幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ようやくこの二人。
 三人称視点。
 ではどうぞ。


『蓬莱人の喧嘩、組み合わせ』

『──時効【月のいはかさの呪い】!』

 

『──難題【龍の頸の玉 ―五色の弾丸―】!』

 

 とある竹林で響き合う二つの声。彼女達にとっては【殺し合い】であり、千年以上もの因縁を持つ二人。片方は竹林の案内人である藤原妹紅。もう一方は永遠亭の姫である蓬莱山輝夜である。

 

 双方は傷つきながらも、腕と同時に口も動かしては罵倒し合っていた。

 

「大体何でちょうど私が木炭作りをしているところにスペルカードをぶちかますんだ!? おかげで作った木炭が台無しじゃないか! 慧音に頼まれていたっていうのに!」

 

「散歩している中で燃えている焦げ臭いにおいが嫌なのよ! 土の中に埋まって永遠にリザレクションしていれば良いのよ、もこたん!」

 

「変な呼び方をすんじゃねぇバ輝夜!」

 

 ここまでは彼女達のいつも通りの言い合いだったりするのだが……輝夜の発言で、後日が大きく動くなる事になる。

 

「どうせそんな態度ばっかりとっているんだから男っ気がないんでしょ! あんたは私と違ってモテないもんね♪」

 

「なっ!? おま──」

 

 戸惑ったような言葉を出そうとした妹紅だが──一瞬、彼女の脳内にある男の姿がよぎった。自身の不老不死を何とも思っていない人物の事を。

 

 その事をふまえて妹紅は輝夜に不敵に言葉を返す。

 

「……悪いが、私でもそれなりに付き合いのある男がいるんだ。しかもそいつは私の蓬莱人をまったく気にしない男でな!」

 

「あら、それは意外ね? あんたの身近にそういう男がいるだなんて。まぁ……私も最近、面白い男と知りあったのよね〜♪ そこらの男とはまったく違うタイプの!」

 

「どうせお前の外見だけで惹かれている男だろ? そんなの千年以上もの前からわかってるんだよ。私の知り合いの男はそれなりに腕もあるしな」

 

「違うわよ! そいつは話が上手くて退屈しないの! しかも最近の新参者だけど、それなりに実力がある男なのよ!」

 

「はっ。どうだか」

 

 輝夜の言葉を全く信じていない妹紅は鼻を鳴らす。その態度に怒りが湧いたのか、とある事を提案するように言う。

 

「じゃああれよ! そこまで言うのなら連れてきてもらおうじゃない! それでお互いに戦わせて勝った方の言い分が正しいってことで良いでしょ! 一種の二対二で弾幕ごっこをしましょうじゃないの! 逢魔が時にこの場でやりましょう!」

 

「あぁ、やってやるよ! 首洗って待ってな!」

 

 そこで二人は戦いを止め、各々の場所に移動し始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──迷惑をかけるのはすまないと思っている。でも、そんなバ輝夜を見返してやりたいんだ。だから協力してくれないか──侠?」

 

『……これはまた変なのに巻き込まれた気がするよ……』

 

 人里にある寺子屋。今では授業が終わり、生徒のいない教室で話し合っている──妹紅と侠。妹紅は両手を合わせてお願いしているが、どこか渋っている侠。

 

 彼女はめげず彼を説得しようとする。

 

「どうせあいつの選んだ男だ。まともじゃない可能性もある。それで……異変解決者でもあり、龍神の先祖返りである侠なら大抵の相手は無効化できるだろ? だから頼むっ!」

 

「……まぁ、相手によるけど……一先ず同行してから決めて良い?」

 

「……うん。それならまだ構わない」

 

 場合にはよるが、一先ず許諾した侠。彼は改めてその二対二の弾幕ごっこについて尋ねる。

 

「それで……それは何時やるの?」

 

