幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 戦いは一話ですが、文字量は多めです。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


『戦いの果てに……』

 地上ではそれぞれの仲間達が戦っている中。空中では──博麗霊夢と辰上侠の弾幕ごっこが行われていた。過去にこの二人は共闘はしたことはあるが……対立は初めてだ。霊夢は御札や針などの弾幕を飛ばす中、侠は属性を使った弾幕で対処していた。

 

 空中で飛び回っては霊夢は時折体術も組み込んで攻撃する。彼は攻撃を受け流した後にカウンターとして打撃を繰り出そうとするが……柔軟な動きで霊夢は彼の攻撃を躱す。お互いの攻撃を繰り出している内に一時二人は距離を離れ、彼女の事を分析していたであろう侠が霊夢に話し掛けた。

 

「……動きに規則性が無いな。思ったままの攻撃をしているのか?」

 

「生憎、そんな型にはまったスタイルなんて私には合わないのよ! その時によってその時の対処をするのが良いわ!」

 

「……それは普段、難しい事の一つなはずだけどな……。気分屋にも程がありすぎる」

 

「あんたはやけに私の動きを見ているような気がするけど──まぁ、どうでも良いわ! 私が侠を止めるには変わりはないっ!」

 

 再び彼女は侠に弾幕攻撃を加え始める。今の彼女の様子から判断したのか──彼はスペルカードを取り出しては宣言。

 

「適合【ボーダードライブ】」

 

 宣言と同時に彼の周りに出現する黒い空間。その空間に霊夢の弾幕が飲み込まれては──彼女の背後に違う黒い空間が発生し、霊夢の放った弾幕がそのまま放たれていた。即座に反応した彼女は体の向きを変え、自身の弾幕を放ったりや、回避行動で被弾をせず。攻撃が対処し終わり、侠へと体の向きを変えると──黒い空間が消えては彼の姿が変わっている。

 

 身の丈が長い紫色のローブ。そのローブにはフードがついており、彼は被っている状態だ。被っている状態でも彼の髪の毛は見える。ただ、その色は薄い金髪。左手に持った黒い色で占められている扇子を片手で広げて。龍化の翼はなくなっているようだが……彼はふよふよと浮いている。

 

 霊夢は今の侠の外見は──八雲紫に似た姿と能力を持っているを察した。

 

 彼女にとっては紫は身近な妖怪の一人でもある。興味があるようにして、どこか含めるような言い方で侠に話し掛けた。

 

「……へぇ。それは紫の適合スペルみたいね。わざわざ敵視している姿になるなんて……どうかしたの?」

 

「折角だ。貴様がそれなりに付き合いのある妖怪の力を使う適合スペルを使っただけだ。尤も、それで動揺する奴ではないと思うがな」

 

「そうね。正直『それがどうしたの?』ぐらいだし。あんたは紫じゃなくて侠には変わりないじゃない。でもまぁ、日頃の紫への怒りへも含めてしばくとするわ!」

 

「…………やりづらい」

 

 全く気にする様子を見せない霊夢にどこか溜息交じりで黒い空間を作り出す侠。彼はその黒い空間に無属性の弾幕を放っては──霊夢の四方八方に黒い空間を出現させ、各々の黒い空間から繰り出される弾幕が霊夢を襲う!

 

「【拡散アミュレット】!」

 

 霊夢は水色のアミュレットを取り出しては展開し──アミュレットが小さく散らばり、侠の放った弾幕を相殺していく。一つ一つ丁寧に。お互いの弾幕を打ち消し合っていく中で──辰上侠はスペルカードを取り出して宣言。

 

「模倣【飛光虫ネスト】」

 

 侠が霊夢に指し示した扇子に合わせて、彼の背後から多数の黒い空間が出現。そこから流れるように──白いレーザーの如くの弾幕が放たれていく。

 

「! 紫のスペルカードまんまってわけね……!」

 

 対抗するかのように彼女も、一枚のスペルカードを手に持っては宣言を。

 

「宝具【陰陽鬼神玉】!」

 

 彼女は片手を構えると──陰陽玉に模した弾幕が肥大化していく。それは盾にもなるようで、侠から繰り出される弾幕を防いでいく。一定まで肥大化し終えると彼女は──その陰陽玉を飛ばす!

