三人称視点。
では本編どうぞ。
一話 『焦る思い』
侠が寺子屋に向かっていた頃。紅魔館の図書館では──
「──恋符【ノンディレクショナルレーザー】!」
「四つの玉からレーザーか! だが、それでオレを倒せると思わないことだ!」
──静雅と魔理沙が弾幕ごっこをしていた。朝から。最近になって魔理沙は本を盗みに来ることから……目的が【弾幕ごっこで静雅を倒す】に変わっていた。
それを傍観していたパチュリーと小悪魔はというと。
「……本を盗まれるよりは、今の方が良いわね。確実に」
「このところの静雅さんの日課が魔理沙さんと弾幕ごっこになっているんですが……良いんですか?」
「静雅の能力で図書館に被害はないし別に良いわ。それに静雅も楽しんでいるみたいだし」
そう話していたところで──静雅は魔理沙に対抗してかスペルカードを取り出し始める。
「四つならこっちも四つだ! 人符【暇人達の戯れ】!」
静雅がスペルカードを宣言した結果──四人に増えた。この状況下で魔理沙はこのスペルカードと似た相手と戦ったことを即座に思いだして言う。
「おまっ!? それフランのスペルじゃないかっ!? パクリだろ!?」
「「「「失礼な。これは禁忌【フォーオブアカインド・ネオ】と言い換えられる次世代スペルだ」」」」
「ネーミングもほぼそのままだろっ!?」
「同じかどうか──」
「オレ達の攻撃を分析して──」
「攻略すること──」
「──それが大事だ!」
それぞれの静雅が一斉に動き出す。それぞれ固まらずにバラバラになってだ。そして彼らは弾幕を繰り出してくる。魔理沙は冷静に対処しようと行動。
「くっ……一人に一人ずつレーザーを当てるか……一人に絞ってレーザーを当てるか──こうだぜっ!」
魔理沙は一人に集中してレーザーを当てようとする。そもそも彼女は弾幕はパワーが口癖でもある。分解して軽量のダメージより、大ダメージを与えて一人ずつ確実にやっつけた方が良いと考えたからだ。
──だが。
「(スカッ)無駄だなぁーっ!」
「は……?(今……攻撃をすり抜けた!?)」
何故か一人の静雅に攻撃を当てようとするも、通り抜けた。まるで体の実体がないように。
仮に初見なら幻覚系と考えることが出来るかも知れないが、魔理沙には実体があると思い込んでいる。実際フランドールの分身もそうだ。一定以上攻撃を与え続けていると消える。そう魔理沙の頭の中に情報がすり込まれているのだ。
「(ちょっと待てよ!? 何で静雅に攻撃が当たらないんだ!? 能力でなら攻撃は反れたはずなのに、完全にすり抜けていた! まさか静雅の言う通りならフランのスペルの進化版なのか!?)」
「「「「こちらも攻めさせてもらうぞ!」」」」
四人から一斉に弾幕が襲いかかってくる。それに対して魔理沙は箒に乗って弾幕を躱す。時折、弾幕を放って相殺させるも──あることが起こる。
──数発、静雅の弾幕に当たるように弾幕を撃ったがすり抜けて、後方から撃たれていた弾幕に当たり──相殺した。
「(……ん!? 今、明らかにおかしかった! 何で前にある弾幕が通り抜けて後から来た弾幕が相殺されるんだ!? まるで弾幕が幽霊のような──)」
そして……魔理沙は気づいた。それを確証にするために、まだ続いているスペルカードのレーザーを彼女らしくない──分散した攻撃力の弱いレーザーを四人に当てようとした。
その結果──
「(スカッ)」
「(スカッ)」
「(ひょい)」
「(スカッ)」
四人中三人はすり抜けたのに対し──避けた。まるで当たるのに恐れたかのよう。
そして、魔理沙は確信を得た。このスペルの効果を。
「わかったぜ! そのスペルは三人は偽物で──実体がないんだ! 実体がないから弾幕も実体がない! 相手を惑わせるスペルだぜ!」
「正解だ! フラン嬢と闘ったことがあって分身スペルを見たことがあるならば、それと同じ風に勘違いする! 初見でも迷うはずなんだが……さすがは異変解決者といったところか!」
「それぐらい分析ができて当たり前だぜ! 異変解決者でもあり、魔法使いでもあるんだからな!」
「なら、このスペルはお終いにしよう! このスペルで決着をつける!」
静雅は偽物分身を解いて──新たなスペルカードを宣言。
「
そう宣言した瞬間──魔理沙の周りに不規則な動きをした槍の弾幕が襲い掛かる!