「その事についてだが……私が竹林を案内するとして、逢魔が時にやることになっている。明日、竹林近辺に来てくれれば案内するから待っていて欲しい。とりあえず今は……輝夜の情報を言うから覚えて欲しい」

 

「(……相手の相方が予想出来るのは気のせいかな……?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そんなわけで協力してもらいたいのよ。あなたの力を見込んでね。だからお願い──静雅」

 

『……飽きないな、お前さんも。別な方法で対決すりゃいいのに』

 

 竹林にある永遠亭。輝夜の部屋では一人の男──本堂静雅が呼ばれていた。

 

 彼は愚痴も良いながらも言葉を続ける。

 

「うどんに呼ばれて来たらこうとはかなり珍しいがな。相手にもよるが……オレも参戦するか」

 

「そう言ってくれるとは思ったわ♪ それで……その相手の妹紅の事なんだけど……知ってる?」

 

「一度かそこらで対面はした事があるな。詳しい事は知らんが」

 

 静雅は過去の記憶を掘り返す。彼女と会ったのは初代龍神の出来事で会った事はある。ただ、お互いに顔を会わせたぐらいなので詳しい情報は持っていない。

 

 彼の意見を聞いて輝夜は行動を促す。

 

「相手の男の情報はわからないけど……今は妹紅のパターンを教えるから覚えて頂戴」

 

「(……何か相手の相方が予想つくのは気のせいか……?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして──その当日。竹林には四人の人物がいる。竹林の外からやって来たのは侠を率いる妹紅。待っていたのは静雅を率いる輝夜だ。

 

 まず相手の相方を理解した妹紅は静雅に声を掛けた。

 

「お前!? 確か侠の親友の奴……!」

 

「まともに話したのはこれが初めてか? まぁ、よろしく頼む」

 

 彼女が彼を質問している間に、今度は輝夜が侠に話しかける。

 

「……静雅の親友? そうなると──今では幻想郷の龍神の先祖返りである辰上侠かしら? これはまた特殊な奴を連れてきたわね……」

 

「……まぁ、そんな感じ。正直乗り気じゃないけどね」

 

 互いに相手の存在を確かめ合う。そして──妹紅と輝夜の二人は動き出す!

 

「いくぞ! 今度も私が勝つ!」

 

「『も』って何よ! その言葉、そっくりそのまま返すわ!」

 

 二人はそれぞれの弾幕を繰り出し、ぶつけ合う。二人は至って真面目で、お互いの攻防が始まっていた。

 

 そして……彼女達のそれぞれの仲間の人物達はというと──

 

「ねぇ静雅? ここのところフランドールは活発的にわかる問題には手を挙げて発表するようにしてるよ」

 

「お? それはマジか。そいつは微笑ましい。たまにフラン嬢は図書館でパチュリーに本を読んでもらって知識を得ている時があるからな。そのおかげかもしれん」

 

「ふーん……やっぱりあそこにある本の魔導書は一度読んでみたいな……この間読みそびれたし」

 

「だったら来ればいいじゃないか。お前さんが来るとオレも楽しいし色々な事が見れて良いぞ」

 

「時間を作れれば行くんだけどね」

 

「まぁ、気長に待っているから来いよな」

 

「戦えよ!?」「戦いなさいよ!?」

 

 戦闘とは程遠い、世間話をしている外来人達。耐え切れなかった戦いを始めていた二人は我慢しきれず、息の合うツッコミを入れた。

 

 指摘された二人はというと、どこかやる気のなさそうに理由を言う。

 

「一対一ならともかく……こういう風には静雅と戦いたくないかな」

 

「だよなぁ……なんていうか、オレ達の求める勝負はこうじゃないというか……そんな感じだ」

 

「じゃあどうすれば良いんだよ!?」

 

「それじゃあ静雅を連れてきたのかわからなくなるわよ!?」

 

 二人から飛んでくる非難の声。侠はその対応に困っていた時……静雅は蓬莱人二人に提案するように言う。

 

