幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

214 / 267
 お久しぶりの人々。
 三人称視点。
 ではどうぞ。


『とある酒場の情報交換』

 過去に辰上侠が訪れた酒場。彼が訪れた影響がまだ少し残っているおかげか、その店は繁盛していた。

 

 そこへ──この酒場の常連客である一人の死神が入店してきた。店主はその人物に挨拶をする。

 

『いらっしゃい──って、こまっちゃんか。ちゃんと仕事はしてきてから来たのか?』

 

「ははは……耳にたこができているよ、その言葉。ちゃんと終えてから来たさ」

 

『何か珍しいよな。あのサボり癖のあるこまっちゃんが最近、ちゃんと仕事をしてきてから来るなんてよ。何時か槍の雨でも降るのか?』

 

「おいおい店主さん、それは言い過ぎだよ……」

 

 彼岸の渡し守の死神──小野塚小町。背に背負っている鎌をカウンター席の座席の下に置いた後、周りを見渡しながらある人物がいるか確認したが……いないようで、溜息をつきながら彼女は思う。

 

「(はぁ……今日も辰上侠は来ていないのか……。あんな気になるワードを残していきながらモヤモヤさせるとは……)」

 

 彼女は休息ともに、辰上侠を探していた。本来なら博麗神社に行けば良いのだが……妙にそれは恥ずかしかった。過去に話した内容で、互いの勘違いなのだが……侠は小町への印象で、大切な人(親友)と似ているという意味で言った。だが……『異性』という点だからか、彼女は大切な人(恋人)と勘違いをしている。彼の過去の恋人が自分に似ている。そういう事を直接言われたと思っているのだ。彼女は彼に改めて問いかけようとしたが……言葉が届く前に帰ってしまった。

 

 もちろん、情報で彼は博麗神社に居候しているという事は知っている。彼女も聞こうとはしたのだが……そういうときに限って、誰かはいる。もしくは出かけている。話す機会が作れなかったのである。

 

 一応という事だろう。彼女は店主に彼の情報を求めてみる。

 

「なぁ、店主さん……あれから以降、侠が来たりしたかい?」

 

『子孫様か? 確かこまっちゃんを送っていって以来、見てないな。噂によると、そもそも子孫様は酒には弱いらしいな』

 

「弱い? 誰からの情報だい?」

 

『慧音さんの情報だな。過去に博麗神社で行われた宴会で酔いつぶれて体調が悪くなって休んだんだと。まぁ、前回来て酒を求めたのは克服するか、博麗の巫女への捧げ物じゃないか?』

 

「……龍神の先祖返りが酒に弱いとはかなり意外だねぇ……」

 

『あくまで噂だが……オレっちも思ったさ。でも、この店で買い物をしてくれるとはオレっちにとってかなりの得になって万々歳さ』

 

 笑みを浮かべて今の状況に満足する酒場の店主。意外な彼の事を知った小町だが……溜息をつきながら、呟くように言う。

 

「はぁ……誰か侠について詳しく知っている奴はいないのかい……?」

 

『……そういえば』

 

 小町の呟きに反応するように、思い当たるような表情をする店主。彼の様子が気になった彼女はもちろん尋ねた。

 

「? 何か思い当たる事でもあったのかい?」

 

『いや、そういや過去の烏天狗の新聞なんだが……暗くなる異変があっただろ? 確かその首謀者が、子孫様の親友という事を思いだしてな』

 

「……あぁ! そういえば!」

 

『そうなると一番子孫様の情報を持っているのがその親友じゃないか? ただ……良くない噂がある。その人物があの吸血鬼のいる紅魔館に住んでいるという情報以外で』

 

「……親友の噂?」

 

 店主の真面目な態度に小町は耳を傾けて話を聞く。

 

『あくまで噂なんだが……そいつ、かなりの女たらしという噂だ。ヤケ酒で自暴自棄になっている客から聞いたんだが、『好きだった女がそいつに惚れている』とか。他にも男からの噂で『彼女が野郎に奪われた』とか『かっこいい女と買い物をしていた』、『綺麗な人形使いとデートしていた』、『薬売りの少女と楽しそうに雑談していた』、『小さな女の子を肩車して仲よさそうに歩いていた』。それと『異変解決者の一人と手を繋いでいた』、さらには『小さな女の子が彼を執拗に追いかけている』など……妬みを買うような行動ばかりしているらしい』

 

「……節操ないね、その男……ハーレムでも作るつもりなのかい?」

 

