アンケートでリクエストされた【表主人公の義妹】辰上陽花の特別番外編です。三話構成です。
ではどうぞ。
※この話は本編と直接は関係ありませんが、本編の設定を受け継いでいる箇所などがあります。もしもの世界のIFstoryです。本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。
先が果てしなく見える階段。それは幻想郷の冥界の出入り口から続く道中である。その道中で……大根の茎が確認出来る大きめの買い物袋を肩に、腰から下げているのは二本の刀でいる。外見は全体的には緑色の服装で、頭にはリボンがついた黒いカチューシャをしており、隣には白い霊魂。彼女は白玉楼の主の剣術指南役でもある半身半霊の少女──魂魄妖夢である。
「……幽々子様の暴食っぷりは何とかならないでしょうか……?」
愚痴をこぼしながらも彼女は飛翔を続けて帰り道の道中を進む。最近、彼女の小さな悩み事の一つとして、自分の主の大食漢っぷりの事について考えていた。
「(こうして買い出しに行く時間に、侠さんとの鍛錬が出来るという可能性も──いえ、私の行動する時間を早くすれば良いのでしょうか……?)」
そうこう考え事をしながらだったが……白玉楼の門が見えて来た。彼女は門の前に降り立ち、そのまま白玉楼に入ろうとしたのだが──
『うぅ……ここってどこなの……? こんな場所知らないよぉ……』
門の傍に誰かが体育座りをして、顔を俯けて何かを呟いていた。嗚咽が混じっているのか、言葉が途切れ途切れになっている。
妖夢は一瞬侵入者の類いかと考えたが……その線は無くなった。仮に侵入者だとして、塞ぎ込んでいる人物はいないだろう。そして何よりも、白玉楼一帯の地理を知らないという事を呟いている。少なくとも妖夢は目の前いる──少女の身なりをしている人物は悪人には考えられなかった。
「あの……白玉楼に何か御用ですか?」
妖夢はその少女に話しかけた。すると少女は妖夢の声に気づき、顔をあげて彼女の存在を確認すると──安堵したかのように、その少女は泣いた後を消すかのように目元を少しこすった後に妖夢の言葉に答える。
「良かった……! 人がようやく来てくれた……!」
「あの……もしかして外来人ですか? その身なりなどから判断して……」
妖夢は目の前にいる少女の外見を確認する。その少女は少々妖夢より身長があり、チャック式の長めの黒いベスト。両肩からは白いワイシャツの長袖。斜めの赤い線が交差したミニスカート。そのスカートのしたは黒いパンツストッキング。髪は長髪で、後ろ髪を体の左前にまとめてあり、その髪の束を星模様の入った玉のゴムで束ねていた。
少なくとも、幻想郷視点から見るならば……少女の服装は個性的だ。そして少女が呟いた情報と結びつけ、外来人なのではと考えた。
外来人と言われた少女は真面目な顔で答える。
「ゑ? あたしは日本人だよ?」
「いえ、そういうのではなく……少し信じられないかもしれませんが、お話をさせていただきます──」
妖夢はざっと、この幻想郷について説明した……。
半人前説明中……
「──つまり、あなたは何かしらの原因でこの幻想郷に迷い込んでしまったのです」
「えっと……話をまとめると、ファンタジーな世界。お兄ちゃんに会えない。こういう二点?」
「……最後のはともかく、そのような事でいいと思います」
妖夢は説明を終えると、少女は難しそうな顔を浮かべている。そして少女は妖夢に確認するように問いかけた。
「結界の不安定の箇所で行動して迷い込むのスタンダードって話だけど……」
「は、はい。多くのパターンとしてはそうです」
「……あたしはお兄ちゃんのベッドでお昼寝してて、目が覚めたらここにいたんだけど……そういうパターンもあるの?」
「…………そのような可能性を可能に出来る人物はいますね…………」
「いるんだ!?」
彼女の幻想入りする前の行動は迷い込む理由としてはおかしい。だが……それでも可能に出来る人物はいる。
八雲紫。【神隠しの主犯】でもあり、妖夢の主の友人。
「(……何故、紫様はこの人を幻想郷に連れて来たのでしょうか……?)」
色々と考えてみたが。答えが出ない。このままでは何も状況は変わらないので、妖夢は少女に行動を促す。
「とりあえず、白玉楼にご案内します。幽々子様にお伺いすれば、何かはわかるかもしれませんから」
「あ、うん。わかった」
少女は妖夢の先導を元に、白玉楼へと入っていった……。
『お帰り、妖夢。それでその女の子……紫が言っていた通りね♪』
現在、妖夢と少女は白玉楼の居間にいる。妖夢と──その少女を見るなり、妖夢の正面にいる人物は機嫌が良さそうだ。
機嫌を良さそうにしている彼女が魂魄妖夢の主である──西行寺幽々子。
少なくとも妖夢は少女の情報を元に、誰が少女を幻想郷に連れて来たのか理解した。その事について妖夢は尋ねようとしたが──
「あの……幽々子様? やはりこのような事態は──」
