幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 後半からどうしてシリアルになった?
 三人称。
 では本編どうぞ。


九話 『博麗神社での話』②

 軍神でもある八坂神奈子の発言。その発言に霊夢や妖夢、さらには早苗までもがその宣言に驚愕した。最も先に反応したのは侠の家主である霊夢。

 

「はぁっ!? 婿!? それって本気なの!?」

 

「何。本気のつもりだ。早苗の気持ち、そして龍神の先祖返りであり、外見や性格も良い。これ以上の早苗の婿としてちょうど良い人物はいないからな」

 

「む、婿ってそんな……!? 早苗さんはそれで良いんですか!?」

 

 神奈子の発言と理由を聞いてか、同じく動揺して顔を赤く染めている早苗に妖夢は問いかけた。

 

 当本人とはいうと。

 

「…………もし、侠君が私のことを好きならば、とても嬉しいです…………」

 

「「!」」

 

 言葉は弱々しかったが、早苗の言葉に二人は反応する。この場においてだが──彼女は侠の事を好きであると公言したのだから。それと同時に彼のことを好いている妖夢の心臓が締め付けられるような痛みがし、霊夢は抱えていたモヤモヤが大きくなった。

 

 しかし霊夢は……侠と紫の約束事について切り出す。

 

「婿って言ってもそんなのは無理よ!? だって侠は──外界に帰る約束でこの幻想郷にいるんだもの!」

 

「っ!? 侠が外界に帰る約束でこの幻想郷にいる!? それってどういうことなの!?」

 

 妖夢は元々知っていたのでそんなには驚かなかったが、諏訪子の言葉を代表に守矢神社の三人は言うことが信じられなかった。

 

 それは無理はない。彼は幻想郷の創造神の先祖返り。そして過去に親友が起こした異変といえど異変解決者の一人として数えられている。もう彼は幻想郷側の人物と言っても過言はない。

 

 その理由について霊夢は説明を続ける。

 

「侠のいた外界で変な事が起こっているから、それを見た紫が幻想郷に誘ったのよ!『変な事が収まるまで幻想郷に来ない?』という事で! だから侠は外界での異変が終わったら……外界に帰るのよ……」

 

「異変……ですか!? 外界でそのようなことが!?」

 

「詳しいことは教えられなかったわ。でも、侠本人がそう言っていたから……本当の事よ……侠は基本嘘を吐かないもの……」

 

 早苗が疑問を投げかけたが、霊夢は言葉が弱々しくなるが肯定した。

 

 追い打ちを掛けるかのように、妖夢も肯定し始める。

 

「……宴会の時に、確かに紫様と侠さんは言っていました……外界に帰る約束にこの幻想郷にいて、さらには人を好きになることはないと……」

 

「……何故侠には【外界に帰る】という選択肢ができるんだ……!? ここまで有名になって、初代龍神の先祖返りで、心に初代龍神もいるのにも関わらず!? 偶然は重なったと言っても、もう完全に侠は幻想郷側の人間だぞ!?」

 

 そう博麗神社で討論をしていたとき……空から翼を広げて話の中心人物だった辰上侠が降りてきて、現状を確かめるように言った。

 

「ん? 魂魄もいて守矢神社の人達まで……何か用でも?」

 

 翼をしまって本人は気楽そうに問いかけてみたが、早苗は即座に霊夢の言っていたことを確かめるために詰め寄って聞く。

 

「侠君っ! 外界に何時か帰っちゃうって本当ですか!?」

 

「その話? 本当だよ? そういう約束でこの幻想郷にいるからね」

 

「う、嘘……ですよねっ!? 本当に外界に帰っちゃうだなんて……!?」

 

「……何度聞こうが自分は外界に何時か帰るけど?」

 

 無慈悲に躊躇いなく答える侠に、困惑しながらも……二柱はそれぞれ侠に問いかける。

 

「……心の中にいる初代龍神はどう言っているんだ?」

 

「ご先祖様は自分に同意はしています。そもそも自分とご先祖様は運命共同体で、体の主導権は自分ですからというのもありますけど」

 

「初代龍神はこの幻想郷の創造神だよ!? それにも関わらず!?」

 

「ご先祖様は今の幻想郷を統次している【龍神】ではないですし、元々ご先祖様は死んで亡霊的なものですからね。あくまで今を統治している【龍神】ではないですし」

 

 淡々と侠は答える。他人のことはどうでもいいと言わんばかりの言葉だ。

 

 しかし……侠はまだ言葉を続ける。

 

「……ご先祖様の騒動以来、外界に戻ったら確かめなければならない事柄もありますから。どっちみち戻ると思います」

 

「確かめなければならない事……ですか? それは一体どういう──」

 

「魂魄、少しこれは話しにくいことだからね。そんな簡単に言えるものじゃないんだ。これは自分の問題でもあるから詮索は止めて欲しい」

 

「す、すいません……」

 

 妖夢からの疑問を一蹴する。よほど触れられたくないプライベートなことなんだろう。

 

