幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ……何か思ってたより早くできた。何でだろうか? ともあれ、自分自身が一番驚いていますが投稿します。
 神薙之尊さんのリクエスト、【語られる怪力乱神】星熊勇儀のメインの話です。一話完結です。
 視点は裏主人公。自分なりに勇儀さんとの関わり方を考えてみました。
 では特別番外編どうぞ。

 ※この話は本編と関係ありません。もしもの世界のIFstoryです。しかし、本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。


特別番外編『酒豪の姉御肌』

 オレは槍の入ったケースを背負って紅魔館を出て博麗神社にいるであろう親友の侠の場所に向かった。目的は単なる愚痴の相手だが。咲夜や美鈴に愚痴っても良いんだが、そういうのは親友に愚痴っても良いだろう。遠慮なく愚痴れるからな。よく図書館に突撃してくる魔理沙とか白黒とか『だぜ』少女とか。時間があるなら組み手の相手をしてもらおう。

 

 能力で博麗神社に移動し、目の前を確認してみると作務衣を着て、賽銭箱の近くの縁側に座ってのんびり過ごしている侠がいる。

 

「よー侠。縁側に黄昏れて何してんだ?」

 

「あ、静雅。ちょっと見張りみたいなものかな? 露天風呂に博麗達が入っているから」

 

「……露天風呂? そんなものがあったのか?」

 

 オレのふとした疑問に侠は丁寧に答えてくれる。

 

「異変の時にできた露天風呂らしいよ。神社の裏に温泉が湧いたのは良いんだけど、その時に地底から怨霊が出た異変があったんだって。ちゃんとその異変も解決して使ってたりしてたんだけどさ」

 

 侠は立ち上がり身振り手振りも交えながら話を続けた。

 

「それで博麗が『露天風呂に浸かりたい気分だわ』って言って、しばらく使ってなかった露天風呂を自分が半日かけて掃除をしたんだよ。終わって偶然来たと思われる霧雨と伊吹も来てね。三人が今入っているんだよ」

 

「成る程……地底での異変で温泉がなぁ……じゃ、とりあえず行ってくるわ」

 

 オレは自然な流れで神社の裏に行こうとしたが何故か侠に腕を捕まれて止められた。何故だ? オレは真面目な顔で侠に問いかける。

 

「どうしたんだ侠? オレが一体何をしたんだ?」

 

「何自然に温泉がある方に行っているの? 今博麗達が入っているんだよ?」

 

「男の理想郷を見て何が悪い?」

 

「やめておこうね、うん」

 

 ……ダメだったか。このために侠は縁側に配置されたんだろうな。能力をうまく使えば見れるのに……侠に言われたらしょうがない。畜生。

 

 だが……侠の言っていた話で興味を持ったものがあるので詳しく聞いてみることに。

 

「地底から怨霊って……そこは墓地みたいなものなのか?」

 

「ううん。そうじゃなくて──」

 

 オレは侠から地底についてのことを聞くことにした……。

 

 

 

 

 

 少年説明中……

 

 

 

 

 

 地底のことを聞いたオレはと言うと、実際そこに向かってみることにした。

 

 地底では地上で能力的や妖怪の種族などで嫌われた妖怪が主に住んでいるという。それで地底の妖怪は地上に上がってこないが、地上の妖怪が地底には行けない約束事になってるらしい。

 

 ……まぁ、神様の分類であるオレは気にしないけどな。

 

 侠はまだ行ったことがないらしいが、地上と地底を分ける橋を越えていくと、元々は地獄だったらしいが、地底での都市して機能しているらしい。通称旧地獄とか言われたりしている。

 

 オレは地底の入り口に到着し、下へと下っていった。道中で桶に入った妖怪少女と女ヴァージョンスパイダーマッ! と出会い会話を楽しんだ後、橋に到着したら『妬ましい』が口癖の橋姫の妖怪に出会った。

 

