幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 そこからの彼の行動。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


『再始動』

 ざっと【ある時】の事を話した咲夜。天牌と五徳の説明を加えながら補足の説明を。

 

「──それから以降、静雅の警告に入らない程度に本家は無理難題を侠に言いつけたんだけど……彼は何ともない状態だった。心のどこかで、まだ信頼して欲しかったのかもしれない。依頼の対象を痛めつける事は嬉々としてやりとげた。もう、その時の侠は私達の姿ではなかった。決死の覚悟で静雅と侠の義妹が彼を説得して──最低限の性格の侠は戻った。でも……受け入れた家族と静雅以外の過去は思い出さないようにして。他者と深く関わるのをやめた。【ある時】をきっかけにして出来た性格が、私達が知っている【表】の侠。そして……今の侠は信じていた事の裏切りや、一定以上の怒りで残忍になる──【裏】の侠。正しい方向での膨らんだ感情の元や、気分が高揚した時にだけ戻る、彼本来の【素】。侠は三面性の性格を持っているのよ」

 

「……ひどい」

 

 説明を聞き終えた霊夢は、無意識の内に言葉を漏らした。彼女の呟きに同調するように、魔理沙と妖夢は感情的に自分の意見を。

 

「何で侠がそんな目に遭わなくちゃいけないんだ!? 当時は【辰上】の血が流れていることを本家は知らないとはいえ……おかしすぎるだろっ!」

 

「侠さんは分け隔て無く関係を持ちたかったはずですのに……!」

 

 ……そして、中には涙を流している人物もいる。

 

「うぅ……侠君……。外界でちゃんと出会えていれば、未来は変わっていたんでしょうか……?」

 

 涙を拭う早苗に、五徳は彼女に近寄っては安心させるために背中をさすり、言葉を言う。

 

「……アタシだって同じ気持ちさ。勝手に敵視しては、勝手に侠を傷つける。そんな歪んだ人間達で侠は変わってしまったんだ……」

 

 侠についてそれぞれの考えが交錯する中、アリスはどこか悲しそうに天牌に話し掛ける。

 

「ねぇ、天牌……。外界の世界ってこんなに醜いものなの……?」

 

「……ノーコメントダヨー……」

 

 静雅の記憶のバックアップである天牌も、どこか心苦しそうだ。元々は、静雅の感情も込められている人形なのかもしれない。時折咲夜の話に彼のフォローが入ったが、普段の片言の言葉はどこか重い雰囲気があった。

 

 そんな中……空気を変えるように、レミリアは場にいる全員に言い聞かせるように行動を促す。

 

「……自称人間の過去はそれで良いでしょう。問題となるのは──何がきっかけで、あの自称人間の性格になったのか」

 

「……そうですね、お嬢様……」

 

 彼女の言葉に咲夜が賛同。話題を確認した全員の内の霊夢が、五徳に視線を送りながら彼女に質問する。

 

「五徳。あんたはどうして侠があぁなったのか見当がつく?」

 

「考えられることは二つだな。一つは【信じていた事の裏切り】。そしてもう一つの可能性としては──【一定以上の怒り】だ。この二つが考えられる」

 

 腕を組みながら答える五徳に、魔理沙は何かを思い出したようで自分の考えを話に切り出す。

 

「……そういや、過去に天界云々で侠がマジギレしたって言っていたな。確か──天子を悪く言う輩がいたからとか。そう考えるとなると──その【裏】になっては天界で何かあって、侠があんな風になっているのか?」

 

「そうなると……あの天人が何か関係してくるのかもしれないわね……」

 

 魔理沙の言葉に咲夜が考える。そして天人──比那名居天子の話題になってある事に気づいた妖夢が意見する。

 

「……天子さんは紫様と敵対関係にある。そして……侠さんは彼女との触れ合いを楽しくしていた……つまりは紫様を利用して、侠さんの怒りを引き出した……?」

 

