三人称視点。
では本編どうぞ。
「──よっと。さてとと……あり? ヤマメ達がいないな……」
「少し明るい洞窟だけど……念のため明かりを付けようか」
「……侠って火も扱えるのね……それにあんたの親友の能力も気になるところだけど……」
侠と天子は静雅に能力で連れてこられたのは、過去に静雅がヤマメとキスメと会った場所に移動した。侠は火炎の能力で手元に火を出現させて、辺りを照らしながら静雅に話し掛ける。
「静雅が言っている人の名前って誰?」
「地底に入ってしばらく経った時、ここで黒谷ヤマメとキスメに会ってな。話が盛り上がりながら旧地獄へのナビをしてくれた」
静雅の説明を聞いた後、天子は意外そうに呟くように言う。
「……何か聞いていた話だと、忌み嫌われた妖怪ばっかりという事を聞いたけど、随分友好的なのね? 会ったばっかりのあんたを案内してくれるって?」
「偶然オレが出会った地底の妖怪が友好的なのかもしれないけどな。だが、俺と会った地底の妖怪は中々いいキャラをしている」
「ま、襲いかかってこようならこの【緋想の剣】で斬ってやるけど」
「最低限の自衛はともかく……とりあえず歩いて進んでみるか」
静雅の言葉に従い、二人は静雅を先導にしながら地底を歩いて行く。無論彼は歩いて行く中、侠と天子についての関係について話を聞こうとしていた。
「そういえば侠は天子に友好的なんだな? お前さん自ら名前呼びをしているということは」
「……そういえば何時の間にか天子の事を名前呼びしているけど……天子、不快は気分は無い?」
「別に無いわ。それより、剣士やら霊夢とは違う巫女が言っていたんだけど……あんたの名前呼びがかなり珍しそうにしていたわよ? それってどういう事なの?」
「基本、自分は名字呼びだからじゃない? 寺子屋の子供たちや八雲一家、紅魔館の姉妹とか名前呼びを強制させてくる人以外は皆名字呼びが普通だからね」
「ふーん……まぁ、【比那名居】よりも【天子】の方が呼びやすいのもあるの?」
「……さぁ?」
「いや、そこは頷きなさいよ……」
「(改めて確認出来ることは強制させていない。侠が自ら呼んでいるということは──)」
静雅は二人の会話を聞きながら、侠と天子の関係を探っていた。そして考えが纏まりそうな時──遠くからだが橋が見えてきたのを確認し、二人の会話を中断させた。
「オレから話を振っておいて何だが、旧地獄への橋が見えてきたぞ。それで……オレにとって見覚えのある三人がいるな。ちょっくらコンタクトをとるぞ、お前さん達」
「静雅に任せるよ」
「変な奴じゃないでしょうね? そいつら?」
「良い意味での【変な奴】だ。保証する」
少しだけ彼らは歩くスピードをあげた。静雅が先導してもなお、侠と天子は雑談を続けているが。
そして橋に着くと……すでに橋で雑談していたと思われる三人が静雅達の存在に気づいては、ヤマメを先導のもとにそれぞれの反応を示した。
「あれ? しずまっちゃんだ。それで知らない男の人と女の人がいるけど……」
「…………久しぶり」
「……懲りずにまた地底に来たのね。本当に妬ましい思考回路しているわね……」
「よっすヤマメ、キスメ、パルパル。遊びに来た」
「だからちゃんと私の名前を呼びなさいよ妬ましい!」
旧地獄まで静雅を案内してくれた黒谷ヤマメ、キスメ、水橋パルスィが橋にいた。相変わらずパルスィは苦労人のようだが。
三人の様子を見て、直感に思ったことを天子は言葉にして言う。
「……根暗な奴が一人いるぐらいで、他の奴は私のイメージとは違う妖怪みたいね……」
さすがに天子の言葉にすぐ反応したのであろう。パルスィは妬むように天子に話し掛け始める。
「初対面からよく根暗って言えるわね妬ましい。よほど温室育ちなんでしょうね」
「まぁ、間違ってはいないわね。ただ、そこでの生活は退屈だけど」
「優遇されている環境に不備を申し立てるとか妬ましいわ……どうせそこの男も同じように思って──」
パルスィは侠へを体の向きを変え、自虐的な言葉を言おうとしたのだが……少し躊躇い始めた。その事にヤマメは疑問を思ったので詳細を尋ねる。
「? どうしたのパルパル? いつもの【妬ましい】は?」
「……いや、何て言うか……この男が妬ましいと思えないのよ……何か『それならしょうがない』みたいに。何か妥協できるわ。あなた、一体何者?」
「自分? もしかして知っているかどうかわからないけど……自分は【龍神の先祖返り】である辰上侠だよ」
彼女に問いかけられ、侠は自分が何者かを答えると……パルスィ過去に静雅から教えてもらった断片的な情報を思い出しては、誰もがわかるような驚愕の声をあげた。
「龍神の先祖返り!? それって静雅が言っていた初代龍神の!? 何でこんな地底にいるのよ!?」
「簡単に言うと静雅に誘われて地底に来たんだけど……」
「へぇ〜! この人がしずまっちゃんの親友で龍神の先祖返りなんだ!? もっとゴツいイメージがあったけど、なんか普通の人間っぽい!」
「…………ありがたや」
「いやいや、そんな風に拝まれても何もないから……」
彼の素性がわかるとヤマメは侠の周りを観察するように動き始める。キスメは何故か拝んでいるが。
