幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 閑話以来の登場。
 三人称視点。
 ではどうぞ。


『三妖精の挑戦』

 とある森にある大きな大木の中に、三人の妖精が共同して生活している家がある。その三人の妖精は【光の三妖精】とも呼ばれ、順に太陽の光を表しているサニーミルク。星の光を表しているスターサファイア。最後に月の光を表しているルナチャイルドが机を囲っていた。

 

 その中、サニーがとある話題について持ち出す。

 

「……最近、チルノがほんの少しずつ賢くなっているような気がするんだけどどう思う?」

 

「確かにそうね。以前に弾幕ごっこをしたときと比べて臨機応変というのかしら? 弾幕を凍らせて対処してきたりとか」

 

「スターの言う通りね。あの紅魔館の外来人の遊び以来、そう感じてる……」

 

 スターが同調し、その事にルナも同調する。サニーは頭を悩ますようにした後、スターは少し席を外して……とある新聞を二部持って来た。ルナは「あ、私の新聞……」と言っているが、お構いなく。

 

「ちょっとその外来人の情報が過去の新聞にあったのよ。まずは紅魔館の外来人についての記事を読んで貰える?」

 

 スターが新聞を机に広げると、他の二人はのぞき込む。

 

「うーんと──本堂静雅は博麗の巫女を追い詰めた事がある!?」

 

「え……それじゃあどっちみち、あの時勝負を申し込まれても勝てなかったんじゃ……?」

 

「その通りよ二人とも。事前に情報をキチンと持っていればあの男には三人がかりで勝てた可能性は微小ながらあったかもしれないのよ。まぁ、負ける可能性は向こうから仕掛けてきたおかげで負ける可能性のほうが高かったのかもしれないけど」

 

「……でも、それがどうかしたのよスター?」

 

 新聞を読んだものの、疑問を持ったサニーがスターに問いかける。新聞を読めと言われても、出るのは感想ぐらいしか無い。

 

 スターは「慌てないの」と言いながら、次の新聞を広げた。二人は再びのぞき込み、ルナが要約して口に出す。

 

「えっと──龍神の先祖返りである辰上侠が守矢の巫女を襲った暴漢を救うって見出しだけど……スターは一体何を言いたいの?」

 

「前にチルノが言っていたじゃない? 凍らせる云々は【キョー】から教えて貰ったって。それってつまりこの幻想郷の創造神の子孫である辰上侠と一致するじゃない? それにこの辰上侠っていう人物は本堂静雅の起こした【日食異変】を解決した人物でもある。でも、ここで前の新聞の内容も思い出して欲しいの」

 

 彼女に行動を促されて、サニーが思った事を発言。

 

「……二人ともある意味人外?」

 

「…………それは盲点だったわ。でも、それ以外の事柄について考えて欲しいの。サニーが言った事を思い出してみて」

 

「私の言ったこと……?」

 

 呻きながら考えるサニー。動揺にルナも考えていたのだが……とある事に気がつき、スターに確かめた。

 

「あ……! もしかして、この霊夢さんを追い詰めた本堂静雅より──辰上侠の方が強いって事!?」

 

「正解よルナ。この異変が起きるまでは幻想郷最強として霊夢さんが君臨していた。だけど……この異変によってある先入観が生まれているはずなのよ。【博麗の巫女より紅魔館の執事の方が強い。それに加えて紅魔館の執事より龍神の先祖返りの方が強い】ってね。それはつまり、現在だとこの辰上侠が幻想郷で最強という事。いくら頭がバカなチルノでも、彼の教えなら頭に入ると思ったワケよ」

 

「バックに龍神の人物がいるからこそね……」

 

 スターの仮説に納得するサニー。続けて、スターはこれからの行動について二人に話した。

 

「そこでよ。私達三人でもしもこの辰上侠を倒したら……幻想郷最強の座に君臨することが出来るのよ! 私達【光の三妖精】が幻想郷で最も強いってことをね!」

 

「いやいや待ってスター!? そもそも私達が勝てるのか危ういわよ!? そもそもその人が霊夢さんより強いという時点で敵わない気が……」

 