「その話は後々♪ まずはこの子とお話をするわよ」
「……はい……」
幽々子は妖夢を手招きし、自分の隣に座らせる。少女も幽々子に行動を促され、彼女は幽々子の正面に座らせた。
そして白玉楼の主、幽々子は少女に話を切り出す。
「白玉楼へようこそ、お嬢さん。私はこの白玉楼の主、西行寺幽々子よ。隣にいるのは魂魄妖夢。それで……あなたの名前を聞かせて貰えるかしら?」
「あたし? あたしの名前は──」
至って普通の自己紹介だと思っていた妖夢だが──
「──
何故か、彼女は聞き覚えのある名前だった。
「(──!? この名前は確か!?)」
聞き覚えのある名前。妖夢はこの人物は誰か理解した。過去に白玉楼に滞在していた人物。浴場で聞いた事がある名前。
今では幻想郷の創造神の子孫である──辰上侠の義理の妹だという事を理解した。
すぐに妖夢は反応し、陽花に話しかけようとしたのだが……幽々子によって遮られた。彼女は妖夢の耳元に口元を近づけて小声で言う。
「(妖夢、この子には侠関連の情報は教えないでちょうだい。教えるタイミングは後々に教えるわ)」
「(……? それは何故ですか? 侠さんの義理の妹君である陽花さんに教えた方が良いと思うのですが?)」
「(サプライズよサプライズ♪ 彼女はまず侠が幻想郷にいる事は知らないから、その対面で初めて知らせた方が良いじゃない♪)」
「(は、はぁ……?)」
「(あ、それと陽花がいる事を侠と静雅にも教えない事。良い?)」
「あの~……どこか、あたしの名前でおかしいところでもあったんですか?」
目の前での露骨な密談で陽花は疑問に思ったのだろう。彼女が問いかけると二人は会話を止め、改めて幽々子が彼女の問いに答えた。
「ごめんなさいね。あなたの苗字が偶然にも幻想郷を創ったといわれる【龍神】とそっくりと思ったのよ。漢字を変換したらそうなるじゃない?」
「あ、そうなんですよね。あたしはこの苗字は気に入ってはいるんですけど……親類の人達は『辰上家は竜の子孫だーっ!!』って言っているんですよ。バカバカしい話だと思いません? 嘘か本当かもわからない伝えを本気にしているんですよ?」
「(……凄い言いたい……!)」
目の前いる陽花は実は幻想郷の創造神の血が流れている事を知らない。妖夢はその事実を教えたかったが、幽々子によって口止めされている。
愚痴るような言い方だった陽花だったが……悩むように言う。
「でも……どうしてかお兄ちゃんはその親類の人達に嫌われているの。罵倒とか人を傷つける事をいっぱいしたの。お兄ちゃん……何も悪い事していないのに……」
「……何時か、その人達は報いを受けると私は思います。陽花さんのお義兄さんは……どう思っていらっしゃるのですか?」
妖夢としたら、彼の過去が気になったが……この場で聞くべき事では無い。そう思った彼女は空気を換えるように、別の話を口にした。
すると彼女は──先程の表情とは打って変わって、自慢気に侠の事を話し始めた。
「お兄ちゃん? 偶にぶっきらぼうに扱われる事もあるけど――そりゃやっぱり優しいし、カッコいいし、頭良いし、家事も出来るし、異性としても良いし……数え切れないぐらいお兄ちゃんは魅力的なんだよ!」
さらっと彼女は流れるように侠の事を『異性として』と言ったが……幽々子は笑いをこらえながら、妖夢はその事にどう対応したらいいか悩んでいた。事情を知らない人物が話を聞いていたら兄妹でその事はおかしいと指摘していたが──事情で陽花がそのような感情を抱いても実際おかしくないからだ。
少なくとも、彼の事情を知らない事を装い、妖夢はその事に触れた。
「……【兄妹】で、異性としては倫理的にいけない事だと思いますが……」
「……お兄ちゃん、実は義理のお兄ちゃんだったりしないかな? そうすればお兄ちゃんの合意で結婚とか色々出来るのにー……」
「(し……知らないんですよね? 侠さんとは義理である事を……?)」
願望で呟く彼女の言葉は実は合っている。その事に妖夢は偶然といえど疑問に思った。
そしてようやく笑いをこらえ終わった幽々子は妖夢に行動を促す。
「じゃ、妖夢。彼女に白玉楼を案内してちょうだい。少なくとも暫くの間はこの子を預かるように紫から頼まれているからね」
「……あれ!? あたしここに居て良いの!? あたし、見ず知らずの他人だよ!?」
幽々子の言葉に驚きを隠せない陽花。その事に笑みを浮かべながら言葉を返す。
「良いのよ。あなたはきっと面白い行動をしてくれると思っているわ。近日中に絶対、ね♪」
「……何を期待しているかわからないけど──幽々子さん、大好きーっ!」
陽花は喜びを表現するかのように、幽々子に近づいて彼女の胸に顔をうずめた。一見すれば失礼な事だ。妖夢はその事を注意したかったが……見送った。仮にだが、陽花はこの幻想郷に知り合いはいないと思っている。その中での幽々子の(意図された)申し出に嬉しかったのだろう。
しかし、このままにしておくわけにもいかない。妖夢は陽花に行動を促す。