 

「はぁっ!」

 

 掛け声と共に放たれる陰陽玉の弾幕。その弾幕は加速していき、侠の放った弾幕を飲み込んでいく。このままだと突破されると思ったのであろう侠は苦虫を噛み潰したかのようにして、違うスペルカードを宣言した。

 

「発展【神秘的な多重結界】!」

 

 彼を覆う何重にもなった赤い結界が霊夢のスペルカードを防御する。じりじりと攻め寄り、侠が張っている結界を一枚、二枚、三枚と壊していっているのだ。

 

「(小さな多数の弾幕ならば問題無いとわかっていたが……一点集中のまとまっている攻撃だと破られやすいか……!?)」

 

 侠は霊力を込めて防御力を上げる。そのおかげか……数枚にはなったものの、霊夢のスペルカードは防ぐ事は出来た。

 

 ただ──何時の間にか彼女は彼の結界に近づいては新しいスペルカードを唱えようとしていたが。

 

「! まさかさっきの攻撃の影に隠れて接近を──」

 

「神技【天覇風神脚】!」

 

 宣言と共に霊夢は霊力の込めた回転蹴りを何度も繰り出す。

 

 一撃。二撃。三撃。彼女の蹴りでさらに結界の壁が一枚ずつ剥がれていく。そして侠がむき出しにになっては──渾身の蹴りを放つ!

 

「喰らいなさいっ!」

 

「ちっ……!」

 

 侠は腕を交差させては防御態勢に。霊夢の渾身の蹴りはガードされたが……ダメージは蓄積されたようだ。それに伴い、彼の霊力も減り。どこか侠は息切れを見せている。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

「……魔理沙達が相手した分、若干だろうがスタミナや霊力が減っていたみたいね。それでここに来る前に能力を平行ににしていろんな能力を使っていたみたいだし。このままいけば私が勝てそうね」

 

「舐めるな……!」

 

 侠は目を閉じては額に指を当てると──彼の雰囲気が変わる。先ほどまでしていた息切れはなくなり、何故か万全な状態へと侠は回復したように彼女は感じた。

 

 だが……霊夢は侠の情報を整理しては、今の状態に納得する。

 

「雰囲気がいつもの侠に戻ったわね。いえ──霊力が妖力に変わったのかしら? 普段の妖力がデフォルトの侠に」

 

「追い詰めたとでも思ったか? これで俺は万全な状態。霊力が減ろうが妖力が減ろうが俺はストックがあるんだよ! 長期戦になったら俺の勝ちは確定だろうな!」

 

「(……でしょうね。私は侠みたいな先祖返りじゃない、ただの人間だもの。戦いが長くなれば私が段々不利になっていく。私は霊力しか持っていないから尽きたらアウト。だから侠を倒すのは──体力を一気に持っていくしかない!)」

 

 霊夢は考える。彼女の奥義は発動条件が決まれば確実に体力を持って行けるだろう。そのためには、彼との間合いを完全に把握しなければならない。

 

 彼女なりの作戦を練っていたところ、侠は適合スペルを解除した。そして、新たにスペルカードを構えては霊夢に話し掛ける。

 

「……おそらく貴様の考えている事は『どうやって俺の体力を一気に持っていくか』ということだろう。貴様にパワースペルがあるかどうか知らないが──パワーにはパワーで対抗するのみ! 貴様の友人の口癖を元にしたやつをな! 適合【スターライトオーバードライブ】!」

 

 彼の適合スペルの宣言。それは彼を周りに白い光が包み込む。急な光に霊夢は腕で目を庇いながら……侠の姿を確認する。

 

 その姿は黒いズボンを履いては。白いワイシャツを着ては黒いマントを羽織っている。髪の毛は長くなっては金髪に変わり、左耳の近くには赤いリボンがある三つ編み。翼が出現して色は金色に近い黄色。そして──三角の形をした、魔女に似た帽子。

 

 その姿は霊夢の友人でもある人間の魔法使い──霧雨魔理沙を連想させる姿だった。

 

 彼女も予想はしていたものの、少しは驚きを交えて侠に話しかけた。

 

