幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 一先ずの整理。
 三人称視点。
 ではどうぞ。


『情報収集』

「……妖夢、早苗。あんた達も静雅に用があったの?」

 

 一先ずはだが、ロビーの机には霊夢、魔理沙、咲夜にレミリア、妖夢、早苗という面々がテーブルを囲っていた。美鈴は門番の業務へ戻り、パチュリーと小悪魔は精神状態が不安定になりつつあるフランドールの相手を図書館でしている。

 

 無論、議題は侠についてだが……その侠を情報をよく知る本堂静雅は彼によって攫われてしまった。現在の侠の情報は集まらない中……個人が持っている情報を交換しあう事に。

 

 話の先陣を切ったのは霊夢。二人に話を聞こうとしたのだが──

 

「は、はい……侠さんが何故──」

 

「そうなんですよ霊夢さん! 外界で大切に持っていた侠君のコートが……誰かに盗まれてしまったんです!」

 

 妖夢の話を遮り、焦るように涙目で訴える早苗。霊夢は彼女の意見を流そうとしたのだが……ある情報が気になり、彼女に質問をした。

 

「……侠のコート? どうしてあんたがそんなもん持っていたのよ?」

 

「侠君とは過去に外界で会った事はあるって言いましたよね? それで……その侠君が私の体調を考えてくださって、布団代わりに黒いコートを掛けてくれたんです。ですが……侠君はまだ私の事を思い出していないはずなのに──誰かが深夜に守矢神社に不法侵入して、大切なコートが盗まれてしまったんですっ!」

 

「……そういえば、侠はその黒いコートをしていたわね……。適合スペルは使っていないはずだし、もしかしてその黒いコート……」

 

 彼女は記憶の中を掘り起こす。確かに、彼は黒いコートを着ていた。霊夢の記憶が正しければ、彼は学生服のままどこかにいった。すなわち、どこかでそのコートを調達してきた。

 

 霊夢の発言に驚きを隠せない早苗。

 

「…………えっ!? きょ、侠君が犯人なのですか!? そ、それじゃあ、もしかして思い出せるように……!?」

 

「……それについては知らないわ」

 

「なぁ、霊夢? 一体何が何だかわからないんだが……?」

 

 二人の会話についていけないのか魔理沙の疑問の声に、咲夜が答えた。

 

「大方、侠は何故か知らないけど……早苗が持っていた黒いコートを回収したって言いたいんでしょう」

 

「……早苗が侠と外界で知り合いだったという事は、今初めて私知ったんだが……?」

 

「それより。そこの庭師は何て言おうとしたのかしら?」

 

 会話を打ち切り、待ちぼうけしていた妖夢にレミリアは話を振った。妖夢は軽く咳払いをした後、悩むようにして話す。

 

「は、はい……。実はというと、黒いコートを羽織った侠さんが白玉楼に訪れたのです」

 

「……冥界に? それは何故かしら?」

 

 続ける彼女の質問に、妖夢は歯切れが悪そうに答えた。

 

「何でも、幽々子様に用があったみたいなのです。幽々子様を西行妖まで案内して。私も念のために同行したのですが……」

 

「? それからどうなったのよ?」

 

 腑に落ちない彼女の様子に霊夢も続いて詳細の情報を求める。そして、妖夢は彼がその時に言った言葉を復唱した。

 

 

 

 

 

「何が何でも、侠さんは──『【西行妖】の秘密を貴様に教えてやる』という、普段では聞きなれない言葉遣いで幽々子様に言ったのです」

 

 

 

 

 

「……西行妖って言うと、妖夢たちが過去に幻想郷中の【春】を集めた異変で、咲かそうとしていた桜の木だよな? だが……どうして侠がその桜の木の秘密を知っているんだぜ? そもそもその桜の秘密っていうのは一体……?」

 

「それは私にも……。何故、侠さんは幽々子様の知らない西行妖の秘密を知っているのか私も疑問なのです……」

 

 魔理沙からの質問に歯切れの悪い返答をする妖夢。このままだと話が進まないと思ったのか、咲夜が妖夢の話を促す。

 

「……この際、侠がどうやってその桜の秘密を知ったのかは置いておきましょう。それで……冥界の主は何て答えたのかしら?」

 

