三人称視点。
では本編どうぞ。
全体的な白い部屋の個室。とある人物は目を覚まして、得た情報を頭の中で整理を。
「……見たことのない天井──っじゃなくて、病院かな……?」
上半身を起こして──辰上侠は現状を確認する。白いベッドに寝かされては、安静状態。彼の利き腕である左腕にギプスが包まれていた。これから推測すると、骨に異常があったのだろうと彼は思う。多少動かしても痛くはないのだが──
「……能力で治しちゃえ」
利き腕じゃない右手を左腕に当てては──黒い空間が現れる。その能力は八雲紫の能力である【境界を操る程度の能力】を侠の【力を発展させる程度の能力】で発展させた──【理を操る程度の能力】。彼女の境界操作はもちろん、彼女の超えた範囲での能力が使用可能となった。
治している途中で、机に上に置かれていたものに侠は視線を移す。そこにあったのは──黒い携帯電話と一つのメモ。
「……この携帯は確か河城に貸していたもの……それで、メモ?」
黒い空間を閉じて彼は腕を【元に戻し】、具合を確かめるも……異常は無い。
机にあった携帯とメモを取りながら、侠はメモに書かれていた事を黙読した。
『このメモを読めているなら体は大丈夫でしょう。無事に生き残った事を祝福するわ。それと、この携帯電話は河童から預かったモノよ。あなたの携帯を元に作ったらしいけど……まぁ、それは置いておくとして。あなたの目的は長くなるんだから、下記に書いてある番号とメールアドレスは登録しておくこと。誰の番号かは……お楽しみ。もしかすると察するかもしれないけどね。私の目的が達成した事。ここまで書けばわかると思うけど。タイミングは私の元で指示しておくからそれまでこの連絡先は使わない事。by八雲紫
─P,S─
あなたは一人じゃないわ。それと、騒がしくなるだろうけど……見てあげて』
「……そういえば携帯の事をずっと忘れてた。しかも何だろう? この追伸……?」
携帯に紫の指示通りに連絡先を登録し終えた後。ベッドからおり、窓の近くに寄っては風景を眺める。幻想郷みたいな自然の風景とは違って、ここの世界は【ビル】という建物が多数見えた。
「……本当に外界に戻ってきたんだ……それで、能力は問題無く使える……」
『──主。無事で何よりだった。まさか簡単にバスから脱出するかと思いきや、赤の他人を助け出した時はどうしたかと思ったぞ……』
彼の脳内に響く声。幻想郷の創造神でもあったティアーに侠は耳を傾ける。
「……確かにあのまま行けば簡単に生き残れた。でも……それじゃあ、ダメな気がしたんです」
『「……ふむ。本堂の者の能力が掛かっているとはいえ、その心意気は良し。これも静雅に感謝しておくのだぞ?」』
「……静雅も関係あったのですか──」
彼の言いかけの言葉の最中に──扉が開く音が聞こえる。彼は振り向いてその存在を確認すると……パンク系のファッションをして、ジーンズの上着を着ては──前髪に白い二本のヘアピン。彼こそが辰上侠の親友である──本堂静雅だった。
「侠っ! 目が覚めたんだな!」
「静雅……大丈夫。自分は問題無いよ。それと……【幻想郷】。この言葉にちゃんと聞き覚えはある?」
「あぁ! ちゃんと覚えているさ!」
静雅は侠の傍に寄り、嬉しそうに反応を示した後。彼は情報を侠に教える事に。
「信じられるか? あの修学旅行のバスの転落事故。奇跡的に死者はゼロなんだってよ! どうも三人の生徒が乗客全員を助け出した──って、侠はその一人なんだよな。新聞に載ってたぞ」
「新聞にねぇ……。結局、学校はどうなるの?」
「そりゃしばらく学級閉鎖だろ。死者はいないものの、重傷者がいるんだ。それでオレ達の学年はせめてしばらくの間は休みになるんだと。それでここぞと言わんばかりにモデルやタレントの仕事をしているってわけだ」
「しばらくの間静雅も休めば良いのに……」
侠の言葉に「そうだな」と同調し、言葉を続ける。
「一応、一週間近くは休みをとったけどな。『親友が事故に遭って仕事にならない』って事で。オレの事務所は侠を良く思っているしな。【流れない涙】で爆発的なヒットで有名になった恩としてよ」
「……ところで」
静雅からの情報を整理し終えた侠は、根本的に気になる話があるのだろう。彼は真剣な顔で、親友に問いただした。
「……どうして、自分は生き残れたと思う?」
「そりゃ気合い──って答えはダメだよな。ちゃんと話してやるよ」
侠と静雅はベッドに腰をかけ、楽に話をする姿勢に。そして──静雅は真面目な顔で語った。
