幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 神社での抗争。
 三人称。
 では本編どうぞ。


八話 『博麗神社での話』①

 侠が博麗神社に帰還して翌日。侠は早くから寺子屋に働きに出かけたので、霊夢は縁側でのんびりとお茶を啜っていた頃。

 

「(侠もちゃんと帰ってきたし、良いわね。でも……どうして今では侠がいるかいないかで気分がこんなに変わるのかしら?)」

 

「ナ〜ゴ」

 

 少し隣に体を丸めてゆっくりしている五徳がいるが、それは気にしないで霊夢は再び侠の事について考える。

 

「(……魔理沙達といて何かが違う。でも侠と同姓である霖之助さんや静雅とも違う。何なんだろう……このモヤモヤ……?)」

 

 自分の胸の内にある気持ちを何か考えていたとき……目の前の上空から一人──いや、人魂みたいなものも一緒だ。その人物と人魂は神社に降り立ち、霊夢に話しかけてくる。

 

『こんにちは、霊夢さん。侠さんはいらっしゃいますでしょうか?』

 

「……妖夢? 侠に何か用?」

 

 霊夢の目の前に来たのは冥界の白玉楼の庭師でもある魂魄妖夢だった。縁側から立ち上がって近づいて来る霊夢の言葉に返事を返す妖夢。

 

「実は宴会の時に私が飲み物を誤って吹いてしまったんですが、その時に侠さんからハンカチを貸してもらいまして。それで返しに来たんです」

 

「……へぇ。そうなの。どうせ他にも用事があるんじゃないの?」

 

 霊夢の指摘に妖夢は驚いたような表情をした。図星である。

 

 少し返答に困りながらも、妖夢はきちんと答える。

 

「本当に霊夢さんは勘が鋭いですね……。実はハンカチを返しに来たのと同時に、【組み手】を申し込もうと思ったのです……」

 

「……【組み手】? それって侠と静雅がやっているようなやつ? 能力禁止とかで」

 

「いえ、それとは違い得物と体術を使ってでの組み手です。侠さんは私と同じ剣の使い手でもあるので、学べることが多いんですよ。この時間帯だとそろそろ寺子屋から帰ってくる時間帯だと聞いていますので、待っていようかと思いまして」

 

「……誰にそういう事を聞いたのよ? 確かにそろそろ侠が帰ってきてもおかしくない時間帯だけど」

 

「過去に侠さんが白玉楼で過ごしていただいた時、改めて聞いたんですよ。もし人里での買い出しに会えたらそれで良かったんですけど……中々会えないので博麗神社で待っていれば侠さんに会えると思い、ハンカチを返すと共に【組み手】の申し込みを」

 

「……そ」

 

 そうして妖夢の言葉を彼女は聞き終えたとき……また空から誰かの人影が見えてくる。その人影は三人組であり、神社に降り立ちその中の一人──大きなしめ縄を背負った八坂神奈子が霊夢に話しかけた。

 

「霊夢。侠は今いないか?」

 

「……守矢神社の神々が何か用? それと侠は今いないわ」

 

「神奈子、ならちょうどいいね。この話は侠がいない方が話しやすいしかもしれないし」

 

 霊夢の返事を聞いて神奈子の後ろからひょこっと出た洩矢諏訪子が言う。二神の様子を見てか、守矢神社の巫女である東風谷早苗が心配そうに二柱に問いかける。

 

「あ、あの……神奈子様、諏訪子様……本当に言うんですか?」

 

「そのために来たんだ。早苗が心配することはないさ」

 

「そうそう! 早苗は心配しなくても大丈夫だよ!」

 

 不安を取り除くように言う二柱に、先に博麗神社に訪れていた妖夢が三人に話しかけた。

 

「あの……守矢神社の皆さんがそろって侠さんに何か用事があるんですか?」

 

「あれ……妖夢さん? 妖夢さんも侠さんに用事が?」

 

「はい。以前博麗神社で行われた宴会で、侠さんからハンカチをお借りしたので返しに来たんです。それでお時間があれば【組手】の申し込みを……」

 