「一応聞くが、お前さん達は自分の実力が上という事を示したいんだよな?」

 

「……まぁ、そうだな」

 

「それでだ。今からチームを決めなおす。それぞれの組み合わせだが──お前さん達蓬莱人チームとオレ達外来人チームで戦えばいい」

 

「えっ!? なんでそうなるのよ!? 私と妹紅が戦わなきゃ意味が無いじゃない!」

 

 蓬莱人二人にとって静雅の提案には疑問しか思わないだろう。元々は二人の実力がどちらか上か示すための戦いだ。犬猿の仲の人物達が組むなどは普通考えられない。

 

 しかし静雅は自分の考えについて根拠を述べる。

 

「この方法も意味はあるんだぞ? 何故ならば前提条件として『どちらが強いのかの証明』。二人で同じ標的を設定し、いち早く評価を出せばいい。確かにお互いに直接力比べするのもいい方法だ。だが……正直それは腐るほどやっているんだろう? それなら新しい刺激として、お互いが競い合うような形のほうが面白いと思うし良いだろ?」

 

「む……確かにそう言われてみればそうだ……」

 

「よくよく考えてみれば大抵は直接で『競い合い』だものね……でも、侠は良いの? 確実にあなたを巻き込むような提案だけど?」

 

 妹紅の同調の後、輝夜は念のため侠にも問いかけてみる。彼は彼女の質問に答える。

 

「静雅とチームを組むなら別に大丈夫だよ。むしろ好都合かな」

 

「侠もこう言っているんだ。じゃあ戦闘態勢を整えて──行くぞ!」

 

 静雅の発言により、場にいる人物達は構えなおす。多少、蓬莱人二人は流されたような感じがしたが……一先ずは行動に移すことにした。

 

「とりあえず……私はやりやすい侠を狙うか!」

 

「それなら私は静雅ね。覚悟なさい!」

 

 二人は各々に動き始める。妹紅は侠に向かい。輝夜は静雅に。

 

 その事に対して侠は静雅に指示を出した。

 

「静雅! 二人は別々に狙おうとしているから、自分の後方に!」

 

「了解した!」

 

 静雅は侠の指示通りに移動。静雅は槍を構え、侠は手で構えを取る。

 

 そんな二人は気にしない蓬莱人たちは、各々弾幕で牽制し始めるが──対象が重なっている所為か、侠を狙った弾幕が通り抜け。輝夜が放った弾幕同士がぶつかり……相殺してしまった。

 

「はっ!? 何で私の邪魔をするんだバ輝夜!」

 

「しょうがないでしょ! 静雅に放とうとしたら重なるんだもの! さっさと侠を別の場所に誘導しなさいよ!」

 

「それはこっちのセリフだ! お前がさっさと静雅を離させろ!」

 

「そっちがやりなさい!」

 

 お互いに責任と役目を押し付けあう二人。その状態にも関わらず侠達は行動を開始する。

 

「今は妹紅に合わせるよ! 静雅は後方支援!」

 

「弾幕で補助する簡単なお仕事だな? 了解した!」

 

 侠と静雅はまず妹紅に狙いを定める。侠は拳を放ち近距離攻撃を。静雅は上手く侠の動くタイミングを合わせ、彼に被弾しないように妹紅に弾幕を放つ。もしくは侠にギリギリ当たるかどうかの瀬戸際の弾幕を放つ。しかもこの弾幕は妹紅の放つ前のタイミングに合わされていた。侠に近距離で攻められ、反撃しようとするタイミングで静雅の弾幕。彼女は攻撃を放つことが難しくなっていた。

 

「お前らっ!? 連携が良すぎやしないか!?」

 

「自分達は幼い頃からの付き合いだからね! 大体は把握できているよ!」

 

「そういうこった。オレ達に死角はねぇ」

 

「──後方注意よ!」

 

 静雅の背後からの声。その声の主である輝夜は静雅の背後に回り込んで弾幕を放ったのだが──

 