「……今の侠さんの状態を怪しむも、幽々子様も興味はあったのでしょう。幽々子様は侠さんに話すように促しました。侠さんが話そうとしたのですが──」

 

 言葉を一旦区切り、少し言葉を詰まらせながらも妖夢は話を続ける。

 

「──スキマから紫様が現れ、物凄い怒りの表情を浮かべながら、侠さんに弾幕を放ちました。彼はわかっていたように弾幕を躱し、当然な事に私達が驚いている中……侠さんはどこか怪しい笑みを浮かべ、『俺に喋らせたくないのなら場所を移すんだな』と紫様に行動を促し……スキマで二人はどこか行ってしまわれたのです。そこからさっぱり……」

 

「……そこから、あの状態に繋がったのね……。そうなると、わざと紫をひっかけた可能性があって、あんなことに……」

 

 現在持っている情報を整理しおえた霊夢。情報をまとめたところで……彼女はロビーにいる全員に聞こえるようにして話を切り出す。

 

「……皆の情報で、大体の全体像は見えて来たわ。これから話す事は信じられない事かもしれないけど……本当のことだから、頭に入れておいてほしいの」

 

 そして、霊夢は話の全体像について話し始めた……。

 

 

 

 

 

 博麗の巫女説明中……

 

 

 

 

 

「──少なくとも、今の現状がこれよ」

 

「はっ!? 侠が紫を瀕死に追いつめたってどういう……!?」

 

「そして、侠さんは紫様の能力を手に入れるのが、白玉楼での目的っ!?」

 

「それで、静雅さんを攫っていってしまったんですか……!?」

 

 かなり後から来た三人は驚愕しかなかった。今では龍神の先祖返りである辰上侠が……ある意味では、敵対する行動をとっていることに。そして、何かの目的を達成するために、現在行方不明になっている事に。

 

 情報を整理しおえた一人であるレミリアは、呟くように言う。

 

「……何故、静雅を攫う必要がある……?」

 

 

 

 

 

「──それはおそらく、彼が最も信頼している友人だからこそだと思いますわ。お嬢様」

 

 

 

 

 

 彼女の疑問を答えた──レミリアの従者である十六夜咲夜。咲夜に視線があつまるものの、彼女は言葉を続けた。

 

「そして、侠の【裏】……。今の彼を過去に説得したのが静雅と侠の義妹。だからこそ、侠は彼を必要としている。彼が静雅に信頼しているからこそ……静雅はその信頼を裏切ることが出来ない。さらにひどくしないためにも……」

 

「……咲夜? それって……今の侠は、過去と関係しているっていうの!? ってか何であんたがそういう事を知っているのよ説得云々のところっ!?」

 

 テーブルに手を置いて身を乗り出すようにして情報を求める霊夢。だが……彼女の答えは至ってシンプル。

 

 

 

 

 

「えぇ。だって──静雅から侠の過去について大まかに教えられたもの。何かあった時の為にね」

 

 

 

 

 

 咲夜の理由。その事に彼女以外の人物は驚愕の表情を浮かべていた。その事に魔理沙も話に加わる。

 

「!? 何で静雅はそんな事を咲夜に教えているんだぜ!?」

 

「かなり前になってしまうけど……とある事に気付いた私に、念のための保険としてね。まさか、本当に彼の想定した最悪な事態になるとは思わなかったけど……」

 

「? とある事というのは何ですか、咲夜さん?」

 

「私もさっぱり……」

 

 言葉の真意がわからない妖夢と早苗。その事に気付いた咲夜は彼女と早苗に謝罪の言葉を交える。

 

「あぁ、ごめんなさい。そういえばその時は妖夢と早苗はいなかったわね。ちなみに【とある事】というのは──過去に図書館で、侠の先祖返りや能力云々の事を話した時よ。お嬢様も含め、彼の思惑にはまっていたのよ」

 

「……思惑? 咲夜、言ってみなさい」

 

 当事者の一人であるレミリアが咲夜に発言を促し、彼女は発言。

 

「何故──侠の情報量を多く持っていた静雅が、何でそんなに喋っていなかった事についてです」

 

「「「…………!」」」

 

 霊夢、魔理沙、レミリアは彼女の言葉であの時の状況を振り返る。

 

