幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 段々吹っ切れてきた早苗。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


六話 『ゲーム』③

「よっしゃっ! ようやく私が王様だぜ♪」

 

「報復受けそうだなオレ」

 

 ようやく魔理沙が王様になり、声が嬉しそうに弾む。それを見て静雅は自分のした命令の様子からか、呟くように言う。無論、真正面にいた魔理沙は聞こえ、静雅に指さして命令したが──

 

「自覚があるなら後悔するといいぜ! 6番の左腕に3番が、右腕に8番が最後の命令まで密着だ!」

 

「する方もされる方もMP(メンタルポイント)を盛大に奪う命令だな……しかし! 残念ながらオレは2番だ!」

 

「…………侠。一応聞いておきたいんだが、静雅の変な能力で不正はしていないか?」

 

「…………してたらご先祖様が教えてくれるからしてないよ」

 

「ちっ。2番にしておけば良かったぜ」

 

 もしもという事で親友である侠の尋ねてみるが、していないと公言。侠は【龍神補正】で過去に静雅が能力を使用したときのタイミングが分かるのだ。その侠がしてないというのなら本当のことだろう。その事実に魔理沙は悔しそうに舌打ち。

 

 その中……同じ系統の服を着た人物が名乗り出る。

 

「魔理沙……私8番なんだけど?」

 

「霊夢さんも当たったんですか? 私は3番何ですよ」

 

「逆に凄いわね? 密着する方が巫女二人だなんて」

 

「それほどでもないぜ☆」

 

 どうやら霊夢と早苗が当たったみたいだ。そしてピンポイントで巫女二人に当たったのを咲夜は少し驚き、魔理沙は何故か自慢げに言う。

 

 その中、侠の膝に収まっている諏訪子に侠は話し掛けた。

 

「諏訪子さん、少し用を足したいのでどいて貰っても良いですか?」

 

「? わかったよ。ちなみに侠は何番──」

 

「長くなりそうなので先に進めても構いませんから。それじゃ──」

 

 諏訪子がどき、侠の番号を尋ねたところで彼はどうしてかそそくさにその場を去ろうとして歩き出す。

 

 そんな侠に何か察し付いたのか、静雅は即座能力を使い、侠の背後に移動して──

 

「縛符【這いつくばる愚者達(四方50cmバージョン)】!」

 

 いきなり重力スペルを唱え、侠は対応しきれずに押しつぶされた。彼の急な行動に戸惑い、侠は静雅に問いかけようとしたが──

 

「へぶっ!? 静雅!? 君は一体何を──」

 

「ナチュラルに逃げ出そうとするのは感心しないなー? 自分の番号が6番だからってー?」

 

「また侠が当たったのか!?」

 

「成る程ー……自分ばっかり当たるから逃げ出そうとしたんだ?」

 

「だってこれ明らかにおかしいじゃないですかっ!?」

 

 静雅の推理に神奈子は驚愕し、納得したように諏訪子が侠に問い詰めた。

 

 それはある意味無理は無い。半分以上の命令が侠に関わっている。そして今回の命令は肉体的接触。さすがに恥ずかしい思いがあり、逃亡を企てたが失敗した。

 

 妖夢もこれまでの命令を振り返り、同情するように言う。

 

「確かに侠さんの指名の命令に半分ほど関わっていますね……」

 

「それでもう番号が誰か確定したワケだけど──」

 

 咲夜はちょうど侠の両隣にいる人物達に視線を移すと──

 

「きょきょ侠がそうなの!? い、いきなり過ぎるわよ!?」

 

「な、ななんと役得──ではなく!? 大胆な命令が侠君に!?」

 

 ……案の定、慌てていた。

 

 両隣の騒がしさを感じてか、侠は魔理沙にお願いするように話し掛けた、が。

 

「……霧雨、いっそ命令変えてくれない? ここまで当たると流石に──」

 

「王様の命令は絶対、つまりは私の命令は絶対だぜ! そして私同様に恥ずかしい思いをしろ!」

 

