早苗視点。
では本編どうぞ。
「──神奈子様、諏訪子様……少しお話良いでしょうか?」
辰上さんの状態を確認した後、居間の前に移動、居間の襖を開けると、お酒を片手に持ちながら談笑をしているお二方が。
「? どうした早苗? まだ体調は万全でないのだからまだ寝ていた方が良いだろう?」
「まぁまぁ神奈子。話があるって言っているんだからいいじゃん。で? どんな相談事?」
「はい……実は、辰上さんの事で──」
巫女お話し中……
「──という事なんですが……どう思います?」
「……早苗がお礼を言いたい奴が侠ってことに驚きだよ……」
「奇跡が起きたんだよ! 早苗の能力できっと! 私は早苗の初恋の人が侠だったら良いな~って思ってたんだ!」
「す、諏訪子様っ!? 私は辰上さんのことは──」
「でも……好きなんでしょ? 顔も性格も良くて、助けてくれたことも含めて」
わ、私の気持ち……。
この言葉を言うのに顔が赤くなっていくように感じます……。
「…………す、好き、です。異性として、辰上さんを…………」
「それが聞きたかった! いや~まさに恋する乙女って感じだね!」
う……そう言われると恥ずかしいです……。
そんな私をよそに……誰もが疑問に思っていることを神奈子様が言います。
「しかし……何で侠は早苗と会っていることを忘れているんだ?」
「はい……その事について私も疑問だったんです……。私そんな外見が変わっていないと思うんですが……?」
「……案外、記憶喪失って可能性もあるよ」
「き、記憶喪失ですかっ!?」
突然言い始めた諏訪子様の仮説に私達は驚きます。それでもなお、諏訪子様は話を続けます。
「それとしか考えられないじゃん。侠の妹と二人でいて、二人で守矢神社まで届けてくれてさ。それで侠の黒いコート。自分のものを思い出せないとかそういう可能性が高いんじゃない?」
「記憶喪失か……それならありうる話だ」
「なら……記憶を戻すということをした方が良いのでしょうか……?」
「だろうね。それで無事に記憶が戻ったら早苗の事を思い出して──結婚までいけたら安泰間違いなし!」
「す、諏訪子様……そのような話は少々早いと思います……」
「(少々、か……)それなら明日の朝に問い詰めてみるか? それで思い出す可能性もあるだろう?」
「そうだね、そうしよ──」
『そんな事では主は思い出すことはないの』
神奈子様の提案に諏訪子様が同調しようとしたとき──辰上さんの声のような、違うような声が。私達は声がした方向に振り返ってみると──辰上さんに似た誰かが襖を開けて立っていました。
でも、辰上さんに似ていますが……髪の色と目が赤い──ということは──
「初代龍神様ですかっ!? まさか辰上さんの体を借りて!?」
「!? 侠ではなく初代龍神なのか!?」
「……神々しい力を感じるね。それにしても双子というレベルだよ……?」
「逆に先祖返りが我に似ているのだ。すなわち主である辰上侠が我に似ている。そういうことだの」
そう言いながら初代龍神様は私達が囲って座っている卓袱台に近づき、腰を下ろしました。
もしかして……さっき言ったことを初代龍神様に聞かれていた──つまり、辰上さんにも聞かれていたという事ですか!?
「しょ、初代龍神様……辰上さんの体を借りているんですよね? それって……聞いちゃいましたか?」
「異性として主の事を好きからだの聞いたのは。だが安心せい。主は聞いておらぬ」
「聞いていない……? でも龍神様の体は辰上さんですから、記憶を共有しているはずでは……?」
「我が主の記憶は知っておるが、主は我の記憶を知らんよ。それに──主の体を離れて実体化しているからの。主はまだ寝ているはず」
「待てっ!? 私は侠から意識の入れ替えはできると聞いていたが、実体化できるとは聞いていないぞ! 実体化できないから意識の入れ替えを行っていたんじゃないのか!?」
神奈子様の当然の疑問。それは私も知っています。今日の人里だって意識の入れ替えをして信仰活動に協力してくれました! 実体化できるのならその時にすればよかったはずです!
神奈子様の疑問に龍神様は答えます。
「今日からできるようになったのだ。ならず者たちのおかげで──主の能力で早苗の能力が発展し──早苗が主との記憶を思い出してくれたからの」
「……早苗の能力の発展? それが侠の能力?」
諏訪子様の問いかけに頷きながら話を続ける龍神様。
「あまり主の能力は発動条件が厳しくての……【力を発展させる程度の能力】は我の能力と合わせるか、肌と肌が直接くっついていないと効力がない。早苗、ならず者に銃を向けられたとき、安心感を得るために主の手を握ったであろう? それで能力が発動したのだ。お主の能力の【奇跡を起こす程度の能力】から【大奇跡を起こす程度の能力】に。まぁ、元々のお主の能力の上位互換というのが早いかの? てっとり早く言うのならば奇跡の範囲と効力が強くなったのだ。それのおかげで主の【素】の言葉づかいを聞いたときに、おぼろげだった記憶がはっきり思い出せる【大奇跡】になっての。それだけではない。銃弾も大きく反れ、さらには天井を強引に突き抜けたときも外傷はなかった。お主は主が急に発現した風の力で大丈夫だったと思っていたようだが……主のお主が無事でいられたのは発展した能力のおかげなのだ」
「そ、そうだったんですか……!?」
「無意識での発動だの。主と共に助かりたいと思うから発動したのだろう。まぁ、今はいつもの能力に戻っておるが」
「……どうして早苗が侠との記憶を思い出したからという理由で、龍神は実体化できるようになったんだ?」
「それは禁則事項での。
すまぬな、と言って神奈子様の問いかけを流しました。もしかしてあの謎の光について関係あったりするんでしょうか……?