「陽花さん。では白玉楼を案内しますのでついてきてください」
「んー……もうちょっと幽々子さんのおっぱい枕堪能したいけど……じゃあ妖夢さんについてくー」
名残惜しいようだが幽々子から離れ、陽花は妖夢についていった……。
妖夢が陽花を白玉楼の概要、部屋を教え。妖夢は庭で剣を振るい己を高めていた。陽花は一通り案内してもらうと「じゃあちょっと白玉楼の中を自分で探索してくるね!」と告げては別行動をとっている。いつかのように主の西行寺幽々子は隣に積まれている大量の饅頭を次々と口に運んでいるが。
そこに……幽々子の近くの襖が開き、開けた人物──辰上陽花は妖夢の姿を見て感心するように言う。
「妖夢さんって腰にあった剣で予想がついたけど……剣術の使い手なんだー」
「あら? 陽花は何か得意なのがあるのかしら?」
陽花の言葉に幽々子は反応し、彼女に質問を。
「あたしは武器を使わない方が得意だなー……。拳と足が手っ取り早いもん」
「ふーん……お兄さんは何か得意だったりするの?」
幽々子は侠を知らない
陽花は幽々子の質問に悩むように言う。
「うーん……お兄ちゃんは代表的に言うなら剣だけど……オールマイティーなんだよね」
「きょ──お兄さんはいろんな武器を扱えるという事ですか?」
言葉が詰まった事を言い直し、改めて問う妖夢に彼女は答える。
「知らない武器でも3分ぐらいで使いこなしちゃうの。それで見ても同様にすぐに扱えて。多分プロ以上に。お兄ちゃんは『見れば大体の使い方を理解出来る』って言っているんだけど……そんな理屈で理解出来るのはお兄ちゃんだけだと思うんだよねー……。しずまっちゃんの槍術もマスターしてるよ絶対──あ、ちなみにしずまっちゃんっていうのは、あたしの幼馴染み兼お兄ちゃんの親友なの」
「(……侠さんは色々な武器を扱えるのですか……。そして友人といえば静雅さんですね……)」
妖夢は侠の新しい情報を覚えながら整理を。
そして――幽々子は二人にある提案をする。
「ねぇ、せっかくだし──二人で弾幕ごっこをしてみたら?」
「……幽々子様っ!? 冗談ですよね!?」
「だんまくごっこ? 何それ美味しいの?」
幽々子の言った事に驚きを隠せない妖夢。反対に陽花は的外れな事を言って呆然としているが。
発案者の幽々子は妖夢だけを手招きし、相談するような感じで妖夢に説明する。
「(一応、考えはあっての事なのよ? 幻想郷にいる以上、もしもの為にね)」
「(確かにそれには賛同しますが……陽花さんは弾幕を打てるのかわからないんですよ?)」
「(あら妖夢? 忘れがちだけど──彼女も侠と同じ龍神の血が流れているのよ? 侠みたいに先祖返りじゃなくとも、力の源はあるはず。だったら使い方を経験にして教えてあげないとね)」
「(成る程……万が一、陽花さんの身に何かあったら侠さんが心配しますよね)」
「(そうそう。もし妖夢の義妹さんに何かあったら侠に怒られるからね~♪)」
「ゆ、幽々子様ぁ!?」
「ゑっ!? 妖夢さんどうしたの!?」
急にヒソヒソ話をしている人物が声を荒げたら驚くだろう。声を荒げた妖夢に陽花は気遣いの言葉を掛けるが……陽花は顔を赤らめながらも対応しようとする。
「い、いえっ。気にしないでくださいっ」
「そういうなら気にしないでおくけど……結局、だんまくごっこって何? 美味しい食べ物の作り方?」
「食事関連の事ではなく……とりあえず、説明しますね……」
少女説明中……
「──以上、弾幕ごっこの概要です」
「えっと……つまり基本的には幻想郷の代表的なスポーツで良いのかな?」
「スポーツという概念とは若干違いますと思いますが……まぁ、幻想郷の代表的なものでは間違いないですね」
陽花は妖夢の弾幕ごっこの説明を聞いて首を傾げながらも、大雑把な事を理解する事が出来た。
……途中、陽花は話を聞いている時に同じ説明を求めて妖夢は苦笑いをしていたが。どうやら彼女は頭の中で情報をまとめるのが苦手らしい。
そして妖夢は次に弾幕についての説明に移った。
「次に多くの攻撃手段である、弾幕について説明させていただきますが……まずは手軽な弾幕の出し方を説明します」
妖夢は片手に青白い弾幕を出し、驚いている陽花をよそに説明を続ける。
「すごーい!? 操○弾!? どうやって出すの!?」
「え、えっと……まずは体にある気みたいものを手に集中させるんです。まぁ、体の気力ですね。それで頭の中で……球の方が良いですね。球のイメージをしながら弾幕を作るんです。他の形の弾幕も作れるには作れるんですが……陽花さんは初めてですので球の弾幕がよろしいかと。以上の事を踏まえて弾幕が出来ると思いますが──」
「なるほど──訳がわからないよ」
「……えっ。どこか不備なところがありましたか?」
妖夢自身はこれでも噛み砕いて説明したのだが……説明を聞いた陽花は目を丸くしながらわからないと答えた。
……何故か陽花の頭ではプスプスと黒い煙が見えるのは気のせいだろうか?
