三人称視点。
ではどうぞ。
妖夢、陽花、静雅の三人は紅魔館から飛翔し……博麗神社へと続く石段へとついた。確認を取るようにして妖夢は陽花に話し掛ける。
「陽花さん。この先が博麗神社なのでもうすぐですよ」
「わかった! ……でも、白玉楼の階段もそうだけど、飛翔が使えなかったら辛いよね。ねぇ、しずまっちゃん?」
「だろうな。それじゃあさっさと向かうか」
再び三人は飛翔し、石段より先への博麗神社へと向かう。
本来ならば、静雅の【事象を操る程度の能力】で本来早く着く事が出来るのだが、彼はあえて説明していない。さらに現在の種族の事柄についても。別に説明しても構わないのだが、彼は同時に説明しなくても良いと考えている。もし彼女が静雅に違和感を感じ問いかけたのなら別だが、気にしていなかったらそれで良い。
飛翔しては目的地に着き……博麗神社に着いた。その神社の縁側には二人の少女がいる。その二人を色で表現するなら、紅白と白黒。順に博麗霊夢、霧雨魔理沙が談笑していた。
三人の存在に気づいた二人。彼女達でも見知らぬ人物がいたら気になるだろう。
「何か珍しい組み合わせの奴が来たけど……真ん中の奴、誰?」
「身なりから判断するなら幻想郷住民じゃないのは確かだな。外来人とみた」
「はい。陽花さんはその通り外来人です」
二人の言葉に妖夢が肯定する。外来人と確認したからか、霊夢は陽花に自分の紹介をしながら行動を促した。
「私は巫女の博麗霊夢よ。違う場所に色違いの巫女がいるけど、私が幻想郷の代表的な巫女だから。それと素敵な賽銭箱はこっちよ」
「初対面でも関係なく言うのか……」
「静雅、霊夢はそんなもんだぞ? ……あ、ちなみに私は霧雨魔理沙だ。魔法使いやってるぜ」
霊夢は賽銭箱を示しながら言う。その様子に呆れている様子の静雅だが、魔理沙は説明を交えながら自身の自己紹介をする。
彼の態度を見てか霊夢は静雅に不満そうに言葉を。
「一応あんたも外来人なんだから賽銭していきなさいよ。とある外来人は一万も賽銭したというのに」
「はっはっは。今はリアルに金を携帯してないからまた今度な」
笑いながら静雅は彼女の言葉を受け流す。その中、陽花は財布を取り出しているが。
「じゃあ何円賽銭しようかな……。やっぱり、賽銭するならこの硬貨かな?」
彼女は一枚の硬貨──五百円玉を取り出し、賽銭箱に近づいて賽銭した。霊夢としてもその金額は予想外だったが、どこか嬉しそうにしながら彼女に話しかける。
「あら? てっきり定番の五円玉を賽銭するかと思ったのに……気前が良いのね、あんた」
「別にそんなんじゃないよ。よく五円は【御縁】に掛けられるでしょ? それだったらまとめて、百回分を御縁が欲しいな~って」
「あぁ、なるほど。確かに納得できますが……逆に欲張り過ぎません?」
妖夢は彼女の理由に納得はしたが、どこか引っかかるのだろう。
「まあまあ、良いじゃない。気持ちの問題だからね。……それより……何をお願いしようかな?」
鈴を鳴らしながら悩む陽花。気楽そうに魔理沙は彼女に行動を促す。
「今一番の願い事で良いんじゃないか?」
「一番の願い事というと──お兄ちゃんに会いたいなー……な~んて──」
『(ガラッ)博麗、霧雨。お茶入れたよ──って、参拝者? これは珍しい──』
参拝していた陽花の目の前に、博麗神社に居候している男が現れた。その男はお盆にお茶と茶菓子を載せていたが……一先ず彼は縁側にお盆を置き、目の前にいる少女の存在を改めて視界に入れる。それな陽花も同様なのだが。
急な二人の硬直に、陽花の情報を知らない霊夢と魔理沙は不思議がる。だからこそ、霊夢は居候の男──辰上侠に尋ねた。
「? どうかしたのよ侠? 彼女と知り合い?」
「……知り合いも何も、目の前にいるのは自分の──」
「お兄ちゃんだぁああああっ!!」
侠が説明している途中で陽花は彼に飛びつき、彼はそのまま押し倒せられる。
静雅以外は彼女の行動に驚き、妖夢は陽花の行動を止めさせようとするが……侠の親友である静雅に制された。
「静雅さん!? いくら陽花さんでもあの行動は侠さんに迷惑を──」
「気持ちはわからなくともないが、抑えてくれ。陽花もそうだが……表情に見えなくても、侠は内心では嬉しく思っているんだからな……」
どこか優しいような言い方で、静雅の向けた視線の先を妖夢はなぞるように顔を動かす。侠を押し倒しながら陽花は弾んだ声で、彼と触れ合い始めた。
「どうしてお兄ちゃんが幻想郷にいるの!? どんな理由であれど、あたしは嬉しいけどね♪」
「それはこっちが聞きたいんだけど……何時から幻想郷に?」
「大体三日前かな? 白玉楼で妖夢さんと幽々子さんにお世話になってたの!」
「そうなんだ……。陽花、まずは降りて。魂魄にお礼を言うから」
彼の指示に陽花は従い、侠は起き上がっては妖夢の前まで来てお礼の言葉を。
……陽花は彼の腕に抱きついているが。
「魂魄、陽花が世話になったね。一応、
「い、いえ。私達は当然な事をしたまでです」
「……兄? 侠……まさか過去に言っていた──」
侠の言葉に思い当たる節が魔理沙はその事について尋ねようとしたが──それよりも早く侠と静雅は一瞬でアイコンタクトの交わす。お互いに考えが一致したところで、静雅はどこかわざとらしく話の話題を変えた。
「あー、そういやオレ達も喉が渇いたなー……。侠、悪いがお茶を淹れてくれないか?」