 これからの方針にルナは慌てて止める。それは無理はないかもしれない。ただでさえ現在だと辰上侠は幻想郷で最も強いのではないかとされており、さらには龍神の力も持っている。ただの妖精三人組で勝てるのかどうかは、客観的に考えてみればわかる事だ。

 

 しかし、スターの説明で閃いたようにサニーが意見を言った。

 

「そっか! スターの言いたいことは、私達は今まで相手の情報が無いままで戦い、負けて来た。でも、今回は違う。事前に相手の情報を集め、それに伴った作戦を練る。一番良いのは相手が戦っている姿を見る事だけど……私達は相手の情報を知り、相手は逆に私達の情報を知らない。事前に戦う前に対策を練ったうえで私達の情報をまともに知らない辰上侠に勝負を仕掛ける!」

 

「……それってぶっつけ本番で戦うってこと?」

 

 サニーの説明を聞いて、どこか疲れたように察したルナの言葉にスターは肯定する。

 

「そうよ。ぶっつけ本番だからこそ、事前に相手の情報を収集して対策を練るの。私達の能力もフル活用して、相手を惑わす。初見なら私達にだって勝機があるのよ!」

 

「なるほど……私の能力で日の光を操って、スターが気配を探って状況を確認。それでルナで音を消して惑わせば──私達が勝てる可能性もある! それで勝った事が広がれば……私達の悪戯に恐怖を抱いてもおかしくないっ!」

 

「その通りよサニー! じゃあさっそくこれからどうするのか話し合いましょ!」

 

 サニーとスターは気分を高揚させたまま熱心に話を始めた。その二人を客観的に見てルナは、心の中でこう思う。

 

「(……いくらなんでも龍神相手に勝負を挑むのは無謀な気がする……)」

 

 彼女の中の考えは伝わるものではないと思い、考えたことを胸の内にしまいながら二人の話に耳を傾けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 某日、霧の湖の近く。三妖精は木の影に隠れてはサニーとルナの能力である人物達の視界に映らないようにしていた。気配を探る能力を持っているスターは実はサボっているが。

 

 この三人が何故霧の湖にいるのかというと──ちょうどその場に辰上侠がいたからである。同時に同じ妖精でもあるチルノと大妖精もいる。

 

 三妖精は観察している中、チルノは覇気に満ちた声で侠に話し掛けた。

 

「キョー! 弾幕を凍らせる特訓するわよっ!」

 

「……まぁ、時間には余裕があるからいいんだけど。じゃあ、まずは自分もなった方が良さそうだね──適合【ブリザードオーバードライブ】」

 

 彼のスペルカードの宣言で氷に包まれた後、その氷は少し経って砕け散る。侠は学生服から青いコートにチルノの髪の色に類似した髪と目に変わった。遠くから見ていた三妖精達はそれぞれ話し合う。

 

「やっぱり、あの男から凍らせるって聞いたからもしやとは思ったけど……チルノと同じような能力みたいね」

 

「これで私達は情報を知る事が出来たわ。【辰上侠は氷系統の能力である】という事を」

 

「……見た目、何かチルノに似ているわね」

 

 三人が話している中、ルナと同じ事を大妖精が侠の様子を見ては思った事を。

 

「……どこかしらか、チルノちゃんに似ている気がしますね……」

 

「まぁ、元々はそうだけどね。ちょっと自分の能力で手を加えているらしいけど。それで大妖精、試しに弾幕を自分に撃って貰える? それでちょっとチルノは離れていてね」

 

「あ、はい! いつものと同じですね! では──いきます!」

 

 侠の指示に二人は従い、大妖精は少数のクナイに似た弾幕を放った。彼女の攻撃をした時に侠は手を構え、その手には冷気が溜まっていくのが目視出来る。

 

 そして、もう少しでグレイズしそうなときに彼は一気に冷気を放出。

 

「ゼァッ!」

 

 かけ声と共に放たれた冷気が氷の壁を形成していく。その氷の壁に触れていく大妖精の弾幕は隣接している他の弾幕を巻き込み、連鎖していくように凍っていく。そして一定時間が過ぎた凍った弾幕達は──砕け散った。