 ……結局その妖怪はどうしたかというと──

 

 

 

 

『そんな脳天気さが妬ましい! 地底の妖怪舐めるんじゃないわよ!』

 

 

 

 

 挑発的なことを言われたので能力で背後に移動し、とがっている耳を少し舐めてみた。『ひゃんっ!?』と可愛らしい声が聞けたので満足し、スタコラサッサと旧地獄に向かった。

 

 ……逃げている最中に『こ、こんなところ一度も舐められたこと──いや待ちなさいよ妬ましいぃいいいっ!』と聞こえた気がしたが空耳だろう。

 

 そして……地底の旧地獄に着いた。その風景は外界の夜の夏祭りにように見える。しかし、通り過ぎていく人々の見た目は角が生えていたり尻尾が生えていたり、見た目が明らかに妖怪もいた。オレは通り道を通るときにすれ違った妖怪達は視線をオレに注いでいる。

 

 種族は違うといえど……見た目人間だからな、オレ。服装は外界で着崩してる学生服だし。そういう視線は仕方ない。

 

 しばらく歩いて行くと──何か酒の文字が入った看板の近くで、ギャラリーが集まっている。オレも気になり、ギャラリーが何を見ているのかを見ることにした。

 

 そこにいたのは二人の妖怪。

 

『あ、姐さん〜……俺はもう無理ッス。限界ッス……』

 

「その程度で終わるのかい? 拍子抜けだね。さっきまでの勢いはどうしたんだい?」

 

『うっ……今日こそはいけると思ったのに……』

 

『だから姐さんに挑むのは止めておけって言ったんだ。張り合うとしたら萃香さんぐらいしかいないよ』

 

『さすが姐さんだぜぇっ! 四天王は格が違うっ!』

 

 二人の会話にギャラリーの会話も聞こえてくる。状況から見るに酒比べ的なものをやっていたんだな。辺りに散らかっている酒瓶が証拠だ。

 

 その酒比べをしていて、負けた方だと思われるちょっと額に角が生えた──鬼だろうか。吐きそうな表情をしている。

 

 もう一方は──同じ鬼で、長身で額に生えている凜々しい星模様が入った赤い角。服装は何か……体育の体操服で着るような半袖のTシャツっぽいのを着ていて(しかも胸がかなりでかい)、ロングスカートを履いている。両腕には鎖が付いた腕輪をしており、口調からも判断して姉御肌の雰囲気がある女だ。

 

 さっきも誰か言っていたが……同じ鬼の伊吹萃香でもかなり違うな……あっちはロリでつるぺったんだし。

 

 酒比べで勝ったであろうギャラリー曰く姐さんは辺りを見渡しこう言う。

 

「私はまだ満足してないんだけどねぇ……誰か! 私に挑む奴はいないのかっ!?」

 

 姐さんがそういうとギャラリーが騒ぎ始める。酒瓶が数十本転がっておきながらまだ足りないのか……? 肝臓が悪くなるぞ、肝臓が。

 

 そして……その姐さんは何故か視線をオレのいる方向に定めた。

 

「ん……そこの人間っぽいのは……よしっ! お前に決めたっ!」

 

 ……人間っぽいやつ? 二足歩行で立っている奴が多すぎるな。とりあえずオレも辺りを見渡してみる。

 

 オレは該当している人物を探していると、ギャラリー曰くの姐さんの声が聞こえる。

 

「違う違う。ここでは見たことない服を着ていて、そこの胸元が見えていて袖まくりをしている、そこの男だ。前髪にヘアピンで留めているお前さんだよ」

 

 …………あるぇー? おかしいなぁ? 人間ぽくって奇妙な服を着ていて、胸元が見えて袖まくりをし、前髪をヘアピンで留めている男なんて──

 

「──オレぇっ!?」

 

「? 変な奴だね。お前さん以外そんな奴がいないだろうに」

 

 オレは指で自分を示して確認をとってみると姐さんは同調した。オレここに来たばっかだぞ!? 酒に強いとはいえ、ここまでさすがに飲めねぇよっ!?