「わかった。博麗、静雅達にもお茶淹れてきて良い?」
「え、えぇ……別に良いけど──」
「ありがとう。陽花も手伝ってくれる? 湯呑みを出して貰いたいからね」
「オッケー! わかった♪」
陽花は嬉しそうに侠の腕に抱きつきながら奥へと消えていく。その二人が視界から消えるのを確認してから、静雅は事情の知らない霊夢と魔理沙に説明。
「察しているかもしれないが、アイツは侠の義理の妹だ。名前は陽花という」
「……侠の義理の妹……」
「いや、そもそも何で侠の義妹──陽花か。何でこの幻想郷にいるんだぜ? 霊夢、結界は大丈夫なんだよな?」
「博麗大結界は特に問題無かったはずよ。そうなると……妖夢。また紫の仕業?」
「……おそらく、そうかと……」
霊夢の質問に肯定する妖夢。勘が当たった霊夢は溜め息まじりに言葉を。
「……侠の義妹、ねぇ……。何か侠に引っ付きすぎじゃない?」
「お? 何だ霊夢? お前さんも侠に引っ付きたいのか?」
「ちがっ!? 違うわよそんなんじゃないわよ!? ただ私は他人の目を気にしないであんな事をしているのはどうかと思っただけっ! 別にそんな事をしたいとか思っていないからっ!!」
「まぁ、それはさておき」
「静雅……後で覚えてなさいよ……」
彼女のからかって満足したのか、話を変える静雅。霊夢は彼の事を恨めしそうな視線を送ってるが。
「陽花の注意事項として侠との本当の関係をネタバレはしない事を頭に入れておいてくれ。これ、テストに出るぞ」
「? 静雅……あいつらは義理の兄妹だろ? 守谷の宴会で私達はそういう事は知っているし──」
「ところがどっこい、陽花は侠を実の兄だと思い込んでいる」
「「えっ!?」」
「……やっぱり、そうなのですね……」
疑問に魔理沙の質問で、静雅の答えに驚きを隠せない二人。しかし、妖夢は予想出来ていた。
白玉楼で彼女の義理の兄である侠の話題になった時、陽花はもしもで彼が義理だったらと悔しがっていた事を覚えている。この事から示す事は『辰上侠を実の兄』と認識している事だと考えることが普通であろう。
ちょうど話し終えたところで、先ほどとは違うお盆にお茶を載せて彼女達の元に侠は行く。
……彼の背中には陽花がベッタリ張り付いているが。
「お待たせ──と、言いたいところだけど……流石に人数が多いし縁側じゃなくて居間で飲まない? 博麗もそれで良い?」
「……それは別に良いけど、背中の陽花は何しているのよ?」
「お兄ちゃん分の補給~……」
霊夢の質問に陽花はかなり上機嫌で答える。背中に張り付いている彼女に侠は溜め息をつきながら、霊夢に補足の説明を。
「陽花がいる時は気にしないで。陽花は飽きたら止めるだろうし」
「飽きたら今度は膝枕ねっ」
「調子に乗るんじゃない。それじゃ上がっていって」
侠は陽花を軽く叱った後、博麗神社にいる人物達は中へと入っていった……。
卓袱台の囲って座っている人物達。陽花は相変わらず侠の背中に張り付いているままだが、彼は全員に話を振る。
「これからの陽花の対応について話し合いたいと思う」
「……侠、その話題の中心人物があんたの背中に張り付いているまんまなんだけど……?」
「そこは気にしたら負けって事で」
「(……陽花の対応がかなり甘い気がするんだけど……?)」
霊夢は侠に疑念の視線を向けているが、彼は気にせず話を始めた。
「やっぱり一番良いのは、博麗大結界か紫さんで外界に帰す事だけど──」
「嫌だっ!! お兄ちゃんが幻想郷にいるならあたしもここにいる!!」
「拒否するのが早過ぎるぜ!?」
間髪入れずに陽花は拒否。あまりの即決即断で魔理沙は驚きを隠せない。
その事に侠は少し言葉を強く彼女を叱る。
「陽花。ここが陽花が思っている程甘い世界じゃない。自分はここは弱肉強食の世界の表れだと考えている。今回は特に問題は無かったけど、恐ろしい妖怪が存在している。その妖怪が君を襲う事だってある。この世界に陽花はいてはいけないんだ」
「それだったらお兄ちゃんだって同じじゃん! お兄ちゃんはこうして会えているんだし、特に問題は──」
「陽花。オレや侠はそういうカテゴリーじゃないんだ」
ムキになって陽花は兄に意見していたところ、静雅が話に割り込んで侠のフォローする。彼の言っている意味が掴めないのか、疑問を含めた声で彼女は静雅に問いかけた。
「……どういう事なの?」
「まずはオレは幻想郷で過去に異変──事件といった方が良いか? それで幻想郷最強と言われるそこの事件を解決する事を仕事とする霊夢を追い詰めた事がある。弾幕ごっこでな。それでオレは幻想郷住民に実力者と認識されているんだ」
「……そういえば妖夢さんが幻想郷の説明でそう言っていたような……?」
「加えてだ。侠はオレの起こした事件を解決した。さらにはとある事で侠は人里で軽く崇められている。相当な実力が無かったらそんな事はされないさ」
「お兄ちゃん何があったの!? 崇められているって!?」
「……色々と事情が重なった結果、そうなっただけだから気にしないで」
「気になるよ!?」
彼女としたら腑に落ちないだろう。兄が崇拝されている事などといったことは。
静雅の言葉に同調するように、妖夢は控えめで彼女に話しかける。