「うーん……妖夢さん、いくら何でも侠君がそんな簡単に流されないと思います。ちゃんとした自分の意見は言う方でしたし」

 

「では、一体何があって侠さんはあの状態に……?」

 

 早苗からの意見で答えが出てこなくなり、頭をひねらせる妖夢。そして会話の情報をまとめたアリスは、次にすべき行動を促す。

 

「そうなると……あの地震野郎が今の侠の状態を何か知っているのかもしれない。だったら──天界に行って、情報を集めた方が良いんじゃない?」

 

「……一理あるわね。咲夜、天界に行って──」

 

『静雅さんはいらっしゃいますか──! この際霊夢さんでも良いです! それに他の異変解決者の皆さんにも少し頼みたい事があるのです……!』

 

 レミリアが咲夜に命令しようとしていたとき──またもや乱暴に開けた扉の開く音が響き渡った。その人物は烏の翼を広げ、頭上には小さな赤い頭巾のようなモノがある──射命丸文だ。彼女はどこか焦燥を含みながら霊夢に話し掛けている。

 

「……どうしたのよ文? 今は忙しいんだけど?」

 

「こちらは忙しいところじゃないんですよっ! 妖怪の山に多数のならず者と外れ者の妖怪が侵入してきては我々天狗が対処していたところ──どこか様子がおかしい侠さんが妖怪の山に現れたのですっ!」

 

「何ですって!? 侠が!?」

 

 文の話にその場にいる誰もが耳を傾けた。話題の中心人物となっている人物が妖怪の山にいる──?

 

 さらに情報を求めるように、魔理沙が文に尋ねる。

 

「侠はそれで一体何やっているんだぜ!?」

 

「それが……ならず者達を容赦なく退治しているのですよ! 我々はなるべく穏便に済ませたかったんですが……侠さんは『クズどもが視界に入ったから掃除だ』とか似合わない言葉を言って! さらには侠さんの行動を警告して止めようとした天狗にまで攻撃する始末で! 私達が抵抗出来ないのを知っていて!」

 

「!? どうしてあなた達天狗は侠を止めようとしないのよ!?」

 

 現状を告げた文に咲夜を先導に誰もが疑問に思う事だろう。仮にも龍神の血筋とはいえ、侠が危害を与えるのなら何かしら対処をするはず。しかし──文の説明はおかしな点がある。

 

 ──何故、天狗は侠に逆らえない? この点は天狗と一部の妖怪の山の人物しか知らない事柄だ。文はその説明に移る。

 

「侠さんは天魔様の作った規則で害を与える行動は禁止されているのです! 皆さんが知っているように、天狗は社会で生きる種族です。侠さんは天狗より位の高い龍神でもあるんですよ!? 逆らえるワケないじゃないですか!」

 

「妖怪の山の人物達は侠さんに攻撃されているのを禁止されているのですか!? ですが、今の現状なら話は別ではないですか!?」

 

 妖夢の質問を文は首を横に振る。

 

「それが……天魔様は今の現状では判断出来ないというのです。本当に妖怪の山の為に思ってやっているのか、それとも侠さんが悪意でやっているのはわからず……。それならば、妖怪の山と無関係の人物に説得と止めて欲しいという事を私に頼まれたのです!」

 

「それでは侠君の親友である本堂静雅さんに頼もうとしたのですね……ですが文さん、本堂さんは侠君に誘拐されてしまったんです……」

 

「あやっ!? でも侠さんの傍に静雅さんはいませんでしたよ!?」

 

「自称人間は今、スキマ妖怪と同じ能力を持っているのよ。おそらく能力でどこかの空間に幽閉しているのでしょね」

 

「!? 何故侠さんが紫さんと同じ能力を持っているというのはどういう事なのでしょうか!?」

 

 早苗の説明に補足するようにレミリアが言う。彼女からの情報に文は戸惑うばかりだ。

 