 

『おう! 姐さんからのご指名だっ! とっとと行ってこい!』

 

『安心しろ……骨は拾ってきてやる』

 

 ギャラリーがオレの背中を押し、酒飲みという戦場に押し出された。

 

 酒飲みで負けた鬼はいつの間にか退場し、姐さんと一対一になった。対面から見ると威圧感があるな……。

 

 オレはとりあえず姐さんに聞いてみることに。

 

「姐さんとやら……どうしてオレを選んだ?」

 

「目にとまったから。こんな地底でお前さんの服装と容姿はかなり目立ったからね。一目見た瞬間に『こいつだ!』って思ったんだ」

 

「簡潔な理由をありがとう。こんなこと言っちゃ何だがオレは地上から来た外来人だぞ? そんなのを相手にするより適役が──」

 

 オレは弁解しようとしているところで気づいた。外来人云々のところで──目を輝かせていたのを。

 

「そうかそうか外来人か! なら尚更だ! 一先ずは──酒で語り合おうじゃないか! お互いのことを知るためにな!」

 

 オレの肩を触って床に座らせ、どこからか出した杯をオレの手に持たせて酒を注いだ。

 

 姐さんは自分の分にも酒を注いだ後、杯を持って話を続ける。

 

「この最初の一杯はお互いのことを知るための酒だ。一口飲んだ後、お互いの杯を交換だ。それと──」

 

 説明しながら姐さんは酒を一口飲むと、杯を前に出しながらこう言う。

 

「──私は星熊勇儀。見ての通り鬼だ! お前さんの名前を教えてくれ!」

 

 ……オレはその堂々とした態度に惹かれたんだと思う。地底の妖怪は嫌われていると聞いたが……嫌う要素が全然ない。誰だそんなでたらめを言った奴は。

 

 オレは星熊勇義に習い──酒を一口喉に通し、杯を前に出しながら堂々と答えた。

 

「オレは本堂静雅! 荒人神で神様でもある!」

 

「こりゃ驚いた! まさか妖怪の山の神様以外の神様が地底に来るとは……面白い! この一杯を飲んだ後──神様の実力を見せてもらおうかっ!」

 

「そちらこそすぐにダウンするなよ、勇儀っ!」

 

 オレ達は交換した杯をお互いに飲み干し、酒を注いでくれる鬼を傍にオレ達は酒を飲み続けた……。

 

 

 

 

 

 

 

『すげぇぞ……あの二人何処まで飲むんだ!?』

 

『あいつは自分のことを神と言っていたが……納得できるな。姐さんと肩を比べるなんて!』

 

 ギャラリーが騒ぐ中、オレ達は酒を飲み続ける。アル中になるじゃないかぐらい。

 

 人間ベースのオレはこんな多量の酒を飲むことができない。能力をフル活用している。オレの姿は上半身裸で多量の汗をかいているように見える。そこがミソだ。

 

 多量の酒を一気に飲むことは命を投げ捨てる行為に等しい。オレは胃に入れた酒を【アルコール分解】の事象をかけていて、味は酒で楽しみ、胃には水としている。しかしそのままだと水によって胃袋がふくれ上がってしまうので、【汗をかく】事象で水分を放出している。

 

 全てはこの繰り返しで勇儀と肩を並べている。

 

 そしてオレ達に酒を渡していた鬼が焦っているような声で話しかけてくる。

 

『お二人さん! もうお酒がなくなりそうでガンス!』

 

 その急な告知でオレ達は酒を飲むのを止め、勇儀が確認を取る。

 

「何? もうなくなりそうなのか?」

 

『ガンスっ! 残りの酒はお客さんに売るようでガンス! もう姐さん達に提供できる酒はないでガンス!』

 