「魔理沙に勝ったからまさかだと思っていたけど……魔理沙の適合スペルもあるとはね」

 

「この適合スペルは単純だからな。違う種類のパワータイプの適合スペルもあるが──この適合スペルは速さも兼ね備えている!」

 

 彼が簡略に説明した瞬間──目にもとまらない速さと俊敏性で霊夢の周りを動いては翻弄する。そして所々に彼の一瞬止まった場所から星形の弾幕が放たれた。

 

「! 魔理沙の速さまで! でも防ぎきれる──【警醒陣】!」

 

 霊夢は前方に四方に御札を投げては置くようにし、その四つの御札から盾を作り出す。一つずつ丁寧に密度の濃い侠の弾幕を防御。

 

 だが──彼は笑いながら次の行動に移す。

 

「フッ──弾幕はパワーだ!」

 

 彼は両手で弾幕を込めては──前に突きだしてはレーザーの弾幕を放つ! その弾幕は一点集中の継続した攻撃であり、当然霊夢は【警醒陣】で彼のレーザーを防御しようとしたが──攻撃が積み重なった所為か、盾の中心からレーザーが貫通する!

 

「弾幕の密度が高すぎる……!?」

 

 霊夢は上昇して貫通してきたレーザーを躱す。弾幕を躱すことには成功したのだが──

 

「模倣【ファイナルスパーク】!」

 

 上昇してきた霊夢に合わせて宣言されたスペルカード。彼は両手を霊夢に照準を合わせては魔理沙の【魔砲『ファイナルスパーク』】の使用。その攻撃は高威力且つ広範囲だ。斜め上に放たれた極太レーザーは霊夢を襲う!

 

「っ! 結界【拡散結界】!」

 

 宣言と同時に彼女の中心から何層も重なった結界が広がる。その結界は侠の放った弾幕をぶつかったのだが──多少彼の弾幕の速さが若干遅くなった程度だ。彼女の張った結界を貫きながら攻撃が霊夢に迫っていく。

 

 だが、それが彼女の狙い。もしも対策もせずに回避行動をしていたら間違いなく被弾しては間に合わなかっただろう。霊夢が結界のスペルで侠のスペルにぶつけた事で、攻撃力と速さは落ちている。ぶつかり合うことによって回避する時間を稼いでいたのだ。

 

 結界が残っているウチに霊夢は攻撃圏内から必死に逃げる。彼女の狙い通り──攻撃圏内からはずれ、かなり近くで見た侠の弾幕の柱。すかさず彼女は新たなスペルカードを取り出しては、侠に照準を合わせては宣言!

 

「くらいなさい──霊符【夢想封印】!」

 

 彼女の周りには色とりどりな大きな弾幕が八個ほど出現。その弾幕達は動いては侠を狙うかのように動いていく。侠もまた新しいスペルカードを唱えては片手を構えた。

 

「甘い──発展【ラスターカノン】!」

 

 彼の手元に溜まっていく膨大な弾幕の力。彼の数倍はあるであろう球状の弾幕が作られた頃には──対抗するかのように彼の手元から放たれる。

 

 多数対一の弾幕の対決。そしてお互いの弾幕のスペルカードはぶつかり合った──が、霊夢の弾幕は次々と侠の弾幕に飲み込まれていく!

 

「!? 夢想封印が……!?」

 

「そのまま攻撃に飲まれると良いっ!」

 

 霊夢の攻撃を物ともしない侠の弾幕は彼女に向かって飛んでいく。幸いなのは単純な攻撃にのっとった攻撃だ。霊夢のような夢想封印みたく追尾機能は無い。彼女は冷静に、最小限の動きで躱す。

 

 だが──彼の弾幕の後ろに続くかのように、辰上侠がいたのは予想出来なかったが。

 

「弾幕の後ろに──」

 

「ゼァッ!」

 

「ぐぅっ……!?」

 

 彼の掛け声と共に、密度の濃い弾幕が彼女に放たれた。もろに真正面から被弾してしまった霊夢はよろけながらも、必死に彼から距離を取る。

 

「影に隠れていただなんて……!」

 

