さとり視点。
では本編どうぞ。
私の部屋ではなく客室へと案内をし、お燐とお空が改めて静雅さんに挨拶をする。
「あたいは火焔猫燐。もう知っていると思うけどさっきの黒猫はあたいだよ。気軽に【お燐】って呼んでね」
「初めまして! 私は霊烏路空! 皆からお空って呼ばれてる!」
「いやいやお空よ……初めましてじゃないだろ? さっき会ってさとりの部屋まで案内してもらっただろうが?」
「うにゅ? そうだっけ?」
静雅さんと一緒に来たはずなのに、彼女は疑問符を頭に浮かべ。その事にお燐が静雅さんのフォローを。
「……お兄さん、お空は察しの通りアレなんだ。悪いけどもう一度自己紹介してくれないかい?」
「……まぁ、いいか。オレの名前は──」
「そうだ! 確かお静だった!」
「自己紹介のタイミングで思い出すのか!? しかも妙なあだ名で!?」
……彼が友好的なことも含めて、お燐達と仲良く出来ていますね。彼の心の中は私達に対して随分友好的ですね……。お空は思い出したのにすっきりしたのかゆで卵を食べ始めましたけど……。
あることを思い起こし、私は静雅さんに確認を込めて尋ねてみる。
「そういえば静雅さん……お空と一緒に私の部屋まで来たみたいですが……お空との対応はどうしました? どうやらお空は忘れているみたいなので、詳細がわからないのですよ……」
私の言葉にお燐も同調する。
「それはあたいも気になるね。普段のお空は侵入者を撃退するから……それにも関わらず結構仲が良いみたいに見える。どんな方法をお兄さんは使ったんだい?」
「まぁ、もちろん本来のオレのトップシークレットである【事象を操る程度の能力】も使ったが……話をするのはめんどくさいな。さとり、思い出すから適当に心を読んで伝えてくれ」
「……それぐらい自分で話してくださいよ……まぁ、構いませんが。では、読み取りますよ──」
一応彼の承諾は得たので──お空との出会いを読み取り始めた……。
『適当に詮索していたら……随分熱い所に来てしまったな。まぁ、能力で問題ないように出来るから別に良いが』
心を読み取ってみると、どうしてかお空が管理している場所に進んでいますね……一体何故さらに地下に降りていったんでしょうか?
『(だいたいこういうダンジョンみたいなのはラスボスが最下層にいるのが多数だからな。【さとり】はいないにしても、誰かはいるだろ)』
……それだったらまず降りる前にその階の部屋を確認してから降りるべきでしょうに……。
そう心の中で静雅さんは呟いていましたが──急に静雅さんへ向けて大きめの円球状の弾幕が襲いかかりました……この弾幕は説明することはないですね。
『うおっ!? 敵襲か!?』
『──うにゅ! 侵入者発見! これより撃退する!』
──やはり、お空でしたね。当時は見覚えのない人でしたし、撃退するのがお空の行動でしょう。お空の放った弾幕に対して静雅さんは大きな回避行動で弾幕を避けました。
体勢を立て直そうとしている静雅さんに対して、攻撃を仕掛けようとしているお空を引き留めようとする焦燥を含む静雅さん。
『待てお前さん!? オレは侵入者じゃない!』
『嘘だ! 私、あなたに会ったことがないもん!』
『……あぁ。確かにお前さんとは会ったことがないな。しかし──さとりはオレの愛人なんだっ!』
「──ちょっと待ってください静雅さん!? 何故私が愛人になっているんですか!?」
一時心を読むのを止めて、急に問題発言をした静雅さんに問いかける……どうしてそういう嘘の発言をするんですか!?
