幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

200 / 267
 無意識「解せぬ」
 裏主人公視点。
 では本編どうぞ。


六話 『古明地姉妹』

「……さとりに妹がいたんだな……それにいつの間にいたんだ?」

 

 妙な揺れから急に出現した、さとりの妹──古明地こいしにオレは尋ねてみる。するとこいしはこう答えた。

 

「あなたが地底の入り口に立っていたときからいたよ? それでしばらく観察してたの」

 

「何? オレの追っかけしてたのか? それだったらオレとかヤマメ達が気配を感じてもおかしくないと思うんだが……」

 

 オレの疑問に姉であるさとりが少し困りながらも、口を開いてくれては説明をしてくれる。

 

「こいしは【無意識を操る程度の能力】を持っているので、その無意識でこいしの存在を認識出来ないんですよ……」

 

「犯人は無意識だからしょーがない♪」

 

 さとりの説明によれば無意識のうちにこいしの存在を認知できないらしい。オレが過去にやった【空気の事象】に少し似ている気がするな。

 

 だが、オレの素朴な疑問が一つ。

 

「さとりとこいしは姉妹なんだろ? 姉妹それぞれ能力が違う──ってことはないな。さとりの第三の目は開いているし、それに対してこいしの第三の目は閉じている。第三の目を閉じることによって能力が変わるのか?」

 

「「「…………」」」

 

「うにゅ? どうかしたの?」

 

 オレがそう質問してみると──お空以外は気まずそうな表情に変わってしまった。

 

 ……もしかして触れてはいけない内容だったのか?

 

 オレの心の中の疑問に察しが付いたのか、さとりは少し遠慮がちに説明しようとしたが──

 

「いえ……そうではなく──」

 

「私はね、心を読む能力を捨てたの」

 

 姉であるさとりの言葉を遮ってこいしが答えてくれたのに対し、それに少し意外そうに会話に参加するお燐。

 

「こいし様? 言っても良かったのですか?」

 

「いやぁ……だってほとんど核心に近いじゃん。それだったら教えてあげよっかなって」

 

 そう言いながらこいしはオレの方へ体を向けて、会話を続ける。

 

「心読んだってしょうがないもん。それだけ」

 

「そうか? 心を読めるということは情報にはもってこいだろ? 人の弱みだって握れるし、隠し事だってお茶の子さいさいだ。不便な点は無いと思うんだが……」

 

 率直にオレの思ったことの発言に少し困ったように言葉を返すこいし。

 

「うーん……あなたは人の心を読めたことが無いからそう言えるのかもしれないけど……まぁ、いいや。人の意見はそれぞれだからね」

 

「随分寛大な心を持っているな、お前さん」

 

「だってそうじゃないと残りの人生やっていけないじゃん。心を読むより、今日みたいなあなたの行動を隠れてみてた方が随分楽しいし」

 

「もしかしてヤマメ達の会話やパルスィ、勇義に──さっきまでのオレ達の会話も聞いてたのか?」

 

 オレがそう問いかけてみると、先ほどとは打って変わって笑顔を見せながら肯定した。

 

「うん♪ 特にパルスィ関連の時は面白かった♪ ヤマメ達と漫才してたり、パルスィを困らせたり、ちょうどよくお燐が通りかかって勇義に連れていかれたりとか面白かったよ」

 

 こいしの話を聞いては、お燐にさとりは通りかかった時の詳細を求める。

 

「……まぁ、お燐はその場に偶然鉢合わせたんでしょう?」

 

「はい……何か呼ばれている気がしたので通りかかったところを」

 

 ……あれはタイミングが良かったからなぁ。パルスィが綺麗にフラグを建てたところとか。

 

 そして――こいしはある会話の部分をピックアップ。

 

「それで──お姉ちゃんと静雅って愛人っていう大人の関係だったんだね。それはもっとびっくりしたかな」

 

「こいし!? 話を聞いていたんだからそれは嘘という事はわかるわよね!?」

 

「え? いっそこれからなるんじゃないの? お姉ちゃんと静雅がこれから毎晩【この発言は事象として認められない!】しようぜ的な──あれ? 今私の言葉が変だったような……?」

