幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

131 / 267
 さすがに……。
 最初は三人称視点。
 では本編どうぞ。


四話 『妖怪の山』②

「──天魔様、ご報告したいことがあります」

 

 妖怪の山にある天魔のすみか。そこに文はいた。机に座っている天狗の長──天魔である一進。

 

 部下である文の報告に耳を傾ける天魔。

 

「文か。何用だ? 例の侵入者についてか?」

 

「その侵入者の事なんですか……その内一人は知り合いではあったんですが、奇妙なんです。この写真を見てください」

 

 文は天魔の傍に寄り、カメラのデータを見せた瞬間──

 

「──何っ!? この姿……ティアー様!?」

 

「……え? ティアー……様?」

 

 ──急に態度が急変し、覗き込むように見た天魔。その姿は何かを見つけたような感じだった。

 

 しかし、文はこの人物は辰上侠だと思っている。急に言い方や態度は変わったが、博麗神社に居候している外来人の辰上侠のはずなのだ。それなのに天狗の長は侠の姿を見て別の名前を言っている。

 

 ──実は初代龍神ティアーは先祖返りの特徴として、外見も引き継がれることは教えていなかった。天魔から見たら……過去に急にいなくなった尊敬している人物に見えたのだろう。

 

 文からの視線を感じたのか、天魔は文に詰め寄るように問いかける。

 

「この者の情報は他には無いのか!?」

 

「は、はい……その人物から言伝を預かっていますが……天魔様を侮辱しているのも含みますけど──」

 

「構わん! 話せ!」

 

 いつも冷静な天魔だが、文からの情報で取り乱しているように見える。文はほぼ言われた通りの言伝を話した。

 

 ……それを聞いた天魔というと。

 

「……生きてなさったのか……ティアー様は……! そしてその子孫を媒体にしてこの幻想郷にいる……!」

 

「……天魔様? 彼の名前は辰上侠ですが──」

 

 文は訂正するように彼本来の名前を言ったが、天魔は文を叱責。

 

「馬鹿者! その辰上侠はおそらくティアー様の先祖返りであり──初代龍神様の子孫だ!」

 

「……………………えぇっ!? 龍神様なのですか!?」

 

「ティアー様は外界にいる人間の女に惚れて以来、忽然と姿を消した龍神様だ! 今統治している龍神もティアー様の子孫で純血だが……そうか。どういう事情であれ、外界で生きていたのか……そして、先祖返りの辰上侠に取り憑いて、体を時に借りていると……」

 

 ……実はというと、天魔は唯一龍神事情を知っている一人なのだ。

 

 ティアーが統治していた幻想郷にて、当時の天魔──一進は平凡な天狗だった。偶々一進のことに興味を持ったティアー。よく一緒に過ごしては食べて、寝て、話して、修行に付き合ったりして。またはからかわれたりして。一進にとっては父親な様な存在だった。最初は不本意だった呼び方の【一坊】であるが、彼がいなくなったときに寂しさに気づいた。何だかんだ彼にそう呼ばれていて嬉しかった。他の天狗とは違い、特別な言い方に聞こえたから。

 

 そして、一進は後ろに振り返りながら……文にこう言った。

 

「……全天狗に伝えよ。辰上侠の入山を許可する!」

 

「…………はいっ!? 本気ですか天魔様!? 彼は外界の人間なんですよ!?」

 

「異論は認めん。ティアー様のお言葉だ。許可しない方が失礼に当たる! その子孫はティアー様の血を継いでいる! 人間でもあるが──同時に神でもあり、頂点に君臨する血筋でもあるっ! そしてその子孫にはティアー様が憑いておられる。その子孫に決して無礼なことはするな! 以上! ティアー様──いや、その子孫、辰上侠にも伝えろ!」

 

「……わ、わかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

  〜side 侠〜

 

 射命丸を待つこと数十分。元に戻って体は返してもらい、犬走の視線を感じながら……射命丸は帰ってきたけど……何か複雑そう。

 

 帰ってきた射命丸に即刻犬走は話しかける。

 

「文先輩! やっぱりこんな無礼者を天魔様に差し出しましょう! それで、天魔様はなんと言っておられたのですか!?」

 

「……椛、これからその人間──いや、龍神様の子孫に手を出したら逆に私達が罰せられるから……」

 

「…………え?」

 

「…………ひゅい?」

 

 射命丸からの報告に呆然とする犬走。釣られて河城も疑問の声を出す。

 

 そして──心の中でご先祖様は愉快そうに笑う。

 

『「はっはっは。さすが一坊、分かっておる! 何千年と会っていなかったが、我のことは忘れていなかったな! 感心感心!」』

 

 ご先祖様半端ない。

 

 その天魔という天狗の長の判断に不服を申し出る犬走。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! どうしてこの人間もどきは大丈夫で、手を出したら私達が罰せられるのですか!?」

 