「……陽花さんはここでは何も情報が無い、ただの人間です。私は正直……陽花さんには危険な目に遭ってもらいたくありません。兄である侠さんがあなたが心配するのは当然な事です。それほど、陽花さんの事を大事な妹だからこそ……心配しているのです。私も友人として、陽花さんの事が心配なのです」
「うぅ……わかるよ。確かにお兄ちゃんが心配して言ってくれているんだってわかるよ。でも……学校の寮でお兄ちゃんと会えにくくなって、今こうして会えているのに……!」
「…………」
侠と妖夢の言葉の意味を理解しているからこそ、陽花は目元に涙を溜めてしまっている。彼女の兄でもある侠は、先ほどから背中でより強い力で彼を抱きしめている陽花の事について考えていた。
彼と陽花は二歳ほど年が離れている。その二歳の差が大きく、同じ学校に通えるのは一年しかない。
加えて、彼は進学してから学校の寮に静雅と共に移り住んだ。その事を知った際の彼女は一晩中泣いたと侠は記憶している。
そもそも、彼女は侠に依存している。侠は養父の願い通りに【兄】として接した。彼なりの義妹と良関係となる為に。彼女の理想の【兄】として。
結果、彼女にとっては理想の【兄】になった。しかし……理想の【兄】を超えて、理想の【異性】となったことは除いて。
侠は正直焦っていた。最初にその発言を聞いた時は冗談として流した。たが、それ以降の陽花は思わせぶりの行動を侠にするようになっていった。その時の侠は何とかしなくてはいけないという思いでいっぱいだった。
しかし──ある時で、彼女の存在を再確認した。彼女は義理だとしても、大事な家族という事を。大事な妹だという事を
以降、彼は彼女がどのような好意としても【兄】として接する事を決めた。彼女は何時までも怪しい行動を取り続けているが、【兄】として触れ合えば良い。
だからこそ──彼は【妹】を甘やかす。
「……陽花。あくまでそれは一人だからいけないんだ。俺や静雅、魂魄と誰か常にツーマンセルでなら構わない」
「──侠!? あんたの口調が……!?」
その場にいる人物達は彼が【素】になっていると気づいているだろう。霊夢が指摘すると、陽花もすぐさまに反応。
「お兄ちゃん……!?」
「とりあえず背中から離れろ。話はそれからだ」
「あ、うん……」
彼の指示通りに背中から離れ、陽花は正座する。彼女が正しい聞く姿勢になったところで、彼は話し始めた。
「正確には紫さん次第で変わってくると思うが……幻想郷にいる間は信頼出来る人物と常に一緒に過ごす事。お兄ちゃんとの約束だ。守れるな?」
「……うんっ! 絶対に守るよ!」
「…………それなら良いんだ。自分達は陽花を心配している事をわかってくれるなら良いよ」
「うんっ! お兄ちゃん大好きっ」
彼は普段口調に戻ってしまったが……条件付きという事だったが、彼の許可が出て彼女は嬉しさのあまりに正面から抱きついた。
本当の兄妹なら微笑ましい事なのだが……二人はあくまで義理である。二人の様子を見て引き離そうとする人物がさらに二人。
「よ、陽花さんっ! 気持ちはわからなくともないですが、はしたないですよっ!」
「侠に近過ぎなのよ! 離れなさい!」
「あぁ~、お兄ちゃん~……」
どこか悲しそうにしながら陽花は妖夢と霊夢に剥がされる。その様子を見て静雅はニヤニヤしているが、魔理沙は侠に行動を促した。
「……侠。話が思い切り脱線したから戻そうぜ」
「そうだね。一先ずは陽花が幻想郷にいる事を前提として……陽花がお世話になるところを再確認したいと思う」
彼の挙げた言葉に、陽花は手を挙げて意見を主張しようとしたが──
「はい、お兄ちゃん! あたしは──」
「却下」
「ゑっ!? あたしまだ何も言ってないよ!?」
「陽花が言う事は予想出来ているから……。自分と住みたい。つまりは博麗神社って事でしょ」
「流石お兄ちゃん! あたしの言いたい事がわかるなんて【いしんでんしん】ってやつだね♪」
「うん、そうだねー(棒読み)」
「──って、そーじゃなーいっ! 何でダメなの!?」
始めはノっていた陽花だったが、我に返り侠に問いかけた。彼の家主でもある霊夢も侠に理由を尋ねる。
「どうしてよ侠? 私はあんたのおかげで余裕があるし、陽花次第だけど何とかなるわよ?」
「そーだよお兄ちゃんっ! 霊夢さんがこーして良いって言っているだから別に──」
「仮になったとして陽花の行動が目に見えているから……。自分に引っ付き、布団に潜り込み、風呂に乱入。まだまだあるけど……しないと誓える?」
「うぅ……誓えない……!」
「欲望にまみれた結果がこれだよ! ま、ドンマイとしか言いようがない」
「(……過去の宴会で言っていた事は本当だったのですね……)」
静雅の気遣いの後に、守谷の宴会の会話を思い出す妖夢。
そんな彼女をよそに、次は魔理沙が意見を。
「だったら、侠の親友である静雅がいる紅魔館はどうなんだ? そこはどうだと思うんだ侠?」
「候補して良いね。静雅や紅魔館の人達なら任せられると思うし。静雅はどう思う?」
「それで本来は良いと思うが……博麗神社以外だったら陽花自身に聞くのが良いだろう。陽花の判断に任せる」
「あたし? 確かに、しずまっちゃんがいる紅魔館も良い所だけど──」
話し合って最終的には彼女の判断に委ね、迷いを断ち切るようにして──彼女は妖夢に向き直り決断。
「──やっぱり、妖夢さん達がいる白玉楼かな?」
「白玉楼……私達ですか?」