「!? 何だこのスペルは!?」
数はそんなに多くはないので魔理沙は必死にグレイズして躱すが、規則性が見当たらなく、苦戦を強いられる。その中、静雅は魔理沙に接近しながら喋る。
「人の人生は千差万別。オレと魔理沙が歩んできた人生が違うように、その弾幕もそれぞれ違う人生……いや、道を歩んでいる。多数あるとスペルカード勝負のルールに違反するから少なめだ! まぁ、侠だったら簡単に躱せる思うが……お前さんはどうかな!」
「(……! 侠なら避けられる……!?)」
魔理沙は正直……焦っていた。侠の事についてだ。彼女は静雅にまだ勝てたことはないが、能力で差がついている。どういう能力かはわからないが、魔理沙の中では最初から静雅は強い分類だと思っている……魔理沙自身はそう思っている。現実は静雅の方が強い。それは認めていることだ。
……実際には静雅は能力が使えなくとも、それなりには対応出来る部類に入るのだが。
だが……侠は違う。彼女と侠で弾幕ごっことして成り立っていなかったが、魔理沙は勝利した。それには変わりはない。
しかし……静雅の起こした異変、静雅による侠の説明でにより考えを改めている。
──もしかして侠はあの時全力ではなかったのだろうか?
彼は連続で紅魔館住民と闘い、勝利した。そしてチルノに似た能力も使えるようになっている。最近では──幻想郷の最高神が心の中にいるという。そしてその先祖返り。ハイスピードで侠の実力が上がっている。
そして何より心にきたのは──博麗霊夢と同じ天才。先天的にも恵まれ、後天的にも恵まれている。勝ったことがあると言っても、だんだんと意味がなくなっていく。昔の侠と今の侠は全然実力が違うのだから。
それに対して魔理沙は恵まれていなく……努力で今まで来た。だが、長い時間をかけても、短い時間で実力をつけていく侠。彼が努力しているところを見たことがない。ましてや、目の前にいる静雅だって。
魔理沙はいつの日か……この二人を霊夢と重ねていた。大した努力をせずに、実力がある。才能がある。
だからこそ──努力している奴が天才に勝つ。それが今の魔理沙の目標だ。
……しかし、現実は甘くない。
「──隙ありっと!」
「し、しまっ(ピチューン)」
不規則な弾幕にとらわれすぎて。静雅が直接放った弾幕が被弾した。同時に魔理沙のスペルもブレイク。結果から──魔理沙の敗北。
静雅は魔理沙に近づき、楽しそうに話しかけてくる。
「何か考え事か作戦でも考えていたのか? でも周りに気を配らないとダメだぞー? 隙が結構あったし」
静雅本人としては軽い話のつもりだったのだろう。だが、彼が荒人神の所為なのか、または彼女の癇癪に触れたのか──
「──うるさいぜ! 次は絶対勝つ!」
乱暴に言葉を吐き出し、箒にまたがって図書館から出て行ってしまった。
「……? どうしたんだあいつ?」
魔理沙のいつもと違う反応に静雅は疑問に思ったが、一先ずは気にしないことにして──
「……さて、魔理沙との弾幕ごっこを忘れないために自主練でもするか」
そのまま彼が自主練に使用している場所まで、能力で向かった。
魔理沙は彼が天才ではなく、努力家だという事をまだ知らない。
彼女の焦り。
過去の宴会で静雅の人数が増えたのはこのスペルの使用した為です。
ではまた。