それでも、疑問に思っていることがあります。それはさっき否定した初代龍神様の言葉。
「『そんな事では思い出すことはない』ってどういうことですか……?」
「まず初めから否定しておくとの、主は記憶喪失ではない。我は主とお主があっていることは覚えている。だからこそ守矢神社に来たのだ。そして主は思い出さないのではない──
…………思い出せない? それってどうして……?
初代龍神様の言い方に私達は引っかかりました。諏訪子様が問いかけます。
「……それは侠は記憶喪失と同じ事なんじゃないの?」
「似ているようで、実際には違うのだ。脳がそういう処理をしているのだろう。主は【あの時】から他人の事を深く踏み入れることをやめた。素朴な疑問を持ちかけるだけで、納得する答えを得られたらそれ以上干渉しない。生きる中で関わりのある人物はともかく……自ら他人に関わろうとしないのだ」
「……【あの時】? それってどういうこと?」
「…………主のため、このこと話せん。言い換えるならば、主は過去を閉じ込めておる。受け入れてくれた家族と親友以外の過去をな。その時はタイミングが悪かったの。【あの時】が起こったのは早苗との出来事の少し後の事。あの後ちょうど過去を切り捨てたときだの。だから当時他人であった早苗との記憶を閉じ込め、思い出せない。主自体、他人との記憶を思い出すことは必要ないと思っているのだ。主にとっては現在大切な記憶は、受け入れた家族と本堂の者だけ。助けたとはいえど他人としてお主を認識し、光が届くかわからない奥底にお主との記憶を押し込めたのだ」
「そ、そんな……!?」
奇跡を経て、ようやく会えて、お礼を言えると思ったのに……辰上さんの過去の出来事で思い出せないんですか!? そんなの……あんまりです!
「じゃ、じゃあ辰上さんは……私の事を思い出してくれないんですか!?」
感情的に、希望をつかみ取るように初代龍神様に必死に尋ねる。初代龍神様は目を閉じながら……言いました。
「……思い出す可能性はある」
「…………えっ? ほ……本当ですか!?」
「うむ。方法としては──主の興味の対象になること。もしくは主の事を受け入れる存在になればよいのだ」
「……? 興味の対象となるのはともかく、辰上さんを受け入れるというのは何ですか?」
「それはの──」
私の疑問について初代龍神様が答えようとしたその時──体がブレ始め、下半身からどんどん透明になっていきました!?
「──む。どうやらここまでが限界みたいだの」
「限界!? それはもしかして──龍神が実体化できる時間が決められているのか!?」
消えていく初代龍神様の姿を見て、神奈子様が心配を含めた声で尋ねると、頷きながらも言葉を続けます。
「……今のところ主を受け入れてくれそうなのがお主を含めてぼちぼちいるが……まぁ、恋せよ乙女。主の事を深く知っていくといい──」
意味深な言葉を言った後、初代龍神様は消えていってしまいました……。
「……辰上さん……」
「……早苗。これからどうする?」
「神奈子~? そんなの決まってるよ──」
これからの方針を神奈子様に問われたとき、諏訪子様が当然のように答え始め──
「──侠を早苗の旦那にすることだよ!」
「す、諏訪子様っ!? それは何段階か工程が飛んでいますよっ!?」
「諏訪子──確かにそうだな」
あれっ!? こういう場面なら神奈子様だったら諏訪子様を抑えると思っていたんですけど!?
私は戸惑っているのか、諏訪子様は強気な言葉で私に言います。
「これは大チャンスだよ! まだ侠が博麗神社に帰っていないこの三日間近くで距離を縮めなきゃ! あわよくば誘惑して、既成事実を作る勢いで!」
「き、既成事実ですかぁっ!?」
そ、それってつまり──子供を作って家庭を築くことですよね──
『うー……ママァー……』
『どうしたんですか〜? 不安で眠れないんですか〜?』
『……母親の早苗に良く懐くよな、息子は……』
『よく息子はマザコン、娘はファザコンと言いますからね。きっともうすぐ生まれてくる赤ちゃんは女の子ですから懐きますよ』
『子供たちのことも好きだが……もっと早苗のことが好きだ』
『きゃ♪ もう、何処触ってるんですか♪』
『良いじゃないか。俺は早苗の物で、早苗は俺の物なんだから。これからもずっと』
『はい……そうですね……♡』
「──フフフフフ……♪」
「……諏訪子……早苗が帰ってこないんだが……」
「……それだけ侠の事が欲しいんだよ早苗は。私達は応援するべきなんだよ」
──はっ! 未来予想図を立てていたらある意味夢の中にいました!
意識を取り戻して、これからの方針を三人で計画を立てていました……。
妄想シリーズは大抵侠は【素】の口調になる。
ではまた。