「先ほどの蹴りの仕返しだ。しかし……貴様は特殊系で攻めるよりも、単純な攻撃の方が通用しやすいみたいだな。このままいけば……押し通る事は可能だ」

 

「そんなこと、させない……!」

 

 霊夢は言葉が途切れながらも、侠を戦う意思を見せる。彼女の目はずっと彼の光の無い目を見ながら。体勢を立て直していた。

 

 彼女の様子に侠は若干の戸惑いを見せた。その理由を聞くためか、疑問を含めた声で話し掛ける。

 

「……何故、そこまで俺に執着する? 俺は元々外界に帰る前提の人間だぞ? 博麗の巫女は迷い込んだ外来人を返す事が出来る。俺の場合は違うケースだが……俺は間違った行動はとっていない。何故俺の行動を妨害しようとする?」

 

 彼の問いかけ。もしも彼女が天界の出来事がなかったらうろたえていた質問だったかもしれない。紫とは外界に帰る事を前提にした約束。その約束が破られた今、彼は自力で帰る手段を見つけているのだ。辰上侠が外界に帰るのは当然な事であり、一般論からは間違ってはいない。

 

 間違っていないからこそ──ここからは霊夢の我が儘だ。

 

「そんなの、関係無いわね! 私が侠を止める! 今の侠のまま──外界に帰させるわけにはいかないっ!」

 

「……意味不明だ。別に俺と貴様は赤の他人だ。他人の命令に従ってたまるか」

 

「……そうよ。言う通り私と侠は他人。変わりはないわ。でもね──」

 

 霊夢は言葉を句切り──侠にぶつける。

 

 

 

 

 

 

 

「私は──もっと、侠の事が知りたいのっ! こんな形で侠と離ればなれになるだなんてゴメンだわ! だから──私が侠を止めるのよっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 感情的な言葉で、真っ直ぐに侠に気持ちを伝える。何時か、二人だけの空間の時に言った言葉。彼女の瞳には侠の姿を写しながら、目を合わせるように言う言葉。

 

 物怖じしない態度の彼女の言葉に、どこか侠は動揺が見え始める。

 

「……俺の事を……知りたい──」

 

 彼は無意識のウチに言葉を漏らしていたが──我に返り、片手で頭を抑えながら否定的な言葉で彼女の言葉を遠ざけようとする。

 

「──嘘だッ! 適当な言葉を並べたら俺が思いとどまるとでも思ったのかッ!? 幻想郷の人物なんて信じられるかッ! 裏切ったからこそ、俺はこんな場所から離れたいんだ! 俺の居るべき場所はここではないッ!!」

 

「前にも言ったでしょ! 紫の売り文句だけど『幻想郷は全てを受け入れる』って! 侠は確かに外界出身には変わりはない! でも、あんたの流れる血は元々幻想郷の人物の血が流れている! 居場所なんて複数あってもいいじゃないっ! 侠の居場所はこの幻想郷でも良いのよ! 実際にあんたの事を好ましく思っている奴もいるんだからっ!!」

 

「信じられるかそんな事……! 信じられるのは俺自身と、受け入れた家族。そして──心からの親友でもある静雅だけだッ!!」

 

 癇癪に触れたように、侠を中心にして密度の濃いありったけの弾幕が放たれる。霊夢は冷静に侠の弾幕をグレイズしては、溜息交じりに呟く。

 

「……あまり使いたくなかったけど、使うしかないようね──」

 

 霊夢はあるスペルカードを取り出し──宣言。

 

 

 

 

 

 

 

「──【夢想天生】!」

 

 

 

 

 

 

 

 宣言と同時に彼女の周りに現れる七つの陰陽玉。それらは彼女の周りを一定間隔で回り続けている。これこそ。彼女のラストスペルでもあるのだが──侠は彼女のラストスペルを知らない。

 

「……陰陽玉? それがこちらに来る様子はないみたいだが……それがどうした?」

 

「それは後のお楽しみよ!」

 

 霊夢は一気に距離を詰めては、侠の正面に現れては打撃攻撃をくりだそうとする。侠はとっさに防御の構えをとったが──防御したその瞬間、七つの内の陰陽玉の一つに光を発した。