 しかし──その中で霊夢が唯一心当たりがあった。

 

「(まさか……外界での先祖返りについて、それで一番の問題でもある──侠の本当の両親の真実を知るために、外界の異変が終わったら調べるつもりなの!?)」

 

 過去に侠と共に彼の精神世界──というよりはティアーの精神世界で話された一部の真実。霊夢も侠と一緒に真実を知った。

 

 ──彼の本当の両親は存在していて、遠いところで離ればなれになっている事を。

 

 だが、霊夢はこの場においてそれを言うことは出来ない。妖夢の詮索を断ったぐらいだ。侠にとってもあまり広まって欲しくない事なのだろう。

 

 侠は話し終えたと思ったのか、彼が持っている疑問を妖夢、守矢神社勢に順番にそれぞれ尋ねる。

 

「それで……まず、魂魄は何しに?」

 

「あ、はい……以前、宴会の時に貸してもらったハンカチを返しに来たんです」

 

 侠の質問に答えながらも、服のポケットからハンカチを取り出して彼に近づき手渡した。

 

「そう。わざわざ綺麗に返してくれてありがとね。他の何か用事があったりする?」

 

「……いえ、それはまた後日に伺います」

 

 妖夢は今の空気では【組み手】を申し込む気にはなれなかった。

 

「ふーん……まぁ、何か言いたいことがあったら別に今でも構わないんだけど……本人がそう言うなら別に良いか。そして……東風谷達は何しに?」

 

 ハンカチを受け取ってポケットに彼はしまった後、侠の質問にまず……間接的に神奈子が逆に問いかけた。

 

「何……侠はこの博麗神社で居候して何か不便なことはないか?」

 

「不便なこと、ですか?」

 

 神奈子の言葉に便乗するかのように諏訪子が言葉を繋げる。

 

「そうそう。例えば霊夢にこき使われて『こんな生活嫌だ!』っていう理由なら守矢神社を改めてどうかと思ってね。侠は妖怪の山での出入り自由だから、不便はないと思うよ?」

 

「ちょっと!? 私はそんなに侠の事をこき使ってないわよ!?」

 

 霊夢はその事に抗議したが、当本人の侠はというと──

 

「自分は居候の身ですからこき使われてもしょうがないですし。それに不便だと思ったことは一度もありませんよ。衣食住があるだけで自分は満足ですから」

 

「えぇ〜……何か仙人みたいな発言……侠はもっとこう、欲とか不満とかないの?」

 

「…………………………………………特にありませんね」

 

「……不満がないのはともかく、若いのにそんな無欲でいいのか? 例えば──恋愛をするとか、な」

 

「「──!」」

 

「…………」

 

 神奈子の言った言葉に妖夢と早苗は興味のあるような反応を示し、霊夢も黙っていながらも侠の事を見る。

 

 しかし、彼は──こう答えた。

 

「この世界でそういう事はするつもりはありません。魂魄には前に話したけど……そういう風になるのは限りなくゼロに近いです」

 

 一見、彼の言葉は否定的な返事だったが……ある点に気がついた諏訪子は改めて侠に問いかけた。

 

「ゼロに近い……それは一パーセント未満であろうがするかも知れないって事!?」

 

「まぁ、人生は何があるか分かりませんからね。もしも自分の事をどんな人物か理解してくれたら……そうなるかもしれません」

 

「だったら──」

 

 そして諏訪子は気持ちがあらぶっていたのか……あることを含めながら発言した。

 

 

 

 

 

「──早苗と一緒に過ごした方が良いんじゃない? お互いの裸を見た仲で同じ部屋で寝た事があるんだし!」

 

 

 

 

 

「はぁっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

「諏訪子様っ!?」

 

「それは言わない方が良かったんじゃないか……?」

 

「ブフッ!?」

 

 各々違うような、同じような反応を示し……それでもなお諏訪子は言葉を続けた。

 

「お互いの裸を見て同じ部屋で寝た事があるでしょ? だったら断然早苗の方が侠の事を理解しているともうよ? 尚更侠は守矢神社にいるべき!」

 

「侠……それはどういうことかしらァ……?」

 

「ちょっと待って博麗!? その事はお互いの事故だったんだよ!? 自分は風呂場を借りてたときに東風谷が知らず開けちゃってそれでお互いに見ちゃっただけの事故なんだっ! それに一緒の部屋で寝たというのは、自分の借りている部屋で荷物を探していて東風谷の部屋しか寝られなかったんだよ! 決して自分の他意はないっ!」

 

 説明しているのが内容の所為もあるのか、少し侠は焦りながら霊夢に弁解をしている。その中で彼の表情を珍しく思った神奈子は、どこか確かめるような言いぐさで彼に話し掛けた。

 

「ほぉ……珍しく侠が動揺しているなぁ……? 何か後ろめたい事でもあるのか? まさか自分に落ち度があると思っての発言なのか?」

 