「宴会があったんですか!? 霊夢さん、どうして私達を呼んでくださらなかったんですか!?」

 

「そもそもその宴会は日食異変の首謀者、紅魔館と紫達のメンバーの宴会だったのよ。文は情報を聞いて参加、アリスは静雅に誘われて参加したし……その時は侠と静雅の面識のあるメンバーが集まったのよ。当時知らないやつが宴会にいれば侠達が困るじゃない。だから部外者は呼ばなかったわ」

 

「う……前に博麗神社に訪れたときに侠君がいれば……」

 

「「(……【侠君】?)」」

 

 霊夢と妖夢は君付けした侠の呼び方が気になったが、神奈子が話に入り込んで話題を変え、ある事を霊夢に伝えようとする。

 

「そのことを悔いてもしょうがないさ早苗……そして本題に入らせてもらうが──」

 

「何よ? 本題って──」

 

 

 

 

 

「──龍神の先祖返りである、辰上侠を守矢神社に渡して欲しいだけだ」

 

 

 

 

 

「…………はっ!?」

 

「えっ!? か、神奈子さん!? それはどういう事ですかっ!?」

 

 急な発言に霊夢と妖夢は会話についていけなく、驚愕の声をあげた霊夢の後に妖夢が説明を求めた。当本人の神奈子は説明を。

 

「何、侠と早苗は外界での繋がりがあるんだ。それなら幻想郷からの付き合いの霊夢より、早苗と一緒の方が良いだろう」

 

「侠と早苗に繋がりがあったなんて初耳よ!? 侠自身に守矢神社での出来事を聞いたけどそんなこと一言も言ってなかったわ!」

 

「侠は【ある時】の出来事で早苗との出会いを思い出さないらしいんだよ。過去に何かあったのか初代龍神は詳しく教えてくれないし、侠自身も過去を教えてくれないし」

 

 代弁するかのように諏訪子が神奈子の言葉を引き継いだ。

 

「(侠さんの過去の出来事……!? 侠さんは拾われ子で、初代龍神様の先祖返りで……過去の事を聞いたことがありません……!?)」

 

 妖夢は侠の過去について思い出そうとしたが、彼女は家族構成と先祖返り事情しか教えられていなかったので、詳しい事情を知らず困惑していた。そもそも彼からの過去の話などを聞いたこともなかったので当然な事かもしれない。

 

 しかし、霊夢は冷静に侠の事を思い出す。

 

「(確かに早苗も外界出身……この二柱が言いたいことは【早苗は外界で侠と会った事がある】ということ。そういうことはありえなくもない。それで私も侠自身の過去を聞いたことがない。前に文に過去の事で取材を断ったぐらいだし。でも、過去に紅魔館で静雅が言っていた事は──)」

 

 

 

 

 

『──それである時をきっかけに侠は一度変わって──それからだ。自分を受け入れてくれた分家のために、学力は除いて適度に手を抜いて、少しだけ本家の子供たちの成績、運動神経とか花を持たせるようになったんだ。手を抜いていることは本家の奴は気づかずな──』

 

 

 

 

 

「(──【ある時】というのは【本家】が関わっていることには間違いないわ。中には陰湿なことを侠はされたらしいし。多分、それが積み重なって──侠は変わってしまった。おそらく、その【ある時】が原因で過去に触れたくなかったんだわ。それで多分、【ある時】以前に会ったと思われる早苗の過去まで思い出したくないのね……)」

 

 霊夢の考えは実際に合っている。【本家】が侠に陰湿なことを続けた結果、【ある時】が起こり──侠は過去を振り返らなくなった。振り返るとしても、心から許している親友の静雅と受け入れてくれた【分家】の家族の過去のみ。彼女はそこまでたどり着く事が出来たのだ。

 

 説明に納得した霊夢は改めて早苗に考えを言う。

 

「早苗……あんたは確かに外界で侠に会った事があるかもしれない。でも、それだけでしょ? 侠は【ある時】をきっかけで過去を振り返らなくなった。それで侠を守矢神社にいさせることで、過去を思い出してもらおうとしている──そういう事でしょ?」

