三人称視点。
では本編どうぞ。
「……まさか私を認識出来る人間がいると思わなかったよ……」
「第三の目を閉じて【無意識を操る程度の能力】ねぇ……。結果的にあれじゃない? 自分は無意識していなくて常に意識していたとか」
「そんなので私を認識出来るのかなー……?」
こいしも会話に加わり、地霊殿メンバー、地上メンバーで机を囲っていた。簡単に見つけられたこいしは不満そうにしているが。
そして──こいしは不満げに言葉を続けた。
「折角【お兄ちゃん】を驚かせようとこっそり入ったつもりだったのにー……」
彼女の言葉で……静雅の表情が固まった。さとりは見当がついていたが……何も知らないお空が何故か驚愕しながらの発言。
「えっ!? お静ってこいし様と兄妹だったの!?」
「明らかに違うだろっ!?」
場違い過ぎる発言にこいし以外の人物はずっこけた。しかし、お空の勘違いは止まらない。
「あれ……さとり様とこいし様は姉妹──つまりさとり様とお静も兄妹!?」
「まずは兄妹という考えを止めろ!? 生き別れの兄妹でも何でも無いからな!? それだったらオレにも第三の目があってもおかしくないだろうよ!?」
珍しくツッコミをやっている静雅だったが……彼女の親友であるお燐がわかりやすく説明する。
「お空、そうじゃないよ。多分、こいし様が静雅の事をそう呼んでいるんだと思う。でも……静雅が地霊殿から帰るときのこいし様は【名前呼び】だったのに……どういう事があったのか、あたいは根掘り葉掘り聞きたいね〜?」
言いながらニヤニヤした顔で静雅を見るお燐。それに対して彼にしては珍しく、冷や汗を流しながら言葉が上手く出ないようだった。
そして、彼の親友である侠は……天子と共に距離を取っていた。露骨な距離の取り方に戸惑いを覚える静雅。
「おい侠……天子……? 何だよそんな露骨な距離な取り方は……?」
「人様の妹に【お兄ちゃん】って呼ばせるってないわー……」
「それについては私も同じね……どんな洗脳したのよ?」
「呼ばせた覚えも洗脳した覚えもないっ! こいしがそう勝手によびはじめただけだっての!?」
「まぁ、どういう事が起こったのかは古明地──さとりに聞いた方が手っ取り早いね。悪いけど読んでみて貰える?」
侠はさとりに頼んでみたが……彼女は首を横に振って答えた。
「……きっかけの心に【モヤ】が掛かってますね。おそらく静雅さんの能力で読まれるのを防止しているみたいです」
「そこまで読まれたくない内容なんだ……? じゃあ、当事者である妹の方に──」
侠がさとりにそう行動を促した時──こいしは何故か頬を赤らめながら先に発言。
「お兄ちゃんは私と【ちゅー】した仲だもんねー♪」
──瞬間、場に沈黙が訪れた。まさかこいしからバラされるとは思ってなかったのか、静雅は先ほどの冷や汗が滝のように流れて見えるくらいに動揺し、口をぱくぱくさせているが。
その中……侠が沈黙を破り、彼に声をかけた。
「えっと……静雅? まさかだと思うけど、さとりの妹──こいしとそういう関係だったの?」
「……はっ!? いやいや違うぞっ!? そもそもキスといってもオレの頬にされただけだっ!! マウストゥマウスじゃないぞっ!?」
彼がこんなにも焦って弁明するのはかなり珍しい光景だった。この弁明で侠自身は理解したが、お燐は確信犯、お空はそのまま受け入れて発言した。
「へぇ〜? こいし様がそういう行動をとられたのは凄く貴重だと思うけど……どんな方法でその行動を促すまで行ったのかアタイは聞きたいな〜♪」
「よくわからないけど、こいし様が楽しそうなのはわかった!」
「お前らペット二人は自重しろっ!?」
「えぇ〜? だってお兄さんが心を読めないようにしてまで秘密にしていた事でしょ? 興味を持つことが必然だと思うよ♪」
これもまた珍しく静雅が弄られている光景だが……天子が呆れながら腰に手を当てては静雅に言葉を。
「……もうそういう事はバレているんだから、心が読める方の覚り妖怪に心を読めるようにした方が良いんじゃない? 口だけ言っても信憑性はないし」
「ナイス案だ天子(てんこ)! 恩に着る!」
「天子(てんし)よっ!? 変な呼び方しないでくれる!?」
彼は天子の言う通り心を読めるようにし、さとりに読んでもらった。そして彼女は何故そうなったのかを把握。
「……静雅さん、あなたはお疲れ様です。妹のためにありがとうございます」
「……わかって貰えたようなら何よりだ」
「あーっ! お兄ちゃん、お姉ちゃんに心を読ませるなんてずるーいっ! お姉ちゃんにあの時の事知られちゃうじゃんーっ!」
こいしは頬を膨らませながら静雅に駆け寄っていき……何故か室内にも関わらず静雅の体によじ登り、肩車の形になった。
状況を把握した静雅は呆れながらも彼女に話し掛ける。
「……お前さんって肩車好きだよなぁ……」
「ここが私のマイポジション♪」
「(……フラン嬢もよくここに座るんだけどな……)」
少しずつ騒がしさが戻っている頃に──扉が開かれる。全員その扉に振り向くが……そこにいたのは辰上侠と瓜二つの姿の──
『遅くなったの。主達よ。そして地霊殿の主、古明地さとり。失礼するぞ』