 

 何やら危ない発言をしようとしたこいしをオレは察し、能力で妨害。呆れながらもオレはこいしに無駄かもしれないが注意の言葉を投げかける。

 

「こいし。見た目は幼女なのに何て発言をしようとしているんだ……オレの能力で防げたが、ここには純粋な思考を持っている奴もいるんだから毒さないでくれ……」

 

「えー? 私悪くないもん! 無意識が犯人だからしょーがないじゃん」

 

「今頃無意識は『解せぬ』と言っているだろうな……」

 

 姉はおとなしいというのに、妹は随分フランクだな。スカーレットシスターズとは大違いだ。そしてお燐はお空の耳を塞いでくれていてフォローしてくれ助かったが……。

 

 しかし……さとりは妹に弄られて顔を赤くして言葉を続けるが……多分、逆効果だと思いつつ傍観してみることにした。

 

「大体お客様の前でそんな発言をしない! はしたない女性だと思われるわよ!?」

 

「何々? お姉ちゃんは【愛人】の関係に不満なの? オコなの?」

 

「なっ……!? そういう問題じゃありません! 最後の言葉はわかりませんがそういうのではないんです!」

 

「お姉ちゃん、まともに異性と【この発言は事象として認められない!】だもんねー……この際、静雅の能力は気にしないでおこう♪」

 

「せっかく静雅さんが最低限の被害を抑えているというのにまだそういう発言をするのですか!?」

 

「そうだよねー。私も静雅と【愛人】よりは【恋人】関係の方が良いもんねー」

 

「愛人よりは恋人の方については確かに同意しますが──って私も!?」

 

「ねぇねぇ静雅ー。お姉ちゃんは【愛人】として、私を【恋人】にしてよー? 良いでしょ良いでしょ?」

 

 姉を弄りまくった挙句、オレにも話を振ってきたな。

 

 ……まぁ、さとりに助け舟を出すとするか。

 

「実はオレ、今じゃ愛人も恋人も募集していないぞ? そういう申し出はありがたいが、受け入れることが出来ない」

 

「ちぇー。そこはお姉ちゃんを弄りまわすんじゃないのー? さっきまでお姉ちゃんにツッコミをたくさんさせていたのにー」

 

「さとりはオレの心を読んで冗談だと把握しているから弄っているんだ。反応が面白いから」

 

 オレの発言にさとりは「しょうがない人ですね……」と発言しているが、今のオレの発言に興味を持った事柄があったのか問いかけてくるこいし。

 

「……静雅は心を読まれても構わないの? さっき言った通りに【人の弱み】や【隠し事】だって今暴かれているんだよ? それっておかしくない? 静雅だって邪な考えとかする時あるでしょ?」

 

 ……【心を読むことを捨てた】事と何か関連があるんだろうか……?

 

 だが、オレは思っていることを言ってみる。これはさとりは心を読んでもう知っている事柄かもしれないが──

 

「さとりは常識人だから別に構わない。それこそ、【心を読む程度の能力】の持ち主の分かれ目だからな。さとりはお燐やお空を大事にしているし、オレにも丁寧に扱ってくれている。確かにもしも情報通りで地底の妖怪が忌み嫌われているようだったらオレの能力で常時読めないようにしているさ。だが……実際は違う」

 

 そこで一先ず言葉を区切り、オレは思い返しながら話を続ける。

 

「キスメは面白いところがあるし、ヤマメとは話が合う。パルスィは口では罵倒が多いがなんだかんだ丁寧に対応してくれるし、勇義は出会ったばかりのオレと友好的に接してくれた。それでお燐とお空は主思いでもあるし、親友通し仲良くやっているようだし。運で偶々人柄の良い妖怪と出会ったのかもしれない。その態度を無下にするわけにはいかない。地底にやって来たばかりのオレをこんな良い対応してくれたんだ。少なくとも、地底で出会った妖怪達にオレの姿を隠したくない。オレだっていろんな奴と友好関係を持ちたい。その前に──その人物に心を開いて、もっと友好的になりだいんだよオレは。そのためだったらオレは心を読まれても構わない」