二人の様子を見てか幽々子は妖夢に注意の言葉を。
「妖夢、あなたは無駄な説明が多いわ。妖夢の説明の仕方は人を選ぶけど……少なくとも、陽花には向いてないわよ」
「え……そうなのですか?」
「ん~……じゃあ、私が代わりに説明するわ」
口に運んだ饅頭を胃袋に入れたところで幽々子は縁側から立ち上がり、彼女が弾幕の説明を。
「まずは弾幕を作るとしたら円球状。これは良いわね?」
「う、うん。球だね」
「それで手で弾幕を作るんだけど、イメージとしては──」
会話を挟んで確認を取り、幽々子は説明を──
「──シュゴー、ギュー……ボンッ! これで出来ると思うわ」
「出来るんですか幽々子様!?」
まさかの擬音語の説明に驚きを隠せない妖夢。しかし、説明を聞いた陽花はというとすぐに行動に移して──
「シュゴー、ギュー……ボンッ!」
口にだしながら陽花は弾幕を作ろうとする。そして……彼女の手元には薄い桃色の球状の弾幕が形成された。
「やった! あたしでも出来たっ!」
「出来たのですかっ!?」
まさかの成功。擬音語での弾幕が作れた事に妖夢は再び驚愕。
弾幕生成に成功して喜んでいる陽花をよそに、幽々子は妖夢に話し掛ける。
「あの子は多分理屈で理解するより、体で覚えるタイプなのよ。長い説明よりも単純な説明の方が理解しやすい。幻想郷や弾幕ごっこの説明の時……途中で何回も確認していたでしょ? それに説明をし終わった後にもね。間違いないように再確認する事はとても重要な事よ」
幽々子は一度言葉を区切り、弾幕を空に放って遊んでいる陽花を見ながら言葉を続ける。
「何でも見抜けとは言わないけど……普段の仕草や行動を見てどんな人格、性格か予想しないしてわからないとダメよ」
「な、成る程……」
幽々子の指摘で納得し始める妖夢。ちょうど会話を終えた時、弾幕を試しうちをしていた陽花が戻って来て感想を。
「弾幕って難しい……特に狙いが」
「無理はないわ。あなたは弾幕を打ち始めたばかりだし」
「あの……陽花さん。わかりにくい説明ですみませんでした……」
幽々子のフォローの後に、型に合わない説明をしていた事に妖夢は謝りの言葉を。彼女の謝りに慌てるように手を素早く左右に動かしながら陽花は謝罪の言葉を言う。
「イヤイヤッ!? それはあたしの頭が悪い所為だから妖夢さんは悪くないよ!? あたしってお兄ちゃんと比べると頭の良さが天地の差だから! あたし以外の人だったら理解出来たから!」
お互いに謝罪の言葉を掛け続ける二人。ヘタしたらこのまま平行線になると思った幽々子は話を止めた。
「はいはい、お互いに謝るのはそこまで。後はスペルカードを一枚作るとして……陽花、私と一緒に考案しましょうか。流石にこれは誰かのスペルカードを見せた後の方が作りやすいでしょうし……妖夢は待っていてちょうだい。妖夢は弾幕ごっこのお楽しみでね♪」
「スペルカード、か……頑張ってなるべく早く作るから、妖夢さんはちょっと待っててね!」
「はい。それで……お互いに良い勝負をしましょう」
「妖夢、流石にあなたは二本の剣は使わないようにね。竹光か竹刀で代用してちょうだい」
「それはもちろんです。流石に弾幕ごっこ初心者に使いません(というよりは侠さんの為ですからね……)」
妖夢は違う得物を取りに行っている間、幽々子は陽花にスペルカードの作成の手伝いをしていた……。
「──じゃあ、二人共……準備は良いわね?」
「はい。大丈夫です」
