幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ……一番ヒロイン力が高い気がする。
 最初は表主人公視点。
 ではどうぞ。


『図書館での一日』

 現在、自分は紅魔館の図書館にいる。そして──元気よく、自分に話し掛けてくる人物が一人。

 

「──侠さん。本日は申し訳ないですが……一緒に頑張りましょう!」

 

「まぁ、うん。ちゃんと自分の仕事が出来るように頑張るよ」

 

 スーツを着て、背中と頭に悪魔の羽が生えている小悪魔──こぁさん。自分達を見てか、彼女の主であるパチュリー・ノーレッジが話し掛けてきた。

 

「じゃあ悪いけど二人とも。本の整理とか頼んだわよ」

 

 そう言いながら、レミリア・スカーレットの妹であるフランドールに本の読み聞かせを始めた。そして、自分達は作業に取りかかる。

 

 ……こうなったのは、おおよそ三十分ほど前──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──図書館の本の整理やらを手伝って欲しい?」

 

『えぇ。それであなたに伝えに来たのよ』

 

 博麗神社で特に何もやることはなく、ゆっくりと霊夢と過ごしていたら──紅魔館のメイドである十六夜咲夜が現れ、自分にそう伝えてきた。十六夜は話を続ける。

 

「前に守矢の宴会のメンバーを集めている時に、暇な時間があったら小悪魔の仕事を手伝うって言ってくれたでしょ? それで今日のその仕事がかなり多いのよ。それで小悪魔が手伝って欲しいということ」

 

「……まぁ、あの甚大な量の本の整理とか大変だよね……でも、静雅は? 静雅の能力ならそういう事はすぐ終わるんじゃないの?」

 

 静雅は【事象を操る程度の能力】、つまり状態を操れる。能力を使ってやればすぐに終わると思うけど……。

 

 そう問いかけてみると、十六夜は首を横に振った。

 

「試してはみたんだけどね。でも、整理し終えた状況ってパチュリー様の考えじゃない? それだとパチュリー様は永遠に静雅に話し続けて能力を細かく作業をしなくてはいけないの。それに……パチュリー様は喘息もあるから、長時間喋るわけにはいかない。小悪魔に聞けば良いと思ったのだけど……静雅も行ったり来たり聞いたり喋ったりで体の負担が多いのよ。能力で回復できるみたいだけど……そういう回復力においては、基本自然の回復力で何とかしているみたい」

 

「確かに、能力で回復し続けると本来の回復力が薄くなる可能性があるね……それで、静雅も手伝うんだよね?」

 

「…………外出中なのよ、静雅は」

 

 困ったような反応をしながら言葉を返す十六夜。その事に自分は同調する。

 

「静雅って結構いろんな所をうろうろするからねー。本人はじっとしていることは苦手みたいだから」

 

「(……でも、二人きりになる時間は──)」

 

『侠、別に行かなくても良いんじゃない?』

 

 二人で会話をしているときに、入り込んできたのは自分の居候の家主──博麗霊夢。彼女は少し機嫌を悪くするように言っていたけど……少し反論する。

 

「そういうわけにもいかないよ。仮にも、こぁさんだけの要求だったらともかく……自分も手が空いている時は手伝う約束をしていたからね。裏切るわけにはいかないし」

 

「……はぁ。【力】を集め終わったら終わったらで、落ち着きが無いことには変わりないじゃない……」

 

「さすがに人と関わってくるウチは仕方ないよ。じゃあ悪いけど博麗、行ってくる」

 

 一先ず霊夢に別れの挨拶をして、十六夜と共に紅魔館へと向かった……。

 

 

 

 

 

 

「……バカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで、今現在に至る。とりあえず注意事項をこぁさんから話されていた。

 

「侠さんは魔導書を読んでも影響はありませんが……本を整理しているときは、本を読まないでください。侠さんが作業中にそういう事をするとは思えないんですが……一応、念のために」

 

「あぁー……よく本とか片付けしているときに、持っている本に目を通して作業が止まっちゃうからね。外界でも整理整頓の罠だよね、それ」

 

