最初は三人称視点です。
では本編どうぞ。
「(……初めての弾幕ごっこで魔理沙に勝つ!?)」
パチュリーは二人の弾幕ごっこを見て、驚きしかない。
魔理沙は異変解決者だ。この幻想郷内でも実力者の部類だ。それがこんな一方的に決着が着くものだろうか?
「(確かに、静雅の能力は強い……だけど、魔理沙にはそれなりの経験がある。初見だとしても、魔理沙の優位性があるはずだった。でも、彼は違った。その優位性すら壊してしまう……)」
今回の一番の敗因は静雅の口車に乗ってしまったことだ。始める前から魔理沙の冷静さを奪い、流れを持ってくる。そして本人にとって予想外の攻撃方法。弾幕がはじき返される。わざと相手の挑発に乗って油断させ、攻撃を食らわせる。そして真実味のある嘘の能力(実際は名前だけだが)。焦ってしまった魔理沙はまた静雅の挑発に乗り、それが原因で動きを封じられ敗北した。
「(流石は人の心を荒らす神……【荒人神】といったところかしら?)」
今回の弾幕ごっこをパチュリーは振り返っていたが、静雅のスペルの効果が切れたのか、よろつきながら魔理沙は立ち上がる。
「……まさか外来人に負けるとは思ってもいなかったぜ」
「挑発に乗った自滅だがな。お前さんはどこまで浅はかな思考をしているんだ?」
「……馬鹿にしてるだろ? その言葉」
「馬鹿にしている──まぁ、馬鹿にしているな」
「それ絶対喧嘩売っているだろ!」
「オレの喧嘩は定価十万円だが買うか?」
「何で同じ外来人のはずなのにここまで性格がひねくれてんだぜ!?」
「はいはい、口喧嘩もそれぐらいにしなさい」
終わらなさそうな口喧嘩にパチュリーは収め始める。
「(……このままいくと魔理沙の精神状態がどんどんすり減っていくわね……口喧嘩の時点で静雅に勝てそうもないし)」
……本泥棒として扱っていたが、多少は気遣っているみたいだった。
パチュリーが声をかけたことで、静雅は思い出すように口を開く。
「そういやオレが勝ったんだから、お前さんは紅魔館から出て行くんだな」
「……はんっ! 私は本を借りてから出て行くとするぜっ!」
「ちょ、魔理沙──」
パチュリーの制止も虚しく、早く本を借り(盗む)ようと箒を持ったが──
「はい強制送還ー」
静雅は手の照準を魔理紗に合わせた瞬間──魔理沙はぶれて、その場から消えた。
「静雅っ!? 魔理沙をどこにやったの!?」
「そんな焦るなよ。紅魔館の門に飛ばしただけだ」
「……どこかのスキマ妖怪みたくスキマ送りにしているんじゃないわよ……」
「ほぉ。幻想の境界、八雲紫はそんな技も使えるのか。そして似ていると……」
そうパチュリーと話していたら、弱々しく図書館の扉が開いていき、スーツを着た悪魔の女性が入ってきた。
「パチュリー様〜……遅れてすいません〜……紅茶をお持ちいたしました〜」
図書館に入ってきたのはパチュリーの使い魔で司書である小悪魔だ。ただ、少しぼろぼろ(の雰囲気)になっている。
それを見かねたパチュリーは小悪魔に話しかけ始める。
「……紅茶を頼んだ道中に魔理沙にでもやられたの?」
「はい……紅茶を運んでいる最中に箒に乗った魔理沙さんに轢かれてしまって……あれ? 魔理沙さんは図書館にいないんですか?」
「魔理沙ならそこの新米執事が撃退したわよ。しかも無傷で」
「…………えっ!? あの魔理沙さんを!?」
「ふははははっ! どうだ凄かろう!」
「……能力で弾幕を見えなくしていた奴がよく言うわ……」
パチュリーにジト目の視線を静雅は受けながらも、気さくに笑っている。静雅は放り投げた槍のケースを回収し、リフレクト・ジャベリンを収めて肩にかける。
そしてパチュリーは静雅にあることを尋ね始める。
「それにしても……何で名前と能力を偽ったの? 能力はまだ分かるとしても、名前まで隠す意味は分からないわ」
「それか? オレは余り特定の奴以外に情報がもれるのは嫌なんだよ。だから能力も含め名前も偽った。だからしばらくはいろんな奴に取っつかれたら違う名前と能力を言うと思うからアドリブよろしく」
「……幻想郷にいればあなたのことは知れ渡るんだけどね……明日にでも魔理沙は霊夢にあなたのこと教えに行くわよ?」
「別に偽名だから問題なし」
表ではそう言っていた静雅だったが……。