「こっちも準備万端だよー!」
白玉楼の縁側から少し離れた場所で、幽々子の問いかけに返事をする妖夢と陽花。妖夢は一本の竹光をしっかり持って構え、きちんと傍には彼女の半霊もいる。陽花は拳を作って腰を少し落としながら構える。
最後に妖夢は確かめるように陽花に話し掛けた。
「陽花さん……本当に武器を使わなくて大丈夫ですか?」
「むしろ武器持った方が、あたし弱くなるよ? こーゆーのは自分の身体を信じるのが一番だもん!」
妖夢の問いかけに陽花は答え、武器を持たない事を示す。最後に二人の審判を務める幽々子が簡略なルールを。
「勝敗はその時の状況も含めて私が判断するわ。途中で降参を申し出て良し。スペルカードはお互いに一枚ね。それじゃ──始めっ」
幽々子の宣言の開始後、いち早く行動したのは陽花。彼女は妖夢に接近しては掛け声と共に回し蹴りを放つ。
「やっ!」
「!? くっ──」
妖夢は反応し、上半身を反らして回避。今度は彼女が竹光での斬撃を仕掛けるが……陽花はバックステップ。妖夢の攻撃を回避した。
「……やっぱり、上手くいかないよね~……。ま、気にしないけど!」
「……それはこちらとしても同じです。遠慮はいりませんね!」
「もちろん!」
そして、二人の攻防が始まる。陽花は拳や蹴りなどを放ち。妖夢は剣術をメインに時折体で対応したり。二人は接戦していた。
その中……妖夢は陽花のパターンを把握している時、ある事に気がつく。
「(──! 手合わせしている中での陽花さんの動きは……侠さんと動きが似ている! 最初の牽制は別として、陽花さんは現在あまり行動しないで私の行動を見ているような気がします。おそらく、私のパターンを把握出来たらカウンターの要領で対処してくるはず……!)」
過去に妖夢と侠が和解し、改めて教えてもらった戦術。相手の動きを把握したら隙を狙って攻撃を仕掛ける。最初は守りに入って後に攻めに切り替える戦術。曲がりなりにも陽花は侠と義理の兄妹だ。一緒に生活をしていた仲で似通っている箇所はあるだろう。
「(ならば……パターンを変えるまで!)」
妖夢は陽花に対応しながら、自身の半霊に一度視線を向けて、指先を陽花に合わせて言う。
「半霊!」
彼女の声に反応するように、半霊は陽花へ体当たりするかのように急接近!
「人魂が飛んできた!?」
陽花はすかさず半霊に距離をとって回避。しかし、半霊は彼女の近くに漂い──半霊を中心として、青白い弾幕を放ち始めた!
「痛っ!?」
半霊からの弾幕は予想出来なかったのだろう。彼女は数発被弾した。
さらに陽花は半霊と距離をとる為、さらに後退。妖夢の攻撃手段に彼女は疑問を投げつける。
「それって攻撃出来たの!?」
「私の種族は半身半霊ですからね。この半霊にもきちんと意思はあります。私の事を知らなかった陽花さんには多少悪い気もしますが──」
「そっか! じゃあ仕方ないね!」
簡単に割り切って、まるで気にしていないような発言に妖夢はずっこけそうになった。妖夢は体制を整えながら思う。
「(……侠さんならば、さらに半霊の説明を求めるような気がしますが……幽々子様の仰る通り、あまり物事を考えない方なんでしょうか……?)」
改めて彼女の事を考えている中で、陽花は次の行動に移し始める。
「む~……だったらこっちも弾幕を放つもんね!」
陽花は両手を重ねて、妖夢へと照準を合わせる。彼女の手元には淡い桃色の弾幕が集まっていき──拳より大きめの弾幕が放たれた!