「私もわからなかったけど……どうやら侠さんはこの幻想郷を創ったといわれる龍神様の子孫だということなのよ。それで初代龍神様が侠さんに取り憑いている。侠さんに逆らうことはつまり、幻想郷の最高神に喧嘩を売っていることになるの」

 

「えっ? えっ? つまり私がそのまま斬っていたら──」

 

「……察しの通りよ」

 

「盟友……いや、今は龍神様? それとも侠さん? どっちですか?」

 

「敬語にならなくて良いから……今は辰上侠だよ。ご先祖様の時は基本的に赤くなるから。犬走も青ざめていないで。ご先祖様は気にしていないみたいだし」

 

 困惑している人(妖怪だけど)にフォローしておく。責任感が強いせいか犬走は顔が本当に青ざめていたし。

 

 そして射命丸は──急に口調が新聞記者に戻る。

 

「それにしても……侠さん外界の人のはずですよね? なのに龍神様の子孫とは……」

 

「いろいろ諸事情でご先祖様は外界にいたんだよ。そしてまた複雑な事情があってご先祖様は自分の心に住み着いている。一昨日分かったことだけど」

 

「…………」

 

 大雑把に説明していると射命丸は──メモ帳とペンを取り出し、キラキラした目で自分を見始めてきた!?

 

「ど、どうしたの?」

 

「どうしたのじゃありませんよ! 幻想郷始まっての大スクープじゃないですか!【新たな異変解決者の辰上侠、実は幻想郷の最高神】で購読者が増えますね! 私の新聞の価値が右上がりですよ!」

 

「……言っちゃ何だけど、人里のほとんどの人や紅魔館、白玉楼、博麗達も知ってるよ?」

 

「……え? またこれですか? 私が情報不足だけだったんですか?」

 

「そうなると思う」

 

「──いえ! こうなったら知らない人達もまだいるはずです! そちら向けに新聞を発行することにします! 侠さんもそれで良いですね!」

 

「……まぁ、いずれ広がっていくことだから良いけど」

 

「盟友……何だか他人事のようなのは気のせい?」

 

「……良かった……斬らなくて本当に良かった……」

 

 それぞれ反応が返ってくるけど……射命丸は何かを思い出したように犬走に話しかける。

 

「おっとそうでした、椛……これからまだ侵入している人間を探すと共に、侠さんは攻撃しないように全天狗に伝えに行きますよ。私達のためにも……」

 

「……そうですね。私の能力で近くに見つけ次第、その事と人間を追い出しておきます」

 

「一応侠さんも妖怪の山に出入り自由になったわけですが……もし、侠さんの他に人間を見かけたら下山するように促してくれませんか? さすがに人間状態では説得力が無いので、龍神様が見せたような姿になってお願いします」

 

「わかった。そうする」

 

「そういえば盟友は何のために山を登っていたの?」

 

 射命丸からの依頼を受けていたとき、当然の疑問を河城は聞いてきた。

 

「一応守矢神社に用があって」

 

「ふーん……それってあれ? 盟友と同じ外界出身だから?」

 

「それもあるね──じゃあそろそろ行ってくる。同じ人間を見つけたら下山を促すか、聞き分けが悪かったら気絶とかさせるよう努力するから」

 

 そう三人の妖怪に言って自分は再び山頂を目指し──

 

『「一坊の許可が出たのだから龍化して飛んでも良いと思うぞい」』

 

 ──翼を出して、山頂を目指した……。

 

 

 

 

 

「……侠さん、アレはもう人間という部類じゃないですって」

 

「外界ではいろんな力を持った盟友がいるんだね……」

 

「……逆に恐ろしいです、外界……」

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜side out〜

 

 天気が怪しくなった頃。人里に飛んで向かっていたはずの早苗だが──まだ山の中を歩いており、顔を赤く染め上げ、息切れが激しい。足下はふらふらしているようにも見える。

 

「(……やっぱり、風邪を引いてしまったんでしょうか……頭が痛いですし、気持ち悪い……)」

 

 早苗は体調不良が原因で疲れてしまい……近くにあった木にもたれかかるように座る。もたれかかっているとき──雨が降り始めた。雨が降ることで周りの温度は低下、環境までもが早苗にとって敵になってしまう。

 

「(……あの時も、こんな感じでしたね……外界では屋根付きのベンチで横になって動かなくなって……そして──)」

 

 

 

 ──恋をした。

 

 

 

 彼女の意識が消えゆく中で、おぼろげに見えた姿。男っぽい同年代に近く。いつの間にか神社に届けられていて、布団代わりに掛けられていた黒いコート。名前も知らないし、顔も知らない。でも、温もりだけは覚えている。消えゆく意識の中で、わずかにその人物の背中から感じた優しい温度。

 

「(……幻想郷に来る前に、その人に会いたかったです……)」

 

 東風谷早苗は、ゆっくりと意識が沈んでいった……。

 

 

 

 

 

『──おいっ! アレがオレ達が探している神社に巫女じゃないか!?』

 

『そうだなぁっ! 兄貴の言う通りだぁっ!』

 

