妖夢(と幽々子)を見ると警戒心を見せた。同様に妖夢も警戒心を見せる。それだけではない。妖夢は無理やり連れて込まれたとはいえ、まさか侠がいるとは思わなかった。
主に二人の事の当事者である侠は二人に話しかける。
「はいはい、二人とも落ち着いて。気持ちはわからないでもないけど、食事処でもあるんだからそういうのは無し。わかった?」
「……まぁ、侠がそう言うなら……」
「……侠さんの言う通り、ですね……」
「……あんた達侠の言葉で静かにしずぎでしょ……」
霊夢は鰻を食べながらそういう事を言っているが、二人はとりあえず侠の言う通りに。
次に、静雅達がいることに気付いた魔法使い組が話しかけた。
「何だ。紅魔館従者組じゃないか。お前たちも食べに来たのか?」
「いや、レミリア嬢からの使いだ。そして咲夜とデート――」
「ちょうどもらったからお嬢様に届けるわよ静雅。あなたの能力でさっさと戻るわ」
「最後まで言わせてくれよ……解せぬ」
「(……何か咲夜、静雅の扱いに慣れてない? 気のせい?)」
不思議に思っているアリスを置いていて、商品にお金を払って受け取った咲夜は静雅の能力を使うように促し、少し納得がいかなそうだった静雅だったが能力を使って咲夜と共に消えた。
そして──待っていられなかったのか幽々子は妖夢を引っ張って──
「お腹すいた~! 私にも鰻~!」
「ゆ、幽々子様っ!?」
──そのまま侠の隣に妖夢を座らせ、自分は反対側に座った。そして幽々子の意図的だろうか? 間をわざと詰めて侠と妖夢を密着させた。当然妖夢は急な主の行動に恥ずかしさを感じながら困惑した。
「す、すいません侠さん!」
「……もう自分は突っ込まないことにしたよ……」
「「…………」」
その様子をじっと見ている霊夢とミスティアだったが──
「悪い霊夢。ちょっと詰めさせてもらうぜ」
「さすがにこの人数だと確かにきついわね。悪いわね、二人とも」
「ちょっ!?」
今度は妖夢達とは反対の席から魔理沙とアリスは座り始め、詰めるように座った魔理沙と霊夢は密着。同時に……霊夢と侠の体も密着し始めた。急に体が触れ合った霊夢は焦りながら侠に話しかけ始める。
「侠これは違うのよ!? 勝手に魔理沙が詰めてきただけだから私が意図的にやったわけじゃなくてだから私は悪くなくて魔理沙が悪い──」
「うん……わかったから……静雅〜、へるぷみ〜」
男一人に対して目の前にいるミスティアも含めて女は計六人。その環境に耐えづらいのか弱音を吐いている。
弱音を吐きたいのはミスティアも同じなのだが──
「(もう今日は告白できるような状況じゃない……でも、次がある! 今日はもうお客さんがいっぱいで商売繁盛って事でいいや! タイミングを見計らえばきっと……♡)」
彼女は今日は諦めて商売に集中することにした。どうやら彼女はポジティブに変換して仕事に精を出した。
ミスティアが料理してくれたものを楽しみながらやってきた客は楽しんで(?)帰って行った……。
この後の次話はフラグ回。露骨な回かもしれませんが。
ではまた。