早苗視点。
では本編どうぞ。
『──じゃ、時間に余裕はありますけど、そろそろ行ってきます』
辰上さんは朝食で使った食器などを洗い終えた後(さすがにこれは手伝いました)、身支度を終えて人里にある寺子屋に向かおうとする。
……どうせなら一緒の方が良いかもしれませんね。
「辰上さん、私も一緒に良いですか?」
「……別に構わないけど……午前中はずっと寺子屋にいるけど?」
「構いません。寺子屋での授業が終わったら、一緒に守矢神社に帰りましょう?」
「……わかった。ちなみに移動方法は飛翔?」
「はい。そのつもりです」
辰上さんは私の言葉を聞くと辰上さんは──急に背中から翼を出しました!? 文さんのような烏天狗の翼じゃない、まるで漫画やアニメで見るような龍の翼。
神奈子様と諏訪子様から大体の事情は聞いていましたが──
「わぁー♪ 凄いかっこいいです!」
「……ゑ? かっこいい?」
私の感想に少し戸惑っているような反応をしていますが……私は思ったことを続けました。
「だって辰上さんは人間なのに、龍の翼を出して空を飛ぶんですよね!? 私など他の方々はただ浮かんで飛ぶだけですのに、翼を実際に使って飛ぶんですもん! それに初代龍神様のある意味末裔でもある、初代龍神様の血を最も濃く受け継いで先祖返りでもある! 人間なのに幻想郷の最高神の子孫! まるで漫画みたいな設定のようで、辰上さんのケースは初めて見ましたし! やっぱりこの幻想郷では常識に囚われてはいけないんですねっ!」
「そ、そう……まぁ、ありがとう……」
やっぱりこの幻想郷は常識外れなことがたくさんありますね! それに辰上さんには初代龍神様が心に住み着いていると聞いていますし! 幻想郷の最高神様も常識外れですねっ!
……そして、人里に向かう道中に天狗の方々が辰上さんを見た瞬間お辞儀をしていました。その理由を問いかけてみると、天魔さんと初代龍神様はお知り合い以上の関係みたいらしいです。
まだまだ、幻想郷は面白い発見がありそうです……!
飛翔して進んでいき、人里が見えたところで……何故か辰上さんは私に止まるように促した後、提案するように言います。
「……ちょっとここで飛ぶのを止めようか。少し人里まで歩いて行こう」
「? どうしてですか?」
「……自分の周りにいると五月蠅くなっちゃうんだよ。ましてや龍化したままだとよりいっそう五月蠅くなるからね……」
……どうしてでしょうか? 人里に入る前に辰上さんは疲れているような表情をしているんでしょうか?
その事を疑問に思い、歩いて人里に着いてみると……、
『! これは龍神様! いつもありがとうございます!』
『よかったらこれどうぞ! 新作の和菓子なんでさ! よかったら感想をお願いしやす!』
「あー、うん。ありがとういつも。でも毎回毎回貢ぎ物は別になくてもいいからね?」
『そんな滅相もない! 会えないはずの龍神様が人里に来られる! こんなありがたきことはない!』
『それに加え、子孫様の謙虚さといったら……年を取った我々でも学ぶことがあるんです!』
!? すごい辰上さんの元に人里の人が集まってきました!? 幅広い年齢層の方が辰上さんに握手を求めたり、何かをプレゼントしてくださったり……。
私はふと思い当たることが有り、小声で辰上さんに話しかけてみます。
「(もしかしてここ数日で侠さんが持ってきた野菜やら陶器製のものやらって……)」
「(……未だに貢ぎ物をして来る人がいるんだよね欠かさず。しかも自分がもらった貢ぎ物を使うところを見るとそのお店は繁盛するみたいでね……そういうご利益効果もあると思っている人もいるみたいでどんどん増えていく……)」
ここ数日で神奈子様と諏訪子様、時に私にプレゼントをしてくれたことがありました。その時辰上さんに聞いてみたら『親切な人からもらった』と言っていました。それって全部貢ぎ物だったんですね……自分だけだと多すぎて対処できないから守矢神社に寄付してくれたんですね。
そして辰上さんが応対しているとき、一人の方が辰上さんに尋ねてきます。
『子孫様? 博麗の巫女ではなく、守矢の巫女と一緒なんですね? 子孫様は博麗神社にいるはずでは……?』
「あ、その事? それは──あ。ご先祖様に変わります」
……え? ご先祖様に変わる……?
辰上さんがそう言った後──急に辰上さんの髪の色と目が赤っぽく変わりました!? 気のせいか神奈子様達に似た貫禄が見えるような気がします……!
「辰上さん!? それは一体──」
「──早苗よ。二神から聞いたであろう?
「!? 今が初代龍神様なのですか!?」
「左様。主と意識を交換しておるのだ」
『! 龍神様のお言葉が聞けるとは……!』
「静まれい。皆の者」
辰上さんではなく……初代龍神様がそう言うと、周りが静かになりました……これが龍神様のカリスマなのでしょうか……!