「そうですよね〜……。私もうっかり片付けの途中で読みふけってしまい、パチュリー様に怒られてしまいました……」

 

 手はちゃんと動かしながら、こぁさんに指示された本を取り出して行く。せっかく魔導書が読めるのに読めないのは正直惜しい。

 

『「我が実体化して代わりに読んでおくか? それで我が心の内から教えるという手段があるが……」』

 

 心からのご先祖様の問いかけ。心遣いは嬉しいですけど──今は正直、人手が欲しいですかね? ご先祖様はちなみに実体化して手伝う気はありますか?

 

『「……申し訳ないが、我はそういう作業は苦手での。興味のある事柄なら構わぬが……そういう仕事ならば我は寝る」』

 

 その言葉を最後に、ご先祖様は静かになった。自分は少し意外な反応に苦笑いしたり。

 

 自分の表情に察したのか、こぁさんは少し心配したように声を掛けてきた。

 

「……もしかして、ご迷惑でしたか……?」

 

「え──あぁ、違うよ。ちょっとご先祖様と会話して手伝ってくれないか的なことを言ったんだけど……こういう作業は苦手って言った後寝ちゃったみたいで。少し意外な反応に戸惑っていただけだよ」

 

「そ、そうでしたかぁ……。てっきり、私がこういう事を頼んだ事が嫌なのかなって思ってしまって……」

 

「そういう事は無いよ。自分はモノを整理する事は好きだし。外界では良く静雅の近辺の道具とか場所とか綺麗にしていたのもあるけど。そのまま放っておくとドンドン汚く見えてきて自分がやったりとか」

 

「それはそれで静雅さんらしいですね……自室の部屋も、能力で綺麗にしているみたいですし」

 

「むしろ、それこそ能力無しでやるべき事だと思うんだけどね」

 

 他愛の無い雑談をしながら作業していると──図書館の扉を開く大きな音が聞こえ、聞き慣れた人物の声が聞こえてきた。

 

『静雅はいるかー! 今日こそは勝たせて貰うぜ!』

 

 よく博麗神社にも来る──霧雨魔理沙の声だ。どうやら静雅に弾幕ごっこを申し込みに来たみたいだけど……ノーレッジが代わりに答えているようだ。

 

「静雅なら外出中よ。行き先は知らないけど」

 

「……またか? 最近、静雅が外出している時の伝言はパチュリーか中国がもらっているみたいだが……本当に知らないのか?」

 

「……そういえば、最近伝言をもらってないわね。まぁ、彼はちゃんと帰ってくるからいいのだけど……」

 

 今気付いたように考え始めるパチュリーに、魔理沙は眉を顰めながら最近気になった情報を付け加える。

 

「それにさ、そういう伝言か何か知らないが咲夜が知っている場合が多いんだよな……。それについてはパチュリーはどう思う?」

 

「咲夜が……? まぁ、考えられるとしたら咲夜が傍にいて伝言を残したんじゃない? 私に伝言を残す場合は基本彼が図書館にいるのが多いから。美鈴に残す場合は紅魔館から徒歩で出るとき会うから。そういう事だと思うけど」

 

「……まぁ、いいか。それじゃあ静雅がいないのを利用して──本を借りるとするぜ!」

 

 静雅がいないので考えを変更し、霧雨は本を(無理矢理)借りる発言をした。

 

 ……そういえば過去にマーガトロイドが言っていたような気がする。

 

 その事について、こぁさんに聞いてみた。

 

「……霧雨からの本の防衛は自分達の仕事の一部?」

 

「う〜……本来ならそうなのですが……私はあまり戦う事は得意じゃありませんので、いつもならパチュリー様が戦ってくださります。それと、今は妹様もいますので──」

 

 こぁさんが言いかけていたところで──ノーレッジの声とは違う、元気に溢れている声の人物が霧雨に話し掛けた。

 

『じゃあ魔理沙ー! 一緒に遊ぼー! 今日は私が勝つんだから!』

 