「さとり。生き残るための嘘だったんだ。分かってくれ」
「あなたの能力ならば簡単に生き残れますよね!?」
「お燐ー?【あいじん】って何ー?」
「やっぱりお空は知らなかったみたいだね……それは知らなくても大丈夫だよお空。さとり様、悪いですがお兄さんの続きを読んでくださいますか?」
お燐に促されて再び心を読み始める。
……彼の心を読む度に疲れが来るような気がします……。
再び場面は変わってお空が反応をしめる場面ですね。
『……うにゅ?【あいじん】? それって何? おいしいの?』
『……まさか知らないとは……まぁ、簡単に言うと愛する人と書いて【愛人】だ。それなりに仲が良いことを示すと言っておこう』
言葉の真意は隠して、大ざっぱすぎる概要で説明する静雅さん。逆にそれは感謝します……本当の意味を知らない方が良いですからね。
ですが、お空は何故か対抗心を見せながら言います。
『それってさとり様の事が好きって事? だったら私の方がさとり様の事が好きだもん! あなたよりもずっとずっとずっっとさとり様の事が好きだもん!』
……こう、本心から言ってくれているんですよね……改めて確認すると恥ずかしい半分、嬉しかったり。
しかし、それに対して静雅さんも対抗するように言う。
『成る程……純粋な意味でお前さんの誠意は伝わった。だが! オレも負けてはいられない! どちらがさとりの事が好きか弾幕ごっこといこうじゃないか! オレが負けたら潔く引き下がろう! もしオレが勝ったらさとりの部屋に案内すること! わかったかっ!』
『望むところ! この弾幕ごっこ、核の力を使って私が勝つっ!』
……何故か私をめぐって弾幕ごっこが始まろうとしていますが、両者の表情は至って真面目だと言うことが伝わってくる。
……多分、現に静雅さんがここにいるのですから彼が勝つのでしょう──
『──よし!【オレの勝ち】だ!』
『うにゅう!? わ、【私……負けちゃった】……』
──何故か弾幕も出していないのに勝敗が決まってしまった──えっ!?
「待ってください静雅さん!? 戦おうとしている場面で既に決着が着くというのはどういうことですか!? しかもお互い動いてもいませんよ!?」
急展開過ぎる場面に私は動揺しながら静雅さんに問いかけると、彼は人差し指を振りながら答えました。
「オレの能力は別名【過程を飛ばす程度の能力】だからな。【勝負の過程】を飛ばし、オレが【勝った】事に、お空は【負けた】事を思い込ませた」
静雅さんの言い分に、お燐はお空に尋ねるように言う。
「お空……静雅と戦ったこと覚えてるかい?」
「うにゅ……戦ったような、戦っていないような……でもお静がここにいるんだから戦ったんだと思う!」
「……お兄さん、お空の鳥頭を随分有効活用しているね……」
「他の人物だと気づいただろうが……相手がお空だからこそ通用したんだろうな。そこは感謝している。無駄な戦いをせずに済んだからな」
「あれ……もしかして私褒められてる?」
「褒めているさ。存分に目の前にあるゆで卵を食べると良い」
「うにゅー♪」
お燐に言葉に彼は応えながら、静雅さんの言葉に機嫌を良くしながらゆで卵を再び食べ始めるお空。
……お空の鳥頭は何とか出来ないのでしょうか……彼女のこれから先が心配です……。
心を読んでいるのを中断している私に静雅さんは行動を促してくる。
「おそらく次の事で最低限の信頼を得た理由が分かると思う。そんなわけで読んでみてくれ」
「はぁ……あなたの行動は心を荒らしてきますね……さすがは荒人神といったところでしょうか?」
「別にそれは関係ないと思うがな……」
私は引き続き静雅さんの心の中を読む。彼が喋るところから始まるみたいですね。
『お前さん……強いな……ここまで追い詰められたのは親友以来だ……』
『あなたもあの巫女並みに強かった……まさかこの力を使っても勝てないなんて……』
『何、オレは今回の運が良かっただけだ。どっちが勝ってもおかしくはなかった……試合には勝ったが、さとりへの思いは十分お前さんの方が強いと感じられたさ』
『そうだもん! 私の方がさとり様の事が好きだもん!』
『あぁ。さとりへの思いはお前さんの勝ちで良い。しかし、お前さんはオレとの弾幕ごっこに【負けた】。そこには変わりはないからな』
『うにゅ……変えられない事実……』
……凄いツッコミたい……! 実際には弾幕ごっこ自体していないのに……!