「(……この瞬間に オレ < 妖夢 <<<< 越えられない壁 <<<< 侠 という不等式が成り立った事に若干落ち込んでいるオレがいる……)」
幼い頃から彼女と触れ合っている静雅にとって、少し悲しい気持ちになっていた……。
しかし、そのような彼に気づいたのだろう。フォローするように陽花は言う。
「あ、しずまっちゃん。もしもあたしが最初に来た場所が博麗神社か紅魔館だったら、間違いなく紅魔館を選んでたよ。そこはそー認識して欲しいかな」
「フォローありがとう涙が出てくるぜ」
「静雅、それは守谷の宴会での演技だよな……? まぁ、それはおいておくとして。どうして白玉楼何だぜ? 陽花」
本当に静雅は涙を流しているが、過去に宴会でした演技の涙と判断した魔理沙は理由について彼女に問いかける。当本人の静雅は「解せぬ」と呟いていたが、誰も気にすることはなく、陽花は魔理沙の質問に答えた。
「しずまっちゃんに言った通りの理由も含めているけどね。でも、一番の理由は──幻想郷での初めての友達、だからかな」
「……陽花さん……」
少し照れくさそうに陽花は頭の後ろを掻きながら言う姿に、どこか妖夢は恥ずかしいような、嬉しそうな表情を浮かべている。
彼女の答えを聞いて納得したのか、侠は妖夢に体の向きを変えては頭を下げた。
「魂魄……陽花が迷惑をかけるかもしれないけど──
「……はいっ! お任せ下さいっ!」
妖夢の覇気のある返事の了承。彼女の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべた後、陽花に向き直っては行動を促す。
「陽花。今日の予定はこれで終わり?」
「うーんと……そうだね。終わりだよ」
「そう。だったら白玉楼に戻った方が良いかもね。魂魄は白玉楼の仕事や家事があるだろし、彼女を手伝ってあげて。自分も同じだけど、居候でお世話になるんだから積極的に手伝う事。わかったね?」
「うん! もちろん!」
彼女の元気な返事をきっかけに、侠と霊夢以外はそれぞれの行動に移し始める。
「それでは陽花さん、白玉楼に戻りましょうか。皆さん、またの機会に」
「また来るからね、お兄ちゃんっ! 皆もまたね♪」
妖夢と陽花は白玉楼に向かい。
「静雅っ。この後何も予定が無いなら弾幕ごっこをするぞ! 図書館でな!」
「場所指定をしたのは気になるが……ま、良いだろう! 相手してやる!」
魔理沙と静雅は紅魔館へと向かい。
「ん~と……夕食は私の番だったわね。準備ができたら配膳とか手伝って貰うから、少しゆっくりしてて良いわよ」
「ん。ありがとう霊夢」
「それにしても……紫は一体何を考えているのかしら? 侠の義妹をを幻想郷に連れて来るなんて?」
「……自分も流石にわからないよ」
「……考えてもしょうがないわね」
霊夢は会話を終え、神社の奥へと向かっていく。それに対し侠は神社の外に出て──
「……紫さん、隠れていないで出てきてください」
虚空にある人物を呼んだ。彼の言葉に対応するように──空間が割れ、奇妙な空間から体の上半身を出しては彼の問いかけに答える人物が一人。
「……どうしてわかったのかしら? 出来るだけ気づかれないようにしたはずなのだけど……?」
「ご先祖様と一悶着があって以来、時折ご先祖様が中で教えてくれたりするんです。勘の良い博麗は陽花に夢中で気づいていなかったみたいですけど」
「……まぁ、あなたの義妹となればあまり他人に興味を持たない彼女でも気になるのは当然な事」
目を閉じながら意見をする紫。侠は義妹を連れて来た張本人に質問を。
「……どうして陽花を連れて来たんですか……?」
「そうね……強いて言うならば、あなたの為よ」
「……言葉を意味をはかりかねますが?」
「あら、わかっているはずよ。この幻想郷で陽花の存在を確認出来たあなたは──戸惑いと同時に、安堵した事を」
「…………」
彼は喋らない。紫は話を続ける。
「まぁ、私が独断で連れて来たんだから安全は保証するわ。侠の大事な義妹だものね。心から想っている大事な家族。あなたの心の支えの人物だから、そういう事はちゃんとするわよ」
「……とりあえず陽花の事はあなた達に任せます。しかし……陽花に何か遭ったのなら──」
俺はお前を許さない
彼は紫にはっきりと告げた。彼女は彼の一瞬の【素】を感じた後、思った事を。
「何ていうのかしらね……? あの子を正直な【ブラコン】とすれば、あなたはツンデレ気味の【シスコン】じゃない……?」
「そんな事はどうでも良いです。大事な家族を思いやるのは当然な事。それは紫さんにも当てはまる事ですよ?」
「……えぇ、そうね」
彼女はこれで会話を終わりにするのか、彼女はスキマに隠れていく途中に話しかける。
「陽花の情報は不定期だけど、伝えるわ。少しでも侠が安心出来るようにね……」
彼女は最後にそう言うと、スキマを閉じて消えていった。彼は陽花のいる白玉楼の方角に視線を向けた後、博麗神社へと戻っていく。
彼が居間に戻ると、霊夢がどこか気にかけるようにして侠を見ていた。彼女は確認を含めて侠に問いかける。
「……紫がいたみたいね。それで……陽花の事、心配?」
「そりゃあやっぱり。自分に対しておかしな行動をとる陽花だけど……大事な義妹だし。当然な事だよ」
「……侠と陽花を見て私は思ったのだけど──」