 このまま移動しないなら事態は変わらないだろう。そう思った魔理沙はこの場にいる人物に行動を始める。

 

「それなら私達が侠を止めてくるぜ! これはもう一種の異変だからな! 人間の魔法使いである私が──この世界の創造神の子孫を正気にするべく止めてくるぜ!」

 

「あ、待ってください魔理沙さん! 私が案内しますので!」

 

 魔理沙は箒に跨がり、すぐさま紅魔館を出て行く。文も先導するために魔理沙を追いかけていったが。彼女の行動に妖夢と早苗も同じ行動を。

 

「今の侠さんを元の侠さんに戻さなければなりません! 私も向かいます!」

 

「それだったら私もです! もしかしたら……侠君は私の事を思い出してくれているかもしれません! それならば私も侠君を説得していきます!」

 

 二人も魔理沙に続くように紅魔館を出て行く。その中、アリスは天牌と五徳に確認を取るように話し掛ける。

 

「……天牌は戦闘用じゃないから連れて行けないけど……しょうがないわね。天牌はここに残っていて。良いわね?」

 

「リョーショーシタヨー」

 

「五徳はどうするの?」

 

「……アタシが出て行ったところで変わらない。今の侠に私の正体を明かしてもどうにもならないだろう。アタシはここに残る」

 

「そう……私も魔理沙達を追いかけるわ」

 

 アリスも紅魔館から駆けていく。この場にいる人物が減っていく中、咲夜はレミリアに行動を命令を待っていた。

 

「お嬢様……私は天界に向かった方がよろしいでしょうか?」

 

「そうね……それじゃあ──」

 

 レミリアは言葉を続けようとしたのだが──何かに気づいたような表情を浮かべた。その事により言葉は中断。二人の様子を見て少しイラついているのか、霊夢も行動をし始めようとしたのだが──

 

「どうすんのよあんた達は! もういい、私も魔理沙達に──」

 

「駄目よ霊夢。代わりに咲夜を行かせるわ。だからお前は──天界に向かいなさい」

 

「はぁっ!? 何でよ!?」

 

 命令の変更。先ほどまでは天界には咲夜に行かせようとしたのだが──霊夢に行かせようとしている。先ほどより怒りの声を含めた声で霊夢は根拠を求めたが……レミリアは答える。

 

「……一瞬だけど、運命が見えたわ。まだ、この選択が最良なのよ。もしも霊夢が言う通りにしなかった場合は──もう、自称人間を止める事は出来ないわ」

 

「……侠を止める事が出来ない!? それって一体どんな運命を見たっていうの!?」

 

「…………具体的に言うのは難しいわ。でも……このままいったら、間違いなく自称人間を止める事が出来なくなる……。それは……信じて頂戴」

 

 レミリアは真っ直ぐ霊夢の瞳を見る。あまり他人に興味が無い霊夢でも──言う事に従った方が良いと、肌で感じた。

 

「……仕方ないわね。レミリアの見た運命、信じてみようじゃない。それじゃあ今、侠を止めにいく魔理沙達はどうなのよ?」

 

「正直に言うわ──時間稼ぎにしかならない。その間、お前は自称人間がスキマもどきの力で隠れている力を無効化するか、居場所を特定する手がかりを見つけなさい。それが自称人間を止める事が出来る可能性がある選択よ」

 

「……あくまで100%とは言わないのね……。じゃあ私は天界に行って不良天人にあの侠の状態を聞く。咲夜……あんたは侠を止めなさいよ!」

 

「言われなくても、そうするわ」

 

 レミリアは日光の関係上、残るしかないのだが……霊夢と咲夜は、それぞれの目的地へと向かい始める。

 

 レミリアと天牌、五徳が紅魔館に残っている中、五徳は心の中で思う。

 

「(力になれないのが悔しいが……侠を頼んだぞ……!)」

 

 

 

 




 次話は現在の侠の場面に移ります。

 ではまた。
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