『男からだとマイナスな意見ばかりだ。だが……女だと逆にプラス的な意見が多いんだよな。『かっこいい』とか『紳士的とか』。性によって応対が違う可能性もある』

 

「うーん……聞いているだけだと距離を置きたくなるような男だね」

 

『オレっちの言った事は『あくまで噂』だからな。100%とは言えないことを覚えておいて欲しい』

 

「ん、わかったよ──」

 

 ちょうど小町が店主の話を聞き終えた後……店の出入り口が開く音が聞こえた。その人物の服装は──着崩した執事服に、左側の額の近くの髪の毛には二本の白いヘアピンがある。

 

「──ここまで来れば大丈夫だろ。やれやれ……あのちびっ子ストーカーはオレに説教するとか暇なのか……?」

 

 その男は小町の隣に座り、店主に話し掛けた。

 

「この店で何かお勧めがあるのか? 店主さんに任せたいんだが……良いか?」

 

『……あぁ。構わねぇよ。それとこまっちゃん……耳を少し貸してもらえねぇか?』

 

「? 何だい?」

 

 男の注文を受けた後の店主は、なるべく小声で小町にある情報を伝え始めた。

 

『(……間違いねぇ。この男が子孫様の親友だ)』

 

「(! そういえば新聞通りの顔をしている……!?)」

 

『(あぁ。一応この際だ。子孫様の情報を聞いたらどうだ? もしそれでこの男が変な行動に移り始めたらオレっちも加勢するからな)』

 

「(……見た目、少し荒っぽく見えるからねぇ。その時は頼むよ)」

 

 話し終えた後、店主は静雅への勧めの料理を準備し始める。そして小町は最初は遠慮がちに話そうとしたのだが……先に目の前にいる男から疑問を含めた声で話し掛けられた。

 

「……お前さん、もしかして三途の川で寝ていた奴か?」

 

「……え? あたいを知っているのかい?」

 

「あぁ。諸事情でそっちに用事があったから行った時……お前さんが気持ちよさそうに寝ていた事を覚えているさ」

 

「あはは……こりゃ恥ずかしいところを見られたもんだねぇ……」

 

「下手したらそのまま痴漢されるぞ? お前さんはスタイルが良いみたいだし、身の管理をしっかりやらんといかんぞ?」

 

「ナチュラルにセクハラ発言しているけど……そこ言葉はありがたく受け取っておくよ。仮にそのような輩がきたらただで済まさないようにするさ」

 

「おぉ、怖い怖い」

 

 最初は緊張していたものの、彼の気楽な態度でほぐれてきた。一応、新聞で情報はあるのだが……詳しくは知らないので、彼女は自分の紹介も含め彼に聞く。

 

「まだお互いに名前を言ってなかったね。私は三途の川の水先案内人、小野塚小町だよ」

 

「オレは紅魔館に務めている本堂静雅。以後よろしく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人が自己紹介をした後は──会話が弾んでいた。お互いの近況や関係などを話し合う。静雅の料理を差し出した後の店主も会話に入りながら。

 

 静雅の話を聞いた店主は豪快に笑いながら意見を言う。

 

『──がははっ! 紅魔館の吸血鬼はそんな幼い一面があるのか! 大人ぶっても、見た目通り内はまだまだ子供ってことだ!』

 

「だろう? 怒られたときはおやつで買収出来るんだ」

 

「……薄々感じてたけど、やっぱりそういう事で手打ちにするんだねぇ……」

 

 会話が進む中で、噂を聞いていた店主はどこか感心するように静雅に話し掛けた。

 

『それにしても……やっぱ噂と違うところもあるんだな。彼女を奪われた云々のところは、相手の最良の相談の結果か。じゃあそいつに非があって仕方ねぇ』

 

「自分の行動を振り返らずオレにいちゃもんを言ってくるんだよな、そいつ。オレは人里にきてはいろんな女に話し掛けられるが……そういう相談を持ちかけられるんだよ。だから客観の意見としてオレは行動を促しているんだ」

 

「(……あ。そろそろ侠の情報を聞くべきだね)」

 

 話の途中で我に返った小町は会話の終わりを見計らい、彼女が本来求めていた情報を彼に聞く事に。

 

「なぁ、静雅。ちょっと侠の事について聞きたい事があるんだ」

 

「? 侠の知り合いだったのか?」

 

「知り合いと言えば知り合いだね。それで……侠の言葉で引っかかったことがあってね。お前さんの意見を聞きたいんだ」

 

「……言ってみてみ?」

 