 

「……光を……?」

 

「考えている時間は与えない!」

 

 続けて霊夢は大幣を使った打撃攻撃を繰り出す。連続攻撃をするように、大幣の後は蹴りの攻撃を。型にはまらない彼女の打撃攻撃は侠にとっても回避しづらい。彼女の攻撃に触れては受け流してダメージを最低限にしていたのだが……彼女の周りに浮遊している陰陽玉は二つ、三つと点灯していく。現在の陰陽玉は七つの内三つが光が灯っている。

 

 次々と陰陽玉が点灯していくのを見て──侠は何かに気づいたかのように霊夢から距離をとった。体勢を立て直しながら彼は自身の考察を霊夢にぶつける。

 

「……打撃攻撃をする度に点灯していく陰陽玉──七回打撃攻撃を成功させたら何かが起こるんだな?」

 

「どうでしょうね? それは私にもわからないわ」

 

「誤魔化すな。遠距離攻撃で対処すれば問題無いんだろうが……それは逃げの一手だな。同じく近距離で戦ってやろう!」

 

 侠は魔理沙の適合スペルを解除し。彼もスペルカードを輝かせて宣言!

 

「同化【ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ】!」

 

 彼の先祖、幻想郷の創造神の名前を使ったスペルカード。それは過去に蓬莱人との戦いに使われたスペルカードでもある。

 

 赤く染まった弾幕が彼を包み、下半身はワインレッドのズボンに、白いワイシャツの上には赤いコート。そして頭部には──竜の頭を模したものが彼の頭に被さるように装備。かぶり物にも見える龍の頭の顎の中に彼の顔があり、その竜の装備の頭上は赤と白の角。彼の腕は完全な竜の腕と相応の爪。赤い翼。赤い尾。そして──彼の右目は赤くなっている。

 

 今まで彼女は侠の部分的な龍化は見てきたが……適合スペルに類似した龍化は初めて見た。

 

「……龍化の進化版かしら? 適合スペルに似た姿──というよりも【竜人】かしら? その雰囲気といい」

 

「『近距離で攻めるならこれが一番だ。その分だけ──力を振るえるからな!』」

 

 侠は霊夢に急接近し、左腕を大きく振りかぶり──爪を使った切り裂く攻撃を仕掛ける。彼女は冷静に侠から距離をとろうとしたが──

 

「【クロウスラッシュ】!」

 

 霊夢が距離とったことにより空ぶったようにも見えたのだが──振るった爪の後から斬撃のような鋭い弾幕が彼女を襲う!

 

「!【妖怪バスター】!」

 

 霊夢は御札の弾幕を繰り出して彼の爪の弾幕の威力を減らし、回避行動に。そこから彼女は侠に近づこうとするのだが……侠は彼女の動きに反応。

 

「『させるか!』」

 

 侠は尾を振るい、叩きつけるかのようにして彼女の攻撃しようとする。だが、彼女はその行動を見破り、急上昇しては回避する。

 

「尾での攻撃ならティアーだけで充分よ!」

 

 そのまま下降しては彼女は蹴りを侠に当てた。攻撃が成功したことにより、陰陽玉が一つ灯る。まだ近くに彼女がいるのを把握して、侠は左手に弾幕を溜めては彼女に放つ。しかし、それは彼女はわかっていたようで。

 

「【繋縛陣】!」

 

 御札を投げては、彼の正面と背後に盾を作り出す。前方の盾により侠の弾幕は受け止め、その両面から出現した盾は少しずつだが──侠にゆっくりと接近してくる!

 

「『チッ! 行動を制限するワザでもあるのか……!』」

 

「ほら、次の攻撃が待っているわよ!」

 

 攻撃の許容量を超えたのか、前方の盾は壊れる。霊夢はアミュレットを取り出し、侠を追尾させるようにして放つ。侠は弾幕を当てて相殺したが──相殺した直後の弾幕の後に続いて、彼女も急接近していたが。

 

「『!? 俺と同じように弾幕の後に続いただと!?』」

 

「驚いている暇があったら防御ぐらいしてきなさい!」

 