彼の返事を聞いた後、霊夢はどこか不機嫌そうに……言葉を続けた。
「──侠、あんた陽花に甘過ぎよ。義理という関係なんだから、ちゃんとした距離をとらなくちゃダメだと思うんだけど……?」
「……なんかもう、慣れちゃっているんだよね……。陽花が過剰のボディタッチをしてくる事が」
「それって慣れちゃいけないものじゃないの!?」
驚愕の反応と共に、どこか非難を交えた言葉で彼女は言うものの、彼は悩むようにして答えた。
「うーん……幼い頃から陽花はそういう行動をとっていた所為もあるかな? 物心がついた時に陽花は生まれたし。それで理想の兄として触れ合ったりした結果……陽花はあんな感じになった」
「……内心、嬉しいんじゃないの? 異性にあんなに密着されて」
「……………………そんな事は無いよ?」
「今の間は何よ?」
「さ、自分は少し一休みするかな。配膳出来る状況になったら呼んでね」
逃げるように侠は居間を去って行く。彼の露骨な気が触ったのか……霊夢は背後から彼を羽交い締めで拘束し、ドスの利いた声で、目をギラつかせながら質問をし始めた。
「侠~? どこに行くのかしら~? 私の質問に答えてもらってないんだけど~?」
「ちょ、霊夢!? ここからは自分のプライバシーだからっ!? そこは聞かないでくれると嬉しいんだけど!?」
「ふーん……そんなムッツリな侠には粛正が必要かしらねぇ……? 御札と針、どっちが良い?」
「そんな事を言ったら霊夢だって同じじゃないかっ! 陽花みたく風呂に乱入してきた時の事とか!」
「わ、私は別よっ!? だって私は家主だもの! ここで起こった出来事は私が判断するのよっ!」
「家主権力による横暴!?」
……流石に龍神の先祖返りである侠でも、彼女との立場関係ではまともな反論が封じられてしまった。
彼の逃げる道がなくなっていく中……侠は霊夢にある事を指摘する。
「霊夢……背中に密着している所為で、その……当たってる!」
「? 何が当たっているって──」
彼の指摘で最初は戸惑っていた霊夢。彼女は改めて侠との状況を確認すると……確かに、彼女のある部分が彼の背中に当たっている。
数十秒のお互いに沈黙が続いた。そして……霊夢は頬を赤く染め上げながら侠を突き飛ばす。彼はその行動が予測できていたのか、正面から受け身をとって衝撃を緩和した。
彼が体勢を立て直して彼女の正面に立つと、霊夢は顔全体を赤く染めて抗議の言葉を。
「な、な……何で私の場合だとそういう風に言うのよっ!?」
「流石に人の違いで、陽花は【兄妹】として少し慣れている分そんなに恥ずかしくないんだけど……霊夢とはまだ日が浅いし、【異性】としてだから恥ずかしいんだよ!」
「い、異性っ!? バ──バカじゃないの!? もう知らないっ!!」
最後に霊夢は罵倒すると、居間から去っていく。彼女の様子を見て彼は一言。
「……危機は去った」
今晩の食事の準備は自分になりそうと思いつつ、彼は行動を始めた……。
博麗神社の一悶着があった後日。その神社に二人の来訪者が来ていた。その二人とは妖夢と陽花であり、陽花は彼を見つけるなり挨拶と同じように、侠の左腕に抱きつきながら言葉を。
「お兄ちゃーんっ! 妖夢さんと一緒に来たよ!」
「……うん。それはわかったから離れようか」
「本日のお兄ちゃん分の補給~……」
「陽花さん……少しは慎みを持ちましょうよ……」
彼女の行動を見て呆れるように言った妖夢だったが……陽花は顔だけの彼女に向けて話しかける。
「妖夢さん、今ならお兄ちゃんの空いている右腕に抱きつけるよ~。妖夢さんもどう?」
「っ!? 陽花さん、それは流石に侠さんに失礼ですよ! ただでさえ私と侠さんは兄妹という関係でもなく──」
「陽花。魂魄が慌てているから止めておいて」
「(……ふむふむ、過去にお兄ちゃんと喋っていた時の妖夢さんの反応といい……。この反応は……)」
侠が陽花に注意していたのだが、それとは彼女は何やら呟いては頷いている。義兄である侠は彼女の様子に疑問を持ったものの、陽花は彼に抱きつく事と妖夢に話しかけるのを止めた。
だが……その行動を止めた陽花は、妖夢の後ろに回り込み──
「おぉーっと手元が狂ったぁー!」
「!? 一体何を──」
わざとらしく言っては、陽花は妖夢の背中を彼女自身の両手で押し出した。急な行動で対処出来なかったのか彼女は侠に倒れこもうとする。彼はそれに気づいては足元を踏ん張り、正面から彼女を抱き止めた。
「──きょ、侠さん!? すみません、今すぐどきますのでっ!!」
「大丈夫なら良いんだけど……陽花? 君は今何をしたのかわかって──」
「あ……お兄ちゃん、後ろ……」
軽く説教を始めようとした侠だが……彼女の様子が少し変だ。どこか気まずそうにしている。わかる事は気まずいのは妖夢を突き飛ばした事じゃなく、侠の後ろに視線が注がれている。
そして彼も後ろの存在の視線に気づいた。侠は後ろへ振り返ってみると──
「……へぇ。侠ってば後ろは陽花、前は妖夢なのね……?」
前髪で表情は見えないものの、口調でどこか不機嫌そうに彼に話しかけた──博麗霊夢がそこにいた。
彼も彼女の機嫌について悟ったのだろう。少なくともの弁明を試みた。
「ちょ!? 博麗、これは仕組まれた事だから! 陽花が原因の事柄だから!」