「む……私達が酒を独占するわけにはいかないな……」

 

「……どうする勇儀? このままでは不完全燃焼だ」

 

 オレは勇儀にどうするか尋ねる。もう乗りかかった船だ。白黒勝負をはっきりつけたい。

 

 そして勇儀は拳を顎につけて考えた後──こう提案した。

 

「よし……なら──拳で語り合うか!」

 

「わぁお。まさかの肉体言語ですか」

 

「ここまで酒を飲めるんだ。当然……こっちも実力はあるんだろう?」

 

 勇儀は自分自身の力こぶを触り言ってくる。そしていつの間にかギャラリーに声をかけて、周りにいたギャラリーをどける。どうやら相手はもう戦う気満々らしい。

 

 う、うーん……オレの能力【事象を操る程度の能力】はぶっちゃけチート能力だ。何せ【事象】を操るため【勇儀が負ける】事象やそういう関係で能力を使えば楽に勝てることが出来る。

 

 しかし、それは違うと思う。侠からも聞いたが鬼は正々堂々を信条にしており、嘘を嫌う種族だ。少なくともオレの能力は正々堂々とは言えない。能力を使って勝ったとしても勇儀は満足しない。いや、『能力も自分の実力だ』とか言って割り切るかも知れない。

 

 オレは服を着直し、勇儀と立ち上がり対面して話しかける。

 

「勇儀……この拳の語り合いというのは能力の使用はありか?」

 

「問題ないな。能力もあれば使うと良い。この星熊勇義が相手をしてやる!」

 

 勇儀は笑いながら拳を構えて言ってくる。オレは勇儀の能力は分からない。もしかしたらオレの能力を上回る能力かも知れない。

 

 だが──オレはこう宣言する。

 

 

 

 

 

「なら、オレは能力を使わない!」

 

 

 

 

 

 急な発言に勇儀は驚いたような表情をし、周りのギャラリーは騒ぎ始める。

 

 当然オレの言葉に疑問を持った勇儀は問いかけてくる。

 

「お、おい……だったら何で聞いたんだ?」

 

「一応確認のためにな。能力の使用無しならこんなことは言わなかったんだが……オレの能力は卑怯な能力なんだ。能力を使えば簡単に優位性にたてる能力だ。だが、拳での語り合いならそういう能力を使うならお互いのために良くない。だから──」

 

 拳を前に出して宣言。

 

 

 

 

 

「──正々堂々、オレだけの実力で勝負する!」

 

 

 

 

 

「…………」

 

 オレの言葉を聞いて勇儀は何かを考えているような仕草を見せる。

 

 ……あ、後は他に確認を取りたいこともあるんだった。

 

「背中に背負っている槍を使っても良いか? 拳よりオレは槍術の方が得意なんだ。その方がもっとオレは全力を出すことが出来る。もし良ければ使わせてもらえれば──」

 

「ふ──あっはっはっはっはっ! こりゃ凄い大物が来たもんだ!」

 

 確認を取っている途中で何故か勇儀は笑い出した。おかしいな。どこか笑わせる箇所なんてあったか?

 

 少し笑いがおさまった後、勇儀は話を切り出し始めた。

 

「鬼の私がハンデを負うことはあったが……まさか相手がハンデを負う何て初めてだったもんでな。こんな事は静雅、お前さんが初めてだよ。それと背中にある得物か? 使うと良い! 私は正々堂々のお前と戦いたくなったよっ!」

 

 そう言いながら何故か酒瓶を持っている鬼を手招きする勇儀。その手には杯を持っている。

 

「だが、お前だけがハンデを負うのはまっぴらだ。だから──私もハンデを負うことにしよう」

 

 杯に勇儀は酒を注いでもらい、肩ほどの高さまで杯を持って宣言した。

 

「──片手に私は杯を持って相手をしよう。杯に注がれている酒が零れたら無条件で静雅の勝ちとする」

 