 確かに──彼は親友の話題に一度も、積極的に会話に参加していなかったことを。同調したぐらいで、誰も静雅から侠の情報を貰っていない事を思い出した。

 

「最も、静雅はその時から侠が龍神の先祖返りではないかと推測を立てていました。過去に起こった出来事、彼の家族、そして──【ある時】に起こった事を私に話したわ。誰かしら、侠に理解してもらうために。それが……今だと思うわ」

 

「……じゃあ、咲夜。静雅の言ったことを覚えているだけで良いから、言ってもらえる?」

 

 霊夢の言葉に咲夜は相槌を打ち、話を展開。

 

「まず……侠があの荒々しい言葉遣いは、静雅は【裏】と呼んでいたわ。普段の彼が【表】だとするならば、本来の彼は【素】。【表】もそうなのだけど……【ある時】で出来た性格が今の彼よ」

 

「……そう。それで……【ある時】というのは何?」

 

 続ける霊夢の質問に咲夜は……どこかバツが悪そうに反応を返していたが──

 

「何て言うのかしら……? 大まかに教えられてはいるんだけど、私だけの説明で理解してもらうのは難しいのよね……。少々、侠の生い立ちも話さなきゃいけないし……。ちゃんと話が出来るかどうか──」

 

 

 

 

 

 

 

『ソレナラボクニオマカセー』

 

『アタシもフォローしてやる。だから気にすることは無い』

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーの中で聞こえる片言の声と女性の声。一同はその音源を確かめるように振り返ると──そこには、本堂静雅が作った侠に似た人形である天牌人形と、その持ち主であるアリス・マーガトロイド。

 

 それとは別の声の人物で、アリスの隣にはもう一人の人物。猫の耳を尾があり、オレンジのワイシャツが全開でサラシが巻かれており、茶ぶち模様の入った白いスカート。腰には火吹き竹があり、頭には【五徳】を乗せている女性である。

 

 一先ず、視線をアリス以外の人物はその【五徳】を乗せている人物に目の焦点がいって、一言。

 

「「「「「「誰っ!?」」」」」」

 

 ……無理はない。過去で彼女の事を知る人物は、とある鬼しか知らないのだから。

 

 彼女の存在をフォローするように、アリス自身の前置きを含めながら説明。

 

「天牌に言われて、紅魔館に行く道中で彼女に会ったのよ。それでこの猫妖怪だけど……侠の式神である五徳らしいわ」

 

「嘘ぉっ!?」

 

「マジか……!? 侠のあの猫が……妖怪だったのか!?」

 

「……さすがに静雅からそれは教えられてなかったわ」

 

「(あの白玉楼で橙ちゃんを追いかけまわしていた猫が、目の前にいる人物なのですか!?)」

 

「す、スタイルいいですね……」

 

 ……一人ベクトルがずれている人物がいたが気にせず、レミリアは五徳へと話しかける。

 

「……自称人間の式神がどうしてこの場にいる? 主と一緒ではないの?」

 

「アタシの存在は初代龍神の助けもあって、侠自身は知らないのさ。それで……扉越しから聞いていた。侠の過去を知りたいというのなら……アタシとこの天牌人形がそこのメイドのフォローをしてやる」

 

「……? 天牌って確か静雅が作った人形だと聞いていたが……役に立つのか?」

 

『ナメルナヒンニュー』

 

「貧……っ!?」

 

 さらっと魔理沙の言葉に喧嘩を売った天牌だが、アリスは天牌についてわかった事についての説明を。

 

「ようやく、ここに来る途中でようやく【バックアップ】の意味が分かったのよ……。今、静雅は侠に攫われているみたいだけど……静雅の記憶なら、この天牌人形がバックアップしている。つまり──静雅主観での侠の情報なら、天牌が持っているのよ」

 

「……静雅は、何時かこうなる事を見通していた……? だけど、今となってはそれが助かっているわね……」

 

 レミリアの言葉を最後に、咲夜は二人の傍に寄り、確かめの言葉を。

 

「……じゃあ、お願いするわね」

 

「リョーショーシタヨー」

 

「あぁ。じゃあ始めてくれ」

 

 ロビーにいる人物達は、侠の【ある時】を知る事になる。どういう経路で──侠はあのようになってしまったのかを。

 

 

 

 




 次話は過去話。それなりに長くなりそう。

 ではまた。
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