幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 働きたくないでござる。
 裏主人公の物語だが、視点は三人称。
 では本編どうぞ。


裏・第二章
一話 『裏主人公、能力の利便性』


 紅魔館のメイド、十六夜咲夜の朝は早い。朝早くに起床し、能力を使いながら、紅魔館の隅々までまんべんなく掃除をする。掃除が終わったら、朝食の支度をし、門番が寝ていたらナイフを投げる。吸血鬼姉妹の機嫌を伺った後、食事はどうするか聞き、図書館に引きこもっているレミリアの友人パチュリーに食事を運ぶ(使い魔は自分でできることを自分でやっている)。

 

 食事云々はともかく、ある外来人を雇ったおかげで十六夜咲夜の仕事が減るはずである──実際にはものすごく減っているのだが。

 

 その外来人、本堂静雅はどうしているかというと──

 

 

 

 

 

「──パイナポォ〜革命〜……Zzz──」

 

 

 

 

 

 ──意味不明な寝言を言いながら、十六夜咲夜が仕事をしている最中、眠っていた。

 

 

 

 

 

 

「雇ってからここ数日……肉体労働的な意味で静雅が働かない?」

 

「はい……肉体労働的な意味で。今、ようやく起きて朝食を摂られています」

 

 十六夜咲夜は主人であるレミリア・スカーレットに静雅について報告していた。

 

「まだこの時間帯の朝なら私はちょうど起きていたけど……お灸を据えなくちゃいけないかしら? 数日もまともに働いていないなんて──」

 

「いえ、結果的に見るとちゃんと働いているのです」

 

「? 結果的? それはどういうことかしら?」

 

 レミリアは咲夜の言い方に疑問を覚えたので詳しく聞いてみることに。

 

「彼の能力で【仕事を終えた】事象ということにして、私が頼んだ場所の掃除が既に終わっていることになっているのです」

 

「……………………えっ」

 

 意外すぎることだった。レミリアは静雅の能力【事象を操る程度の能力】は知っている。本人が望む事象なら【攻撃が効かない】や【本を片付け終えた】ことができると聞いていた。だが、それは一つでの対象でだと思っていた。咲夜が指示した場所は一つどころではない。ましてや咲夜の能力で紅魔館を広くしている。能力を使っての掃除なら咲夜もやっている。

 

 しかし、咲夜と静雅の違いがある。咲夜はあくまでも時を止めて、咲夜だけ行動し、その箇所を実際に掃除をしている。時を止めている中、咲夜はきちんと肉体労働的な意味で働いているのだ。

 

 だが、静雅は違う。静雅は咲夜の言われた細かなことを一つにまとめて、能力を発動。パチュリー曰く、別名【過程を飛ばす程度の能力】とも言われており、掃除する過程を飛ばしているのだ。咲夜がその場所を確かめに行ったが、本当に綺麗になっている。

 

 簡単に言えば、念じれば掃除完了なのだ。

 

「それに静雅曰く、『毎朝オレが担当している掃除場所は、朝6時頃には掃除が終わっている事象にしているから』とらしいです」

 

「……えぇー?」

 

「ちなみに私が担当している場所も能力で綺麗にしてやろうかと言われましたが……断りました。習慣付いたことを怠けると後々大変ですからね」

 

「うん……咲夜には悪いけど、いつも通りにしてちょうだい……」

 

 レミリアは少し悩んだ。彼の能力が強大すぎるのでは無いかと。

 

(……静雅の運命を少し弄った方が良いかしら……? さすがにこれでは私に対する敬愛がなさ過ぎるような気がする)

 

 そう思い、レミリアは能力を使って静雅の運命を改めてみることにする。

 

 ……だが。

 

(──!? 運命が見られない!? どういうこと!?)

 

 急に主の態度の豹変に気づいた咲夜はレミリアに話しかける。

 

「……お嬢様? いかがなさいました?」

 

「少し静雅の運命でも見ようとしたのだけど……何故か見れないのよ」

 

「!? 静雅の運命が見られないのですか!?」

 

『何か呼ばれた気がしたから来た』

 

「「っ!?」」

 

 急に聞こえた第三者の声。その声に警戒心を持って振り返る。幻想郷屈指の実力者であるレミリアがここに来るまでの気配を感じ取れなかったのだ。

 

 しかし、その声の主はもちろん。

 

「静雅っ!? どうやってここに!? 私があなたの気配を感じ取れなかったわよ!?」

 