「(異変を始める前までオレの名前と能力を知られるわけにはいかないからな……そして、もう仕込みは間に合っている)」
裏では八雲紫に言われて通りの行動していたのだ。
そこに、ぶれるようにして図書館に急に現れた人物。
「静雅。お嬢様が呼んでいます」
「お、咲夜。ちなみにレミリア嬢のいる場所は?」
「ロビーでお待ちです」
「うし。わかった。それじゃあパチュリー、小悪魔、行ってくる」
静雅は場所を聞き、パチュリーと小悪魔に挨拶した後ぶれて消えた。
その光景を見てパチュリーは一言。
「……違う見方だと、咲夜の移動方法に似ているわね」
「静雅の方は時には関してはいませんけどね。それにしても万能な能力ですよね……」
「静雅さん、その気になれば【時を止める事象】ということで咲夜さんに似たこともできるんじゃないですかねぇ……」
「……あり得なくもないわね」
〜side 静雅〜
能力で移動し、ロビー前。今朝言われたことを守って扉をノックする。
「レミリア嬢。ただいま来ました」
「……入りなさい」
許可を得たので扉を開け、玉座に座っているレミリア嬢の前まで歩く。
「どのようなご用件で?」
「少し聞きたいことがあるのよ。魔理沙と戦ってみてどうだった?」
咲夜伝いで聞いたのだろうか……?
まぁ、オレは正直に答える。
「大したことは無かったな」
「へぇ……異変解決者である魔理沙をそんな評価? それともお前の能力の前では無関係と?」
「能力に関しては弾幕を見えなくする程度を一回だ。結構楽に挑発に乗ってくれたからな。能力を全開にしなくても余裕だった。こちらのペースに持って行って、オレのスペルで身動きを封じて完封勝ちしてやったさ」
「ずいぶんと遠回りなことをしてるわね。その気になれば【絶対勝つ事象】とすれば楽に勝てるでしょうに」
「そんなダイレクトに能力を使って勝ってもつまらないじゃないか。レミリア嬢もそうだろう? 弾幕ごっこで【勝つ運命】としないのと同じさ」
「そうね。私は弾幕ごっこに能力は使わない主義だし。実力で勝ってこそ意味がある」
一見軽い空気のように感じるが、少し空気がぴりぴりしている。これとは違う話したい本題がきっとあるんだろう。
「ところで話は変わるけど……静雅、あなたは能力で自分の仕事は片付けて暇なのよね?」
「悪いがしばらくは弾幕ごっこに備えて弾幕の形を研究したり、新しいスペルカードを作ったり──」
「ひ・ま・な・の・よ・ね?」
「──暇な時間を作ったり」
急なプレッシャーに押され、暇なことを答えてしまった。
「あなたに新しい仕事をあげるわ。紅魔館で働いているのだからちゃんと肉体労働的に働きなさい」
「……その仕事とは?」
改めてどんな仕事かレミリア嬢に尋ねる。
「……妹の従者になりなさい」
「妹……? 妹なんていたのか?」
急に妹の従者になれと言われた。聞いた話によるとレミリアは咲夜を従者にしているらしい。でも、オレはその妹に会ったことがないんだが……?
……確か小悪魔が住民について聞いたとき、『お嬢様方』と言ってたような。
レミリア嬢は少し声のトーンを下げて話し始める。
「妹……フランドール。愛称で私達はフランと呼んでいるわ。ただその子……精神が少し狂っている──いや、狂気にまだ少しとりつかれているのよ」
「狂気? 何かの障害者なのか?」
「障害者ではないわ。ただ、生まれつき狂気にとりつかれやすいのよ。その分精神状態がよろしくない。癇癪に触れたら暴走するぐらいのね」
「そのわりにはオレはまだ会ったことはないんだが……?」
紅魔館で働くようになって数日はたつが、妹さんにまだ会ったことがない。
「それも不思議なのよね。最近はまだ落ち着いている方だから館内をうろついているはずなんだけど、この数日の内に会えないなんて」
「何だ。最近落ち着いているのか」
「まぁ、あなたに会った瞬間弾幕ごっこという名の惨劇が起こる可能性はあるけど」
「……えぇー? 死ぬ確率のある仕事なのか?」
「別にあなた、その気になれば能力で死なないじゃない」
……今現在かけている【運命に縛られない】事象は理不尽な死も含めている。つまりは自然な死に方以外では死なないと言うことも含まれている。
「姉なんだから何とかできないのか?」
「……無理よ。私にはできない……」
…………? 何か今、表情がおかしかったような……?