『奇跡でやんす! 人数作戦でオイラ達がたどり着いたでやんす!』

 

『くくく……これであの糞神に復讐が出来る』

 

 遠くから早苗を見かけた──怪しい三人組。この三人組は過去に、大妖怪と恐れられている風見幽香を討伐しようとしたが……神様と名乗る男に酷い目に遭った。というよりは自業自得なのだが。

 

 今回の侠以外の人物が侵入してきたというのはこの三人組とその仲間だ。三人組のリーダーである男は、神様でもある本堂静雅に復讐することに作戦を変えた。調べてみればその神様は異変を起こしたことがある。人里の住民はもう何も思っていないが、【悪】として言えることが出来ると考えているのだ。そして考えたのが守矢神社の巫女を人質にとる。そうすることで守矢神社にいる神様二人を脅し、静雅にぶつける。目には目を歯には歯を、そして神には神をということだ。

 

 ……実はというと、相性的に考えれば静雅の能力で勝てるのだが、彼に負に働く性質がある。それは荒人神──神々を滅ぼす神であるため、基本的に他の神様に第一印象で嫌悪感が持たれてしまうのだ。これで静雅が早苗を人質にしたと嘘をつき、対面されれば戦闘は免れない。

 

『よし、天狗が来る前にあの巫女を──』

 

 そうリーダーが言いかけたその時だった。上空から影が通り過ぎる。そして影の持ち主は早苗に近づき──

 

『──!? 君、大丈夫!?』

 

 リーダー達から見れば妖怪に見えただろう。あからさまな妖怪に見える翼を持った人物は早苗の近くに駆け寄り、安否を確かめている。いきなりのことで三人組は呆然としているが。

 

 その妖怪に見える人物──辰上侠は早苗の体調に気がつき、早苗の額に手を当てて確かめる。

 

「……凄い熱じゃないか! どうしてここまで無理を……!? それに霊夢に似た服……守矢神社の巫女かな……急いで運ばなきゃ!」

 

 侠は早苗を持ち上げ、背中におんぶという形に乗せる。そして背中にある翼で飛翔しようとする──ときに、三人組は我に返り、リーダーが侠を引き留めようと声をかける。

 

『待て妖怪! その巫女をどうするつもりだ!?』

 

 その声で飛翔をしようとしていた侠は中断し、三人組を見て言葉を返す。

 

「……射命丸から聞いた侵入者は君達か。悪いことは言わないから山から下りた方が良いよ」

 

『!? てめぇ、天狗の仲間なのかぁっ!?』

 

「一応言伝を預かっているからね。人間を見かけたら下山するように促されているし。他の天狗に見つかる前に下りた方が良いよ、本当に」

 

『目の前で女の子が攫われようとしている場面でオイラ達は逃げるわけにはいかないでやんす! その女の子をこっちに渡すでやんす!』

 

「何で渡す必要があるの? この人は守矢神社の巫女みたいだし、飛んで守矢神社に届けた方が良いに決まってる。永遠亭っていうところに届けるのなら別だけど、妹紅──竹林の案内人がいないとたどりつけないというし、君らはただの人間でしょ? 諸事情で自分はこんな風に飛べる人間だけど、君らに任せていたら遅くてこの子の容態が悪化するよね? そういうことだから自分が責任を持って守矢神社に届ける。だからさっさと山から下りてね」

 

 反論が出ない言葉で返す侠。しかし、三人組としてはチャンスなのだ。ちょうど対象が弱っている。奪われてしまえばこのチャンスは二度と来ないだろう。

 

 そして──相手はあんな見かけでも人間らしい、一人。侠は早苗を守らなければならない。数もこちらが有利で、武器も持ってきている。だから──

 

『お前の言い分は分かった。だがな……こちらにも事情があるんだ。だから──その女を置いて死ね』

 

 リーダーは弓を構え、小太りの舎弟はハンマーを構え、やせ気味の舎弟は鉈を構え始める。

 

 その様子を見て、侠は──

 

 

 

 

 

 

 

 

「──貴様らがクズというのはわかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──生気の無い、光の無い目で三人組を見透かすように言った。目つきも当然変わり──見下したような目で見る。

 

 その急な変わりように三人組は焦り始めた。

 

 

 

 

 

 ──もしかして喧嘩を売ってはいけない相手だったのか?

 

 

 

 

 

 そんなことを思っていることを侠は知らない。侠は早苗を木にもたれかけさせる。

 

「……ごめんな。こいつらをすぐに片付けたら届けてやる。少し待ってろ」

 

 意識はないのだが、侠は早苗にそう話しかけた後──顔だけ振り向いて射貫いた視線で三人組を見ながら──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──五体満足なだけでもありがたいと思え」

 

 

 

 

 

 

 

 




 最後の人物達はどうなったのかはご想像にお任せします。

 ―P,S―
 活動報告に質問箱を設置しました。ふとした疑問を持たれている方はどうぞ。

 ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。