「……どうだか。内心嬉しいんでしょう? 侠は異性に密着されるのが大好きだから。それで私の事はすぐ離れるように促したのに、妖夢とは正面から抱き合ったままじゃない……」
言われたからという理由ではないが、侠と妖夢は距離をとった。離れた状態になってもなお、霊夢の話は続く。
「異性だったらだれでも良いの!? そんなに白玉楼にいる人物が気になるのならどこだって行けば良いじゃない! ……侠のバカっ!!」
最後に罵倒しては霊夢は博麗神社に戻ろうとする。その様子はどこかこらえているようにも見えた。
事の発端である陽花は焦りながらも、霊夢に駆け寄っては弁明を。
「霊夢さん、これは誤解なのっ! お兄ちゃんも妖夢さんも悪くないのっ」
「……明らかに侠は私との違う態度じゃない。過去の私と故意ではないとしても……妖夢はさっきの──」
「お兄ちゃんが『霊夢が可愛過ぎて生きるのが辛い』って妖夢さんに相談を持ちかけて、あたしが悪ふざけで突き飛ばした結果がこれだから誰も悪くないのっ!!」
──陽花は即席でほらを吹き始めた。内容的に一番被害を被っているのは侠である。もちろん、そのような発言をした覚えが無い彼は意見しようとしたが──
「陽花っ!? 自分はそんな発言は──」
「お兄ちゃんは霊夢さんが気になってしょうがないんらしいんだよ! 一緒に暮らしていく中での霊夢さんが気になっていろんな様子を見ちゃうんだって! 霊夢さんの食べる姿やお風呂上がりのどこか色っぽい姿とかっ! 数え切れないほどあるって! それで女々しく妖夢さんに相談していて……あたしは『焦れったーいっ!』って、喝を入れる為にお兄ちゃんを物理的に押そうとしたんだけど……間違って妖夢さんを押して、あぁなっちゃった☆」
最後は強引過ぎやしないかと侠と妖夢が思ったのは言うまでもない。
陽花はほらを吹いた後に舌を出して彼女は霊夢と話し終えると……勘違いしながら霊夢の顔は全体に赤く染まり、同時に動揺が見られた。普段の侠の態度とは打って変わった内心を教えられた(嘘の)所為もあるかもしれない。
「きょ……侠は内心私の事を常に思っていたの!?」
「そうだよ~。お兄ちゃんも思春期でもあるし、そういう事を考える時期でもあるからね。もしかするとお兄ちゃんが異性的な意味で狼になる可能性も……。だから霊夢さん! あたしはお兄ちゃんの行動を監視と抑制力に一番適しているのは霊夢さんだと思うのっ!!」
「た、確かに……だからこそ、紫は侠の監視という事て私に任せているのかしら……? もしそうだとしたら侠を手放すワケにはいかないわね──いいえ、博麗の巫女としても侠の行動に目を光らせないといけないわねっ!!」
陽花の嘘を鵜呑みした霊夢は新たな決心すると共に、振り返って侠に警告するように宣言をする。
「侠! あんたの行動は私が管理するわ! 私の許可無く独断で行動しない事! わかったわねっ!!」
「う、うん……」
「わかったなら良し! それとは別件で、そろそろ生活物資が無くなりそうだから荷物持ちとして同行してもらうんだからねっ」
言い終えると同時に霊夢は体を翻す。大方買い出しの準備に向かったのだろうが……彼女が翻したのと同時に、陽花は霊夢の口元をどこか嬉しそう緩めていたのを見逃さなかった。
それ含め、陽花は安堵したように一言。
「……危機は去った」
「思い切り自分が変態になっているんだけど……それはどうしてくれるのかな、陽花?」
「うぇっ!? それでもお兄ちゃんが完全に嫌われないよーにしたんだから怒らないでよー!?」
「事の発端者が何を言う?」
陽花でも感じる機嫌の悪い侠の言い方。彼は彼女にジト目で責めるようにしていたが……妖夢が二人を仲裁しようとする。
「きょ、侠さん……陽花さんも反省していらっしゃるようですし、これ以上彼女を責めても変わらない気が……」
「……まぁ、過ぎ去った事はしょうがないよ。博麗はなんだかんだあまり人の話を聞かない節もあるし」
妖夢の言葉に妥協したようにして彼はため息を吐く。改めて侠は陽花と対峙して話を続けた。
「陽花……迷惑な行動はとらない事。さっきみたいに面倒な場面にもなりうるから」
「……はーい」
唇を突き出しては不満そうにする。彼女がちょうど謝り終えた時、神社から霊夢が出てきては侠の手を掴みながら話しかけた。
「ほら、あんたが、その……何か問題を起こさないように見張ってるから! さっさと行くわよ!」
「……手を繋ぐ必要ってあるのかな?」
「あ、あるわよ!? 侠はいつもどこかふらふらするし、あんたの能力で私の体の調子が良いんだからっ!」
「ここで自分の能力を活用してもなぁ……」
やけにムキになって侠に言う霊夢。その二人の会話を聞いた妖夢は疑問に思った事柄があるみたく、霊夢に問いかける。
「? 霊夢さん、侠さんの能力は氷精と同じような能力ではないのですか? 侠さんと……その、手を繋いで体の調子が良くなるとは一体……?」
彼女が疑問に思う事は仕方ないだろう。侠本来の能力は実質的には一部の人物しか知らない。初代龍神騒動で実際に関わった霊夢。彼から教えてもらった親友。初代龍神から説明を受けた守矢神社。基本的には彼の能力を知っているのはそこまでしかいないのだ。
本来なら侠が説明するべきなのだが、霊夢が説明。