周りの方々が静まるのを確認すると、初代龍神様は話を始めました。
「諸事情で我と主は守矢神社で厄介となっておる。しかしそれは親交を深めるためでもあるのだ! 何せ守矢神社でも我と同じような神がいるのだからの! 我は一度外界にいた身である。今の外界では我も同様だが、神を信じなくなってしまった。すべてはお主らが我の存在を信じているように、その二神も自分の存在を認めてもらうため! 神というのは信仰により力を増す。だが、一つだけの神を信じなくても良いのだ。紅葉を司る神、豊穣を司る神、厄を引き受けてくれる神。そして軍神であり、土着神! みなそれぞれの御利益が違うのだ! 我は差別せぬ! 主も差別せぬ! 全ての神は幻想郷で受け入れられているのだ! そして我は体調を崩してまで、二神の信仰を集めようとする東風谷早苗に力を貸したいと思ったのだ! 別に強要するつもりはない。だが、自分の信じている神を良いところを人々に知ってもらうため、健気に信仰してもらう……我はその努力を評価したい。皆の者は信仰しても、しなくてもどちらでも構わんが……我的には、その努力を報われて欲しいと思っておる。皆の者は……どう思うかの?」
初代龍神様の演説みたいなものが終えると……続々と私に人が集まってきました!?
『何という……! ここ数日見かけないと思ったら体調を崩してなさったのか……!』
『龍神様の言う通り、複数の神様を信仰しても良いのか! 二神様を信仰するとどのようなご利益が!?』
「み、皆さん! 落ち着いてください! 信仰してくださるなら、詳しく話しますので!」
今までよりは遥かに信仰を感じます……! これは神奈子様と諏訪子様も喜んでくださるはずです! ありがとうございます初代龍神様!
「では早苗よ。我と主は寺子屋に行ってくるのでの。正午にはまた会おうぞ」
そういうと初代龍神様は私から離れていきました。
……よし! 信仰してもらえるよう頑張りましょう!
「……はぁ……はぁ……ここまで話したのは初めてです……」
一通り話し終えて、信仰が多く集まったことを実感しながら【龍神の像】の近くにあるベンチに腰を掛けました。病み上がりという点もあるので、体力の消費が激しいですね。何故か上空で誰かが弾幕ごっこをしていたのを途中観戦したりしましたけど……誰と誰が戦っていたんでしょう……?
それにしても……辰上さんは凄いと感じています。今朝見た初代龍神様が心の中にいるんですよね?『変わります』と言っていましたから心の中で会話をしているのかもしれません。
……有名なカードゲームの漫画でいう『もう一人の僕』と『相棒』みたいなものでしょうか?
でも……気になっていることが一つあるんですよね。
「辰上さんは私を守矢神社まで運んでくれたみたいですけど……どうも【あの時】と状況がほぼ同じような感じがするんですが……?」
風邪の引き始め。雨が降る。意識が失っているときに運ばれる。そして肌に感じた──優しい温もり。
「辰上さんにも【あの時】の事を話したにも関わらず……知らないようでしたし……本当にただの偶然なんでしょうか……?」
黒いコートを見て辰上さんは私に事情を聞きましたが……初めて聞いたような、見覚えがないような反応でした。仮に辰上さんが……その……お礼を言いたい人だとして、辰上さんは覚えていないんでしょうか……? まぁ、私はセーラー服で、今と印象は違うと思うんですけど……『どこかで会った?』とかそういう反応もあってもおかしくはないと思うんですが……。本堂さんが隣町だったことから、中学校は違えどもしかしたらお互いすれ違っている可能性もありますよね?
「……どうも引っかかるんですよね……」
辰上さんが戻ってきたら少しお話を伺っておきましょう。
今後の方針を決めた後……目の前に男の人の三人組がこちらにやってこようとしています。もしかして信仰をしてくださるんでしょうか?
「あの、もしかして信仰の方ですか?」
『お、おう! そうだ!』
『兄貴が守矢神社の神様に興味があるんだよぉ。それで巫女さんに詳しく話を聞こうとなぁ』
『兄貴だけではなくオイラ達の仲間も興味があるやんす! こんなところで何なんだから家でお茶を出すでやんす!』
「え……? そんな、わざわざ悪いです……」
『気にすることはない。さぁ、着いて来てくれ』
体格の大きい人が誘導してくれますが……どうしましょう? 辰上さんを待っていないといけないんですが……。
……話すだけですし、いいですかね?
私は親交を深めるため、その人たちについていきました……。
「……あれ? 東風谷がいない?」
『これは子孫様? どうかなされました?』
「この龍神の像に守矢の巫女が待っていてくれたはずなんだけど……どこかで見ました?」
『……実はというと、話では信仰の類の話だとおもいますが……妙なんです。ここでは有名なならず者の三人組が話していたのを見かけて……そのならず者たちは神様などを信仰することがないはず。それなのに守矢の巫女様を誘導していまして……』
「三人組でならず者──! あいつらか! まだ懲りていなかったか!? そうなると──東風谷が危ない!?」
『えっ!? 守矢の巫女様が危ない!?』
「どの方角に行ったか知ってる!?」
『私の見間違いでなければ、北西方向だと思います……噂があっていれば、その三人組の拠点があるとかないとか……』
「ありがとう! すぐ向かう!」
……末路が見えるから不思議。
ではまた。