 霊夢は侠の正面に潜り込み、掌手のような突き出し攻撃を彼に放とうとする。彼は彼女の攻撃に反応してカウンターをしようとしたが──彼の後ろに何かが被弾したかのように衝撃が彼に走る。

 

 正面の霊夢に気を取られて失念していたが……彼は背後から迫ってきていた盾の事を一瞬忘れていた。

 

 一瞬の彼の怯みを霊夢は見逃さない。正面から二撃の打撃繰り出した。その二回の打撃攻撃は侠に辺り、陰陽玉に二つの光が灯る。後点灯していていないのは──一つ。

 

 霊夢はたたみかけようとしたが──それを許す侠ではない。

 

「『ふざけるなァッ!』」

 

 龍化した腕を裏拳の如くに振り回す。彼女としてはこれで決着を付けたかったのだが──見誤った。最低限の防御態勢をとるが、横からまともに攻撃を受けてしまう。

 

「痛っ……!?」

 

 侠の攻撃に体が吹き飛ばされるかのように距離が離れている中、彼女は空中で必死にとどまる。彼の攻撃を受けてか、体力の消費が激しいみたいで息切れをしている霊夢。対して侠は打撃攻撃を喰らったものの、動きに支障が出るようなダメージは無い。

 

 だが……彼も今の自分の状況はわかっているつもりだ。ダメージの蓄積は微量であるものの、彼女の宣言していたラストスペルで出現した陰陽玉が七つの内──六つがもう点灯しているという事は。

 

「『……お互いはある意味不利な状況か。貴様の体力はもう少ないが、俺に残された余裕の打撃攻撃ストックはもうない。貴様の体力が尽きるのが先か、俺に打撃攻撃当てられてそのスペルの発動か……』」

 

「正真正銘、それが次の一手で決まるでしょうね……。またさっきみたいな龍化した打撃攻撃を喰らったら私はお終い。それはわかるわ。でもね──私は侠に勝つっ! 最良の運命に選ぶ為にね!」

 

「『最良の運命、か……』」

 

 彼女の発言の【運命】を聞いてか、彼はどこか悲しみに満ちた目で反応する。今までの彼の違う反応を見てか、彼女は彼に問いかける。

 

「……運命に何かあるの?」

 

「『…………いや、どのみち俺の運命は変わらないだろうと思ってな。もしも、俺が外界に帰れたとしても。矛盾しているが……だからこそ、俺は外界に帰る。生きて、俺にはやらなければならない事がある……!』」

 

 悲しみに満ちた目から、再び光の無い目のままで決意をする侠。彼の言い分は霊夢は理解出来なかったが……彼の外界での目的はわかっているつもりだ。彼の問題は複雑なモノだ。彼女が首を突っ込むような事柄ではないが──【今】のままの侠ではダメだ。少なくとも霊夢はそう考えている。

 

「……あんたの外界での目的はわかるわ。でも、今の侠のまま──問題を解決させるわけにはいかない! それがあんたの本当の両親が望む事なの!? それじゃあ、今の侠のままじゃ【本家】と一緒よ!」

 

「! ……違う! 俺はあいつらとは──違うんだッ!!」

 

 感情が不安定になりつつある侠だが、不安を無理矢理払うように龍化した腕を振るう。その動作の後には──爪のような弾幕が放たれる。爪の弾幕は霊夢に向かっていったが……彼女は最低限の動きでグレイズする。躱しては進み、侠へと近づいていく。

 

「今の侠は私は見たくない! せめて普段の言葉使いでも良い! でも、私は──侠自身を見ていたいのっ!」

 

 ありったけの御札、針の弾幕を侠に向かっては投擲する霊夢。それは着々と彼との距離を詰めていく。

 

「そんな言葉だけなぞ、信じられるか……!」

 

 侠は竜人化している中で、新しいスペルカードを取り出し──霊夢に向けて宣言した!