「静雅、【L】!」

 

「ほいっさ!」

 

 侠の謎の指示で静雅は振り返らずに……左へ飛んだ。そして侠はその場で体をずらして躱し──その弾幕は妹紅へと被弾した。

 

「ゴフッ!? おい輝夜! 狙うならしっかり狙え!」

 

「ちょ!? 今のは確実に攻撃を当てられたはずなのよ! それなのに何か侠の変な言葉で静雅は躱しちゃうし……!」

 

「静雅、すぐに体勢を立て直して背中合わせに!」

 

「お? 何か凄い絵になるりそうな構図だな?」

 

 静雅はすぐに体勢を立て直し、侠とお互い背中なる。お互いにここに連れてきた人物を見ながら。

 

 侠は首の動かして後ろを向き、彼に話しかける。

 

「お互いの敵情報を教えながら各自援護! 現在は目の前にいる敵に集中する事! 現在妹紅は弾幕を放とうとしているよ!」

 

「了解した! ちなみに現在輝夜はスペルカードを構え始めている!」

 

「わかった!【指示】は君に任せる!」

 

 彼らは背中合わせでお互いに情報を共有する。妹紅は弾幕を放つ中……輝夜はスペルカードを宣言した。

 

「難題【仏の御石の鉢 ―砕けぬ意思―】!」

 

 彼女の宣言と共に、光の玉が複数現れ……その一つ一つからレーザーの弾幕が放たれる。その後に続くように小さな星の弾幕は降りかかってきた。

 

「これがあの【かぐや姫】の難題か……久しぶりにリフレクト・ジャベリンが活躍できる弾幕だな!」

 

 静雅は槍を構え、星形の弾幕をはじいていく。しかし、レーザーが迫って来たときには侠に指示を出す。

 

「侠! 少し【R】だ! それでオレは防御スペルを唱えるから、そっちの弾幕はしばらくさばいてくれ!」

 

「了解!」

 

 静雅はレーザーを躱し、侠は静雅の謎の指示で、背後を見ずにわずかに右に動いてレーザーを躱す。そして両腕を龍化させては、妹紅から放たれる弾幕をはじいたり防御していく。

 

 そして──静雅のスペルカードを宣言した。

 

「槍技【シールドジャベリン】!」

 

 彼は槍を手元で回転させては空間にその槍を置き、輝夜からの弾幕を防御する。二人の防戦一方を見てか、少し輝夜は挑発をしかけた。

 

「あら? 守っているだけじゃ仕方ないわよ?」

 

「安心しとけ! 攻撃を──今、仕掛ける!」

 

 彼は輝夜の攻撃が止む一瞬を狙い、回転している槍の柄を掴み──回転させたまま投擲!

 

「ちょっと!? 回転した槍を投げるって──」

 

 彼女は避けるものの、槍の持ち手部分が脇腹に当たる。そのまま槍は彼の手元に戻り、相手のスペルカードを確認。

 

「よし! スペルブレイクだ! このまま一気に──」

 

「不死【火の鳥 ─鳳翼天翔─】!」

 

 静雅の後方、侠の前方から聞こえる宣言。妹紅はスペルカードを宣言し、様々な弾幕の種類が放たれている間……彼女の背後に炎で出来た鳥──不死鳥を模した炎の弾幕が形成されていく。

 

「相手は輝夜だけじゃないからな! 私もいることを忘れるな!」

 

「侠!? 何かフェニックスっぽい弾幕が形成されているが大丈夫なのか!?」

 

「……新しいスペル、試そうかな。五つの力が集まったおかげで──完全な【竜人】になれるんだから」

 

 侠は呟くように言うと……ポケットからスペルカードを取り出し、宣言。

 

「──同化【ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ】」

 