 彼女の質問に静雅は話を聞く姿勢を。それを確認した彼女は少し言葉に詰まりながらも、話し始める。

 

「……きょ、侠って……恋人がいたりするのか……?」

 

「…………はっ? あいつ何時の間にか彼女が出来ていたのか…………?」

 

「ん? 親友なんだろ? そういう事は聞いているんじゃないのか? それとも秘密としてずっと隠しているとかかい?」

 

「それは無いと思うな……そうしたらあいつから何かしら連絡してくると思うし。少なくとも、オレの方ではそういう情報は知らん」

 

「そ、そうか……なら、仕方ないか……」

 

 正確な情報は得られず、落胆した様子を見せる小町。彼女の様子を見て、確かめるように静雅は情報を確認し始める。

 

「しかし……何で急にそんなことを?」

 

「いや……過去に侠が言っていたんだよ。どうもあたいが『大事な人』に似ているって」

 

「(……『大事な人』? そう考えると受け入れた家族関連だと思うが……情報が足りないな……)」

 

 彼女の発言を元に彼は考えを巡らせるが、明確な答えにたどり着けない。彼女の発言は情報が少なすぎる。

 

 ……しかし、彼女が侠の好みに入るのはわかっているつもりだ。

 

「(一先ず思ったことは──巨乳なのはストライクなんだよな、きっと。それでどこか感じるお姉さんキャラ。外見とキャラは侠の外見的好みに入っている……)」

 

 侠の性的嗜好を振り返り終わり、そういう事はあえて伝えずに静雅は彼女を気遣うように言う。

 

「セクハラ発言承知で言うが、お前さんのそのプロポーションはかなりの武器だ。すでに付き合っている奴はともかく、それは武器になる。世の中の男は外見的に判断するならばかなりの好印象を与えることが可能だ」

 

「……侠はあたいみたいな体系が好みなのかい?」

 

「そりゃ侠も男だしな。陽花──義妹の所為で性欲は枯れているが……男は有ると無いで比べたら有る方が良いに決まっている」

 

「うーん……そういうものかねぇ? そういうのはちょうど手に収まるタイプが良いと思うけど……。重しが前方にあるようなものだから肩は凝るし──」

 

 

 

 

 

 

 

『それは多くの女性への差別ですよっ! 本堂静雅!』

 

 

 

 

 

 

 

 扉が急に開く音が聞こえ、静雅個人を示す注意の言葉。店に居た他の客もその発言した人物に視線を向け、存在を確かめる。そして店主も驚きの表情をしており、小町も同じような表情をしている中……静雅はどこか呆れているような様子が見える。

 

 その人物とは、幻想郷の担当の閻魔である──四季映姫・ヤマザナドゥ。

 

 彼女はすかさず静雅に近づき、怒りの言葉を含めた説教を続けた。

 

「そもそも女性の外見で好みがあるなど間違いなのです! そういう外見だけで評価するなどもってのほか! 特に──女性の性の象徴で比べるのは言語道断! 確かに個人でそういう好み・嗜好はあるのかもしれません。しかし! 最重視しなければならないのはその人物の中身! そういう事柄に囚われてはいけないのです!」

 

「……話の途中で割り込んだのは置いておくとしよう。だが……オレは基本男が思っている事を代表として言っただけだぞ? それにあくまで外見だけを評価する場合だからな? 閻魔様が──まぁ、言ってもしょうがないか……」

 

「! 今明らかに比べましたよね!? 貴方が今言おうとしていたことは! だからそういうので判断してはいけないのです!」

 

「外界基準だと不審者扱いで捕まるからな? それにオレはロリコンじゃないし」

 

「ロリ……!?」

 

 閻魔と紅魔館住民による口論。立場上ならば閻魔である映姫の方が上のはずだが……彼は目上だろうが、年上だろうが関係無い。彼が思ったままのことを彼女に意見しているのだ。

 

 そして……一番この店内で驚いているのは小町だろう。曲がりなりのも上司にあたる人物が目の前にいる。彼女は恐る恐る映姫へと問いかけた。

 

「し、映姫様……? 何故、このような場所にいらっしゃるんですか?」

 

「貴方は……小町!? 確かに今回は珍しく仕事を終えてあがりましたが──まさかっ!? この場所で静雅と密会するためですか!?」

 

「あの〜……四季様? 静雅とは今日初めて──」

 