『そこでだ。オレは元々さとりに会うためにきた。お前さんの好きな物を出来だけ手配する代わりに、さとりの場所まで案内してくれないか?』
『私の好きな物……ゆで卵!? ゆで卵くれるの!?』
『あぁ、できるだけ手配しよう(……見た目鳥の妖怪なのに卵って共食いじゃないか?)』
『あ、でも……さとり様から「知らない人から何かもらっちゃいけない」と言われてるからもらえない……』
お空の悲しそうな声……成程。これから先ほどと繋がるわけですね。静雅さんは思いついたようにお空に話しかけます。
『それだったらオレが手配したものをさとりに渡せば問題ないな。オレから直接もらってはいけないが、【さとり】から与えられるなら良いんだろ?』
『つまり……どういう事?』
『……まぁ、簡単に説明するとオレがさとりにゆで卵を渡す。【さとり】の持ったゆで卵をお前さんに渡す。そうすれば【さとり】経由でお前さんに渡すことが出来るんだ。知らない人からは直接渡されないで、よく知っている人物から受け取ることが出来るからな』
『よくわからないけどわかった! あなたをさとり様の場所に連れていけばゆで卵がもらえるんだ!』
『ぶっちゃけそうだな。そう解釈しても構わない』
……お空はあまり深く考えないから静雅さんの言う事に納得している。その時の静雅さんの心情としては『さとりとやらにお願いしてゆで卵を出してもらうか……』と思っている。本当のことを言うならば私任せ。本当に頭がよく回りますね……。
そして今まで気づいていなかったのか、静雅さんは自己紹介を始める。
『そういえばお互いの名前を知らなかったな……オレは本堂静雅だ』
『……
『何となくイントネーションがおかしかったぞお前さん? しかも苗字は語感が似ているとはいえ、軽くオレを貶しているだろ? 煩悩じゃなくて本の堂と書いて本堂。静かな
『……お静?』
『わーお。凄いあだ名だ。そんな呼び方始めてだな』
『わかったお静! 私は霊烏路空! 皆から【お空】って呼ばれてるからそれで呼んで!』
『何という微妙なスルースキルを使うんだお空は……?』
……まぁ、お空が他の人を名前を覚えようとしているだけ随分違うんですけどね……博麗神社の霊夢さんと守矢神社の早苗さんとの区別がつかないぐらいですし……。
そしてお互いの自己紹介を終えて、話題を変える静雅さん。
『そういえば【お燐】という黒猫知っているか? オレは途中までその猫に誘導されてきたんだが……見失ってしまってな。その猫の事知っているか?』
『お燐? 知ってるよ! 親友だもん!』
『親友か。猫でも友達は大事にしておけよ? それで、多分その猫はオレが地霊殿に来たことを伝えていると思うんだ。親友レーダーとかでその猫に会うか、さとりの所まで案内してくれないか?』
『わかった! じゃあ探してみるから私に着いて来て!』
『(……能力で【無意識に主の場所までたどり着く】という事にしておくか……もしかすると部屋を忘れているかもしれないからな)』
心の映像はここで途切れている。私はお燐に概要を説明し、静雅さんの補足の心の説明を見てみると――
「お空が少し暴れ気味で探して静雅さんの能力でフォローをし、少ししての私の部屋から出てきたお燐を見かけて私の部屋にたどり着いたんですね……」
「あぁ。ちゃんと壊れたところは【直して】おいた」
……彼がいなかったら今頃私達を嫌っていない勇義さん達に頼んで修理してもらっていたでしょうね……問題はその後宴会などを開く分、頼むには勇気が必要なんですけど。
お燐もお空の行動に注意するように言う。
「お空……お兄さんだから良かったけど、悪意のある人物だったら危なかったよ? お空の力を悪用しようとする輩もいるんだから」
「うにゅ……」
お燐の言葉に悲しそうな返事をするお空。まぁ、この機会によく考えてくれるようになればいいですけど──
──急に地霊殿全体が揺れ始める──
「「「「──!?」」」」
私達四人は身構えた。地底を揺るがす地震……いえ、確か過去に霊夢さんの心の内を読んだ限り【要石】を地上に埋め込まれている限り地震は起きない。そうなるこの揺れは何なの!?
未だに揺れているのに対して静雅さん達はそれぞれの反応を見せる。
「何だ!? 地震か!?」
「お兄さんそれは多分ないよ! 過去にあたい霊夢さんといろいろ話したことがあるけど、地上では【要石】というものが地面に埋め込まれているから、それを取り外さない限りは地震が起こりっこないんだよ! 要石を外したのならわかるけど、それだったらもう少し規模が大きくてもおかしくない!」
「うにゅ!? 崩れちゃうの!?」
『でもこの揺れなんか楽しいー♪』
「「「「……え?」」」」
私達は急に聞こえた声──というよりも聞き覚えのある声。振り返るのと同時に揺れは止んだけど……黒い帽子を被って、緑の襟元に黄色系統のシャツ。そして緑のスカートに──私と違って瞳を閉じている【第三の目】。
正真正銘、その場にいたのは──
「──こいし!?」
「あ……意識しちゃったから能力解いちゃった」
──古明地こいし。この世界でただ一人の──妹がそこにいた……。
無意識少女参戦。
ではまた。