 彼がそう宣言すると、赤く染まった弾幕が彼を包む。一瞬だったが──彼の格好が変わる。下半身はワインレッドのズボンに、白いワイシャツの上には赤いコート。そして頭部には──竜の頭を模したものが彼の頭に被さるように装備されている。顎の中に彼の顔があり、その竜の装備の頭上は赤と白の角。彼の腕は完全な竜の腕と相応の爪。赤い翼。赤い尾。そして──彼の右目は赤くなっている。

 

 彼の今の状態を言うならば──以前の部分的な龍化では無く、人間の形に抑えた完全な【竜人】の龍化だった。

 

 そしてすぐさま彼は違うスペルカードを唱える。

 

「『地心【ハンティングアース】!』」

 

 彼は地面に手を付けた瞬間──妹紅の四方の足場から土の壁が出現しては彼女を覆い隠してしまった。

 

「はっ!? 何だこのスペル──」

 

 あっという間に妹紅は土の壁に閉じ込められる。そしてそのまま──爆発した。閉じ込められていた妹紅が出てくるが……体中には燃えかすがついてる。

 

「……まさか閉じ込めては私の放とうとしていた弾幕を乱して、暴発させるとは……中々えぐい事するな」

 

「『大丈夫だよ。妹紅なら大丈夫だと思ったから』」

 

 彼はそう彼女に話すが……侠が話す度に声が二重に聞こえる。その事に疑問に思った静雅は彼に話し掛けた。

 

「……侠? 何か声がダブって聞こえるんだが……?」

 

「『このスペルは適合スペルと同じ分類なんだけど……タイプが違うんだよ。五つの力を取り戻したから使えるようになった完全な龍化。まぁ、今回は人の原型を保っているけど……このメリットは属性関連のスペルが適合よりはちょっと劣るけど、満遍なく性能があがるんだ。それに【龍神補正】から【龍神】としての特性が発揮されるからね』」

 

「もうお前さん人間卒業しろよ」

 

「『いやいや……人間として生きるし……』」

 

 静雅の言葉に軽くツッコミを入れながらも、侠は行動を促す。

 

「『静雅、一先ず──して欲しいんだ』」

 

「ほうほう。そこでオレ達の力を合わせれば良いんだな!」

 

「『そういう事! じゃあ──作戦開始だ!』」

 

 侠の作戦通りに静雅は彼と標的を交換し、妹紅に走って接近する。対して侠は輝夜へと。

 

「! 今度は侠の親友が相手か!」

 

「龍神の先祖返りだか知らないけど……返り討ちにしてあげる!」

 

 そう強く言っていた彼女だが──この数分で終わる事になる。

 

 侠は輝夜に急接近しては服の袖を一瞬に掴み。静雅は能力を使って正面から妹紅の背後に。侠は輝夜に掴んでは後ろに一本背負いしては投げ、静雅は妹紅に手をかざすと彼と離れ──妹紅が移動した場所には輝夜が正面に迫っており、ぶつかって倒れ込むことを余儀なくされた。

 

「「きゃっ!?」」

 

 彼女達が完全に倒れ込んでは静雅は能力で侠の元に駆け寄り──手を繋いで、侠に指示した。

 

「侠はそのまま竜のイメージの弾幕を! 行くぞ、合体ワザだ!」

 

「『スペル名は──良し、わかった!』」

 

 侠は静雅にスペル名を聞き、二人で白紙のスペルカードを持っては輝かせて宣言!

 

「「『荒龍【デストラクショナルドラゴン】!』」」

 

 彼らの手元から、灰色に染まった龍の弾幕が形成される。どこか禍々しく染まった龍。その可視化された龍の弾幕がまとまっている彼女達に向かって行き──

 

「「きゃあああっ!?」」

 

 そのまま、彼女達に被弾。そのまま彼女たちは倒れ伏せてしまった。

 

 彼ら自身で放ったスペルカードを侠は確認し、静雅に話しかける。

 

「『見た感じは龍の弾幕ぽかったけど……何か追加効果でもあったのかな?』」

 