「八坂さんまで何を言っているんですか!? 風呂場の事は事故で片付いたことじゃないですか!? 内容が内容ですし、その話題を知らない人達に違う誤解を与えてしまうじゃないですか──」

 

 

 

 

 

「侠さんはそんなことを自分から絶対しませんっ!!」

 

 

 

 

 

 必死に弁明していた侠の言葉を遮ったのは……妖夢だった。その事に諏訪子が問い詰める。

 

「何? 侠だって男の子なんだよ? 異性の事を意識する年頃なのに……いくら侠が紳士的であっても内心、その事で喜んでいる下心があったかもしれないのに──」

 

 そして妖夢までもが、場の空気からなのか……顔を赤くしながらある出来事について言ってしまった。

 

 

 

 

 

「侠さんは私と二度浴場で対面したとき紳士的に応対してくれましたし、侠さんが湯船に入って私が体を洗っているときも決して侠さんは振り返ることはありませんでしたっ! 侠さんは下心なんて持っていませんっ!」

 

 

 

 

 

「魂魄ぅっ!? 何でその話題を持ち出したの!?」

 

「「「……えっ!?」」」

 

「…………は? 何? 侠は異性と風呂で何か事が起きないとすまないの?」

 

 訴えるような侠の声は届かず、妖夢は風呂での出来事を言ってしまった。彼女の言ったことに守矢神社の神々は拍子抜けの声を出し、霊夢は逆に通り越して呆れている。

 

 その中で我を取り戻した早苗は意外な発言をした妖夢に焦っているかのように問いかけた。

 

「妖夢さんもお風呂で侠君と!? 私は対面で一度だけでしたのに二度!? それに湯船って……!?」

 

「一度は幽々子様に誘導され、私の不確認でごちゃごちゃ揉めてしまい、その、倒れた私を介抱してくださって……。二度目は過去に侠さんの利き腕に怪我を負わせてしまい、幽々子様の言う通りに利き腕が思う通り動かせなかった侠さんの背中を流して行きなさいと言われるのと同時に……その……一緒に湯船に入ることになりまして。湯船は広く距離をとっていたのでお互いのは見え──とりあえず侠さんは自らそんなことは絶対しません!」

 

「……侠君と妖夢さんがそんな関係になっていただなんて……それに背中を流すとか羨ま──ずるいです!」

 

「東風谷。言い争う点はそこじゃないと思うんだ。それで博麗……魂魄の言っていることは確かに事実だけど、お互いに望んでやったりしてもらったりじゃないからね? ゆゆさんの悪戯兼誘導だから魂魄も悪くないから」

 

「…………」

 

 侠の弁明を聞いていた霊夢は顔をうつむけて少しの間考えて時、侠に改めて確かめるようにして問いかける。

 

「…………一応、守矢神社と白玉楼で起こったことは事実だけれど、侠が自ら覗きに行ったり事を起こしたり故意的じゃないのね?」

 

「本当。嘘とか吐いていないから」

 

 侠の返事を聞くと霊夢は──不機嫌そうな顔をしているが、了承したかのように言った。

 

「……いいわ。信じてあげる。侠は基本嘘は吐かないし、言い分も納得は出来る。過去に私とでそういう事柄は起きたことは一度も無いからね。ただ……さらに詳しく白玉楼の事と守矢神社の事を聞くから。良いっ!?」

 

「うん。わかった。聞かれたことは答えるよ」

 

「じゃあ妖夢と守矢神社達は帰って。これから侠といろいろ話すから」

 

 霊夢は妖夢達に帰宅を促す。妖夢は流されるも、守矢神社の神々は納得は出来ていないようで彼女に文句を言いかけたのだが──

 

「え? あ、はい……」

 

「ちょっと待ってくださいよ!? せっかく博麗神社で侠君と会えたのですから、もう少しお話を──」

 

「待て! まだ侠から返事をもらってない──」

 

「そうだよ! 侠の話を聞いた後に、霊夢の考えが変わるかも知れないし──」

 

「か・え・れ!」

 

「「「…………はい…………」」」

 

 あからさまに分かる霊夢の怒気を含めた声に、納得はしなかったが直感的に言うことを従った方が良いと悟った三人は飛翔して博麗神社を去った。妖夢も霊夢と侠に会釈し、飛翔して神社から去る。

 

 去ったのを確認し、霊夢は疲れたように言う。

 

「……侠、あんたどれだけ問題を起こしているのよ……?」

 

「いや、自分から起こしたことは無いんだけど……何というか間が悪くて向こうからやってくるような……? そんな感じで避けられない……」

 

「はぁ……とりあえず神社の中で詳しいことは聞いてあげるから感謝しなさいよ? 本当なら陰陽玉をぶつけたい気持ちがあるんだから」

 

「あ、うん……じゃあ話すよ」

 

「…………(お風呂、ね……)」

 

「ナァー……」

 

 五徳のどこか悲しそうな鳴き声はおいておくとして、侠は霊夢に油を絞られることになった……。

 

 

 

 

 




 ……次話は察するかもしれませんが。

 ではまた。
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