「あなたの能力を見込んで頼んでいるの。でなければ追い出すわよ」
「それは困る……で? 妹さんは基本、どこにいるんだ?」
「……図書館の地下よ」
あそこ地下なんてあったのか。そういえば気になる通路があったから小悪魔に聞いたら『そこには絶対行かないでください!』って念押しされてたな。
「じゃあ行ってくる。何とかしてくるさ」
オレは能力を使ってまずは図書館へと移動した。
「…………結局、数日来たばかりの外来人に頼むなんて……姉失格ね……」
「本当に咲夜みたく現れてきたわね……レミィに何て言われたの?」
ちょうど現れた場所はパチュリーの机前だった。近くに本を持ってきたのか小悪魔もいる。
「レミリア嬢の妹さんの従者になれと言われた」
「「えっ!?」」
「それでこれから地下に行ってその妹さんに会いに行く」
「妹様に!? 静雅さん大丈夫なんですか!?」
「(……レミィ……まさか能力で狂気を取り除くつもり?)」
小悪魔は身を案じているが、パチュリーは何か考えているような気がする。
「確かこの先の地下に行けば良いんだよな?」
図書館に奥の通じる道を示し、パチュリーに聞いてみる。
「そう。いけるわ。ただ、妹様の精神状態によるけど……身の危険には十分注意しなさい」
「了解した」
オレは小悪魔に止められていた道に向かって歩き出す。パチュリーもあぁ言っていたんだ。気を引き締めなければいけないな……。
「……パチュリー様。静雅さんは大丈夫なんでしょうか?」
「……別に死にはしないでしょ。能力という保険が付けられているもの。ただ、問題とすれば静雅の精神の強さよ。外界ではただの人間だった静雅に妹様の狂気に耐えられるどうか……」
「…………無事を祈るしかないですね」
「……」
薄暗い通路。ちょうどオレの目の前には重そうな、厳重そうな扉がある。まるで何かを封印しているように……。
「…………よし」
オレは決して扉を開ける。ギギギ……と重い音を扉はならしながら開けた。
『……だぁれ?』
奥で幼い女の子の声が聞こえる。その女の子は帽子を被っており、髪の左側をくくってサイドテールをしている。体の部分は赤を特徴とした服を着ており、背中からは順番に虹色の宝石のような──羽根だろうか? そんなのが生えている。
そして何より、レミリア嬢の同じ紅い眼……この子がレミリア嬢の妹、フランドールだろう。オレはそう思い、フランドールに近づく。
「レミリア嬢からお前さんに会いに行けと言われてな。紅魔館で下働きすることになった本堂静雅だ」
「そうなんだ。私はフランドールだよ。よかったらフランって呼んで?」
「わかった。フラン嬢、実はレミリア嬢からフラン嬢の従者になれということでここに来たんだ」
「そうなのっ!? それってお姉様と咲夜みたいになるってことっ!?」
「あぁ。そういうことだ。不手際や迷惑をかけるかもしれないが、そこは寛大な心で見逃してくれ」
「そうなんだ……♪」
眼をきらきらしながら嬉しそうに言葉を言ってくれる。……聞いていたよりずっと良い子のような気がするんだが……?
そう思った矢先、ここを見回してみると……全体的に血のにおいがする。家具と行ってもベッドと小さなタンスぐらいで、ベッドの近くにある熊の人形は──片腕がもげかけ、眼は外れかけ、体の至る所から綿が出ている。
「…………」
「お人形さん見てどうしたの? ……あ。これってすぐ簡単に壊れちゃうんだ。咲夜が新しいおもちゃを持ってきてくれたりはするんだけど、私と一緒に遊んでいるとすぐに壊れちゃうんだよ」
「いや、おもちゃは大事に扱おうな?」
オレはそう言うと、何故かフラン嬢は目線を下にしながら言葉を続ける。
「……ほんとはね、静雅のことは早く知ってたの。パチュリーのスペルカードを何ともなくしているところを見たんだよ。今日だって私に勝ったことのある魔理沙を簡単に勝っちゃうんだもん! 静雅って弾幕ごっこ強いんだね!」
──危ない。体がそう告げている。
「だから──」
フラン嬢は顔をこちらに上げ、あるときの親友と同じ狂気に満ちた笑顔をしながら──
「──カンタンニ、コワレナイデネ?」
──オレに向かって、重い弾幕を放ってきた──
裏・第二章終了。再び表主人公──その前に、ちょっとした次章への布石の話を投稿します。
フランについてはこの通り。怖いです。
ではまた。