「彼は荒人神なのですから口車に乗ってはいけませんよ! 彼の表向きの気さくな性格の所為でもありますが……静雅は女性にからかい過ぎるのです! 確かにコミュニケーションとって距離を縮めたいという事はわからなくともないです! しかし……彼の場合はいき過ぎて馴れ馴れしすぎる場合がある! そして仕事を早く終わらせたのはこの為ですか!? 最近、まともに仕事をする頻度が増えてきたというのにこういう下心も含めてたとは知りませんでしたよ!」

 

「あの、だから映姫様、静雅とは初めて会って──」

 

 一部勘違いをしながら、話を止めないような様子で小町にも説教を始める映姫。静雅はその様子を焼き鳥を食べながら見ているが……一番この場所で困る人物は店主だろう。彼も少し恐れながらも閻魔の話に割り込んでいく。

 

『あ〜……閻魔様? 正直、この場での説教に関しては控えてもらいたいんですが──』

 

「貴方は後です! どうやらここは小町の行き所みたいですから、その時の様子を洗いざらい話してもらいますからね!」

 

『ひでぇとばっちりだ!?』

 

 店主も巻き添えを喰らい、他の客は自分のいた席にお金を置いて出ようとしていたが──そこへ、誰かが入店してきた。その誰かは店内の様子を見るなり、映姫に話し掛け始めた。

 

 

 

 

 

 

「──映姫よ。説教するにも場所を考えんか。せっかくの他者の酒がまずくなるであろう」

 

 

 

 

 

 

 その声の主に全員が振り返る。その人物は辰上侠に酷似しているが……髪と目の色が赤系統。喋り方はどこか重みがあり、貫録がありそうな声。

 

 

 

 

 

 その人物こそ──初代龍神であるティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ。

 

 

 

 

 

 すぐに声を掛けられた映姫は彼の姿を確認すると……彼女は驚愕を含めた声で彼に詰め寄り問いかけた。

 

「なっ……!? どうしてこの場にティアー様がいるのですかっ!?」

 

「酒を飲みに実体化して来ただけだの。そこへちょうどお主らに出会っただけだ。店の者よ、映姫が世話が掛けたようだの。気にせず飲むが良い……とは言っても、無理か。まぁ、各自好きにせい」

 

 彼は行動を促そうとするが……一部を除いてざわめくばかり。その中、馴染みのある人物として静雅がティアーに話かけた。

 

「初代龍神さんよ、侠はどうしたんだ?」

 

「今頃妖怪の山で将棋でもやっておる。少しばかりは今回は別行動だからの。妖怪の山での我の私用が終わったから、ここに来たのだ」

 

「うわぁ……相手はぼろ負けの未来しか見えないな……」

 

「主はルール把握や体験したらめっぽう強くなるからの。唯一のチャンスは初回だけ。おそらく今も白浪天狗は負け続けているのは確かだの」

 

 気の毒そうにしている静雅にティアーは呟くように言う。彼はカウンター席に座り始めるも、小町は驚愕しかない。

 

「……本当は侠だったりしないんですか?」

 

「我の姿を見て疑問に思うだろうが、何回も言うが我が主に似ているのではない。主が我に似ているのだ。我は先祖、主は子孫。そこはちゃんと把握しておくのだな」

 

「は、はぁ……」

 

「──ティアー様っ! そもそも何故下界から降りてきているのですかっ! さんざん私をからかった後、それ以降下界に来なかったというのに……!」

 

 小町が曖昧に頷いている中、映姫はティアーに疑問を含めた声で彼を炉い詰めようとする。しかし彼は気にするようなそぶりは見せなく、答えた。

 

「そういえば我の事情についてはかなり親交のあった一坊しか言ってなかったのう……。映姫よ、我は正確に言うならば【元】龍神だ」

 

「…………はい? 元?」

 

「……うむ。龍神補正だかで我の情報は取得できていなかったみたいだの。我はもう統制している龍神ではないのだ。我の純粋な子孫がきちんと幻想郷を見守っている。言うなれば、我はご隠居生活をしているのだ」

 

「…………はいっ!? 今もなおティアー様が統制しているのではないですか!?」

 

 彼女にとっては初耳だったようで、目を丸くしながら驚いている。それは小町も一緒なのだが。

 

 しかし……流れるように情報を喋ったティアーに静雅は呆れを含めた声で確認を取る。

 

「おいおい、その情報はあまり喋らない方が良いんじゃないのか?」

 

「そこはお主が情報漏洩を防いでいるであろう? 少なくとも我の言ったことはお主と映姫、小町にしか聞こえていないであろう。お主が能力を使うのを感じ取ったからの」

 