「私もです。お嬢様の部屋に来るには扉を開けなくてはいけないのですが……扉の音すら聞こえませんでした」

 

 そこには学生服を着崩した静雅が二人の近くに立っていた。

 

 だが、静雅の答えは簡単だった。

 

「そのことか? 能力で【レミリア嬢の部屋に移動した】事象で移動した」

 

「「…………」」

 

 この時、二人は思っただろう。

 

 ──でたらめすぎる。

 

 そんなことを気にせずに静雅は改めてレミリアに理由を問いかけることに。

 

「それで何となく、オレについての話題に話しているような気がしてきたんだが……違かったか?」

 

「いえ、合っているのだけど……今後一切、能力で一気に私の部屋に来るのを止めなさい。ドアをノックして了承を得て入ること」

 

「了解した」

 

 レミリアの言いつけに静雅は返事をした。

 

「よろしい……本題に移すわ。私の能力で静雅の運命を見ようとしたのだけど、何故か見れないのよ? 何か変なことでもしたかしら?」

 

「……あー。そのことか」

 

 拳を顎につけながら静雅は答える。

 

「パチュリーに弾幕ごっこについて教えてもらった後、改めてオレの知ってる範囲で住人の能力について整理してたんだ」

 

「(パチュリー様を呼び捨てにしているんですね……? まぁ、あの方なら気にしない範囲でしょうけど)」

 

 堂々とした態度にある意味咲夜は感心した。

 

 静雅はレミリアに説明を続ける。

 

「それで、この紅魔館での主である、レミリア嬢の能力が強すぎる。咲夜の時を止める能力も凄いが、ここの支配者だけであって運命を操るレミリア嬢には敵わないだろう」

 

「ふむ。ちゃんとそこは理解しているのね」

 

「そして、運命を操ることについて──もしかしたら、何かの不祥事でレミリア嬢の逆鱗に触れ、悲惨な運命をするかもしれないと考えた結果──オレの能力で【運命に縛られない】事象を自分に施した」

 

「待て。その考えはおかしい」

 

「ということは……静雅自身に施した事象で、お嬢様は運命を操れなかったのですか?」

 

 咲夜の疑問に静雅は同調する。

 

「おう。その様子だとオレの運命は操れなかったみたいだな。いや〜良かった良かった。オレの人生に能力が効くかどうか不安だったが……問題ないみたいだな」

 

 満足げな表情で頷く静雅。

 

「(……この【事象を操る程度の能力】の力が計りきれない! 一体どこまでのことが可能なのこの男は!?)」

 

 レミリアは強大な能力である【事象を操る程度の能力】に焦りを覚えた。レミリア自身の能力は【運命を操る程度の能力】。運命を操るレミリアの能力と静雅の能力の優位性は静雅の方が強いことになるという証明だった。

 

 しかし静雅は何処吹く風。レミリアに気にかけず咲夜に話しかける。

 

「咲夜〜ここに住み込んで数日はたつんだし、買い出しついでに幻想郷を案内してくんないか? いい加減地理を把握したいし」

 

「え、えぇ……お嬢様。買い出しがてら、静雅に幻想郷の案内をしてきてもよろしいでしょうか?」

 

「……構わないわ。行ってきなさい」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ行ってくる。レミリア嬢」

 

 二人は会釈をしながら、レミリアの自室を出て行った。

 

 そして、レミリアは深く考え始める。

 

「(……スキマ妖怪はなんのためにあの男をここに送り出した? 気まぐれだとしても何か重大な理由があるはず。能力面で見たら、スキマ妖怪のそばに置くはずぐらい、喉から手が出るほど強力な能力のはず……)」

 

 そう考えて、レミリアは自分で成し遂げない、あることが可能ではないかと考え始めた。

 

 

 

 

 

「(──! もしかすると、フランの狂気も何とかできる──!?)」

 

 

 

 

 

 ──レミリアは、今後のことについて考え始めた……。

 




 裏主人公の能力がチート過ぎる。運命をあらがえるってどういうこと?
 【運命に縛られない】事象についての補足。本編の説明ではレミリアの能力が効かなくなる。それに踏まえて、【理不尽な死】について無効にすることが出来る。現在の裏主人公の【死】の条件は老衰。自然死以外では死なない運命になる。死なないとはいえ、致死量の出血は寸止め、瀕死の状況から奇跡的に生き延びる程度。痛いものは痛い。不老不死ではないので注意。
 ではまた。
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