裏主人公視点。
では本編どうぞ。
宴会会場に向かってみるとすでに酒の入った瓶が数十本開けられていた。キスメはもう酔いつぶれて寝ているが、ヤマメが彼女の頭を撫でながらもこちらに気付き、話しかけてくる。
「やっほーしずまっちゃん──ってあれ? 肩に乗っているのって地霊殿の主の妹であるこいし? どしたの?」
「帰る際のナビであり、多分──ここの騒ぎに参加したいという理由でオレに引っ付いているんだと思うぞ?」
「あちゃー見抜かれてる。やっぱり能力でわかるの?」
「なんとなく思っただけだ。それと……今の状態はどうなっているんだ?」
オレがそう尋ねてみると──少しだけ離れた位置で酒をちびちび飲んでいたパルスィが話しかけてきた。
「今頃来たのね。それに肩車までしてイチャイチャしているようで本当に妬ましいわ」
「お前さんは妬ましいって言わなきゃ気がすまないのか……?」
「イチャイチャ~♪」
パルスィの言葉に肩の上でリズムにノッているこいし。フリーダムだよな、こいしは……。
ここは苦労人のパルスィに尋ねてみるか。
「現状はどうなっているんだ? それに宴会の発案者である勇義がいないようだが……?」
「あぁ、勇義は──あそこよ」
パルスィの指差した場所にオレとこいしは視線を向けてみる。すると──
「──プハァ! もう二、三本持って来い!」
『あ、姐さんのペースが速すぎて俺、もう限界……』
『あきらめるなお前!? ここで負けたら勇義さん達の分の金を支払わなくちゃならないんだからな!?』
『三人がかりでも負けているとは……!? もうすぐ時間切れになっちまう!?』
「ほらほらお前達ももっと飲まないかっ! まぁ、払うんなら別にそれで構わないけどなっ!」
「──私達の宴会代を稼いでいるところよ。勇義に酒比べに三人で挑んでおいてもう負けているに近いから……適度に好きなだけ食べたらいいんじゃない? 地霊殿の妹さんも」
「あ~あ……勇義にお酒で敵うわけないのに……」
どうやら金の心配はなさそうだ。肩に乗っかっているこいしは気の毒そうな声で場を語っている。萃香もそうだったが……鬼は酒が好きなんだな。三人の男も鬼みたいだが、勇義はさらに別格だ……。
そしてこちらの視線に気づいたのか、勇義はオレの方を見ると……さらに気分を高揚させたような感じで遠くから話しかけてくる。
「おっ! 静雅にさとりの妹じゃないか! 二人とも仲良くやっている見たいだな!」
「おう。それなりに」
「私達カップルに見える?」
「はははっ! 見える見える! どうやらこいしはご機嫌みたいだな!」
勇義は冗談を流しているが、オレはこいしの言葉に少し気になり声をかける。
「それも無意識か?」
「……流されちゃった。女の子がそういうこと言っているのにノリが悪いよ静雅ー?」
「すまないな。その関連ネタはもうヤマメで使っているんだ」
「知ってるけど……ぶー」
少しこいしは唇を尖らせながら不機嫌そうに言っていたが、本意かどうかわからないな……まぁ、彼女の言う通りにノリで言ったのかもしれないが。
オレ達の存在は確認してか、勇義はさらに飲むスピードを上げ始める。
「よぉーしっ! せっかく宴会のメインが約束を守ってが来たんだ! 大差で勝負をつけてくるからちょっと待ってろ!」
『もう勘弁してくれ姐さん~……もう勝ち目がねぇよ~……』
さらに差が着いて行くのを見て、キスメの入った桶を抱えて傍に来たヤマメが一言。
「ご愁傷様としか言いようがないね♪」
「ここまで来ると挑んだ方が可哀想になってくるな……」
そして鍋が叩くような音が聞こえてきて──勝負がついた。勇義の圧勝。そして三人の鬼が落ち込んでいるところに勇義は話して……終わったところで酒ビンを持ってオレ達の所にやってきて言う。
「待たせたな! 今日の宴会の金は気にしなくていい! 飲んで食って騒げ!」
「いや、そこは適度にしておこう勇義。あまり人様の金で食うのは気が引ける。迷惑が掛からないぐらいに食うから。こいしもそうだろ?」
「え? ダメ?」
「ダメだ。適度に食え。食いすぎると地霊殿での飯が食べられなくなるからな」
「はーい……」
こいしは渋々従った。さすがに見ず知らずの人物の金を使いすぎるのは遠慮するからな……。
オレとこいしの会話に、感心したように勇義は言った。
「ほぉ……見た目の服装に反して、気遣いがあり、正直な心を持っているじゃないか。裏表を感じない性格だ。そして会うまでのパルスィ達の親しさ……静雅は友好的な神様なんだな?」