「あったとしたらきっとアレだろうな。オレの性質で多分神々に当たったら攻撃力が増加するとかそういう類いだろ」

 

「『神様対策のスペルねぇ……自分は龍神の先祖返りといえど、その静雅の影響は受けていないみたいだし……龍神としての特性も含まれるのかな?』」

 

「それもあるかもな。加え、侠の能力で弾幕の密度が増加している。それに──いや、これは良いか……侠、とりあえず二人を永遠亭に運ぶぞ」

 

「『……いいのかな? ま、いっか』」

 

 侠は龍化スペルを解いて人間状態に戻ると、倒れこんでいる蓬莱人二人に駆け寄っていく。静雅は……少しの間自分の手元を見ていたが──

 

「(……侠の力である能力発展。侠がこっちに注意していないときにオレの発展能力を試してみたが……まさか、あの能力になるとはな……。一体何なんだ? オレの能力っていうのは……?)」

 

 彼は考えを振り切り、侠の手伝いを始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「──正直ずるい」」

 

「ずるいって言われてもねぇ……自分の素性と静雅の相性だし」

 

「だよなー? 今回はお互いの信頼関係の勝利でもある」

 

 竹林の中にあるという永遠亭。戦いを終えた四人のうちは治っていない箇所の治療を鈴仙から受けていた。妹紅は最初拒否したのだが、侠の気遣いのある説得に渋々従い、この場にいる。

 

 この場には先ほど戦った四人、治療している鈴仙・優曇華院・イナバ、面白がってこの場にいる兎の因幡てゐがいる。本来なら永琳もいるのだが……侠を見るなり彼女は好奇な言葉で話しかけていた。

 

『──あなたが龍神の先祖返りの辰上侠ね。私は八意永琳よ』

 

『知っての通り自分は辰上侠です。以後よろしくお願いします』

 

『それで頼みがあるのだけど──ちょっと採血と髪の毛とかDNAになるものを提供してくれない?』

 

『……ゑ?』

 

『だって聞いたところ初代龍神の意思もあなたの中にあるわけでしょ? この前、うどんげがあなたの治療で採血したと思うけど……あなたの血液は万能なのよ。いろんな薬の材料にもなるし、研究のし甲斐もあるし。おそらくの推測だけど、あなたの体はいろんな種族と適合できるはず。それで他の種族にも対応できるようにかわからないけど霊力や魔力、妖力や神力などいった力の素養もあるからそのおかげでもあると考えたのよ。この前の採血は尽きそうだし……本当ならあなたの体の隅々まで調べたいのだけど──』

 

『師匠っ! 思いっ切り侠が引いています!』

 

 ──鈴仙が永琳の研究による熱を収め、侠は困った表情をしながらも血は提供した。彼女は研究室にこもり、再び分析しているが。

 

 閑話休題。

 

 不満そうにしながら妹紅と輝夜は言う。

 

「そもそも静雅の能力なんだよ……一瞬にして移動とか。お前はスキマ妖怪か?」

 

「あきらかにあんな状態の侠に『弾幕ごっこ』で勝てるはずないじゃない……いえ、他のでも勝てないのかもしれないけど……」

 

「はっはっは。まあ、許せ」

 

「一応人型に留めたんだけどね。本格的な変化だと竹林でも目立つし」

 

「「(まだ上があるの(か)!?)」」

 

 静雅の流すような発言はともかく、まだ実力をあるような発言をした侠に度肝を抜かれた蓬莱人二人だった。

 

 彼女達が驚いているさなか、今度は兎の二人組が彼らに話しかけた。

 

「それにしても……即席で組んだと思ったら、二人特有の合言葉があるなんて……」

 

「それにお互いの言葉を躊躇いもなく信じるとか盲信過ぎやしないウサ?」

 

「侠の作戦なら間違いはないからな。合言葉もわかりやすい。合言葉としては至って簡単だ。他にも二つあったんだが、【L、R、U、D】という英語の頭文字で指示が簡単に耳に入る」