「さらっと今本音がでたよね? 自分って何か霧雨に悪い事したかな?」

 

「私もこんな命令するつもりはなかったが、発端は静雅だ。文句は静雅に言ってくれ」

 

「……言ってもしょうがないよ。過ぎ去った事はどうにもなんないんだし……」

 

 はぁ、と溜息をし、現実を確認し始めている侠。そんな彼に親友である静雅は気楽に声をかける。

 

「でも良いじゃないか? 次の命令で膝の上に収まるイベントが終わるんだしよ?」

 

「それなのに人数が増えて最後の命令までってどういう事なのかな……?」

 

 納得がいかない侠だったが、命令内容を思い出し神奈子は各々の行動を促す。

 

「ほら、霊夢もそうだが早苗も行動に移す。諏訪子との命令は持続中だから侠は座り直しな」

 

「…………」

 

「あーうー……次の命令までだから我慢してねー」

 

「魔理沙……後で覚えてなさいよ……!」

 

「覚えていたら覚えておくぜ☆」

 

「きょ、侠君……失礼します……」

 

 静雅は重力スペルを解除し、侠を元いた場所に座らせる。座ったのを確認して諏訪子は再び膝の上に収まり、魔理沙に文句を言いながらも控えめに侠の右腕にしがみつく霊夢。左腕には早苗がくっついた。

 

 今の状況を見て者と場所に座り始めた静雅が一言。

 

「見事なハーレムだ」

 

「巫女二人を侍らせて、膝には祟り神だもね……」

 

 静雅の言うことに納得しているように咲夜は言ったが……今の侠を見てか安心するような、複雑そうな表情をしながら妖夢は思った。

 

「(……逆に私じゃなくて良かったです……私はあまり胸がありませんから。こうなると外見で明らかにわかる早苗さんが羨ましい──)」

 

 ……この場で侠の外見的好みを知っている妖夢は落ち込みながらも、侠の事を見たが──

 

「…………(チラッ)」

 

 ──何故か侠は霊夢をチラ見した。その事に疑問を覚える妖夢。

 

「(……あれ? 早苗さんではなく霊夢さんを見ました……? 私の判断ですが……霊夢さんよりも早苗さんの方が発育は良いはず……?)」

 

「ど、どうしたのよ侠? なんか文句でもある?」

 

「あ、いや。何でもないよ、うん」

 

「侠君……最後の、め……命令までですから、よろしくお願いします……」

 

 侠の不自然な視線に霊夢は聞いてきたが彼は受け流す。早苗は控えめに言いながらもきっちりホールドしている。

 

 ……そして、彼が霊夢の事を見た理由。

 

 

 

 

 

「(東風谷は予想通りだった……でも、風呂で見なかったけど霊夢ってサラシをきつくしているのかな? 予想以上に胸の弾力があった……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この状態でくじを引くのもなんだかねぇ……」

 

「侠君が隣にいてくれたおかげで私が王様になる事ができました! これは初代龍神様のおかげですかね!」

 

「ティアーは絶対関係ないでしょ……」

 

 侠の奇妙な状態で王様ゲームを再開し、今度は早苗が王様となった。霊夢は早苗の根拠に呆れている。

 

 王様くじを引いた早苗に問いかける神奈子。

 

「それで早苗はどんな命令をするんだ?」

 

「それはですね……1番の方が4番の方に【流れない涙】の荒木涙の台詞である愛の言葉を!」

 

「ピンポイントにオレが当たった!?」

 

「これぞ奇跡の力なのです! 実際能力は使っていませんけど!」

 

 早苗の独特な命令で1番のくじを持っている静雅が指名された。

 

 しかし、早苗の言っている言葉を理解していない人物も当然いるだろう。代表として咲夜が概要を早苗に尋ねた。

 

「……その【流れない涙】関連は何なの?」

 