「オレはいろんな人物と関わりを持ちたいだけさ」
「……ヤマメと一緒に私をからかっていた奴が言うセリフじゃないわね……」
「まぁまぁパルパル。いいじゃんそのぐらい。それが静雅の性格なんだからさ」
パルスィに妬ましい声で言われるが、ヤマメがフォローしてくれた。続けて勇義は言う。
「そうか……なら、適度でいいか。つまみを適当に二つ、酒ビン一つにしておくか。お前さん達、この男に感謝しておきな!」
『『『あ、ありがとうございます!』』』
勇義が落ち込んでいた三人組に声をかけると彼らは立ち上がり、腰を九十度ぐらい曲げながらお礼を言ってきた。
「別にそこまで畏まらなくても良いんだけどなぁ……」
何がともあれキスメは寝ているが、小宴会みたいなノリになり、オレ、こいし、ヤマメ(withキスメ)、パルスィ、そして勇義で机を囲って適当なものを注文し、それぞれ食べる。そして何となくこいしは酒を飲んではいけないイメージがあったのでジュースを注文。こいしは不満そうだったが。
軽い雑談をしながら話していると、勇義からとある話題が振られる。
「なぁ、静雅やこいしは感じ取ったか? 物凄い【力】の波が広がったのを」
「物凄い【力】の波……こいし、何のことかわかるか?」
「多分、地霊殿が揺れた事と関係あるんじゃないかな?」
こいしの言葉にヤマメ、パルスィも会話に参加しながらそれぞれ言葉を交わす。
「そっちも揺れたんだ? 揺れたときはびっくりしたよ」
「ただの揺れだと思うんだけど……勇義はその揺れを【力】で感じたって」
「あぁ。少なくとも私はそう感じているさ。私以上の力を感じた」
酒を飲みながら当然な風に話す勇義。さらっと言った言葉にオレは問いかける。
「……は? 勇義って鬼でそれなりに強い分類なんだろ? それってあれか? その【力】の持ち主は勇義より強いって事か?」
「思うね。感じたことのない気配だったが……間違いなく、私より上の存在さ」
勇義の言った言葉が信じられないのか、パルスィが聞き返した。
「……鬼より【力】の強い存在の種族って何があったかしら?」
「総合的に言えばスキマ妖怪や亡霊、蓬莱人という不老不死か? そいつらも強い存在かもしれないが……私や萃香のように攻撃力特化の【力】を持つ種族より上の存在は聞いたことがないな。それだけじゃない。全てにおいてその【存在】が上回っているような感じだ」
勇義の言った鬼より上位互換の種族……それってもしかすると──いや、まさかな……。
オレは空気を変える意味合いも含めて、話題を変える。
「今はそれについて話し合いしても証拠が足りないな。確信までいかないが……一先ずは食おうぜ? 料理が冷めちまう」
「……そうするか。それにしても、もしその【存在】の奴が近くにいるならば闘ってみたいねぇ!」
「鬼は相変わらずお酒と勝負事が好きなんだから……妬ましくはないわね。勝手にやって頂戴」
「じゃあさっさと食べちゃおう! しずまっちゃんの歓迎も含めてさ♪」
そしてまた違う雑談をしながらオレ達は飲み食いを始めたが――
「…………」
こいしはオレの何かを感じ取っているような表情をしていた……。
「こいし。ここまで良い。ナビありがとな」
「私が興味があって同行しただけだからね。気にしなくても良いよ」
地底の出入り口まで到達したオレ達。宴会は終わって、パルスィ、ヤマメ達を別れて最後にこいしと雑談していた。
「それにしても……今も肩車をしているが、何故乗っかったんだ?」
「だって静雅って背が高いじゃん。飛んで風景を見るのも良いけど、それは疲れるし」
「その分、オレに疲労が積み重なるけどな……」
「男の子なんだから頑張れ♪」
こいしは本当にフリーダムだ……ジャンプするようにしてオレから降りた。そして──ある事を問いかけてくるこいし。
「……勇義の言う【力】の持ち主に心当たりがあったの?」
「お? 知らない間に第三の目を開けていたのか?」
「違う違う。何となく表情でおかしいなって思っただけ……どうして勇義達には黙ってたの?」
オレの冗談を躱して本題に触れてくる。
……まぁ、少し言ってみるか。
「確定的ではないが、心当たりはあったんだ。鬼より上位互換の種族がいたなってよ」
「そうなんだ……それで? それって何なの~?」
……答えても良いんだが、少し弄ってみるか。