 

「龍撃【ドラゴンバスター】!」

 

 両手を構え、龍の顎を模した形を作り──ブレスのような赤い弾幕が放たれる。そのワザは広範囲でもあり、密度もある。彼の尋常じゃない弾幕量がなせるスペル。彼の視界では、霊夢は飲み込まれたように見えた。

 

 勝ちを確信したのか、どこか寂しそうな表情をしながら彼は言葉を漏らす。

 

「……これで良い。俺は悪役で構わない。例え博麗の巫女に手をあげた者として、幻想郷の人物から嫌われても──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──勝った気でいるのはまだ早いんじゃない、侠っ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背後から聞こえた声。侠はすぐさま振り返ったが──遅かった。彼女から蹴りを真正面から喰らうことになった。

 

「ガッ!? ま、まさか……飲み込まれる前に──」

 

 侠は過去のティアーの戦いを思い出す。軽く霊夢の出来るワザを聞き、実際に彼女はそのワザを使用した。その奇襲攻撃はティアーに見破られてしまったものの、凡庸性が高いワザ。

 

 

 

 

 

 幻想空想穴。そのワザは一瞬にして移動する事が出来るワザ。

 

 

 

 

 

 侠自体は知らないが、これと似たような状況になった事がある。彼の親友である静雅、同じ異変解決者でもある魔理沙の弾幕ごっこだ。魔理沙は侠と似たようなスペルカードを放った。それは宣言した者にとっては、弾幕で死角が出来るぐらいの弾幕量。静雅の防御スペルを唱えたが、押し切られてしまった。しかし……彼は彼女の攻撃量を利用して、能力で背後に移動していた。

 

 そして、その弾幕ごっこを観戦していたのはパチュリー・ノーレッジにアリス・マーガトロイド──博麗霊夢である。彼女はその状況下においての対処を無意識に静雅から学んでいたのだ。

 

 彼女の打撃攻撃の成功により、陰陽玉が灯る。そして──七つの灯った陰陽玉は彼女の周りを速い速度で回転し始める。条件が揃った事を確認した霊夢は侠の元へ一瞬に移動し──改めて宣言する!

 

 

 

 

 

 

 

「【夢想天生】!」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の周りで回転していた陰陽玉から膨大な御札の弾幕が放たれた。四方八方に、辺り構わず。数え切れない量の弾幕がほぼゼロ距離の侠に連続でヒットしていく。

 

 静雅とルーミアに応戦していた妖夢達も、その事に気づいては驚愕の表情を浮かべる。

 

「!? アレは──【夢想天生】ですか!?」

 

「霊夢のとっておきだったスペルよね!?」

 

「確か、弾幕ごっこにおいては発動条件が難しかったはずだけど……」

 

「あやや……霊夢さん、やったんですね! もうこちらはクタクタですよ……」

 

 霊夢の味方達は今の状況を喜んでいる。その事に察した静雅は隣にいたルーミアに確かめるように話し掛けた。

 

「……あの膨大な弾幕量で、侠は──」

 

「負けたわね、侠。龍神の先祖返りであるはずなのにね」

 

「……侠側のオレが言うのもなんだが──霊夢、よくやってくれた……」

 

「…………」

 

 安堵したような静雅の声とは対照に、何か黙っているルーミア。彼女の視線は霊夢と侠に視線を向いている。

 

 霊夢の夢想天生による膨大な弾幕を被弾した侠。彼女のラストスペルの攻撃が止んだ後に彼の龍化スペルが解けては……彼は、力が無くなったように空中から落ちていく。

 

「!? 侠っ!?」

 

 彼女が声を掛けるものの、反応が返ってこない。どうやらダメージ許容量が超えた所為か、意識を失っているらしい。

 

「! 誰か侠を受け止めて!」

 

 霊夢も必死に急降下して侠を追いかけるが、間に合わないと悟った彼女は役目を誰かに託そうとする。急な事に誰もが焦り、順当に静雅が行動に移そうとしたのだが──それよりも早く侠に駆け着き、彼を抱き留めた人物。

 

「……首謀者がこんな状態になるだなんて笑えるわね」

 

 侠を受け止めていた人物。その人物は侠が変わってから行動を一緒にしていた封印されていた妖怪──ルーミアだった。彼の気絶した顔を見てか、どこか呆れるような声を出す。

 

 侠に次に駆けつけたのは霊夢。封印が解けているルーミアに牽制の声を掛けようととしたが──

 

「ルーミア! 侠をどうするつもりなの!? 場合によっては──」

 