 

「おぉーっ! 何か綺麗に凍って割れたわね!」

 

「チルノ、これは復習だけど……出来るだけ冷気を溜めたらギリギリまで引き寄せるんだ。その前に放つと出来るとは思うんだけど……あまり凍っていく連鎖は続かないからね。出来るだけ相手の弾幕を凍らせる時は最小限の動きで回避した後、弾幕の密度が濃くなってきたら冷気を放って弾幕を凍らせるんだ」

 

「確かキョーが前にも言っていたわね! アタイ覚えてる!」

 

「……まぁ、チルノは何回も復習して体験した方が着実に覚えると思うからね……。この前時間を空けて念のために同じ事を言ったら、何も分からない様子で忘れていたみたいだし……」

 

「あはは……」

 

 元気な様子でチルノは答えているが、どこか苦労を感じている侠を察した大妖精は苦笑いをしていたり。

 

 だが、どこか懐かしそうに侠はチルノを見て思う。

 

「(何かチルノって陽花に似ている気がするんだよね……)」

 

 思い浮かべた後は考えを切り替え、彼は氷水の姿から元の姿に戻ってはチルノに行動を促した。

 

「じゃあ、試しに自分の通常弾幕を放ってみるから、チルノは凍らせてみようか。コツはギリギリまで引き寄せて凍らせる。良いね?」

 

「わかったっ! ドンと来なさい!」

 

 大妖精は二人の様子を見守っている中、三人の妖精は侠を観察し続けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──じゃあねキョー! また特訓するわよ!」

 

「侠さん、お疲れ様でした」

 

「ん。二人ともじゃあね」

 

 時間が経って。二人の要請は侠に挨拶を終えると、チルノと大妖精は帰って行く。彼は軽く背伸びをした後、彼も帰宅しようとしたのだが──

 

「さてとと……最低限は教え終わったし、博麗神社に帰ろう──」

 

 

 

 

 

『待ちなさいそこの人間!』

 

『あなた私達から逃げることは許されない』

 

『えっと……観念しなさい!』

 

 

 

 

 

 侠の目の前にに現れる三人の人影……といっても、先ほどから侠を観察していた光の三妖精である。サニーが呼び止め、スターが警告し、ルナは宣戦布告をした。

 

 ちなみに、侠にとっては初めて見る人物達だ。間接的にとある存在から詳細を聞くことも出来るが……一先ず、何も知らない彼は彼女達に情報を求める。

 

「えっと……君達は誰?」

 

「全然私達のことを知らない!? そこまで私達の知名度って低いの!?」

 

「落ち着きなさいサニー。これからは目の前にいる人物が私達の脅威を広めてくれるんだから……」

 

「(……やっぱり、無理なような気がする)」

 

 心のどこかで悟っているルナだが、二人の妖精はそのようなことを思っている事は知らない。サニーが侠に挑発的な言葉を飛ばした。

 

「これからあんたに弾幕ごっこを申し込むわ! 私達三人を相手にね!」

 

「……それって一対三という事? 普通なら順番に戦うものじゃないの?」

 

 侠の疑問は最もだろう。基本的には弾幕ごっこは一対一が主流だ。もしくは比で一対一の複数戦か。しかし、この三人は勝ち抜きということではなく、一気にたたみかけるというのだ。

 

 しかし、スターはどこか挑発するかのように侠に言う。

 

「あら? 聞いたところだとあなたって龍神様の力を持っているんでしょ? たかが妖精一人ずつの順番に私達は勝てると思ってないわ。それとも何? 妖精ぐらい一対一じゃなきゃ私達に勝てないの?」

 

「いや……そういうわけじゃなくて、もう戦う事は前提なの? 正直自分は戦うつもりはないんだけど……?」

 

 少し困ったように、遠慮する侠だが……サニーは手を構えながら──

 

「どこかの言葉でこんなのがあったわ──目が合ったときがバトルってね!」

 

 サニーは彼に弾幕を放った。すかさず侠は反応し、無属性の弾幕を放って相殺したが……三妖精は次の行動を移し始める。

 

「ルナ! 私の能力と合わせるわよ!」

 

「気が乗らないけど……わかった!」

 

 サニーの言葉に、乗り気ではなかったがルナは指示に従い。そして、二人の能力が発動したのだろう。みるみると三人の妖精は姿が消えていき──今の侠の視界から三妖精は消えた。

 

「……? 視覚に干渉する能力……?」

 

 彼の中で考察を展開していたのだが──音も無く、虚空から三種様々の弾幕が彼に襲いかかった!