 

 オレが思っていることを言ってみるお燐は「嬉しいことを言ってくれるねぇ、お兄さん」や、お空は「私もお静と仲良くなりたい!」と言ってくれている。少なくても、オレが出会った地底の妖怪は善人だと信じている。

 

 補足するようにさとりはこいしに説明。

 

「……静雅さんの心の中を読んでも、本音ですよこいし。彼は心の中で思っていることをそのままこいしに伝えています」

 

「……何ていうかなぁ? たまに噂で外来人は【変人】ばかりいるっていうけど……静雅はその表れなのかな?」

 

「少なくともオレが【変人】だという事は自覚しているさ。よくオレの行動を指摘されている」

 

「自覚あるんだ……」

 

 こいしの呆れ声が聞こえるが、それでも尚、オレは思っている事を伝えてみる。

 

「何なら――こいし、オレの心を読んでみるか? オレは大歓迎だぞ?」

 

「…………」

 

 ……ん? 何故か黙ってしまったな。それで助けを求める意味合いでさとりに視線を向けてみるが……人差し指を自身の唇に当てて「静かにしてください」という事だろうか……? とりあえずこいしに体を向けなおしてみたら──

 

「…………ちょっとトイレに行ってくる…………」

 

 何故かそそくさに客室からこいしは出ていってしまった……?

 

 その様子にお燐とお空は珍しそうに言う。

 

「……こいし様、動揺しているように見えたんですが……?」

 

「お燐の言う通り、何ていうか……その――」

 

「気まずそう、か?」

 

「そうそれお静!」

 

 お空の考えを補足すると、満足そうにうなずいて言った。まぁ……心でどう思っているならさとりに聞けば早いだろう。

 

 オレの心を読んでなのか……どうしてか歯切れの悪いようにさとりは言う。

 

「すみません、静雅さん……こいしの心は読めないんです……」

 

「は……? 読めない? それはどういう事なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「こいしの第三の目を閉じている意味は──心を閉ざしている事なんです」

 

 

 

 

 

 

 

「……心を閉ざしている?」

 

 意味深なオレの言葉に説明していくさとり。

 

「……こいしは前までは私と同じ【心を読む程度の能力】を持っていました。しかし……私達がこの地霊殿に移り住むまでの間、私達は嫌われていました……【心を読む程度の能力】は静雅さんの言う通り、【人の弱み】や【隠し事】を見抜けるのと同時に……【邪な思考】さえもわかってしまうんです。言葉では心配するような、善意な言葉に裏にある心は私達を罵倒したり、嫌悪感があったりなど……当時の【心を読む程度の能力】は忌み嫌われるものとして代表なものだったのです」

 

「……おい、それってさとりとこいしは悪くないだろ? どう考えても悪いのは【邪な思考】を持っている奴らじゃないか!」

 

 おかしすぎる。心を読める程度でさとりとこいしを嫌う? そいつらはどんだけ性格が捻じ曲がっていたんだ!?

 

 ……また、オレの心を読んでか、少し嬉しそうにさとりは言う。

 

「また……心からそう思ってくださるのですね。せめて、あなたがこいしの傍にいられたら……心を閉ざすことはなかったかもしれません」

 

「……じゃあ、こいしの言っていた『心読んだってしょうがない』と言っていたのは……!?」

 

「……察しの通り、そのような思考を心で読みたくなかったのです。第三の目が開いている限り、その人物の心を読み続ける……それをこいしは嫌悪した。『心を読んだって、私を嫌うような事ばかりしか読めないならこの能力はいらない』という事で、第三の目を閉じることによって【心を読む程度の能力】を封じ込めたんです……即ち、心を閉ざすことによって。それと同時にこいしは【無意識を操る程度の能力】を取得しましたが……」

 

 ……心を閉ざしている、か……あいつは今の心の状況は……どうなっているんだ……。

 

 そしてオレに察したのか、さとりは話題を変えて話を続ける。

 

「……本来の予定としては同行者がいる予定でしたか。それで都合が悪くて、下見もかねてここへと……よろしかったら後日、また来てください。その方の状態を見てさしあげます」

 

「それは助かるが……良いのか? オレ、迷惑を掛けているような気がするが……?」

 

「まぁ……そうですけど――」

 

 そこで言葉を区切りながら、少し笑顔を浮かべながらさとりは言った。

 

「──静雅さんの本心からの言葉で、一瞬ですがこいしの第三の目が揺さぶられていたんです」

 

 ……オレの言葉で第三の目が揺さぶられた……つまり、心が何かしらの反応があったという事か!?