「侠の能力は【力を発展させる程度の能力】みたいなのよ。あの変化云々は侠のデフォルト。それと……氷やら炎とかはティアーの能力のようなもので。まぁ、ティアーの能力はともかく──侠の能力はそれで発動条件があって、肉体的接触らしいのよ。それでこうして手を繋ぐ事で、一時的に接触している奴の基礎能力の底上げ。それと能力を持っていた場合は接触している間強くなるのよ」
「……他人を思いやる能力なのですね。侠さんらしい、素敵な能力だと思います」
妖夢は侠の能力について個人的な感想を言ったのだが──
「(──人──信じ──)」
「……? 侠さん、今何か仰いましたか?」
「気のせいじゃない?」
「(今のは……空耳なんでしょうか?)」
彼女には途切れ途切れな言葉が聞こえたみたいだが、妖夢以外気にした人物はいないように思える。
霊夢の発言を聞いた陽花は納得するように言う。
「あ~……だから幻想郷ので、お兄ちゃんに抱きついた時、調子が良かったのかな……だったら――はいっ!」
喋りながら陽花は妖夢の手を取り──侠の空いている片手に重ねた。その事に「みょん!?」と変な声をあげた妖夢だが、彼女に構わず陽花は侠に話しかけた。
「お兄ちゃん、せっかくだから四人で買い出ししに行こうよ! お兄ちゃんの能力がそーゆーのなら尚更! 皆お兄ちゃんにくっ付いて行こうよ!」
「その理屈はおかしい」
「霊夢さんが左手で妖夢さんが右手だから──あたしはやっぱり背中が落ち着くね♪」
「落ち着くんじゃない」
陽花の言葉と行動に否定的な声を言う侠だったが……彼女は気にする様子はなく、彼の背中に張り付いた。
現在の侠の状態としては……左手に霊夢、右手に妖夢。そして背中には陽花という不思議な状態になっている。
霊夢は便乗した二人の行動を見て、不機嫌そうに彼女達に話しかけた。
「……別にあんた達も同じ行動をしなくても大丈夫でしょ?」
「あ、いや、その……わ、私達も侠さんとの挨拶を終えたら買い出しに行く予定だったのです」
「そーだよ! だから良いよね、お兄ちゃん♪」
「いや、離れてよ……? この状況を誰かにでも見られたら──」
『…………(カシャッ)』
彼が話している最中に響くシャッター音。音源は上空から聞こえ、四人はその方向に顔を動かすと……カメラを構えている一人の烏天狗、射命丸文がそこにいた。
「「「「…………」」」」
「…………(ニコッ)」
四人は呆然としている中、文は侠に向けて笑顔とグーサインを送る。彼女はどこか満足したかのように、博麗神社上空から去っていった。
いち早く我を取り戻した侠は自分に接している三人を振りほどいては──どこか怪しい表情をしながら呟く。
「……射命丸。自分の痴態を撮るとは良い度胸だ──君が写真を消去しない限り、追いかけ回すのを止めないっ!! 適合【ストームオーバードライブ】!」
彼は適合スペルを宣言しては風を起こし、収まった頃には緑の髪と目、コートを羽織った風をメインとして使う状態に。さらには──背中から龍の翼を出しては飛翔。彼は文を追いかけにいった。
侠の新しい【力】と変化を見た霊夢と妖夢は彼を見送っていたが……義妹である陽花は驚きしかない。
「…………ゑっ!? お兄ちゃんの格好が変わって何かカッコイい翼を出して飛んで行っちゃった!? 何で何でっ!?」
「……妖夢。詳しく侠の事、教えてなかったの?」
「……義兄である侠さんが何時か話すだろうと思い、詳しくは……。でも、今話した方が良さそうですね……陽花さん、実は──」
半人前説明中……「シャメイマル。キミハイッタイドコニイクノカナ?」「アヤヤキョウサン! ゲンソウキョウサイソクノワタシニオイツケルトモ─」「[ムカイカゼ]。ソシテジブンハ[オイカゼ]」「アヤッ!? キョウサンガカゼヲアヤツッテ─シカモワタシモカゼヲアヤツレルハズデスノニアヤツレナイッ!?」「リュウジンノカゼニテングノカゼガユウコウダトオモッタ? フウテン[ウィンドストライク]」「ワ、ワカリマシタキョウサン! シャシンハ─[ピチューン]」
侠が文を制裁していた頃。陽花は妖夢による現在の侠の説明を受けていた。途中で文の断末魔が聞こえたのは気のせいだろう。そうに違いない。
陽花は説明を聞き終わっても……落ち着きが無い様子だった。
「嘘っ……!? 辰上家が実際に龍の子孫!? それでお兄ちゃんにこの幻想郷を創ったっていう初代龍神が取り憑いているって……!?」
「陽花さん、驚くのも無理はありません。確かにご先祖様がこの世界の創造主と知ったら当然な事だと思います」
「それで侠はその龍神の血を最も濃く受け継いだ先祖返り。それが実際に龍の血が流れている証拠なのよ」
一先ずは妖夢が彼の事を知っている情報を陽花に伝えた(義理の関係はもちろん伏せてある)。情報量に関してなら霊夢の方が持っているのだが……公にはしていけない情報もある。なので彼女は不安材料になりうる情報は伏せて、妖夢のフォローを。
「(おかしい……あたしが実際に知っている事と──)」
「……陽花さん? どうかされましたか?」
「ゑっ!? 何でもないよ!? ただお兄ちゃん凄いなって!」
「あんたにも薄いけれども同じ血が流れているのよ? そういう観点で見たら陽花もそれなりだと思うけど……」
「そ、そうだね! あたしも凄い!」
二人の言葉に陽花が応えていた時──適合スペルを解き。龍の翼で地上に降り立つ辰上侠。翼をしまった後に彼は陽花に事情を話そうとする。
「あ~、陽花? 今の自分の姿の事なんだけど──」