「……良いのか? そんなハンデだとオレ、勝っちゃうぜ?」

 

「勝てるものならな。だが、これならお互いにハンデを負った──正々堂々だ。お互い楽しもうじゃないかっ!」

 

「いいねいいねぇ! 惚れちゃいそうだぞ勇儀! ならこの勝負はオレが勝たせてもらうぞっ!」

 

「出来るものなら──なっ!」

 

 オレはケースから槍を取り出して構えて、突進してくる勇儀に対処を始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お互い譲らぬ攻防。勇儀は片手、足を使った打撃攻撃をしてくるが──破壊力が計り知れない。勇儀の攻撃が外れて当たってえぐれた地面が語っている。

 

「これヘタしたらオレ死ぬんじゃね!?」

 

「そういうやつじゃないだろう静雅は? もっと私を楽しませな!」

 

 勇儀からの拳を紙一重に近い状態で避ける。その時にオレは槍を振るい杯を狙うが、当然避けられる。さすが戦闘好きな種族だ……隙がほとんど見当たらない!

 

 やっぱり杯狙いだとすぐ避けられる……しばらくは体にダメージを与えた方が良いな。

 

 杯狙いの作戦を変更し、機動力を奪う作戦に。槍で上半身を狙い、体を後ろに反らしたので足払いを仕掛ける。

 

「! おっと!?」

 

 しかしそれだけでは攻撃が通らない。少し跳躍し足払いを躱した。

 

 せめて──動きが取りづらい空中を狙う!

 

「──もらった!」

 

 オレは体勢を立て直して、槍を持っていない左手で拳を勇儀に撃ち込む!

 

「──甘いっ!」

 

 勇儀は空中ながらも、体勢を若干変えて拳をオレに撃ち込んできた。その体勢で無理矢理過ぎるだろ!?

 

 そして、どちらか拳が届き、苦痛の声を上げた。

 

 

 

「──がぁっ!?」

 

 

 

 声を上げたのは……オレだった。拳を先に繰り出したものの、それを上回る拳の速さをオレの左肩に撃ち込まれ、激痛が走る。骨は砕けているか分からないが……最低でも、肩は脱臼したかもしれない。

 

 親友ならオレの拳の方が早かったはずだ……!

 

 激痛を感じながら地面を転がり、すぐに体勢を立て直して立ち上がる。左腕に力は感じられなくただぶら下がっているように感じる。

 

 明らかに不利に見えるオレを見てか、いつの間にか体勢を立て直した勇儀が確認を取るように話しかけてくる。

 

「……まだ続けるのか?」

 

「はっ! まだ右手や足とかまだ使えるし! むしろようやく勇儀と同じ立場だ! これでお互い片手は使えない状況だ!」

 

 勇義の目をまっすぐ見ながらオレは続けることを言う。

 

 さっきまで五体満足だったオレは片腕を封じられ、勇儀と意味合いは違うが片腕がお互い使えない状態。

 

 もはや身体能力だけを比べるのだったら鬼である勇儀が有利だろうな。だが……この状況で楽しくなっている自分がいる。逆転劇をしたいオレがいる!

 

 まだオレが戦う意思を見せたせいか……勇儀は笑みを浮かべた。

 

「いい目だ……最後に萃香と酒をめぐって以来だ。お前が鬼だったら一緒に毎日酒を飲んでいても飽きが来ないだろうな」

 

「……勇儀さ、何を言っているんだ?」

 オレの疑問に勇儀は少し表情を変えた。オレの言っている意味が伝わっていないだろうな。

 当然のようにオレは勇儀に告げる。

 

 

 

 

 

「──ここは幻想郷なんだぞ? いろんな種族が暮らす世界だ。オレは種族を気にしないし、誘ってくれれば予定が重ならない限り駆けつけるぞ?」

 

 

 

 

 