 

 その事にお燐とお空が反応。

 

「さとり様!? それは本当なのですか!?」

 

「こいしが退席したのも、それを隠すためしょう」

 

「良くわからないけど【良い事】っていうのはわかった!」

 

「……えぇ。その通りよ、お空」

 

 お燐達の言葉に同調しながら、さとりはオレに話を戻す。

 

「静雅さんは【心を閉ざしている】という事で、こいしを重ねているそうですね。それはあなたのトラウマの一部なんでしょうが……」

 

「……まぁ、心を閉ざして壊れていないだけまだこいしはマシな方だ」

 

「こいしはよく能力を活用して地上をフラフラしています。それでもし、こいしを見かけることが出来たのなら……妹をよろしくお願いします」

 

「……まぁ、見かけることが出来たらな。任せておけ」

 

「はい、その時は」

 

 ちょうどさとりと話を終えたころだろうか……こいしが扉を開けて戻ってきた。見た目上は何にもないように見える。

 

「ただいまー」

 

「こいし……花を摘むには長かったですが……まぁ、深くは聞かないでおきましょう」

 

「む~お姉ちゃんのその余裕な態度……ちょっとふらついてパルスィ達の様子を見に行っただけなのに……」

 

 唇を尖らせながら不機嫌そうに言うこいしの言った言葉で、オレは用事を思い出しては呟いた。

 

「そういえば勇義達の宴会に参加してこないとな……さとり、お燐、お空。そして──こいし。世話になった。時間を見つけてまた来る」

 

「えぇ。その時に」

 

「今度来たときはもっと外界の話を聞かせておくれよ!」

 

「お静、またね!」

 

「……ねぇ、静雅……」

 

 別れの挨拶をしている時に、こいしがオレを尋ねるように言ってきたので、こいしの目線に合わせて腰を下ろして聞く。

 

「どうしたんだ? オレのとの別れが寂しいのか?」

 

「……私、地上まで案内してあげようか?」

 

「お、ナビしてくれるのか? それはありがたい」

 

 実際には必要ないんだが、こいしからオレに触れてきたんだ。この厚意を受け取るべきだな。

 

 その事に察したさとりは、頼むように言う。

 

「では静雅さん、妹が迷惑を掛けると思いますが……よろしくお願いします」

 

「おう。任してしまえ」

 

「え~? 迷惑を掛けるつもりなんてないのにー」

 

 そうこいしは言いながら何故かオレの肩に乗ってくる。オレがこのまま立ち上がると……肩車になるな。

 

 その事にさとりは少し呆れながら言った。

 

「……さっそく迷惑を掛けているじゃない……」

 

「犯人は無意識だからしょーがない♪」

 

「まぁ、言うなさとり。オレだって異性とこんなことが出来て嬉しいオレがいるんだからな。構わないさ」

 

「……あなたはよく自分の思っていることを口にしますね……まぁ、正直なだけ好感は持てますが」

 

 しかし……肩車するのはフラン嬢だけだと思っていたんだけどな……人生、何があるのかわからないな。

 

 オレは挨拶を仕切りなおしてさとり達に言った……ついでにこいしも。

 

「じゃあちょっくら宴会に寄ってから帰る。またな」

 

「お姉ちゃん、行ってくるね!」

 

「……えぇ。行ってらっしゃい」

 

「お兄さん、こいし様を頼んだよ♪」

 

「行ってらっしゃいこいし様! お静!」

 

「(……お空、オレは帰ってこないんだけどな……)」

 

 少しお空の頭には心配したが、とりあえず歩きで宴会の店へと向かった……。

 

 

 

 

 




 次話で裏の章自体の話は終わりです。

 ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。