「妖夢さん達から聞いたよ。実際にお兄ちゃんと同じ血が流れているって……」
「……そう。じゃあご先祖様の事も」
「うん。だからあたしも挨拶をした方が良いと思うの。お兄ちゃん……ご先祖様に変わってもらっても良い?」
「……わかった」
話を終えた彼は目を閉じる。そして──彼の髪は赤髪に。目を開けた時にはもう赤い目となっていた。
彼──初代龍神、ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼは陽花に話しかける。
「……良識を持つ我の子孫よ。こうして会えた事を嬉しく思う」
「……お兄ちゃんの姿なのに全然雰囲気が違う……。あ、初めまして──物凄いご先祖様のお爺ちゃん?」
「はっはっは。ちゃんと我とわかる呼称であれば何でもかまわんよ、陽花」
軽く笑いながら対応するティアー。その彼は妖夢へと体の向きを変えた。
「妖夢よ。こやつの対応は飽きが来ないであろう?」
「……そうですね。少々ヤンチャという一面もありますし、飽きが来ないというのは確かです」
「妖夢さん!? お爺ちゃんへの報告は勘弁してっ!?」
彼女の言葉に焦りの表情を浮かべている陽花だが、どこか妖夢は楽しそうな表情を。もしかすると普段いじられている仕返しなのかもしれない。
その二人を余所に、霊夢は小声でティアーに話しかける。
「……ティアー、陽花の事を正直にどう思ってるの?」
「それは陽花に対する我の印象か? それとも陽花がこの幻想郷にいるかどうかかの?」
「……両方よ」
「ふむ……では順番に答えていくとするか」
何時の間にかじゃれあっている陽花と妖夢を見ながら、彼は言う。
「我にとって陽花は良識を持った、大事な子孫だ。主とは違い先祖返りでは無いが……血が濃いや薄いなどは関係ない。善の分類ならば我の大切な子孫だ」
「……そういえば、今取り締まっている奴は侠やあんたの敵なのよね……」
「恥ずかしながらな。奴らの中に先祖返りがいないのは幸いであるが。この事も、いずれかどうにかせんとな……」
髪の毛をいじりながら、彼は次の事に答える。
「紫が陽花を連れてきた事は……場合によっては諸刃の剣だ」
「……諸刃の剣? それって良い可能性と悪い可能性があり得る意味よね?」
左様、と彼は言いながら話を続ける。
「奴が陽花が連れてきた目的はな大体見当がつく。確かに陽花を連れてくる事によって、主にとってはプラスになる」
「……悪い可能性については?」
彼女は違う可能性について指摘したが……彼は首を横に振る。
「……ここでは言わない事にしよう。ヘタに言うと実現することもあり得るのでな」
「えぇー……」
「気持ちはわからんでもないがの。では……そろそろ主に体を返そう。一応、買い出しがあるのであろう? 主の他にもあの二人も連れていくと良い」
「ちょ!? そこは別に良いんじゃない!?」
「では、主に返すからの──」
霊夢の言葉を聞かずティアーは目を閉じたうちに――髪の毛と目の色が元に戻った。今の彼はもちろん、辰上侠である。
「……博麗、ご先祖様の言った事通りにしようか。魂魄はともかく、陽花については買い出しがてら地理を把握させなくちゃいけないからね」
「……わかったわよ」
「ありがと。じゃあ──陽花ー! 魂魄ー! そろそろ行くよー!」
「はーい、お兄ちゃん!」
「わ、わかりましたっ」
「ん。じゃあ行こうか」
四人は集まっては徒歩で向かいながら陽花に色んな説明をしながらも、歩いていった……。
──彼女の存在で幻想郷にどのような影響を与えるかは、まだ誰も知らない。
以上、表主人公の義妹の特別番外編は終わりです。本来の彼女の出番はまだ先なのにフライングするとは……。
一応、これはIFなのであしからず。次章からは彼女の出番はありませんので。これはちょうどこの章の守矢の宴会後のIFという構成ですが。もしも陽花を本編で幻想入りさせるならこのような構想になっているだろうなぁという話なので。
それとは別に、アリスの閑話での問題の締め切りは今日までです。興味のある方は自身の考えをメッセージにて。
本来なら陽花には能力が無いという設定なのですが、幻想入りしたと仮定したこのIFではあえてありにしています。彼女の能力とスペルカードの説明を少々。
能力:弾幕を纏う程度の能力
名前の通り、自身の弾幕を体に纏う事が出来る能力。使う事で纏った体の部位の攻撃力、防御力を上昇。
……もしも、このままの陽花が本編に組み込まれるとしたら、この能力は場合によってかなり有用な時があります。無属性ならば相手の弾幕の攻撃を纏う事が出来ます。基本的に相手の遠距離攻撃を無効。近距離戦が得意な彼女は相性の良い能力です。ただし属性があるような弾幕は不可(火や風など)
裏話。投稿する前の表主人公の能力はこの能力だったり。しかし、主人公の能力が捻りが少ない能力で良いのかと思い、流しました。
弾符【エナジーオーラ】
彼女の能力をさらに強化したもの。楽に弾幕を体の部位に集め攻撃力を高くしたり、体全体に薄く広げ防御したり。動作と連動して、弾幕を纏った手で殴る動作をすると、弾幕を飛ばすことができる。彼女は構えて弾幕の照準を合わせるのが苦手の為、このスペルを使って弾幕を放った方がやりやすい。
次話からは久々の表・裏として分ける章です。ではまた。