「! ですが……簡単に避けられます!」
攻撃方法が単調過ぎた所為か、難なく半歩動いて回避。簡単に避けられたのが悔しいようで、陽花は唸りながら言う。
「う~……あたしはやっぱり遠距離攻撃は苦手だな~……」
「……無理はありませんよ。本日でようやく出せ、まともに修練していませんから。弾幕を繰り出す事が出来た事は上出来だと思います」
「むむむ。その余裕な態度……こうなったらスペルカード使っちゃうもんっ!」
陽花は妖夢に宣言しながら、ポケットから一枚の紙──スペルカードを取り出して構えた。当然その言葉を聞いた妖夢は身を構え直した。
そして──辰上陽花は宣言。
「弾符【エナジーオーラ】!」
彼女の宣言後……淡い桃色の弾幕が霧状となって陽花を包み込む。妖夢が視界できちんと確認出来た頃には……陽花の腕と脚には彼女の弾幕が纏った。
今までで見たことが無いスペルカードのタイプに、妖夢は驚くばかり。
「!? 弾幕を体の部位に纏う!?」
「やっぱり弾幕を放つより、こーゆーのが好みかも! じゃあ──行くよっ」
陽花は自信満々に言った後……すぐさま妖夢に急接近。弾幕を纏った拳で彼女に攻撃を繰り出した。
妖夢は空いていた片手で攻撃を受け流したのだが──陽花の拳に触れてわかった事がある。
「(っ!? 攻撃が……重いっ!?」
彼女の攻撃を体感したことで、妖夢はこのスペルカードの考察を。
「(宣言する前と比べて格段に攻撃力が上昇している……おそらく、このスペルカードは肉体活性を促すもの! 近距離戦を得意とする陽花さんにはうってつけのスペルカードですね……! ですが……こちらが遠距離攻撃に変えれば意味はなくなる──)」
彼女の考察の中で、対抗策を練り上げる。そして距離をとろうと妖夢は陽花から離れ始めたのだが──
「やっ!!」
陽花は掛け声と共に、空中を殴る動作をしたのだが──彼女が拳に纏っていた弾幕が投げられたかのようなの速さで妖夢に襲いかかった!
「なっ――」
彼女の殴るという動作で弾幕が繰り出されると思っていなかったのか、妖夢は回避と防御がまともに出来ず被弾。
「やった! 今度は当てられたよ!」
「まさか……拳を放つ動きで弾幕が繰り出されるとは……。加え、重いうえに速い……!」
「やっぱりあたしって構えて狙って飛ばすよりも、こんな風に動きと連動させた方が合うような気がするんだよね~……」
しみじみとしながら陽花は頷いている。妖夢なりに彼女のスペルカードの考察をしていたが、まだ未知数。その事に警戒したうえで──決心する。
「(出来ればスペルカードはあまり使いたくはなかったですが……仕方ない! これ以上好きにはさせませんっ!」
彼女もまた懐からスペルカードを取り出し──スペルカードを宣言!
「剣伎【桜花閃々】!」
妖夢は竹光を構え──素早く陽花の元を走り去り、止まる。このスペルカードの攻撃を知らない人物にとっては、ただ走り去り抜けたとぐらいしか感じないだろう。陽花もその一人だ。
「えっ? えっ? 走っただけ? 一体何が──」
「油断禁物、ですよ!」
妖夢が彼女に警告した時──彼女が走り抜けた空間から桜が咲き乱れるような弾幕が散らばる!
「っ!? ヤバいっ!」
完全に油断していた様子だったが……彼女の手と脚に纏っていた弾幕が薄く広がり、体全体を包み込む。妖夢はその光景を見て防御にも応用が利くというスペルカードと推測した。
妖夢のスペルカードによる攻撃が終わった頃には、陽花の纏っていた弾幕は消えていた。どうやらお互いににスペルブレイク。自分の纏っていた弾幕が消えたのを把握した陽花は悔しそうに言う。
「あたしのスペルカードが……!?」
「陽花さんのスペルカードは幻想郷でも見た事が無い効果でしたが……これで振り出しです。後はお互いにスペルカード無しの勝負っ!」
妖夢は態勢を立て直し、陽花の行動を観察していたのだが……当本人はいうと──
「うーん──妖夢さん、あたしは降参するよ」
「…………はい?」
陽花の降伏宣言。彼女の言葉を理解するのが遅かったのか、数秒遅れ言葉を発する妖夢。
少し申しわけなさそうにしながらも陽花は事情を説明する。
「いや~……流石に弾幕を交えた勝負だと多分勝てないと思うんだよね。あたしって弾幕を放つ事苦手みたいだし、間違いなく妖夢さんが有利。唯一得意な近距離戦でも……その妖夢さんのお化け(?)でうかつに近づけないし。総合的に考えても妖夢さんが勝つと思うんだよね。スペルカードが継続していたら別だったんだけど……」
悩むようにしながら言葉を続け、謝罪を含めて彼女に言う。