「……相変わらず良い性格しているな、初代龍神さんは」

 

 やれやれ、という呆れを示した動作をしながら肯定する静雅。彼としても、秘密はあまり知られてはいない事はわかっている。だが……映姫は彼の事を知っている。小町は厳密には関係は無いのだが……侠との関わりがあるという事はわかっていたので、情報をちゃんと聞き取れるようにした。他の店にいる人物達は疑問そうにこちらに視線を向けているが。

 

 話を戻すようにティアーは映姫に会話を再開させる。

 

「しかし……本当に閻魔になっているとはな……小町から得た情報で知ってはおったが。地蔵の頃が懐かしいのう……我が龍神という事もあってか、わざと間違えた情報を教えて実行していたお主が懐かしいぞい……」

 

「っ!? それは貴方が真面目な情報の中に嘘の情報を混ぜた所為じゃないですかっ!!」

 

「おや? そうだったかの? 我はユーモアも含めてそういう事をまじえたのだが……お主は我が当時龍神だからといって真面目過ぎたのだ。それに良い体験にはなったであろう?」

 

「なっていませんよ! そういうところは本堂静雅に似ていますね! 人をそうからかいの言葉を入れるなどっ」

 

「別にオレ初代龍神に似てなくね?」

 

 恥ずかしい過去を触れられた所為か映姫は顔を赤く染めあげているが、途中の彼女の言葉を否定する静雅に初代龍神は意見した。

 

「お主は幻想郷の人物に例えるなら八雲紫に似ていると思うぞ。普段は真面目な態度は隠して、隠密に行動しているところなどな」

 

「……しょっちゅうオレは八雲紫に似ているって言われる気がするが何でだろうな?」

 

「さぁの。それで店主よ、それなりに度数の高い酒を瓶ごと持ってきてくれぬか?」

 

『……へ、へい! ただいまっ』

 

 急に話を振られた店主は彼の言う通りに酒の準備をし始める。その中、映姫は静雅にも説教じみた言葉を掛けようとしたのだが──

 

「そもそも貴方のその能力については──」

 

「一先ずお主は落ち着くべきだの」

 

 ティアーが片手で酒ビンのコルクを抜いた後──酒瓶の口を、そのまま映姫の口に入れ始めた。

 

「!? ~~~っ!?」

 

「誰もこの場で説教なぞ興味はない。しばらくお主はゆっくり休むと良い」

 

 始めは彼女は抵抗していたものの、彼の行動に逆らう力が足りなかった。強引的に多量の酒を飲んだ後の映姫は──

 

「──ふにゃ~……」

 

 一瞬にして酔いつぶれて、静雅の体にもたれかかった。彼は彼女を抱き留め、彼女の様子を見ながらティアーに呆れ声で話しかけた。

 

「おいおい、酒の一気飲みは──閻魔様なら大丈夫か……」

 

「頭に湯気を立てている映姫にはこうして対処する方がてっとり早いのだ。度数の高い酒を飲ませればダウンするからの。それに……映姫には休んでもらいたいからの。閻魔になってから仕事量も増えて苦労も多いだろうて」

 

「……龍神様……」

 

 彼の言葉に感心しているような声を出していた小町だが、静雅は問いかけるように一言。

 

「本音は?」

 

「正直説教なぞされたくない」

 

「台無しだよっ!?」

 

 さらっと言った本音に小町は瞬間にツッコミを入れてしまった。その中、様子を一番身近にいた店主は感心そうに言う。

 

『……やっぱり初代様はすんげぇですな。閻魔様を童と同じような扱いが出来るとは……』

 

「まぁ、映姫とはそれなりに触れ合っていたからの。こやつの得手不得手も把握しておる。さて……しばらくぶりに酒でも飲もうかの! 店主よ、上質な酒を頼むぞい!」

 

『任されたっ! 子孫様についで、初代様もこの店で楽しんでいただけるとは光栄だっ! 適度に済ませてくれれば代金はいらねぇよ、初代龍神様!』

 

「はっはっは! その心意気は良し! 本堂の者、小町よ! 飲むぞ!」

 

「お? じゃあお言葉に甘えるか!」

 

「……何か、あの時にイメージとは違うねぇ……ま、あたいも便乗しようか」

 

 その日、その酒場では大変賑わっていた……。

 

 

 

 

 次の日、閻魔様が二日酔いで悩めるのは別の話である。

 

 

 

 

 

 




 初代龍神が統治していた時でも彼女は弄られていた模様。

 ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。