 

「それに静雅は十三年以上の馴染みだからね。お互いに行動パターンは把握しているつもりだし、お互い信頼しているからね。静雅なら安心して背中を任せられる」

 

「……よくあなた達が自分達の事を【親友】っていっている事がわかる気がするわ……」

 

「(……間接的に他人は信じられないと聞こえる……)」

 

 そうこう雑談を交えていた場のメンツだが……ちょうど会話の終わりに永琳が部屋に入って来た。すぐに鈴仙は反応し、彼女に言葉を。

 

「あ、師匠。どうかなされたんですか?」

 

「うーん……今回の分析結果なんだけど……この前と結果が違うのよ」

 

「? 違うってどういう事ウサ?」

 

 てゐでも興味の惹かれる言葉だったのか、彼女は永琳に詳細を求める。彼女の質問に答える前に、永琳は侠へと話しかけた。

 

「侠、あなた……何か体に影響を与えることをした?」

 

「? どういう事でしょうか?」

 

「以前分析した結果と異なるのよ。特に力の素養関連の事で。霊力やそれぞれの素養が濃くなっていたわ」

 

「濃く……どういうことなの、永琳?」

 

 彼女の言い回しでは理解しにくかったのか、輝夜は彼女に質問を、永琳は「言葉足らずだったわね」と軽く謝罪し、例え話をまじえながら話した。

 

「以前採血した力の素養云々を100%だとしましょう。本来ならば、一人一つで霊力や魔力で100%が本来普通よ。でも彼は初代龍神の影響か、それぞれで100%の力の素養を持っているの」

 

「ん!? それって侠は合計400%持っているって事じゃないのか!?」

 

 彼女の発言に妹紅が驚愕の声をあげた。単純に言えば侠は尋常の四倍の力を持っているとなればそれは異常だろう。しかし……彼は異常であるが、それなりの根拠がある。彼の中には初代龍神の力も水増しされているのだ。その結果が永琳の考察。

 

「本来なら持ったとしてもそれぞれ25%ずつだとおもうけどね。そして今回濃くなったという事は、その100%の許容が増えていてその分の力が増えていると思うわ。数値で例えるなら100%は実は150%になっていると言った方がわかりやすいかしら?」

 

「……侠、それは【力】云々の事じゃないか? 初代龍神の最低限の本来の力。そして侠の制限の枷が外れたからそうなっているんだとオレは思うんだが……」

 

「それで間違っていないと思うよ。五つの力と……使っていないけど、鬼の力も手に入れているし」

 

 静雅の考察に侠は肯定するが……途中の言葉が気になり、鈴仙は聞き返す。

 

「……鬼の力?」

 

「うん。地底の星熊さんだったかな? ご先祖様が戦って勝ったから星熊さんの能力をね。【怪力乱神を持つ程度の能力】だったけ? 説明しにくい能力だけど、その能力を持っているし」

 

「…………もう何も怖くないウサ」

 

 淡々と語る侠にどこか悟っているてゐ。話を変えるようにして、静雅は侠と妹紅に行動を促す。

 

「じゃあそろそろお暇させてもらおうぜ。侠、能力で博麗神社に送ってやるよ」

 

「ん~……それじゃお願いするよ」

 

「妹紅はどうする?」

 

「……いや、私は自分の足で帰るよ。すまないな」

 

「おけ。侠、帰るぞ」

 

「了解」

 

 静雅は侠の肩に触ると、二人の体はブレて消えていった。永遠亭のメンバーはそれぞれ違う雑談を始めたが……永琳は思う。

 

「(無いとは思うけど……もしも辰上侠が幻想郷に害する行動をとったら誰も敵わないんじゃないかしら……? 博麗の巫女でも難しい事は必然よね……)」

 

 

 

 




 永琳が研究熱心になるのは仕方ない事だと思うんだ……。

 ではまた。
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