 オレは簡単に言った。いろんな種族がいるこの幻想郷。ここの地底の妖怪は何故か地上の生き物たちに嫌われている。だがオレが嫌う要素が全くない。ここに来る途中で出会ったキスメとヤマメは話が合って盛り上がったし、パルスィは弄りやすくて面白かった。オレ達のことを見ているギャラリーもそうだし、目の前にいる勇儀だって同じだ。種族なんて関係ない。風評なんて関係ない。酒を飲むなり、宴会で騒ぐなり種族は違えど、オレはわかり合えることが出来ると思っている。

 

 オレの言葉を理解してくれたのか、再び勇儀は笑みを浮かべ──上機嫌そうに言葉を発した。

 

「それなら明日でも来てもらおうかね? その時は外界での話を肴として酒を飲もうじゃないか」

 

「だから予定が重ならない限りって言っているのに……ま、別嬪さんの頼みなら行くっきゃないかな?」

 

「口も回るとは良い男だよ、お前。いずれ大物になるよ」

 

「そりゃどうも」

 

 オレは右手で槍を持ちながら、勇儀が拳を構えて話を続けた。

 

「その前に──決着を付けようじゃないか!」

 

「──同感だ!」

 

 再び勇儀は距離を詰めて拳を放って来る。オレはその攻撃を見切り、最小限の動きで躱す。

 

 オレはふとした作戦を思いついた。単純で──バカな判断で──誰にも思いつかないようなことを。

 

 オレの取った行動とは……槍を持ったまま右拳を勇儀に放つ!

 

「っ!? このっ!?」

 

 勇儀は当然、拳をオレの拳に標準を合わせる。鬼と力比べするなんてただのバカだ。誰も真っ正面で拳をぶつけようとしないだろう。

 

 だがオレは拳がぶつかり合う前に──

 

 

 

 

 

 ──右手で握っていた槍を投げて、持ち手の部分を口で受け取った。

 

 

 

 

 

「──何っ!?」

 

 右拳は誘導。本命は──口でくわえた槍で杯を落とす!

 

 少しでも右手の痛みを和らげるために後ろに引くが、勇儀の拳が当たり激痛が走る。しかし、オレはこらえる。歯ぎしりしながら──歯を使って口でしっかり槍をくわえる。おもいっきり首を振って──槍の刃の部分に杯が当たった!

 

 杯は地面に落ちて、酒も地面に飛び散り辺りを濡らす。少し現実に戻っていない勇儀から距離を取り、槍を噛むのを止めて吐き出し、両腕をたらしながらオレは宣言した。

 

 

 

 

 

「勇儀──オレの勝ちだ!」

 

 

 

 

 

 完全な勝利宣言。勇儀がオレの勝利条件として掲げた【杯に注がれている酒が零れたら無条件で勝利】。オレは……ギリギリだが……何とか勝った!

 

『!? あいつマジで姐さんに勝ちやがった!?』

 

『片腕が使えない姐さんでも勝てると思っていたのに……とんだ番狂わせだぜ!』

 

 周りのギャラリーが騒ぎ始める。明らかにさっきまでオレが不利だったもんな。途中から片腕が使えなくなって、ある意味勇儀と同じ状況に。そこから何とかあがいて勝利できた……両腕を犠牲にしたが。まぁ、それは能力で何とかなるから良いんだけどな。

 

 そして周りの騒ぎで勇儀は我に戻り……笑いながらオレに話しかけてきた。

 

「──あっはっはっはっはっ! まさか本当に鬼相手に正々堂々真正面から仕掛けてくるなんて驚いたよ! こんな意外性のある正々堂々なんて初めてだ! 気に入ったよ本堂静雅!」

 

 勇儀が近づいてきて背中をバンバンと叩く……振動で両腕が痛いがこの際我慢しておこう。

 

「ところで聞いておきたいんだが……静雅の能力は一体何だ? 簡単に優位性に立てると言っていたが……ちなみに私は【怪力乱神を持つ程度の能力】だ。名前から察しればわかると思うが……何なんだ?」