「もしかしたら不完全燃焼だったのならゴメン。でも……妖夢さんとの弾幕ごっこ、楽しかったよ」
「……いえ。時には身を引く事は大事な事です。こちらとしても……良い経験となりました。機会があれば、またいずれ」
陽花の言葉に相槌を打ちながら、彼女は手を陽花の前に出す。その意味を理解した彼女もまた手を差し出し──握手をした。
そして、遠くから弾幕ごっこを見守っていた幽々子は彼女達の近くに駆け寄り、労りの言葉を。
「二人とも、お疲れ様。今回は妖夢の勝ちだったけど……陽花はどうだった?」
「難しいけど……面白かった!」
「そう。それなら何よりだわ。それで妖夢は──」
「はい……何でしょうか?」
幽々子の言葉に妖夢は耳を傾け、言葉を待つ。そして、彼女は真面目な顔で言った。
「──晩御飯を作って」
「このタイミングで言うのですか!?」
まさかの場違いの言葉に妖夢は驚きを隠せなかった。ちなみにこの言葉を聞いた陽花は「あたしもそういえばおなかが空いたな~……」と言って同調したりしている。
先ほどの真面目な幽々子の表情と打って変わって、不満そうに言葉を並べ始めた。
「だって~! 弾幕ごっこを見ながらお菓子食べてたら無くなってたのよ~。それ以降、空腹を我慢して見てたの~! だから今すぐ作って~!」
「は、はぁ……わかりました……」
腑に落ちない様子の妖夢だったが、仕方ないと割り切って竹光を元の場所にまずは戻そうとする。その中、陽花は妖夢に声をかけた。
「あ、妖夢さん。道具を戻したらあたしも手伝うよ」
「え……お客人でもある陽花さんにしてもらうのは──」
「そーゆーのは無し! 流石にお世話されっぱなしは悪いから! お兄ちゃんからの教えで『信用できる人から優しくしてもらったら、それ相応で返す』って言われてるし! だから一緒にしよ! まずは道具をさっさと戻していこうっ」
「よ、陽花さん──」
陽花は妖夢の手を引っ張るようにし、彼女を先導にして行動を始めた……。
「……紫から聞いていたけど、あの子は侠と違って裏表の無い性格ね……。ま、それが一番だけど」
道具を戻しては妖夢と陽花は食事の準備へと行動を移す。その際、妖夢は改めて料理の腕はどうなのか問いかけたところ──
『お兄ちゃんに美味しいって言って貰えるぐらい! ゆくゆくはお嫁さんにしてくれないかなぁ……えへへ♪』
──妖夢は苦笑いをしながらも、合った言葉を返しながらも二人で作業を分担しながらも進めた。
夕食の時間となり、卓袱台に料理が並ぶ。陽花の作った料理は二人に好評をもらったが……最後の総菜をめぐって行儀の悪い箸の戦いを傍観者の妖夢は苦笑いしていたり。
料理を食べ終わっては二人は食器を洗い流し、しばらく自由に各々行動していたのだが……妖夢は幽々子からある事を促される。
『妖夢、私はいいから先にお風呂に入っていきなさいな』
『え……? 幽々子様、それならば私よりも陽花さんに勧めてきてはどうですか?』
『陽花なら妖夢の次に入るって言っていたわ。私は最後に入っていくから構わないわ』
『は、はい……わかりました』
一瞬、妖夢はとある恥ずかしい過去を思い出したが……すぐに頭の片隅に置いた。現在彼女はゆっくり湯船に浸かっては今日の出来事を振り返っている。
「(……紫様はどういうつもりで、侠さんの義妹である陽花さんを連れてきたのでしょうか……? 彼女を幻想郷に連れてくると何かの意味が……?)」
彼女が疑問を持ち続けている事。辰上陽花は何のために連れてこられたのか。
「(何時、侠さん達に伝えるのでしょうか……?)」
様々な疑問が芽生えてくるが、考えてもいるだけでは答えが出てこない。そういう事は……わかってはいたつもりだ。
考えを一先ずやめ、別の事を考えようとした妖夢だが──それは遮られる事になる。
『突撃! 乙女達の裸の付き合いーっ!』
「みょんっ!?」
勢いよく扉が開けられ、突然の来訪者の声も含め奇妙な声を出して驚く妖夢。
彼女はその声の主を確かめると──湯気で多少体が隠れているものの、髪の毛を下ろした辰上陽花だという事を理解する事が出来た。
例え同性でも浴場での対応には困るだろう。加え、今日で初めて会った人物でもある。焦りを含めた声で妖夢は言葉に詰まりながらも尋ねた。
「よ、陽花さん!? いくら同性でも、はしたないですよ!?」
「逆に考えてみて妖夢さん。『同性だからこそ、はしたなく出来る』と」
「な、成る程──じゃないですよ!? 同性でも慎みは持つべきですっ!」
「まぁまぁ、細かい事は置いておくとして。せっかくなんだから親睦を深めようよ!」
陽花は体に数回掛け湯をした後、妖夢の隣に座るように入浴。