「……ちょっと待ってくれ。あれか? フランに勝ったとして次はパチュリーが待機しているのか?」

 

「そりゃそうよ。ここの本を持って行かせないわ」

 

「う……だが! それでも私は連勝してみせるぜ! 来い、フラン!」

 

 霧雨の最後の言葉が終わり──激しい音が聞こえてきた。おそらくでも何でもないけど、霧雨とフランドールが弾幕ごっこをしているのだろう。

 

「……こぁさん、図書館の被害は?」

 

「それなら静雅さんが帰ってきましたら能力で何とかして貰えますので、特に心配することは無いかと──」

 

 図書館の本について尋ねてみると、心配は無いとこぁさんは言うが──ゆっくりと、大きな音と共にこぁさんに影が掛かっていく──って、大きな本棚がこぁさんに向かって倒れようとしている!? おもいっきり心配事があるじゃないか!?

 

「こぁさん! 後ろっ!」

 

「え? 後ろですか──」

 

 行動を促すように言ったけど、こぁさんの反応が予想以上に遅い!? あのままじゃ──

 

「こぁさん、ゴメン!」

 

「こぁっ!? きょ、侠さん──!?」

 

 突き飛ばしても間に合わない瀬戸際だった。だから即座に自分は──こぁさんを押し倒した。

 

 ──本棚での下敷きを自分が代わりに受けるために。

 

 そのまま本棚が倒れ、後頭部にでも当たったのか──自分は意識を失った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜side out〜

 

 本棚が倒れ、さらには本も雪崩のように侠達に襲いかかったが──小悪魔は本棚で怪我することは無かった。侠が身を張って庇ってくれたためである。二人は本で生き埋め状態に近いが……意識がはっきりしている小悪魔は侠に安否を尋ねる。

 

「きょ、侠さん!? 大丈夫ですかっ!?」

 

「…………」

 

 返事が返ってこない。だけれども、呼吸は感じられる。どうやら打ち所が悪く、気絶しているのだと小悪魔は理解した。

 

 そして──小悪魔は、現状の体の状態も理解する。

 

「(侠さんが、わ、私と体が正面から触れ合って……!? それに、顔が隣に……!?)」

 

 彼女は今の状態に体が火照っていた。気になる異性と体が密着しており──厳密に言えば、頬と頬が触れ合っている。それに加え──何とか、小悪魔は両腕を動かせる事を確認した。

 

 奇跡的にも小悪魔は少し侠の顔を持ち上げ、少し距離をとって彼の顔を確認する。気絶しているのだが、まるで眠っているかのよう。そして──小悪魔はある事が頭によぎった。

 

 

 

 

 

 

「(……このまま事故を装えば──キス、出来るんでしょうか……!?)」

 

 

 

 

 

 

 目の前にいるのは異性として気になる人物。その人物が身を挺して庇ってくれた。正義感なのかもしれないが……少なくとも、自分のことを嫌ってはいない。小悪魔の頭の中ではそういう考えが生まれていた。

 

 事故ならばしょうがない。誰も悪くないとは言えないが──偶然にする事が出来る。そしてこの機に──彼女の中では彼に異性として意識して貰える。そのような考えが次々と生まれてくるのだ。

 

「…………」

 

 小悪魔は頬を赤く染めながら──ゆっくりと、彼の顔を頬に当てた自分の両手で動かし──彼の唇に向かい、彼女の唇が動いていく。時間を掛けながら、ゆっくりと。

 

 徐々に二人の顔の距離が縮まっていく。お互いの呼吸を交換できる具合までに──鼻先に触れ合うぐらいまで。

 

 しかし──小悪魔は行動を止めた。

 

「(……やっぱり、こういうキスはお互いの了承ですよね。でも──)」

 

 

 

 

 

 彼女のやりたいことを止めて──向かう先を侠の頬に。そのまま──少しの間だったが、彼の頬に口づけた。

 

 

 

 

 

 

「(──今は、これで良いですよね……? 侠さん……)」

 