 

「! 音も無く弾幕が!?」

 

 彼は狭い空間の中グレイズする。時折は弾幕を相殺しているが。

 

 グレイズしている彼を見てか、三妖精は心の中で気分を良くしていった。

 

「(やっぱり、私達が協力すると強いのよ!)」

 

「(サニーとルナの能力があってこそよね。これなら私の能力は使わずとも大丈夫そうねー)」

 

「(……能力関連でスターがサボっているような気が……)」

 

 一部を除いて二人は優勢に感じ、弾幕を放ち続けていたのだが──

 

 

 

 

 

 

 

 ──急に、辰上侠の黒い右の瞳が赤く変わり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 無論、その事に驚愕する三妖精。そして、辰上侠は狙いをつけるかのように──

 

「──そこっ!」

 

 球状の弾幕を三発放つ。しかも本来は第三者から見れば三人の様子はわからないはずなのだが……正確に。そして三人は……被弾。

 

「うっ!? 弾幕が……当たった!?」

 

「おかしいわ……私達の姿はサニーとルナの能力で見えないはずなのに……!」

 

「急に片目が赤くなってから私達に弾幕を当てて来た……!?」

 

「うーん……悪いけど、自分に幻覚系統の能力は効かないよ。【力】を全て集まった影響もあるだろうけど……この片目で君達の姿は確認出来るから。闇討ちをしようとしても常に視界に確認出来るし。おまけに音も聞こえるようになったしね」

 

「「「(何それ聞いてない!?)」」」

 

 当然な風に言う侠。この情報に関してはほとんど知らない人物が多数だ。過去に彼の中にいる人物が話していた補正。その先祖返りに加えて、最高神が彼に取り憑いている場合は彼に掛かる負を無効化する事が出来ることを。

 

 彼は新しいスペルカードを取り出し、彼女達に確認するように話し掛ける。

 

「……ちょうど良いから五つの【力】以外の能力も使ってみようかな──適合【パワーオーガドライブ】」

 

 彼が宣言した時、彼の学生服は桜の刺繍が入った黒い和服に変わる。髪の毛は腰までの金髪へと変わり、両手首には鎖が付けられる。さらに、額から星模様の入った赤い角。

 

 彼の姿は──地底の鬼である星熊勇義をモデルにした姿だった。

 

 その中、侠の姿に素早くルナがツッコミを入れるように話し掛けた。

 

「えっ!? 何、その姿!? 姿が変わるとしてもチルノっぽくなれるだけじゃなかったの!?」

 

「過去はそうだったね。でも今じゃ何通りか姿を変える事が出来るんだよ。これは【属性の力】としてカウントされない分、龍化は重ねる事は出来ないけど……鬼の力を表した姿。まぁ、それはともかく──さっさと終わらせるよ!」

 

 侠は周りに力を表現するといったところだろうか……基準より大きめの弾幕が周りに展開されていく。彼は腕を振るい──多数の弾幕を三妖精に放った!

 

 まさかの情報との違いにスターは、こう呟く。

 

「……終わったわね」

 

「諦めないでスター! こうなったら私達の全力全開の合体ワザをする時が来たわ! ルナ、あんたもするのよ!」

 

「……一応、やってみましょうか(どうせ無理だと思うけど)」

 

 サニーの言葉で、三人はトライアングルの形を作り──三人同時にスペルカードを宣言した。

 

「「「【スリーフェアリーズ】!」」」

 

 三人を繋くように弾幕の線が繋がった後は、三人それぞれの弾幕を一斉に放ち始めた。トライアングルの形を時折崩して三方向から仕掛けたり、三角形の形を保ったまま移動して翻弄してみたり。

 