気を取り直して、侠は若干自分への対応へ苦笑いを浮かべながらも静雅に情報を求める。
「静雅、この人達が旧地獄まで案内してくれた人達?」
「あぁ、そうだ。順番にポニーテールのが黒谷ヤマメ、桶に入っているのがキスメ、さっきから【妬ましい】を連呼しているのがパルパルだ」
「ちょっと!? 幻想郷の最高神に何て紹介の仕方をするのよ!? 変なイメージが持たれるじゃない妬ましい!?」
彼女は相手が幻想郷の最高神の子孫でもあるのか、間違った情報の訂正を静雅に求めていた。確かに理不尽な紹介の仕方で印象がつけられるのは遺憾なのだろう。
しかし、侠は分かっているようで安心させるようにして彼女に話し掛ける。
「大丈夫だよ。静雅の言っていることは冗談っていうのはわかっているから」
「……久々に常識人を見たような気がするわね……でも、助かるわ。私は水橋パルスィよ。決して【パルパル】だなんて呼ばないように」
「わかった、水橋」
「……私の求めていた反応がこれなのよね……いや、ここにいるメンツがふざけている奴が多すぎるのよね……」
「……ご苦労様」
彼女の苦労を察したのか、労りの言葉を彼女に掛けた。
しかし、ヤマメと静雅、キスメは寄り添いながらどこか面白そうに聞こえるように何かを話し始める。
「どうですかしずまっちゃん。パルパルのあの反応?」
「脈ありだな。自分と同じ真面目な人物の出現。あれは何時か惹かれまっせ」
「…………それはそれで喜ばしいこと」
「聞こえるように話をするんじゃないわよ妬ましいわねっ! それと勝手に人の未来を予想しているんじゃないわよ!」
すっかり弄られているパルスィに侠は苦笑いするものの、行動を促すように天子は静雅達に行動を促そうとする。
「あんた達の茶番はもう良いから先に行かない? ここには面白そうな物はなさそうだし」
天子の言葉で侠と静雅は言う通りに次の行動をとろうとしたが、その前にヤマメがまだ素性の知らない天子を引き留めた。
「ちょっと待って。しずまっちゃんの親友である龍神の先祖返り様はともかく、誰? しずまっちゃんとどういう関係が?」
「そういえばあんた達は私の名前を知らないのね……天人の比那名居天子よ。覚えておきなさい。それと別に侠の親友とは特に関係は無いわ」
性格的のもあるのだろうが、少し高圧的な言葉でヤマメ達に言う天子。その事にパルスィが彼女に問いかける。
「前に静雅から聞いた話だと、龍神の先祖返り云々は聞いていたけど……その天人様がどうして真逆の位置にある地底に来たのよ妬ましい」
「侠が地底に行くと言ったから私も着いてきているの。まぁ、そこにいる侠の親友が私もどうかって誘ってきたのよ。こいつはさっき知り合ったばかりだからよくわからないけど……侠の親友なら大丈夫と思ってね。だからよ」
当然のように応えた天子だったが……彼女の言葉でキスメが一言。
「…………要するに龍神の子孫様と一緒なら良いって事」
「ちょっ!? 何でそういう解釈をするのよ!? 単に私は真面目な侠がそういう判断するから大丈夫だと思っただけよ!?」
簡単に要約したキスメの言葉に動揺を見せる天子。キスメに言葉にヤマメ、パルスィ、そして静雅までもが順に天子に話し掛けた。
「あー成程ー♪ 要するに先祖返り様と友人以上の関係なんだ!」
「天人は最高神の子孫にお熱のようね……妬ましいわさっさと爆発しなさいよ」
「どうやら天子は侠ルートに入ったようだな……まぁ、頑張れとしか言いようがないな」
「あんた達好き勝手に言い過ぎよ!? それと勝手にそういう関係にしないでくれる!? まだそういう関係じゃないわよっ!」
「「「「…………まだ?」」」」
「言葉のあやよバカーッ!」
四人に言葉で攻められ、天子は少し涙目で言葉を返していた……。
そして見かねたのか……フォローするように弄った四人に侠は話しかける。
「はいはいそこまで。ここで天子を弄っても何も無いからね? それより静雅。挨拶はもう済んだとして旧地獄に向かわない?」
「……そうすっか。それでパルスィ……一応念のために聞くが、橋を渡っても良いよな?」
「断るに断れないでしょう? 龍神の先祖返りがいたら。だからさっさと通りなさい。それと……また私を強制連行するつもりなら──」
「大丈夫だ。侠がこの場にいるからそのようなことは出来ない。拳という名のツッコミを貰っちまう」
「……出来ればあの時にでもいて欲しかったわ……」
パルスィは溜息をしながら道を空けた。動揺に近くにいたヤマメとキスメも。それを確認して静雅は別れの挨拶を。
「じゃあなー。また会える日には会おう」
「うん♪ じゃーねー♪」
「…………バイバイ」
「さっさと行きなさい妬ましい」
そして静雅達三人は橋を渡った。歩きながら静雅は侠と天子に感想を求める。
「どうだったお二人さん? 地底の妖怪は?」
「思ったより人格とか明るかったね。それで水橋は予想通りだったけど……苦労も多そう」
「私的にはあの桶に入った奴が侮れなかったわ……」
旧地獄までそのような会話が続いた……。
キスメはボソッと大事な事を呟くタイプ。
ではまた。