 ちょうど彼女が頬のキスを終えた時──視界が急に戻った。本棚が元に戻っているように見える──否、そういう事にした。

 

 そのような事が出来る人物は紅魔館でただ一人、その人物は紅魔館に戻っていたようで──

 

『──大丈夫か? 小悪魔に侠──って、小悪魔は心配ないな……』

 

 ──侠の親友であり、紅魔館の執事でもある──本堂静雅。彼は侠の体を両手で持ち上げるように動かし、仰向けに彼を寝かせる。侠の安否を確認した後、彼は気まずそうにしている魔理沙とフランに言葉を強めにして叱るように言った。

 

「お前さん達……弾幕ごっこをやるなら他の人物の居場所ぐらい確認しろ。それに侠は龍神の先祖返りだったから良かったものの、何にも力が無い人間だったら死んでいた可能性もあったぞ? そこらをちゃんと気をつかえ」

 

「す、すまんだぜ……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「オレに謝ってどうする? ちゃんと侠と小悪魔に謝れ。良いな?」

 

「(……こうして見ると魔理沙はともかく、ちゃんと妹様を教育しているわね……)」

 

 パチュリーは彼の行動を感心するように見ていたが……彼の言葉に従うように、魔理沙とフランは意識のある小悪魔に謝罪。

 

「その……悪かった」

 

「ごめんなさい……ちゃんと私達が気を使わなかった所為で……」

 

「……いえ、私は大丈夫です。それよりも、私を庇ってくれた侠さんが心配で──」

 

 彼女が心配した人物は──ゆっくりと体を起こした。頭を支えながら、状況を確認した。

 

「……ん〜と、本棚が倒れて、それからどうなったんだろう──あ、静雅。帰ってきてたんだ」

 

「よう、おはよう親友。ちゃんと覚えているか? 記憶喪失になったりしてないか?」

 

「大丈夫だよ。ちゃんと思い出せるし。仮に思い出せなかったとしてもご先祖様に聞けば良いし」

 

 彼は立ち上がり、身を挺して庇った小悪魔を見て安堵したように言う。

 

「……良かった。こぁさん無事だったんだ」

 

「はい。侠さんのおかげで──」

 

 小悪魔は言いかけている途中で──頬のキスを思い出した。その瞬間──顔は赤く染め上げる。言葉も途中で止まってしまった。

 

 キス云々の事は彼女しか知らないのだが、本棚が倒れたことによって作られた状況を察したパチュリーが侠に補足。

 

「あなたがこぁを庇ったとき、彼女に覆い被さっていたのよ。気絶していたみたいだからお互いに動けなかったのでしょう。異性との密着を思い出して恥ずかしがっているのだと思うわ」

 

「あぁー……それはゴメン。嫌な思いをさせちゃったかな……?」

 

「いえいえいえっ!? そんなことは無いですよ!? むしろこんな私を助けていただいてありがとうございますっ!!」

 

「……ま、良いか。じゃあさっそく仕事再開しよう」

 

 侠は立ち上がり、本棚に向かおうとしているところを小悪魔は焦るようにして引き止める。

 

「侠さんっ!? 本日はもう動かない方が良いような──」

 

「大丈夫大丈夫。静雅がいることだし、さっきのような事は起きないと思うから。頼まれた分を、ちゃんとやらないとね」

 

 彼は行動を移し、本棚の整理を再開する。彼をフォローするように静雅は小悪魔に話し掛けた。

 

「侠が大丈夫って言っているなら大丈夫だろ。小悪魔も隣で手伝ってこいよ。魔理沙についてはオレが相手をしているからな」

 

「は、はい……わかりました……」

 

 ──ハプニングは起こったものの、小悪魔にとっては一歩前進したような気持ちになった……。

 

 

 

 

 ※この後の魔理沙は静雅によって【この事象は認められない!】をしました。

 

 

 

 

 




 時々「……あれ? この作品のメインヒロインって誰だっけ?」と思う時がある。

 ではまた。
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