「オレが当初幻想入りした後、オレが持っていた【事象を操る程度の能力】についていろいろ実験していたんだ。この能力の出来る範囲や効力をな。そして──レミリア嬢に対抗できるような【事象】をオレに施した」
「……それは?」
「【運命に縛られない】事象だ」
寝転がるようにして静雅は仰向けに倒れ、自身の片手を真っ直ぐ突き出しながら話を続ける。
「結果、レミリア嬢は【オレの運命】に干渉出来なくなった。運命に縛られないというのは、オレの定義は決められた運命にあがく事だ。決められた運命をひっくり返して、自分の望むような運命に方向に持って行く。それは明確な意思の元が原動力となる。侠は……バスの事故で、絶対思ったはずだ。そう──【死んでたまるか】ってな」
「……何時、能力掛けてたの? そういうのだったらご先祖様がわかるはずなのに……」
次々と湧く侠の疑問。静雅は起き上がり、彼の疑問に答えを出す。
「おそらく、初代龍神が黙っていた……じゃなくて、伝えられなかったんじゃないか? 事柄もそうだが、安心させないように。さっきも言った通り明確な意思が必要なんだから、ネタばらしすると確実に意思が弱るだろ。『俺は生き残るから何もしなくて良い』的な事をな」
「(そうなのですか?)」
『「すまぬの、主。本堂の者の言う通りだ。伝えてはいけない事柄の上に──当時の我は【力】の不足で主の心に語りかけるのはかなりの限度があっての。実際【水】の力を手に入れてからの上に、数回が限度だったのだ」』
「(……そういえば初めての語りは【龍神の像】についてと、フランドールの戦い。満月を見た時の三回ぐらいだったような……)」
侠は心の中でティアーの説明を聞いた後、彼のうなずきを見て静雅は話を再開。
「何時掛けた事については──侠がフラン嬢との戦いでオレが『気をつけろ』助言した時、肩に触れたろ? その時はフラン嬢に壊されないようの為の保険として掛けていたんだが……そのままにしておいた」
「……疲れなかったの? そんな継続的な能力をかけて?」
「試して四人までが限度だった。オレは含めないが……基本的に継続的に掛けているのは侠とフラン嬢だけだ。二人なら大して疲れないから安心しとけ」
「……そう。それは良かったよ。それで──ありがとう」
説明を聞き終えた侠は、改めて親友にお礼の言葉を。本人は「気にすんな」と言っては笑顔を浮かべていた。
だが……最後の質問を侠は言うと、彼の反応が若干変わった。
「……荒人神についてはどうなの?」
「あぁー……外界に戻ってのオレの種族? 多分フィーリングでわかるんだが──荒人神のまんまだな。でも特に困ることは無いし、いっそ新世界の神として君臨したままにしておくか」
「……まぁ、神様に対する嫌悪以外にデメリットが無ければいいけどね」
『──すいません、辰上さん。具合はどう──って、えっ!? 本堂静雅さん!? 高校生男子モデルである静雅さんが何故ここに!?』
ちょうど話が区切り終えたところで──看護婦が病室に入ってきた。入るなり、侠を見てではなく、静雅は見て驚愕の声を漏らしていたが。彼は幻想郷ではそこまで有名ではなかったが、外界においては一種の有名人だ。検診に来たつもりがその有名人が病室にいたとすれば、多少芸能界に詳しい人物にとっては驚くことだろう。
静雅は侠の傍を離れ、驚いている看護婦をよそに扉に手を掛けては言葉を投げかけた。
「その様子だと怪我は大丈夫みたいだな。退院は今日にでも出来そうだが……終わったらオレにメールとかしてくれ。そこらで待ってるから」
彼は病室に出た後、看護婦は侠に質問攻めをされたのは別の話だが……彼は今すべき行動に移した……。
侠を担当した医師は彼に疑問を抱いていた。何故、骨にひびがあったのにも関わらず何事も無かったのように治っていたのか。しかし、既に終わってしまった事はしょうがない。問診をした後特に問題無いと判断された侠は退院する事になった。彼の服装は学校が支給してくれたのかわからないが……真新しい制服が用意されていたのでそれに着替えた。
そして病院を出た後。侠は携帯で静雅と連絡を取り合い……病院前に静雅はやってきた。なのだが……侠としては疑問のある事柄があるらしく、その事について彼は尋ねた。
「……顔だして大丈夫なの? せめてマスクはした方が良いんじゃない?」
「能力で何とかなるから心配いらん」
「うわぁ……かなり便利。だから静雅の周りに人がいないんだ」
侠の心配事とは、静雅は外界では有名人の為、好奇な視線を注がれたり話し掛けられたりなど。その事で病院は渋滞になるのではないかと思っていたのだが……その心配は無いと静雅は言う。
話題を変えるようにして、今度は静雅は侠に問いかける。