「本堂さんが外界で主演だったドラマ──演劇みたいなものです! 過去のトラウマで涙を流す事が出来なくなってしまうのですが、よく涙を何でも流してしまうヒロインと過ごす物語です! 他にも魅力的なキャラクターもいるんですが……その中での名台詞を本堂さん本人に!」

 

「静雅さんって元々演劇の役者だったのですか?」

 

「本来は指定された服装を着て写真を撮られるだけだったんだが……事務所――目上の奴が倍プッシュしてな。気がつくと俳優やらタレントになってた」

 

 妖夢からの疑問に簡単に答える静雅。言っている様子は少し疲れているようにも見える。

 

 二柱も会話に参加し、主題になっている話題について話し始める。

 

「それに確か【流れない涙】は原作は無くオリジナルだったんだろ? その後小説が出てしかも静雅が著者と書かれていた」

 

「CMでも凄い人気だったよね! 発売して1ヶ月で百万部だもん! 本より先にドラマが世間に知れ渡った所為かイメージ崩壊が少なかったおかげだよね! ウチも一冊あるよ!」

 

 そう言いながら諏訪子は帽子の中から一冊の文庫本を取りだし始めた。そんな諏訪子にも含めて静雅はある事実を言う。

 

「その帽子の仕組みを知りたいところだが……シナリオ原案は侠だぞ」

 

『えっ!?』

 

「……あんたって外界では物書きやっていたの?」

 

 静雅の言い分に守矢神社の神々は驚き、隣で侠の腕を抱えている霊夢が侠に問いかけて、彼は答える。

 

「そういうじゃないんだけど……静雅が外界の仕事で『何かフィクション話はないか?』という事で……適当に話を作って静雅経由で伝えてみたんだよ」

 

「あれが適当だったのか!?」

 

「いや、当時採用されるとは思わなかったですし……それで自分が本格的に書いて、先にドラマ化して後に小説として出されたんですよ。名義に関しては静雅の方が都合良かったので著作権そのものを静雅に譲渡したんです」

 

「それってゴーストライターじゃん!?」

 

「それでも静雅から印税はもらいましたけどね」

 

 二柱が驚愕の声をあげるものの、平坦と侠は答えた。侠の言ったことに同調しながら静雅は感謝の言葉を言う。

 

「侠のおかげで仕事がさらに拍車を掛けてもらったしな。足りないぐらいだ」

 

「後でお二人に本にサイン書いて貰ってもいいですか!?」

 

「静雅はともかく、自分は別に良いけど……博麗、さっきから霧雨喋ってないけどどうかしたの?」

 

 早苗の言葉で諏訪子から彼は本とペンを受け取り、腕が不自由ながらもサインしている侠だが、会話に入っていない魔理沙の事を隣に座っている霊夢に問いかけ、彼女が魔理沙に話し掛けたが──

 

「そういえばあんた、会話に参加してない──って魔理沙が4番じゃない。どうして名乗り出なかったのよ?」

 

「いや、その、だぜ……命令が命令だからすぐには名乗れなかったぜ……」

 

「合法的にあなたが静雅に恥ずかしい思いをさせる事が出来るのに?」

 

「それとこれは話は別だぜ!? 静雅が恥ずかしい思いをするのはともかく、何で私も恥ずかしい思いをしなきゃなんないんだ!?」

 

「ある意味公開処刑だからな……」

 

 どうやら自分の番号で命令内容の所為で名乗りにくかったらしい。咲夜の問いかけに恥ずかしがる魔理沙に同情する神奈子。

 

 しかし、仮にも告白する方の静雅は妖夢経由で本とペンを受け取りながら何ともないように言った。

 

「別にオレは恥ずかしくないけどな。同じ演技をまたすれば良い話だし」

 

「あのシーンを完全再現ですか!?」

 

「せっかくだしな。相手の名前を魔理沙に変えて再現する。魔理沙は黙っていてくれるだけで大丈夫だ」

「わ、わかったぜ……」

 

「じゃあ──」

 