「安心しなさい。侠が失敗したからそんなつもりは無いわ。後の侠は貴方達次第だけど……」

 

「……は?」

 

「それよりも──ティアー。出てきなさいよ」

 

 ルーミアの声に反応するかのように、侠の体が赤くぼやける。後に、侠からその赤いぼやけが離れては──侠と容姿が瓜二つの初代龍神、ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼが出現。

 

「……その姿で会うのは何千年ぶりかの? ルーミアよ」

 

「よく言うわ。さんざん私に構っては急に消えた奴なんだもの。正直この場で切り裂いてやりたいという気持ちが強いわ」

 

「全盛期の程の力は戻ってはおらんが、今の我ならお主に問題無く勝てるがの。多数の能力を行使してよいのならば」

 

「……フン」

 

 ルーミアは鼻を鳴らしながら、侠を渡した。彼を受け取ったティアーは、これからのことも含めてルーミアと話を続ける。

 

「……それで、どうするかの? 封印状態に戻すか?」

 

「断るって言ったら?」

 

「放置する」

 

「……バカなの? 今の私は大妖怪ほどの力量になっているのよ? 人間達がどうなっても良いの?」

 

「別にお主が幻想郷住民に害するというのなら話は別だの。その時は──我がお主を止める」

 

「……いい加減その爺くさい言葉は止めなさい。止めたら、封印されてもいい。ただ──何度かで良いから、私と話す機会を作りなさい。良いわね?」

 

「……良いだろう。ルーミア。(ぬし)の言葉を信じよう」

 

 ルーミアの指摘から爺くさい言葉から整った声に変わるティアー。二人特有の会話が気になるのか、ティアーに霊夢は問いかける。

 

「ねぇ……あんた達って知り合いなの? 幻想郷が創られた頃から?」

 

「そうだ、霊夢。我はルーミアとそれなりの仲でな。尤も、当初知り合った頃は大変だったがな。このじゃじゃ馬娘が」

 

「ぶっ飛ばすわよ? 龍神の仕事を放棄して下界にサボりに来た創造神が」

 

「我は幻想郷を創った創造神だからこそ、休みたい時がある。偶々目に掛けたのがルーミアだった。(ぬし)のあの頃はヤンチャが最も当てはまっただろうが」

 

「……誰かさんの影響で、今の状態の私は最低限人間を襲おうとする気を無くしたけどね……」

 

「お? 我のおかげで侠と対面した時丸くなっていたんだな? それは我としても何よりだ」

 

「……今すぐにこいつを食ってやろうかしら……?」

 

 どこか喧嘩腰な会話だが、少なくとも霊夢にとっては仲の良い光景にも見える。だが、ここで無駄話をしても状況は変わらない。その事を含めて霊夢は行動を促す。

 

「……一先ず、侠を介抱しましょ。目覚めてどのような行動をとるかわからないけど……」

 

「霊夢。侠の持っている能力は一先ず我が全部持っておる。それに龍化の制限をした。暴れるとは思わないが……最低限のフォローはしておいた。後は本堂の者に頼んで二人だけの空間を作ってもらえ。霊夢と侠だけが話して聞ける空間をな」

 

「……ティアー。その言い方何とかならないの? 普段の爺くさい言葉使いの方が聞きやすいんだけど……」

 

「ルーミアの希望だからな。そもそも我が全盛期の頃はこの喋り方だ。外界で年相応の言い方にしていた為でもある。その我と会った霊夢の印象がそうなった。特に気にしないで良い」

 

「……そう」

 

 霊夢達三人は地上へと降り立つ。ティアーは意識を失っている侠を静雅に渡してこれからのことを話した後、彼は「ルーミアと色々話してくる」という事で、ティアーとルーミアはその場から離れる。集まってきた人物は霊夢と侠を気遣う人物だったり、一時囚われていた静雅の事を心配していた人物もいたり。その中で──霊夢は思う。

 

 

 

 

 

 

 

「(後は──侠を私が説得しなくちゃ。ティアーの言っていたことはわかる。幻想郷の人物で──誰が一番信頼をしていたか、わからせてあげなくちゃっ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 




 ……。

 ではまた。
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