 

「えっ!? どうして侠君についての事がそんなにわかるんですか!? 神奈子様は私と侠君が繋がりがあると言っただけですよ!?」

 

「あんたは外界出身で、侠も外界出身。それで神奈子が言った【繋がり】がある。それからわかることはまず外界で会っていることじゃない。それで早苗は侠の事を覚えているのに、侠は覚えていない。会ったというのなら、私に言っていたと思うけど……そういう事は言われていない。それで祟り神の諏訪子の言う通りに【ある時】で確かに侠は変わったからね。それで【ある時】以前の過去を思い出さない。あんたはどういう風に侠を思っているのか知らないけど、思い出させるために侠をよこせと言っているんでしょ? そのぐらい考えればわかるじゃない。それと侠は渡さないから」

 

「「「「…………」」」」

 

 霊夢が喋り終わると……彼女以外の人物は意味深な視線を霊夢に注いでいる。

 

「……何よ? その変な目は?」

 

 当然、霊夢は視線が不快に思った。その中で妖夢は霊夢に疑問を問いかける。

 

「あの……侠さんから過去の出来事について聞いたことがあるんですか?」

 

「聞いたことはないわよ。侠も過去には触れてほしくなかったみたいだし。でも……静雅の情報とあんた達の情報で納得がいったのよ。改めて侠の過去についてね」

 

 霊夢は妖夢に説明している間……守矢神社の三人は小声で会話し始めた。三人はどこか焦燥の表情が読み取れる。

 

「(どうしましょう神奈子様、諏訪子様!? 霊夢さんの言う事が初代龍神様と言葉がほぼ一致しています!?)」

 

「(しかも私達は初代龍神から直接聞いたというのに、間違いのない推察した……本当に目の前にいるのは私達の知っている博麗霊夢なのか!?)」

 

「(明らかに勘じゃないし、根拠もはっきりしている……こんなの霊夢じゃないよ!? いつもの無関心はどこにいったの!? 頭が冴えすぎだよっ!)」

 

 普段の霊夢は物事の関心ごとが少ない。それなのに対し、侠の関わることは霊夢は頭の回転が早くなっていた。

 

 

 

 

 

 彼女は日食異変の時から──侠に興味を持ち始めたのだから。

 

 

 

 

 

 しかも侠を移住権を霊夢は渡すつもりはないと公言した。侠は基本的に自分から決めるという事はあまりしなく、霊夢に判断を委ねていることが多い。レミリアと幽々子の件がそうだ。レミリアの一件で否定的なことを言った霊夢の言葉を侠は受け入れ、幽々子からの誘いも霊夢の意見を肯定するように断っている。仮にも霊夢が許可するなら別だが……その様子はない。

 

 彼を渡す様子のない様子を見てか……諏訪子は自身の決めたことを発言した。

 

 

 

 

 

「でも──侠は早苗が外界の頃からずっと探していた人間なんだ! 侠になら早苗を任せてもいい!」

 

 

 

 

 

「……………………は?」

 

「……………………え?」

 

 急な発言に霊夢と妖夢は諏訪子の発言に困惑した。その事を聞いた神奈子と早苗も驚いたような表情を見せ──顔を赤く染め上げて諏訪子に抗議し始める。

 

「諏訪子様っ!? その事を言わなくても良かったんじゃないですか!?」

 

「だって外界で出来るだけ探しても会えなかったんだよ!? もう諦め掛けていたその時に侠が過去と同じような行動をとって早苗を助けたんだよ!? それだったらもう手放さない方が良いに決まってんじゃん!」

 

「で、ですが──」

 

「早苗。今回の事は諏訪子に賛成だ。もうお前は我慢しなくて良い」

 

 彼女の言葉を遮り、賛成の意を示した神奈子。そして改めて霊夢にこう言う。

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの言葉は訂正だ──辰上侠を早苗の婿として迎えたい」

 

 

 

 

 

 




 後半に続きます。

 ではまた。
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