 そう言って静雅は瞳を閉じると……数十秒後に目頭に光るものが見え始めた。

 

「(!? 静雅さんの目から涙が!? そんなに容易く出来るものなのですか!?)」

 

 簡単に泣いた静雅に妖夢は驚いた。しかし、そんな彼女を置いて静雅は言い始める。

 

「──オレさぁ……過去にどうこうあった所為で涙を流さない事は知っているよな?」

 

「はっ!? これって演技なのか!? 何で数十秒で泣けるんだよ!?」

 

「魔理沙さん! 今名シーン再現中ですので静かにしてください!」

 

 早苗に指摘され、腑に落ちない様子の魔理沙だったか極力黙ることにした。案の定静雅はまだ語り続ける。

 

「魔理沙はどうしようもない事でしょっちゅう泣いていたが……オレが窮地にたたされた時にバカみたいに泣いて説得したよな。あん時な……オレも魔理沙につられて泣きそうだっただ……はは、オレらしくねぇ、な……お前の泣き癖が本格的に移ったか? 本当迷惑ばっか魔理沙はしてくれたのによ……」

 

 彼は手で涙をぬぐいながら話を続けた。

 

「それでよ……今もオレの為に泣いてくれている。だから……か? もう……お前の前なら……泣いても良いよな? こんな不器用なオレでも……」

 

「な、なぁ? 本当に演技何だよな? どこまで演技なのかわからない──」

 

「ただ──泣くのはお前の前だけだ、魔理沙。怒りも悲しみが含んでも構わない。この先……ずっとオレの隣で泣いてくれ。魔理沙ならオレの弱さをさらけ出せるから」

 

「!? ずっと隣っ!?」

 

 魔理沙の言葉を無視して静雅は続ける。その途中で明らかに告白ともとれる言葉に魔理沙は動揺し始めた。それでも彼は言葉を続けた。

 

「まだオレはガキだから何て言えば伝えれば良いかわからないが……あぁ! 理解が遅いな! オレは魔理沙の事が好きだって言ってんだよ! それぐらいわかれ!」

 

「──はいカット。そこで終了。静雅、演技止めていいよ」

 

 そして……原作者である侠に制止の声を出し、静雅は言うのを止めて改めて目元をぬぐい直した。

 

「(……ずっと魔理沙さんと静雅さんを見ていましたが、演技だと言う事を忘れてました……)」

 

 妖夢の考えはともかく、【演技】を終えた静雅は魔理沙を労るように話しかける。

 

「……久しぶりとはいえ、疲れたな……魔理沙もご苦労さん」

 

「お……おう……」

 

「本堂さん、やっぱり生で見ると全然違いますね! ありがとうございます!」

 

 満足したのか早苗は静雅にお礼を言っている。

 

 その中……知っている側の二柱の呟きが魔理沙の耳元に届いた。

 

「しかし……確かあのシーンの後は──」

 

「ヒロインの唇を奪ってたね、確か」

 

「はぁっ!? それってキ、キスだよな!? あのままいってたら……し、してたのか……?」

 

 本来の先の内容に魔理沙は声を震わせながら疑問を投げつけると、代わりに侠が答えた。

 

「原作者の自分から言わせてもらうとしてたね、うん。でも時間帯は夕日をバックだからドラマでは影が重なるようになればOKだから実際にはしてないはずだよ」

 

「そん通りだな。純潔はちゃんと守られている」

 

「(そ、そうか……あのままいってたら、わ、私は静雅とキスを……)」

 

 静雅も同調。そして魔理沙は次第に頬が赤く染まっていた。

 

 しかし……彼の隣に座っている咲夜は何故か不機嫌そうだ。

 

「(……何か嫌だったわね……あのままいってたとしたら)」

 

「……さっさと次に移らない? ほら早く」

 

 霊夢の言葉で、早苗は全員の分の割り箸を回収した……。

 

 

 

 




 次回でゲームは終わりそうです。

 ではまた。
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