この章最後の鈴仙視点。
では本編どうぞ。
『……落ち着いたか?』
「……もう少し、このままでいさせて……」
「はいよ……」
……今の私達は、静雅が竹を背に座っていて、私は静雅の胸元に顔を押しつけていてそう言った。ずっと静雅は私を安心させてくれるためか、頭を撫で続けてくれている。
……どれだけ泣いたんだろう? どれだけ吐き出したんだろう? どれだけ──甘えたんだろう?
頭を撫で続けてくれている静雅は、語りかけるように話しかけてくる。
「……こんなオレでも、鈴仙の悩みは軽減できたか?」
「……悔しいけど、かなり軽くなった……」
「おっ? デレたか? それなら何よりだ」
「……バカ」
さすがにこのままの状態でいるわけにはいかないわよね。私は立ち上がり、それを見てか静雅も立ち上がった後に私の顔を見て話しかけてきた。
「しっかし……元々赤目の所為か泣いた痕がわかりづらいな……」
「わかんなくて良いわよ。赤目で良かったわ」
「そうか……まぁ、それでも構わないけどな。うどんが元気になったのなら」
あ、名前が……? さっきまでそんな呼び方じゃなかったのに……?
「……ねぇ、静雅? 私に色々言っているときは【鈴仙】って呼んでくれていたわよね? でも今【うどん】って……?」
「さすがにシリアスの時は自重するぞ。シリアスの中【うどん】って何回も呼んだら何だか間抜けみたいじゃないか」
「逆にさっきみたいな事じゃないと呼ばないって事じゃない……?」
「いや、他にも例があるぞ。例えば──」
そう言いながら──真面目な顔つきに変わり、私にこう言った。
「──お前さんのことが好きだ。鈴仙」
「…………………………………………えぇっ!? ななななな──何言っているのよあなたはぁっ!?」
きゅ、急に告白っ!? そ、そんな……まだ心の準備が──
「──とまぁ、例えば告白するときとか……って、動揺しすぎじゃないか? うどんよ」
「…………そ、そうよねっ!? 例え話よねっ!?」
今度は気楽そうな表情に変わり、私の反応に疑問を覚えている静雅。
さっきまでの真面目な表情で言うんだもの……っ! どうしてか勘違いするのよ……!
そしてどうしてか、静雅は満足そうに頷き始めた。
「……成る程……オレは今うどんルート──いや、鈴仙ルートに入ったのか……! 新たなフラグが建ったのかっ!?」
「無いからそういうのっ!? 意味不明な言葉だけどそういうことじゃないからっ! それとふざけるときに名前呼びしないでくれるっ!?」
「バレてしまったか……まぁ、そういうことだ。これからもよろしく頼む、うどん」
「はぁ……」
何で静雅に打ち明けちゃったんだろう私……?
でも……後悔はしていない。気持ちも少し晴れやかだ。静雅に話して……正解だったのかも知れないわね。
そういえば……何だかんだ静雅の事をあまりよく知らないような気がする。姫様を交えて話していたときは大ざっぱな事しか聞いていなかったし……。
「ねぇ……静雅。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
「彼女なら募集中だぞ?」
「あ、そうなの──って、そういう事じゃないわよ!?」
「ちなみにうどんは彼氏がいるのか?」
「い、いないけど──って、さっきから何で人の恋愛事情を聞こうとしているのっ!?」
何故か私が質問しようとしているのに、逆に静雅が私のことを問いかけてくる。何だか静雅の質問が気楽にしてからかっているように感じる所為か、次の静雅の言葉に少し怒りを含めて発言しようとする。
「お互いにいないならちょうどよくね? オレ達」
「そういうのはお互いに知ってからに決まっているでしょっ!」
「…………お、おう……そうだな、うん…………」
……? 何で自分から話題を振って来たのに、逆にうろたえているの? 訳が分からないんだけど……?
「? どうしたのよいきなり言葉が弱くなったけど?」
「……うどん、もしかして天然なのかお前さん?」
「え? 天然?」
「あー、うん……オレがすまなかった……」
何故か唐突に謝られた。彼は少し頬を指で掻きながら、気まずそうに謝る静雅。私、何か変なこと言ったかな……?
……あ、そういえば元々静雅は姫様に会うために私に着いてきたんだっけ。話が随分それていたわね、本当に……。
元々の話題を思い出した私は静雅に話を振った。
「それで静雅は永遠亭に来るの?」
「……いや、やめておくさ。うどん、今日はゆっくり休めよ」
「……てっきり着いてくると思ったんだけど……?」
「オレが行ったら永琳先生さんに弄られるならいいが。また二人で永遠亭に入ることだし」
「私のことを配慮してくれるなんてすごい珍しいと思うけど……わかったわ。じゃあまたね」
私は静雅に別れを告げ、永遠亭に戻って行った……。
「──師匠~、ただ今戻りました~」
永遠亭の玄関に着き、帰ってきたことを報告すると師匠が出迎えてくれた。
「おかえりうどんげ。どうだった? 先生をやってみて?」
「……あまり多数の人妖の目の前では喋りづらかったですが……何にも問題無く終わることができました」
「あら、そうなの? 私はてっきり静雅がいろいろうどんげの事を弄って妨害するかと思ったのに」
「そういう事はありませんでしたね。親友の辰上侠がいるせいか、ふざけたような行動はしていませんでした。ふざけると侠が静雅に制裁するようで……真面目にフォローをしてくれました」
「……力関係では親友の方が立場上なのね……」
やっぱり、静雅は普段の行動でそうとらえられるわよね。本当に。
……あの時にみたいな静雅を師匠に見せてあげたい。彼の本当の性格だと思うし。
『──鈴仙。お前さんは悪くない』
ずっと私が欲しかった言葉。私は臆病な事はわかっている。我儘だという事はわかっている。それでも……静雅は私の事を肯定してくれた。
それが何よりも……嬉しかった。
その事を思い返していると、師匠が不思議そうに問いかけてくる。
「……? うどんげ、何か良いことでもあったの?」
「えっ? そう思いますか?」
「思うわよ。何か吹っ切れたような感じがするわ。出かける前までは普通だったのに……寺子屋で何かあったのかしら?」
師匠はやっぱり鋭い。確かに私は何かがあった。嬉しい何かが。
「言葉では表しにくいと思いますが……良いことがあった事があった事は確かかもしれません」
「……そう。それは何よりだわ。生きているうちは人生を楽しまないと損よ? まぁ、生きているうちに後悔することもあるでしょうけど──」
「──もう、後悔はしません。しっかり、自分のやらなければならないことに向かい合いたいと思います」
「……そう」
「それじゃあ、荷物を整理したら食事の準備をしますね……」
師匠にそう言い、私は一先ず荷物の整理の為に自室へと向かった……。
「……彼が何とかしてくれのかしら……? あんな機嫌の良いうどんげは久しぶりに見たような気がするわね……」
『ししょー……何か鈴仙とすれ違ったんだけど、鼻歌歌ってたウサよ? どうかしたウサか?』
「……ふーん。鼻歌ね……。多分、彼が鈴仙の事を後押ししたんじゃない?」
「……【月】の問題ウサか? 全くそれと関係ない静雅がどうしてウサ?」
「さぁ? よくわからないけど……彼の種族じゃない? 彼の種族は幻想郷でただ一人、心を荒らす神様──荒人神なんだから」
自分で言った事を深く理解していない彼女である。
次話はフラグ回になりそうです。
ではまた。