「口では言わないぞ?」
「……え? それじゃあ絵で表現するの?」
「違う違う。単純に──オレの心を読んでみればいい。それでわかるはずだ」
「……………………えっ!?」
かなり意外そうに驚くこいし。さとりから任されているんだ。少しでも力にならないとな。
まぁ……悪戯心も含めてオレはこいしに話し続ける。
「別にオレはこいしにマイナスな感情を持っていないぞ? それは保障する。だから読んでみてみ?」
「で、でも……急にそんなことを言われても──」
「こいし。別にオレは強要するつもりはない。読まないんだったらそれで構わないんだが──」
言葉を区切り、オレは大事なことを言葉にしてこいしに伝える。
「──お前さんが心を開かなくても、こいしの事を信頼している人物がいるんだぞ? お前さんは一人じゃないんだ」
「…………一人じゃないって……【心を読む程度の能力】でお姉ちゃんと一緒に嫌われているのに? 現に今だってお姉ちゃん、私の事を嫌っている人もいるんだよ?」
……間違ったことは言っていないと思う。それが原因でこいしは心を閉ざしたことには変わりはない。
だが、一日だけだが。わかっていることはあるつもりだ。
「お前さんの家族は心配しているぞ? さとりだって、お燐だって、お空だって。それにキスメは寝ていたが……ヤマメ、パルスィ、勇義だって友好的だったじゃないか。他の人物だったら無理に心を開けとは言わない。だが──オレの挙げた人物に関しては心を開いても問題ねぇよ。保障する。さとり達はこいしの事をマイナス面で見ていないさ」
「……お姉ちゃん達が……」
「いきなり心を開けとは言わない。改めて緊張するかもしれないからな。むしろ、こいしをオレの親友に重ねているかもしれないが……リハビリという意味合いで、オレの心を読んでみればいいさ」
「…………」
こいしは無意識だろうかわからないが、両手で自身の第三の目を包む込むように触る。
そして──第三の目の瞼が──
「──やっぱりダメ────っ!!」
急にこいしはそう叫ぶように言うと、身を翻して座り込み、帽子を深く被って顔をそむけている。
……惜しい。もう少しで開きそうだったんだが……。
「こいしー? 無理には言わないが良かったぞー? こんなオレに心を開きかけてくれてー?」
「(うぅ……無意識で開きかけちゃった……)」
「……また一つ、フラグを建ててしまったな……」
「む~……静雅が卑怯すぎる……」
帽子を深く被りながらも、立ってこちらに振り返って来た。
……きっと顔は赤く染め上げていると思うと萌える。でも、オレには──
「静雅……ちょっと耳貸してもらえる?」
「ん? 何だ? 相談事か?」
オレはこいしに促されるまま、腰を落としてこいしの目線に合わせて耳を傾ける。
そして、こいしはオレに近づき──
「……ん──」
──頬に何か柔らかいものが押し付けられた。
……………………いやいやちょっと待て!?
「こいしっ!? 今何を──」
「えへへー♪ 無意識でやっちゃったー♪」
「それ完全に無意識じゃないだろ!?」
「じゃあね!
「ちょまっ!? お兄ちゃん!?」
こいしは逃げるようにして地底に降りていってしまった──って畜生!? まさか仕返しか!? 弄られて腹に立ったから仕返しか!? こいしはまさかそのような行動に移すとは……!?
「……しかもお兄ちゃんとは何事なんだ……?」
兄を呼ぶような呼び方に変わっていた。下手したらオレがロリコンに勘違いされてしまう呼び方じゃないか……!? 人様の妹にそう呼ばれるなんて……!? 妹キャラは陽花とフラン嬢で十分だというのに!
「……この事は胸の内に秘めておこう……事情を話せば……いや、怒るか?」
その事にさとりに能力で読まれないようフィルターをかけ、どう説明するか考えてオレは歩きで紅魔館に向かって行った……。
『──ただいまー』
『おかえり、こいし──? 随分機嫌がよさそうね? それに心なしか顔が赤いような気がするけど……?』
『お兄ちゃんの照れた顔凄い面白かった♪』
『!?【お兄ちゃん】とは誰ですか!? まさかだと思いますが静ま──』
『じゃあ私自室に戻ってるねー♪』
『こいし!? ……行ってしまいましたか。おそらく、静雅さんが何かしてくれたんでしょうけど……閉ざされている心まで荒らすとは……さすがは荒人神ですね。ですが……感謝しないといけませんね……』
次回はフラグ回です。
ではまた。