妖夢としたらまだ慎み云々の事で言いたい事がまだあったが……陽花のある体のある箇所に視線が移る。
「(……服を着ていた時とは違って──胸が予想よりも大きいっ!?)」
彼女が見た、女性の体系の特徴を表している──胸。妖夢は無意識の内に意識をその場所に移していた。
おそらくは彼女は着痩せするタイプだ。妖夢の中では「少し大きいぐらい」と勝手な推測をしていたのだが、現実に裏切られた。弾幕ごっこでは友情が芽生えていた彼女だったが……身長なら陽花が少し高いぐらいの差なのだが、目の前の明らかな胸囲の格差社会の波に飲み込まれて呆然としていた。
例えるならば、妖夢はほんのりと少し膨らんでいるまな板。陽花はグレープフルーツだろうか。そのくらいの格差があった。
妖夢のあからさまな視線で気づいたのだろう。陽花は普通に話すように問いかける。
「? どしたの妖夢さん? あたしのおっぱいがどうかしたの?」
「あのっ、いえ……失礼な事を言いますが、私の予想より、胸が大きいなと思いまして……」
「……はは~ん? もしかして妖夢さんはそういう事を気にするタイプなんだ~? 現状の自分の成長に悩んでいると♪」
「うっ……」
面白い物を見つけたのかのように、察した言葉で言うと妖夢は図星。気まずそうな妖夢をよそに陽花はとある事柄について切り出した。
「そういえば、良く胸を大きくする方法で『胸を揉む』ってあるけど……あれって一時的だけで、継続的な効果は望めないんだって」
「……え? そうなのですか?」
「なんか揉まれている時は、そーゆーホルモン関係か何かが分泌されて一時的に若干大きくなるんだって。揉むのを止めると分泌されるのがなくなって元に戻る……って、テレビでやってた気がする」
「そ、そうなのですか……」
若干、信じていた事が裏切られたような気分の妖夢だった。
だが……説明し終えた陽花の手はわきわき動かしているが。無論、妖夢はその事に問いかけたが──途中で察しがついてしまった。
「よ……陽花さん? その手の動きは一体──! まさか──」
「ふっふっふ~。ちっぱいの事を気にしている妖夢さんに──例え一時的でも大きくなってもらおうと思ってね♪」
怪しく目を光らせながら、手を動かして近づいていく陽花。そのような彼女に身の危険を感じて離れていく妖夢。
「よ、陽花さん? 一先ず落ち着きましょう?」
「揉まぬなら 揉んでみせよう ちっぱいを」
「何故俳句の詩っぽく言って迫って来るのですかっ!? わ、私はこれで失礼しま──」
すかさず距離をとり、背後は見せずに妖夢は浴場の扉に手をかけて開けたのだが──彼女の背中に質量のある物体があたり、何者かに羽交い締めにされてしまっていた。
「っ!? これは一体──」
『つーかまーえた♪』
妖夢を羽交い締めにしている人物は──彼女の主でもある西行寺幽々子だった。彼女は陽花とは違う意味を笑みを浮かべている。
当然、妖夢は幽々子の行動に焦りながらも問いかけた。
「ゆ、幽々子様!? これは一体──」
「陽花から聞かなかった? 親睦を深める云々の事」
「確かに聞きましたが……ん? もしやそれを考えたのは──」
「もちろん私よ~♪ 陽花にそう話した時、彼女は結構乗り気だったからねだから妖夢に先にお風呂に入らせては計画を練っていたの♪」
笑顔で語る幽々子。彼女の言葉に陽花も同調する。
「肉体的接触のコミュニケーションが手っ取り早く仲良くなれると思ったからね! それじゃあ妖夢さん──あたし達に身を委ねて♪」
幽々子が妖夢を動けなくし、近づいていく陽花。妖夢は涙目で抵抗をしようとするが──
「幽々子様? 陽花さん? お願いしますから止めてくださいませんか……?」
「……どうしましょうか陽花?」
「うーん……確かに妖夢さんは嫌がってるね……」
「! それならば止めてくださるんですねっ」
「「──だが断る」」
「先ほどのやりとりはどこにいったんですか!?」
妖夢を上げては落とした二人の加害者組。しかし、その二人は至って普通に、呼吸をするかのように言う。
「「それじゃあ面白くない(じゃない)」」
「息が合い過ぎですよお二方っ!? 私が先に入浴している間何があったのですか!?」
「それはともかく……陽花、ゴー!」
「わかりましたっ」
「や、止め──」
……彼女の言葉は届かなかった。
その夜……冥界の某所で、一人の少女の艶のある声が響いたという……。
大雑把な彼女の性格などは理解出来たかと。最後の文章は……この作品は全年齢向けだからそれ以上は書けない。すまぬ。
※誤字、表現の誤りがあったので修正しました。内容には変更はないのであしからず。
ではまた。