──初代龍神であるティアー・ドラゴニル・アウセレーゼだった。体に多数の傷、服装の破れもあったが……元気そうだ。そして話し掛けられた覚りは驚き、すぐに心を読んで情報を読み取ろうとしたが──
「(──心が読めない!? こいしと侠さんと違う【読めなさ】……!? そして侠さんの外見とほぼ同じのこの人物は一体……!?)」
「ふむ。さとりよ。おそらくお主は我の心を読もうとしているのだろうが……我にそんな類いのことは効かぬぞ──龍神にそんなのが通用すると思うかの?」
「! そうなると──あなたが侠さんの心に普段いる初代龍神のティアーさんですか!?」
「左様。読めなくて当然なのだ」
さとりの心情に察して説明する初代龍神のティアー。彼の歩みは侠へ向かっていくが、お燐とお空は驚きを隠せないようだった。
「……この人がこの幻想郷を創った龍神様ですか……とても近寄りがたいような……」
「どうしてだろう……? あの人には勝てない気がする……」
そしてティアーは歩みを止めて、侠へと成果を伝える。
「主よ。勇義にはきちんと勝利してきたぞい」
「……それを聞いて安心しました。さすがに戦闘が好き過ぎる人と戦いたくありませんからね……。というよりは、見ず知らずの人物と戦闘する気がないだけですが」
「そして──勇義の能力も手に入れてきた。我はもう主の心に戻るぞい。さすがに疲れたからの……」
「……ごゆっくり、休めてください」
侠とティアーの会話が終わると──ティアーは赤いぼやけに変わり、侠の体の中に入っていった。
その光景を見て天子は確認の意味合いで、改めて侠に話し掛ける。
「……あれが初代龍神なのね? それで侠の中に入っていったし……。というよりは侠に似すぎているでしょ?」
「実はというと、ご先祖様曰くだと自分がご先祖様に似ているんだって。先祖返りは祖先と同じ体の作りや顔の作りになる傾向があるみたいだから」
「……何かあんたは本当に複雑ねぇ……」
侠の説明に難しい表情をしていたが……こいしは改めて静雅に侠の概要を聞いた。
「何だか私はちんぷんかんぷんなんだけど……お兄ちゃん、あの人は一体何なの?」
「オレの親友の辰上侠。この幻想郷を創った初代龍神の先祖返り。その意思が侠に取り憑いている。簡単に要約するとこの三点だ」
「……うわぁ。ツッコミどころよりどりみどりだね……」
簡単に侠について説明すると呆れた表情をするこいしだった。
そして……静雅の本来の目的が達成出来たのか、さとりに声を掛ける。
「さてとと……目的は達成出来たな。さとり、今日はこれで失礼する」
「そうですか? もう少しいても構わないんですが──成る程。それならば帰った方が良さそうですね……」
「あぁ。今頃地底の入り口にいると思うからな」
「えーっ!? お兄ちゃんもう帰っちゃうのーっ!?」
さとりは静雅の心読んで帰宅理由を察して申し出を受け入れたが、こいしは不満そうに静雅を呼び止める。
「今日ここに来る目的は達成出来たからな。あまり長居していると博麗の巫女が怒るんだ」
「……え? どうして?」
「オレの能力でこの地底に入れないようにしているんだ。そうじゃなかったら今頃この地霊殿に乗り込んでいる」
「……どうしてその人は怒っているの?」
「侠を勝手に持って行ったからな。霊夢は最近侠に過保護なんだ」
「まぁ……博麗は持って行くな的な事を言っていたからねぇ……あまり長居すると博麗の怒りが増しそうな気がするし……」
静雅の言葉に侠も同調。侠も帰ろうとしているのを察した天子も同調の言葉を。
「じゃあ帰りましょ? 侠の親友の能力でさっさと帰れるのよね?」
「あぁ。地底の入り口まで移動する。地霊殿の皆、世話になったな」
静雅は侠と天子を自分のそばに来るように促し、地霊殿の住民に静雅は挨拶をした。
「えぇ。また来てください」
「あたいとしては龍のお兄さんの猫じゃらしテクニックには惹かれたねぇ……また来たときに頼むよ♪」
「またね! お静と……誰だっけ?」
お燐は最初に猫として触れ合ったときに遊んで貰った事を思い出しながら見送るが、お空は静雅はわかるが侠と天子の名前をまた忘れている。その事に対し、さとりは彼女にフォローを。
「お空。天子さんと侠さんです……」
「そうだった! 天子(てんこ)、竜! またね!」
「だから天子(てんし)よ!?」
「天子はまだ良いと思うんだ……自分の名前と全然違う呼び方だし」
間違って呼び方をしているお空の次の最後の人物が、別れの挨拶を。
「ぶー……お兄ちゃん、また来てね……」
「……こいしよ。別れるつもりがちゃんとあるなら肩車から降りてくれないか?」
「え? ダメ?」
「どこまで着いてくるつもりだお前さんは……? 紅魔館まで来るつもりか?」
「──! 仕方ないなぁお兄ちゃん♪ お兄ちゃんに免じて降りてあげるよ♪」
「何故オレが懇願したようになっているんだ……?」
こいしは一瞬、何かを思いついたような表情になったが……すぐに肩から降りて手を振っていた。
その意味を理解した静雅は侠と天子の肩に触り──
「よし。じゃあ地底の入り口に戻るぞ」
「うん。わかった」
「……悪くは無かったわね、地底は」
──三人は地霊殿から一瞬で消えた……。
次話は地上に戻ります。
ではまた。