「ははは! これならどうよ! 私達の合体ワザは!」

 

「(……ルナ、何かもう察したような気がする)」

 

「(でしょうね)」

 

 サニーは調子がついた声で彼に話し掛けたが、残り二人はどこからか諦めムードが漂っている。

 

 彼は弾幕が迫りきる前に、どこか気まずそうにしながら……スペルカードを取り出した。

 

「……手加減出来なかったらゴメン──合わされ。龍鬼【パワーブレイクタワー】」

 

 彼は左拳を地面に殴るように付けながら宣言。すると──彼を中心に四方八方から赤い弾幕の柱が地中から出現する。一本一本が人間ぐらいの太さだ。その弾幕の柱は至る所を動き、その質量は三妖精の放った弾幕をかき消していく。これから考えられることは──遥かに弾幕の密度が濃く、一つ一つの柱の弾幕の攻撃力が高い。

 

 そして、その弾幕の柱は三妖精にも襲いかかり──

 

「「「きゃあああっ!?(ピチューン)」」」

 

 圧倒的な力を振るい、三妖精のスペルカードはブレイク。結果はどう見ても三妖精の敗北だった。

 

 勝負の決着が着き、倒れている三人の妖精から順に──オレンジ色、藍色、黄色の光が三人の体から現れる。その三種の光の色は、辰上侠の体の中へと入り込んで消えていく。

 

 この光が出た理由は単純なモノで──彼の心にいる幻想郷の創造神、ティアーの能力である【力を手に入れる程度の能力】が発動したためである。以前までは特定の【力】のみにしか働いていなかったが……五つの属性の【力】を手に入れて以来、他の能力も手に入るようになった。この場合の条件は【勝負事に勝つ】という条件である。彼が現在なっている鬼の力も、初代龍神がそうして手に入れたものである。

 

 しかし、三人はその事に気に掛ける事は無く、目を回しているサニーをスターとルナが肩を貸して体勢を整え、逃げるようにして二人は去って行った。

 

「……やっぱり、情報が足らなかったことが敗因の原因だと私は思うの」

 

「いや、そもそも戦う相手を間違えていたような……」

 

 二人はサニーを間に何か喋りながら姿は遠ざかっていき、次第に姿が見えなくなった。その事を確認した侠は適合スペルを解除し、元の姿に戻りながら心にいるティアーへと話し掛ける。

 

「……ご先祖様、あの三人は一体何をしたかったのですか?」

 

『「大方、我達を倒して名をあげようとする妖精だったのだろう。まぁ、主がその程度でやられるとは思ってなかったがな」』

 

「うーん……中にはそういう勝負を仕掛けてくる人物もいるんですね……」

 

『「だろうの。まぁ、サニーミルクとスターサファイア、ルナチャイルドの能力を手に入れることが出来たぞ。これらの能力は平行するとめっぽう強い」』

 

 そうですか、と侠は相槌を打ち、ティアーは話を続ける。

 

『「星熊勇義の能力に関しては主の能力によって【力を奮う程度の能力】に発展。これは少しばかりの力を込めても、それなりの質量と攻撃力を奮う力だ。多少の力を込めるだけでも、何倍といった攻撃力にすることが出来る攻撃重視の能力だの。無属性でごり押しをしたいのならこの能力だの」』

 

「……あの三人の妖精の能力は何ですか?」

 

『「うむ。順に説明するならばサニーミルクが持っている能力はおそらく【光を屈折させる程度の能力】から【光源を操る程度の能力】になるだろうの。スターサファイアならば【動く物の気配を探る程度の能力】から【気配を認識する程度の能力】に。最後のルナチャイルドは【音を消す程度の能力】から【音源を扱う程度の能力】になっていると思うぞい」』

 

「……身を隠れたりするのに適した能力ですね。もしくは相手の情報を知るのに便利だったりなど」

 

『「だろうの。試しにルナチャイルドの発展能力を使ってみぃ。応用で、遠方からの音源を把握できるはずだの」』

 

「本当に情報収集に便利な能力ですね……」

 