「これからどうするんだ? 学校もしばらく無いわけだしよ」
「……一先ずは家に帰ることかな。それで義父さん達に自分の考えを伝えて……それから行動に移そうと思う。携帯にもたくさんの着信があったみたいだし。心配を解かなくちゃ」
「だろうな。ここから電車だと……数時間はかかるな。だからといってオレの能力は使わないでおこう。何時人の目につくかわからないのもあるに加えて……久しぶりに公共機関を使おうぜ」
「そうだね。お金下ろしてから、じゃあ──行こうか」
外界の【電車】に二人は乗って。幻想郷とは違う景色を眺めていたり、これからのことについて二人は話していたりして時間が過ぎていく。
そして──目的地の駅に着いて降りた後、数十分掛けて二人は歩いて行く。ある2階建ての一軒家に着き──表札で【辰上】と書かれている家の前で二人は足を止めた。
「……久しぶりに実家に帰った気がするよ」
「帰るときは夏休みとかそういう期間だけだからな。大体は寮生活なんだからよ」
「そうだね……まずはインターホンでも押そうか」
彼は備え付けであるインターホンを押して来客を伝え──インターホンから声が聞こえてきた。
『はい。どちら様ですか?』
「義父さん、侠です。静雅も一緒ですが……病院から帰ってきました」
『おや。連絡があったけど早かったね? まぁ、待ちなさい。今すぐ迎えに──』
『お兄ちゃん!? お兄ちゃんが帰ってきたの!?』
侠とまず話していた人物は、落ち着いた声で男性であるとわかるが──その後方で騒ぎ立てている人物がいる。その人物は侠を【兄】と認識させるような呼称で呼んでいるが。
侠達は目の前の家でドタドタと急ぐような物音を聞いている中、確認するように静雅に話し掛けていたが──
「……静雅。これってやっぱり……」
「……まぁ、早く帰ってきていたんだろうな。とりあえず身を構えていた方が良いぞ」
侠と静雅は家の扉を見続ける。そして──その扉は勢いよく開かれ──覇気のある声と共に一人の少女が侠に飛びついた。
「お兄ちゃーんっ! 心配したよーっ!!」
侠は彼女の勢いを殺すようにふんわりと受け止め、改めてその少女に侠は話し掛ける。
「心配かけたね──陽花」
「ほんとだよっ! もしもお兄ちゃんに何かあったら大問題だよ! あたしもお父さんもお母さんも! 本当に無事で良かったよぉ……」
涙目で侠の胸に顔をうずめる。服装は白いワイシャツに黒いベストを着ては、チェック模様のスカート。背中にある髪の毛を星模様のはいった球のゴム紐でまとめて、その髪の毛の束は体の前方にあって。彼女は侠の義理の妹である──辰上陽花である。
心配を解くように侠は彼女の頭を撫でている中、静雅は彼女に気遣いの言葉も含めて話し掛けた。
「陽花が一番侠の事を心配していたからなぁ……。この通り侠は無事だから安心するといい」
「うん……しずまっちゃん──あ、でもお兄ちゃんに聞きたい事が」
何かを思い出したかのように陽花は一先ず侠から離れては、彼女が持っている疑問を侠にどこか不機嫌そうに言う。
「……お兄ちゃん、あの人とどういう関係なの?」
「……? あの人っていうのは? 誰だかわからないんだけど……?」
「何か変わった巫女服を着ている人が今いるの。それでお兄ちゃんと知り合いみたいなんだけど……どういう関係?」
「「……変わった巫女服?」」
彼女の言葉に侠と静雅は気になった箇所を復唱した。陽花の発言した【変わった巫女服】という言葉に、二人は心覚えがある。二人ほど。
彼女からの情報に戸惑うが……二人は行動に移す。
「……まさかだと思うけど……」
「……まさかなぁ……。それで幻想郷のイベントフラグを考えれば──」
「あ、それそれ! しずまっちゃんが言ったその幻想郷ってやつ! その人はそこから来たって言ってた!」
彼女から次々と出てくる情報に、二人は着々と確信に変わっていく。確実に確信するために、二人は陽花を先導の元に家へ入っていく。
陽花を含めた三人が居間に入ると──そこには三人の人物が何やら話している。二人は大人の男女という事がわかるが──もう一人は少女だ。
その少女の服装は変わった脇の空いた巫女服を着て。全身としては赤い色で染められており、袖の部分は白だ。フリルのついた赤いリボンでポニーテールにしている。その少女は入ってきた人物の気配に気づいては──侠に、少し戸惑いも含めながら話し掛けた。
「──きょ、侠……来ちゃった」
そこに居たのは幻想郷の博麗神社の巫女。侠の暴走を止めた人物でもあり、異変解決者でもある──【楽園の巫女】の博麗霊夢だった……。
義妹本編初登場。
ではまた。