 

 当然の疑問を聞いてきた。そりゃ疑問に思うわな……。

 

 オレは勇儀に聞こえるぐらいの声で教えることにした。

 

「【事象を操る程度の能力】だ。別名【過程を飛ばす程度の能力】。この勝負だって能力を使えば【杯の酒を零す】事象とすれば、もう既に杯の酒が零れていることになる」

 

「…………成る程。確かにその能力を使われたら誰も勝てない能力だ。でも、お前さんは正々堂々戦うためにその能力を封印して戦ったのか……面白い奴だと思ったが、根性もある……ますます気に入った!」

 

 オレの肩に勇儀は手を回し、こう言った。

 

「ようしっ! 私とお前の記念だ! 店に行って酒を飲みながら静雅のことを聞こうじゃないか!」

 

「うぇっ!? それは明日じゃないのか!?」

 

「それは外界の話を肴とした場合だ! これは静雅自身の話の肴。当然静雅の知らない地底のことも話してやろう! 飽きないような話をしてやる! 私はもっと──お前のことを知りたい!」

 

 ある意味強制連行みたいな感じでオレは連れて行かれた。まぁ、能力で腕は治したことにしたから良いんだが。

 

 連れて行かれている中、横から見た勇儀の姿は凜々しく、誰よりも綺麗に見えた。おそらくそう見えたのは勇儀が魅力的に見えたからだろう。

 

 ……悪くないな、勇儀に連れ回されるのは。

 

 オレ達はそのまま勇儀のおすすめの店に行くことになった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇儀と色々すごしたその後。オレは紅魔館の門で美鈴と話していたところに──急に白い霧が現れて、とある人物が出てきて話しかけてくる。

 

「おーい静雅。勇儀がお前を呼んでるぞー?」

 

 その霧から現れたのは同じ鬼の伊吹萃香。詳しい理由は分からないが、地上と地底を行ききしている。そのおかげで、勇儀との連絡が簡単に取れることを重宝している。

 

「ありがとな萃香。今回お前さんはどうする? どうせ酒飲みだと思うが」

 

「うーん……今回はパス。二人で飲みなよ。しばらくぶりに霊夢達と私は飲みに行ってくるから」

 

「そっか。じゃ、美鈴。ちょっくら地底に行ってくる」

 

「あ、はい。行ってらっしゃいです」

 

 オレは地底に能力を使って移動した。移動に関してはオレの行った場所にはテレポートみたく移動できるからな。ポケ○ンのそら○とぶみたいなものだ。帰りにちょっとヤマメ達とパルスィを弄ろう。

 

 オレは勇儀に会いに行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ〜……良いな勇儀は。酒を一緒に飲める異性がいるなんて』

 

『? 萃香さんも一緒に行けば良かったじゃないですか? 同じ鬼なんですし遠慮することはないと思うんですけど』

 

『違うんだよ。そうゆう意味じゃない……はぁ。本当に妬けるねぇ。あの二人は』

 

『……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──分かることは二人とも笑顔を浮かべながら、お互いの時間を共有する仲だってことだよ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 以上、特別番外編『酒豪の姉御肌』でした。裏主人公の勇儀ルートならこういう出会い方をしてフラグを立てるのかな? という考えです。本編では誰と関係を持つのやら。
 当時は能力を制限して勇儀と戦うということを考えていたんですが、あえて能力を使わないという方向で安定しました。
 最後の終わり方ですが、どういう関係になったのかは読者様のご想像にお任せします。勇儀とそういう関係なのか、まだフラグ建築中なのか。そう考えることで視野が広がっていくと思うんです。個人的な意見として。
 そして……何だこの文字量は。まさかこの話だけで9000を超えると思ってなかった。冒頭が長かったかもしれない。表主人公の説明はともかく、道中のパルスィ弄りは必要あっただろうか?
 ではまた。
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