 侠はティアーの言う通りに、【音源を扱う程度の能力】を使う。目を閉じて、手を耳に添えながら、集中。そうすることで、いろんな会話などが聞こえている中──彼は興味のわいた人物達の会話をキャッチした。

 

「……ん? これは紫さんと藍さんとの会話だ……」

 

 そして、彼はその二人の会話だけを集中──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────え。そんな、まさか…………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の表情に変化が現れた。侠はさらに集中して二人の会話を聞く中……彼の先祖であるティアーは彼経由で知り、その事に後悔し始めた。

 

『「(!? 何と……間が悪すぎる!? これでは、主は──)」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……この事により、とある騒動が起こるだろうとは、誰も予想できなかったであろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……侠、遅いわね。そろそろご飯の準備が出来るのに……』

 

 博麗神社では霊夢が夕食の配膳が終わり、彼の帰宅を待っていた。彼女は夕食を見て、思い起こす。

 

「(夕食が終わった後には、侠が好きな和菓子を用意しているのに……)」

 

 過去の人里で彼から聞いた情報。彼は和菓子が好きな傾向で有り、団子や饅頭といったものを好む。彼女はその事を覚えており、人里で買い物した時はそれを買って用意していたのだ。

 

「(早く帰ってこないかしら……?)」

 

 心のどこかで彼が帰ってくる事を期待していた時に──神社の居間の扉が開かれた。前髪で表情はわからないが、辰上侠は帰ってきた。

 

 ちょうど願ったときに彼の帰還。彼女はどこかご機嫌そうに侠に話し掛けたのだが──

 

「お帰り、侠。今日は遅かったのね? 静雅と会って組み手でもしていたの?」

 

「…………」

 

 彼は霊夢の問いかけに答えることは無く、素通りした。そのまま彼が借りている部屋へと足を運ぶ侠。

 

「……侠? シカトするなんて良い度胸じゃない? どうかしたのよ?」

 

 好意的に触れ合って、反応を無視されたとなると誰も不快に思うだろう。少し怒気を含めた声で彼に問いかけたが──彼は荷物を置いては居間に戻ってくると、彼女にようやく話をした。

 

「…………博麗」

 

「……? 侠、別に今は二人きりなんだから名前を──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、帰ってくる事は無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこか突き放すような声。彼ははっきりとそう告げた。突発的な事を言われては誰もが困ることだ。彼女は確認するように再び問いかけようとしたのだが──

 

「は? 帰ってくる事は無いってどういう事よ? 現に博麗神社に帰っているじゃない──」

 

 

 

 

 

「貴様らの元に帰ってくる事は無いという意味だ。それぐらい説明しないとわからないのか?」

 

 

 

 

 

 

 前髪で隠れていた目元が彼女は認識したのだが──彼の目に光が無い。どこか、凍てつくような瞳に霊夢は困惑した。

 

「ちょっ!? 一体どうかしたのよ侠!?【素】でも何でも無いし、その言い方──」

 

「貴様ら幻想如きに話すことなぞ無いッ!」

 

 攻撃的な言葉に一瞬、怯えるかのように体を震わす霊夢。彼はそのまま居間を通り過ぎて縁側に出ては、背中から翼を出していた。

 

 急な彼の行動からわかること。彼女は勘で──【遠くに行ってしまう】事を。

 

「ま、待ちなさいよ侠っ! 家主に黙ってどこに行くつもりなのよ!?」

 

「もう、家主なぞ関係無い。やはり、今更他人を言う事を信じようと思いかけていた事が──反吐が出るッ!」

 

 最後に侠はそう言い残し、博麗神社に霊夢を残してどこかに飛びだっていってしまった。

 

 彼女はすぐにでも追いかけたかったのだが……彼の【怒り】を感じた。何がそこまで、温厚な辰上侠を奮い立たせることがあったのか。普段の彼との違いの差に驚き、追いかける事を躊躇ってしまった。

 

 

 

 

 

「……侠っ! あんたに何があったっていうのよ────っ!!」

 

 

 

 

 

 彼女の叫びは、虚しく響くだけだった……。

 

 

 

 

 

 

 




 ……次章、『東方陽陰記 〜Phantom Stage〜』

 ではまた。
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